著者
福井 正博 林 憲一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.210-217, 2013

GPU(Graphics Processing Unit)はコア数を増加させることで集積度を増し,電力密度を増やすことなく年率1.7倍の集積度増を続けており, 今後しばらくその勢いを緩めることはない.数百~数千個のコアを1チップに集積し,大規模な並列処理が可能となっている.GPUメーカーもソフト開発環境を提供するなど,普及に力を入れていることもあり,GPUの計算能力を一般科学技術計算に適用する試みが注目を浴びるようになってきた.大規模な問題を扱うLSI設計や検証に対しても,その可能性が広がっている.本稿ではGPUを用いたLSI設計の高速化の動向について,以下の二つの観点でまとめる.まず,画像専用プロセッサGPUがいかに生まれ,それが,どのような経緯で一般科学計算に用いられるようになったかという点を解説する.次に,複雑なLSI設計の各種問題に,GPUの計算能力がどのように適用され,どれだけのパフォーマンスの改善が期待できるか,あるいは,今後のアルゴリズム開発がどのように変わっていくかという点について述べる.
著者
石原 亨
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.3_38-3_44, 2009-01-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
29

高度情報化社会の急速な発展を背景にコンピュータシステムの低消費電力化が喫緊の課題となっている.一方でハードウェア設計コストの上昇に伴って,ソフトウェア及びデータコンテンツによるコンピュータ製品の差別化がますます重要になりつつある.結果的にソフトウェアとデータによる低消費電力化はコンピュータシステムの付加価値を生み出す重要な鍵になると考えられる.本論文では,ソフトウェアの動作に関連付けてハードウェアの消費電力をモデル化する技術とハードウェアが電力を消費しないように制御するソフトウェア技術について解説する.
著者
岡田 仁志
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.183-192, 2015
被引用文献数
1

ビットコインなどの分散型仮想通貨は,P2Pと電子認証の技術を応用してこれまでとは全く異なる価値流通の仕組みを現出した.それは,発行主体の存在しない分散的な構造でありながら,私人間の支払を完了させる価値認証システムである.従来の電子マネーがクローズドループであったのに対して,仮想通貨はあたかも現金のように転々流通する.そして,中央銀行の手によらない通貨発行は,国家が独占してきた通貨高権に疑問を投げ掛ける.本稿では,通貨はなぜ国家が発行しなければならないのか.国家によらない通貨発行は理想であると言えるか.シニョレッジ(貨幣発行益)を独占する者は本当に存在しないのか.仮想通貨の登場が問いかける諸論点について考察する.
著者
山口 真悟 宮本 俊幸 内平 直志 葛 崎偉 本位田 真一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_58-1_65, 2008-07-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

学生チームが企業から提供された課題「マルチカーエレベータの群管理制御問題」を解決するアルゴリズムを競い合う「CSTソリューションコンペティション2007」を実施した.本稿ではその活動を通じて得たアルゴリズムの知見と評価ツールなどについて解説する.
著者
伊藤 洋一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.205-213, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)
参考文献数
21
被引用文献数
2

空中超音波の基本的性質を通してその特徴(長所,短所)を示し,強力な空中超音波を発生させるため,まず大出力の超音波を効率良く空中に放出する音源(周波数20kHz)の構成について示した.次に,この音波を使って強力な音波を発生させるための方法と現在最も実用的と考える音源について,その基本特性を含めて紹介している.更に,強力空中超音波特有の効果について取り上げ,それを利用した各種応用技術について,既に実用化したものから,実用化間近なもの,研究開発中のものについて,その概要を分かりやすく解説している.
著者
上田 修
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.294-304, 2013-04-01 (Released:2013-04-01)
参考文献数
25

各種化合物半導体多層薄膜から作製されたLEDや半導体レーザといった半導体発光デバイスは,現在,社会,産業,家庭における様々なシステムや機器に搭載されている.このような発光デバイスは,機器への不適切な実装や過酷な条件での使用などで劣化し,機器やシステムの不具合や障害,事故の原因となる.そこで,本稿では,赤色・赤外デバイスを中心とした発光デバイスの種々の劣化モードについて,劣化メカニズム,解析事例,及び抑制方法について解説する.
著者
眞田 克
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.293-301, 2012-04-01 (Released:2012-04-01)
参考文献数
16

水道管からの水漏れと同じくLSIも欠陥箇所を介して電流が漏れ出し故障に至らしめる.この漏れ電流現象はLSIを評価する重要なパラメータの一つである.しかしながらDSM(Deep Sub-Micron)化に伴うデバイス技術の進展は電流値を用いた評価を困難とした.この問題を克服すべく,テスト技術は統計処理による正常/異常値間の差分の顕在化による識別法更には電源電流の波形の相関比較やフーリエ変換による数理処理により異常の有/無を顕在化する技術が開発されている.故障診断技術は漏れ電流の特徴を用い,論理情報と組み合わせることで簡易で高精度に故障候補を特定する技術の開発で評価技術の向上が図られている.
著者
韓 太舜 小林 欣吾
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.229-243, 2015-04-01 (Released:2015-04-01)
参考文献数
45

マルチユーザ通信路符号化問題,なかんずく,干渉通信路の符号化問題は,その重要な基本的特質のゆえに近年多くの通信理論研究者が多大の関心を持って精力的に研究に取り組んでいる.特に,問題の本質的な性格を把握するために,2 組の送信者・受信者の場合がよく研究されてきた.韓と小林によって1981 年に提示された一般の干渉通信路に対する達成可能な領域,すなわち,HK 領域の表現は現在に至るまで最良であり続けてきた.本稿では,HK 領域の解説を中心に据えて,その領域の表現を簡略化する研究や,既に容量域の決定されている干渉通信路の部分クラスに関する解説を与える.また,Han-Kobayashi スキームのごく簡単な適用でも,ガウス干渉通信路の容量域に対してSNR(SN 比, 信号対雑音比)とINR(干渉対雑音比)を大きくした漸近的な状況では最適であることを示したEtkin, Tse, Wang による研究を解説する.更に,その出現以来35 年後の今年になって,Han-Kobayashi 領域をしのぐ伝送レート対の存在することがNairらによって明らかにされてHan-Kobayashi 領域の最適性が否定されたという話題にも触れ,干渉通信路研究に新しい転機が訪れたことを伝える.