著者
野口 大介
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 = apan Society for Science Education Research Report (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.59-64, 2022-06-04

大学における分析化学実験では,配位数6のカルシウムイオンCa2+にエチレンジアミン四酢酸イオン(EDTAアニオン)が六座配位子としてキレートした錯体の化学構造が示されることが多い.しかし,そうした構造であることの根拠となる学術論文は引用されておらず,文献によっては異なる構造が示されている.そこで,本研究ではアルカリ土類金属イオンをキレート配位したEDTA錯体の結晶構造を報告した研究論文を文献調査によって体系化した.その結果,12種類の結晶構造のいずれもが配位数6の中心金属イオンにEDTAアニオンが六座配位子として配位した錯体ではなく,配位数が6より大きいものや,六配位座数未満のEDTAアニオン配位錯体が多いと判明した.また,溶存状態におけるCa-EDTA錯体であっても,必ずしも配位数6のCa2+にEDTAアニオンが六座配位子として配位しているとは限らないことを示す分光学的研究も見受けられた.従って,アルカリ土類金属-EDTAキレートの配位構造として誤解を招きかねない説明をすることは,なるべく避けるべきだろう.
著者
西村 憲人 小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.73-76, 2012 (Released:2018-04-07)
参考文献数
2

近年,都市圏を中心に科学実験塾・塾の実験教室(以後,総称して「実験塾」と呼ぶ)が急速に増加している.実験塾は,設備面,安全面,技術面等を考慮すると,通常の塾よりもコストの高いコンテンツであると思われるにもかかわらず,相次いで開校されるにはそれ相応の需要があるからであろうと推察される.日本科学教育学会第 36 回年会では,実験塾のニーズの区分とそのニーズを解明するための分析枠組を提案した.本発表では,保護者に対して行った Web アンケート調査の結果を報告する.保護者のニーズとして,「受験のため」という教育における「実利的ニーズ」は少なく,「科学に興味・関心を持ってほしい」という「本質的ニーズ」の側面が強いことが確認された.また,実験塾に「通わせたくない」保護者は「経済的な理由」を多く挙げており,「もっと月謝を安くしてほしい」という「市場におけるニーズ」の存在も見受けられる.
著者
竺沙 敏彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.57-62, 2018-03-25 (Released:2018-07-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

次期学習指導要領では,「主体的・対話的で深い学び」を重視した授業実践が求められているが,そのために用いる「問題」は必ずしも豊富にあるわけではない.本稿においては,現実の問題を用いて問題解決をするために,一枚の紙を用いて可能な限り容積の大きな容器を作るという新たな教材開発を行った.その際、A4用紙を用いて作成できる直方体型容器の最大容積を求めることができた.本稿では、その活用事例について報告するとともに,教材開発及び実践を通して主体的・対話的で深い学びに繋がる得られた示唆を報告する.
著者
福井 智紀 佐久間 岳
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.37-42, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

現代の科学や科学者の一面を理解させるため,ES細胞論文捏造事件を素材として,漫画教材の開発を行った。内容は,実際の事件を参考にしつつも,架空のストーリー・登場人物として再構成した。最終的に,A5判型で計 46 頁の小冊子が完成した。教材は2部構成となっている。第1部「トム教授の活躍」では,主人公の教授や彼を取り巻く人物達を紹介し,優れた成果をあげて賞賛を浴びる様子が描かれる。第2部「トム教授への疑惑」では,一転して,研究に対する疑義の提起や追究の過程が描かれるとともに,実際の事件についても簡潔な紹介がなされる。開発した漫画教材を用いて,理科の教員免許取得を目指す大学生を対象に試行した結果,一定の活用効果が見られた。さらに,教材の優れた点や改善点などを把握することができた。教材の理科授業での有用性についても,一定の評価を得た。現代の科学・科学者は,「素朴的」「牧歌的」イメージでは,正確に捉えきれない。科学や科学者について,否定的イメージのみを煽らないように配慮したうえで,理想的とは言えない側面も取り扱うことが,今後は必要だと考える。
著者
佐々木 功一 人見 久城
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.35-40, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
24

レッスン・スタディとして海外にも広がりを見せているわが国の授業研究も,その目的や方法,重要事項や課題が,時代や参加主体によって異なる。たとえば吉崎(2012)は授業研究の目的は実際には重複するものの,大別すると4つあるとしている。実際に授業研究を行う教師は,これらの目的のいずれを意識して実践しているのだろうか。本研究は,授業研究の望ましい在り方を模索するため,教師が授業研究に求めるもの(ニーズ)や目的意識を複数の視点から調査・分析したものである。その結果,調査を行ったT地区の小学校教師は授業力向上に協働的に励んでおり,様々な向上要因のなかでも,校内授業研究が授業力向上に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。そして,その教師たちは3つの独立した因子の影響を受けて授業研究を捉えていることが示唆された。
著者
髙橋 瞭介 桐原 一輝 桐生 徹 大島 崇行
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.25-28, 2020-03-07 (Released:2020-03-04)
参考文献数
8

本研究では,空間認識力を育むことができる教材を開発し,ドローンを使った授業をデザインし実践した.分析1では,授業前後に行った空間認識力評価テストの得点を分析し,低位層と中位層において事後テストでの点数が有意に向上したことが明らかになった.分析2では,評価テストの誤答分析を行い,授業後に三面図に書かれたドローンの動きについて視点移動を行うことができる児童が増えたことが明らかになった.分析3では,授業以前から視点移動を獲得していた児童,授業後に視点移動を獲得した児童は授業の中で開発した教材を活用する場面が見られた.以上から,開発した教材と授業デザインは空間認識力を育む一要因になると結論づける.
著者
滝 奏音 辻 宏子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.13-16, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
5

学校教育ではめあてや問題文の一斉音読を指示する場面が多く見られる.算数の授業も例外ではなく,文章題を解く際に問題の音読をするよう指示する教師が多い.しかし,算数の文章題において音読を行うことの効果について検証している先行研究はない.そこで,本研究ではその実態を明らかにするため,学校教育に携わる方を対象に質問紙調査を実施した.「算数の授業中に,学級全体で問題文を音読することは効果があると思いますか.」の問いに対し,全体の78.6%にあたる教師が「とても効果がある」,「効果がある」を選択しており,肯定的な評価をしている割合が高かった.また,「問題文を音読するよう指示する際は,どのような意図で指示をしますか.」というアンケートをとった結果, 97%の教師が「問題場面を把握させる」という目的で文章題の問題文を音読するよう指示していると回答した.
著者
氏家 章次
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.47-52, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
1

高校の化学(有機化学分野)の授業において、光学異性体についての実験や観察は旋光度を測定する器具の購入や作製を伴うなど、従来なかなか実施されにくい面があった。そこで、旋光度測定の実測VTRの観察、有機プラスチックモデルの活用などを行い、光学異性体の違いによる光の振動面の逆転を視覚的に理解させることができた。また、臭覚(匂い)や味覚(味)の違いとして体感させることなどにより、ほとんどの生徒に、より深く光学異性体の性質の違い等を理解させることができた。
著者
福井 智紀 内藤 覚哉
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.41-46, 2018-03-25 (Released:2018-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
3

遺伝子編集技術によって実現可能性が高まりつつある「デザイナー・ベビー」に焦点を当て,その現状や可能性と問題点について理解したうえで,生徒がグループ討論するための理科教材を開発した。討論では,市民参加型テクノロジー・アセスメントの手法のひとつであるフューチャーサーチを,大幅に簡略化して取り入れた。教材は,中学校理科の免許を取得する教職課程学生を対象に試行した。試行後のアンケート結果と発話分析から,一定の活用効果が明確になり,教材としての必要性についても高い評価を得た。しかし,説明や指示の分かりやすさなど,さらなる改善点も残されていることが明確になった。
著者
漆畑 文哉
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.1-6, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5

本研究は,小学校第4学年の小単元「物の温まり方」において,学習指導要領および教科書の変遷を分析することで科学的概念の指導における課題を明らかにすることを目的とする.分析の結果,平成元年改訂学習指導要領において『熱』の概念が削除され,目標が「温まり方」という温度の変化そのものを学習することへ変化したことにより,教科書に掲載された教材や図・テキストも影響を受けていることが示唆された.指導上の課題を解決するためには,『熱』の概念を導入し,物質の構造や熱の伝わりやすさの違いと関連づける必要がある.さらに,これらを関連づけて学習者が考察し表現するための支援を検討する必要がある.
著者
渡邉 重義
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.117-122, 2012 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

アメリカのミドルスクールで用いられている理科教科書の生物領域の内容を分析して,科学的な方法の取り扱いを調べた。その結果,次のことが明らかになった。①科学的な方法は,実験の結果やまとめ,学習の振り返りの批判的な思考において,スキルの種類がわかるように提示され,具体化されていた。②提示されていたスキルは,プロセス・スキルズと同様のカテゴリーを含んでいたが,概念の応用,コンセプトマップの作成等のスキルも提示されていた。
著者
北澤 武 望月 俊男 山口 悦司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.1-4, 2018-03-25 (Released:2018-07-01)
参考文献数
10

筆者らは,我が国における学習科学の専門家養成に向けた情報収集を行うために,諸外国における学習科学の教育プログラムについて調査を行ってきた(大浦ほか 2017;河﨑ほか 2017;河野ほか 2017)。この調査の一環として,本稿では,イスラエルのハイファ大学に着目した調査を行った。ハイファ大学の教師教育プログラムでは,学習科学が重視され,これに関する授業が複数開設されていることが明らかになった。
著者
佐久間 直也 中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.27-30, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
11

科学的探究において仮説は重要な役割を持つにもかかわらず,これまで理科の授業では仮説の立て方の指導がほとんど行われてこなかった.そこで筆者らは、複数事象の比較を通した仮説設定の段階的指導法を開発し効果検証を行ってきた(佐久間・中村,2021).本発表では,これまでの実践における課題の改善と新たな学級や単元における実践に取り組み,提案する指導法が一貫した効果を持つかを検討した.具体的には,中学校第2学年「電流とその利用」において継続的な実践を行い,授業時の仮説設定の質を評価した.その結果,提案する指導法は従来の指導法と比べて仮説設定の質の向上に相対的に高い効果があることが示された.その一方で,授業後のアンケートでは仮説設定が難しいと感じていた生徒も依然として多く見られたことから,今後は仮説設定の題材の工夫と継続的な指導によって苦手意識を軽減できるよう取り組む必要がある.
著者
ラッシラ エルッキ・T 隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.25-28, 2020-12-13 (Released:2020-12-09)
参考文献数
9

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、全国で行われる公教育の文脈において、高い興味関心や優れた能力を持つ生徒の個性や才能を伸長する理数系人材育成の一つの日本型教育モデルである。本研究では才能を個人と環境の組みわせとして定義する「行動環境場(actiotope)モデル」と「教育資本(educational capital)」のアイデアをベースとし、SSHの可能性を議論する。質的研究アプローチを採用し、SSH2校において計10名の教員にインタビューを行い、研究開発実施報告書等を資料として補完しながら分析を行った。その結果、これまであまり議論されていないSSHのインパクトとして、1)連携機関等とのネットワークと校内キーパーソンによる「社会的教育資本(social educational capital)」と2)公教育において意欲や能力の高い生徒に焦点を当てて教育支援をすることへの理解が広がる「文化資本(cultural capital)」へのインパクトが明らかとなった。予想に反し、「インフラ・経済資本(infrastructural and economic capital)」のインパクトが大きいようには見られず、「教育方法的教育資本(didactic educational capital)」のインパクトは曖昧で、才能についての共通認識はなく、課題研究の指導力が不十分と考える教員が多かった。
著者
岩見 拓磨 御園 真史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.133-138, 2015 (Released:2018-04-07)
参考文献数
10

本研究では,教職課程を履修している大学生に対して,数学に対する価値観を尋ねる質問紙調査を行った。4 つの因子について下位尺度得点の多重比較を行った結果,意識の高さは,意味理解・練習≒道具的目的>学問としての数学>モデル化/活用の順であることが分かった。このことから,将来数学は必要であるという意識は高いのにも関わらず,それを日常的なレベルで数学的モデル化を行ったり,数学を活用するといった実践行動に移せていないことが分かった。
著者
高田 昌慶
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.31-34, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
7

小学校 4 年生の「人の体のつくりと運動」で,腕を曲げ伸ばししたときの筋肉の様子を実験器で説明してきた。しかし、従前の実験器の筋肉部分はゴム製である。そのため,腕を曲げると上腕二頭筋相当部分が縮むように見えるが,元の形に戻るだけで体感的には力が抜け,上腕三頭筋相当部分が伸びて,体感的には元に戻ろうとする力を感じる。つまり,このモデルで児童が体感するイメージは、実際とは相反するもので,指導者としてフラストレーションを感じていた。そこで、腕の筋肉の収縮と弛緩に伴って腕が曲がったり伸びたりする様子を模式的に説明できる実験器を考案し,ケニスで商品化された。まず,筋肉チューブとして付属している非ゴム素材で「力が入って縮む・力が抜けて緩む」ことを体感させる。その上で腕モデルを曲げ伸ばしすることで,感覚的に「縮む・伸びる」とインプットされたイメージを,実感を伴って「縮む・緩む」と正しく再認識させることに効果があったと推察される。
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.81-84, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
9

本稿では,疑似科学的言説に対する消費者向け教材開発のガイドラインの作成過程を報告している.疑似科学の問題が深刻化している社会的状況に対して,消費者教育などの関連分野における既存の教材ではその対応が十分でなく,既存の教材では一般消費者が疑似科学の判定を行うには不十分である(ES0.11,95%CI[-0.21, 0.44]).そうした現状を打破するために本研究では,疑似科学に対する消費者向け教材開発のガイドラインの提案を目的として,関連領域における既存のガイドラインおよび筆者らが運営する「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」の実践よって生じた課題から,新規ガイドラインの具体的観点を抽出した.作成したガイドラインは試験的なものであるため,より厳密化するための方策を講じる必要がある.
著者
横田 康長 赤松 直 蒲生 啓司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.51-54, 2021-05-22 (Released:2021-05-19)
参考文献数
3

中学校2年で学習をする気象の単元は「天気の変化」である。気象の学習で基本となるところは、雲の発生についてであり、飽和水蒸気量と露点、湿度および温度の関係が理解できていないことが雲の発生のしくみを理解する際のつまずきを招く。本研究では、飽和水蒸気量と温度と湿度の関係を生徒に理解させることを目的として、隈元の実験方法に改良を加えることで、飽和水蒸気量の温度依存から湿度変化を理解することを促す授業を計画し実践した。授業では、まず温度が高くなると湿度が高くなるという概念のもとになっている夏と冬の気象の特徴について、生徒へのアンケートを実施した。約4割の生徒が湿度に関する特徴を答えていた。次に、湿度計を入れた密閉容器を食器乾燥機で温め、湿度が下がることを確認した後でその理由を考えさせた。理由を正確に説明できた生徒は28名中9名であったが、グループ討議をすると、友達どうしで飽和水蒸気量のグラフを使って教え合う姿が見られた。
著者
寺田 光宏 中嶋 健二
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.97-102, 2012 (Released:2018-04-07)
参考文献数
8

本研究では,小学校4年生の理科「物のあたたまり方」の単元におけるの指導の現状を明らかにするために,直近10年間の小学校理科教科書の実験・図解・表現を変遷および現職教員や理科教師を志望している学生のもつ「水のあたたまり方」の概念を調査,検討した。その結果,小学校4年生理科「水のあたたまり方」の教科書は,先行研究の指摘により変化が認められるが,まだ混乱していることが明らかになった。また,現職教員及び教育学部理科専修学生がもつ「水のあたたまり方」の概念は,10年前以前の教科書にあるような概念を保持していた。また,「水のあたたまり方」の概念は確固で変容が難しい可能性があることが明らかになり,改善案を考察した。