著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1024-1028, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
21

ワクチン有害説とは,「ワクチン接種はヒトにとって有害である」という基本的な考えのもと,社会および個人に対してワクチン接種の危険性を訴える主張の総称である.本稿の目的はワクチン有害説の科学性を評価することにある.科学哲学・科学社会学の知見から案出した「科学性評定の10条件」に基づくと,ワクチン有害説は理論の適応範囲に大きな問題を抱えており,データの面からもこれを支持できる有力な根拠はなく,典型的な疑似科学的言説である.科学性評定の10条件の理解把握によってこうした評価が可能である.
著者
清水 武 石川 幹人
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-29, 2013

フィールドRNG研究は、多数の人々が同一のイベントに注目するとき乱数生成器によるビット出力のカイ二乗統計量に特異な自己相関が生じることを示してきた。そこで本研究は、フィールド意識に特有のシグナル波長が存在する可能性を提起し、イベント時のカイ二乗値を計算する際の試行のインターバルの長さを拡張する分析方法を提案し、従属変数を単変量のスカラーからベクトルへと拡張することを方法論的に試みた。予想される結果として、複数のインターバル別に集計した平均ベクトルに対して、フィールド意識の波長により適したインターバル長で偏りが大きくなること、また観客数との相関が強くなることが挙げられた。本研究は、今後の実験計画に役立ちうる予備的検証段階のひとつとしてフィールド実験を実施し、アニメ映画「けいおん!」を上映した映画館で13回のくり返し測定の後、標準化したカイ二乗値ベクトルをMANOVAにより検定した。結果は、切片値、インターバル長、生成スピード、およびこれらの交互作用項のいずれの有意ではなかった。一方で、従来の1秒集計値において聴衆の人数との相関が最大化し(r=.57, N=13)、フィールド意識のシグナル波長が1秒近辺に存在する可能性が示唆された。最後に、今後の課題が議論された。
著者
菊池聡 石川幹人#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

科学的な主張の外観がありながら,実際には適切な科学的な方法論が適用されていない誤った主張や言説は,疑似科学やニセ科学と呼ばれる。日本では血液型性格学やマイナスイオンなどがその代表とされる。疑似科学信奉は,迷信や占い信奉などと並んで,超常信念(paranormal belief)の一つと位置付けられる。こうした超常信念は,しばしば科学的知識や合理的思考の欠如と関連づけられるが,一方で合理的・適応的な役割も担うことも指摘されている(菊池,2012)。 疑似科学が一般社会もたらす深刻な問題の一つとして,疑似科学にもとづく一部の補完代替医療や健康法などが無批判に信用され,健康被害が引き起こされることがある。こうした健康法・健康食品の利用は,高齢者にとって強い関心事といえるが,石川(2009)の調査では,新聞に掲載される疑似科学的広告の9割以上が健康食品を扱っているという現状がある。 高齢者の超常信念は青少年と異なる特徴を持つことは松井(2001)や菊池(2013)などで示されているが,心理学領域での超常信念の研究は,合理的思考と対比される文脈で,青少年を対象として行われることが多かった。そこで,本調査では,現実に,科学的に根拠の無い(効果の疑わしい)医療や健康法のユーザーとなりうる高齢者を対象として,科学的な立場からの批判が受け入れられにくい背景要因について検討を行った。方法調査協力者 シルバー人材センター登録者で会員研修会に参加した585名に調査用紙への回答を依頼し,郵送法で回収した。有効回答者,267名。年齢は61歳から88歳まで。平均71.5歳(SD=4.9)。質問紙・日常生活での健康への態度 健康状態や,健康法・健康診断への取り組み,メディアを通した健康情報の収集などについて尋ねた。11項目5件法。・疑似科学的言説への態度 「マイナスイオンを使った器具で健康状態が改善できる」など,疑似科学的主張や,健康食品の効能,科学的気象予測など計7種類の主張に対して,それぞれ「信頼できる↔信頼できない」「興味がある↔興味がない」「科学的↔非科学的」の各5件法。信頼性の評定を疑似科学信念得点とした。・科学的懐疑への態度 『自分が愛用している健康食品や健康法に対し科学的な根拠がはっきりしないのではないか,という意見を聞かされた』場面を想定させ,そこで取る態度について尋ねた。「根拠を知ろうとする」「感情的に反発する」「自分の実感を信用する」など7項目5件法。・その他,迷信への態度や科学への態度など。結果 疑似科学的主張への信頼度(肯定率)を,菊池(2013)の同県内高校生データと比較すると,血液型(高齢者肯定率25%)はほぼ同等だが,マイナスイオン(15%)や地震雲(27%)の肯定率は半分程度であった。また,疑似科学の信頼性評定は科学性評価と.r=65~.75の相関があり,高齢者はこれらを迷信としてではなく科学性をもとに信頼度を評価していることが示された。 「科学的懐疑への態度」項目を因子分析によって「情報探索」「感情的反発」「失望」「無関心」の4尺度とし,日常の健康への態度や疑似科学信念との関連を重回帰分析によって求めた(Table.1)。その結果「情報探索」は,「日常的健康情報収集」「性別(男性)」と有意な関連があった。一方,「反発」「失望」「無関心」といったネガティブな態度は,すべて「疑似科学信念」と正の関連性が示された。その他の健康への態度や,迷信態度,年齢などとの関連性は見られなかった。考察 科学的立場からの懐疑論や疑似科学批判は,しばしば科学的根拠の乏しさや不十分さを批判するパターンを蹈襲する。しかし,高齢者はある種の科学性にもとづいた理性的判断のもとで疑似科学信念に至るがゆえに,批判的な指摘に対して,判断の誤りを指摘されたようにとらえ,ネガティブな反応をする傾向があると推測できる。これは有効な科学コミュニケーションのあり方や現代社会の問題としての疑似科学を考える上で重要な示唆となりうるものである。
著者
石川 幹人
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-20, 2000-11-18
参考文献数
13
被引用文献数
1

本論文は, メディアがもたらす環境変容に関する意識調査の一例を報告し, それを通して, メディア環境の設計における意識調査の役割の重要性を指摘する。本研究では, 電車内の携帯電話使用は控えるべきというマナーに注目し, 大学生の意識を調査した。いくつかの社会学の文献では共同体仮説(マナーは携帯電話が電車内の一時的な共同性を破壊することに由来する)が提唱されているが, 本調査では音仮説(マナーは単に音がうるさいことに由来する)のほうが有力であるといった結果が得られた。しかし, 共同体仮説を支持する少数意見も得られた。また, 心理的な不安傾向との相関も調査したが, 顕著な相関傾向は得られなかった。情報メディアの発展に伴って我々の生活様式に急速な変化が及んでいるので, こうした意識調査を機動的に行って, その結果がメディア環境の良好な設計に反映されることが望まれる。
著者
山本 輝太郎 石川 幹人 菊池 聡
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 42 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.341-342, 2018 (Released:2019-06-14)
参考文献数
4

本研究では,疑似科学に関するオンライン上での議論を手がかりとして,それらの中で「誤った論法=誤謬」がどのように見られるかについて分析した。分析の結果,オンライン上のコメントでは 意味の曖昧さや多義性につけ込み,受け手(閲覧者)に対して先入観を与えるタイプの誤謬が 多く見られた。本報告では,分析結果とともに誤謬を見抜く取り組みの必要性について論じる。
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.31-36, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
7

現在インターネット上で展開している「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」における活動内容を紹介し,科学リテラシー向上に向けた科学教育の重要性を主張する.本稿では特に,蔓延する疑似科学にまつわる諸問題に対応するための,教育成果の「社会的な活用」という側面に焦点を当てた.これまでに収集した知見から,疑似科学に関連する問題の多くは,社会的な人間関係と深く関わっていることが推定できる.そのため,単なる科学的知識の蓄積だけでない実践的な問題解決能力も,これからの教育成果には求められるだろう.こうした社会状況において,科学教育の実践としての「疑似科学」はよい教材として機能することが期待でき,本稿を通してその意義を検討したいと思う.
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1024-1028, 2019

ワクチン有害説とは,「ワクチン接種はヒトにとって有害である」という基本的な考えのもと,社会および個人に対してワクチン接種の危険性を訴える主張の総称である.本稿の目的はワクチン有害説の科学性を評価することにある.科学哲学・科学社会学の知見から案出した「科学性評定の10条件」に基づくと,ワクチン有害説は理論の適応範囲に大きな問題を抱えており,データの面からもこれを支持できる有力な根拠はなく,典型的な疑似科学的言説である.科学性評定の10条件の理解把握によってこうした評価が可能である.
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.5-8, 2018-03-25 (Released:2018-07-01)
参考文献数
5

たとえばPISA(OECD 生徒の学習到達度調査)では,生徒が習得を目指す科学的リテラシーに関して,科学・技術に関する議論に積極的に参加できる態度の形成が望ましいとしている.また,議論を建設的に行うために,誤った論法=誤謬に陥らないようにすることが重要である.そこで,筆者らが構築・運営している「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」におけるコメントを事例とし,科学が関与する議論においてどのような誤謬がみられるかについて分析した.結果,議論を閲覧する第三者に向けて自身の主張の正当性を演出するような誤謬が多くみられた.これを,現代社会におけるネット上での議論に特有の問題として位置づけ,こうした方面を重点的に学習する教材開発を目指している.
著者
石川 幹人 菊池 聡
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

疑似科学を判定するための科学性の10条件を選定し、実際の項目に適用することでその有効性を確立してきた。また、それを応用した科学コミュニケーションサイト(http://www.sciencecomlabo.jp/)を運営し、その有効性を広く公表している。このサイトは運用1年で、訪問者15万人、50万ページビュー、コメント数500件以上を達成して、定評を確立している。この業績により科学技術社会論学会の実践賞を受賞した。
著者
石川 幹人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、疑似科学的広告に注目し、その科学性を判別する評価基準を策定した。文献調査をもとに、実証的効果を示すデータ面の評価基準として透明性・再現性・客観性を、効果の作用機序を説明する理論面の評価基準として論理性・体系性・普遍性を、両面にかかわる評価基準として予測性の、合計7つの基準を策定した。また、これらの評価基準の実用性を高めていくための「ユーザ参加型のホームページ」を開発した。
著者
矢田 哲士 石川 幹人 田中 秀俊 浅井 潔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1117-1129, 1996-06-15

我々は DNA配列群からシグナルパターンを自動的に抽出する手法を開発した.本手法では シグナルパターンを確率論的モデルである隠れマルコフモデル(HMM)によって表現している.HMMは 状態を表すノードとそれらを結合する有向パスで構成されるネットワークとして記述される.HMMをシグナルパターンの表現方法として用いる場合 以下の2点が重要な課題となる.(1)最も好ましいネットワークトポロジーの決定 (2)HMMに関連するパラメータの最適化.本手法は 遺伝的アルゴリズム(GA)とBaum-Welchアルゴリズム(BWA)で構成される.手法のプロシジャは以下のとおりである.(1)GAによるネットワークトポロジーと初期パラメータ値の生成 (2)BWAによるパラメータ値の最適化 (3)GAによるネットワークトポロジーと最適化されたパラメータ値の評価.評価には モデルの適合度と複雑性の釣合基準を与える赤池情報量基準(AIC)を適用した.以上のプロシジャを繰り返すことによって DNA配列群に含まれるシグナルパターンを最も良好に表現するHMMネットワークのトポロジーとパラメータ値が得られる.我々は 本手法を霊長類プロモータ領域に関するシグナルパターンの抽出に適用した.本手法により生成されたHMMは 生物学的に知られている複数のシグナル配列を含んでいた.さらに このHMMを用いてプロモータ領域の予測を行った結果 84.3%の精度でプロモータ領域を認識することが確かめられた.この値は 本手法で生成されたHMMがプロモータ領域のシグナルパターンを良好に表現していることを示している.
著者
石川 幹人 中野 剛
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第38回, no.人工知能及び認知科学, pp.275-276, 1989-03-15

MES上で計画問題向きの機能を開発した。この機能は、MESに備わっている推論制御機能、ルールシステム、スキーマシステムなどの諸機能によって実現されている。このようにMESの汎用シェル機能を組み合わせて利用する方法で、MES上にドメイン固有の機能を実現し、ドメインシェルを構築できる。 本稿では、ドメインシェルの考え方を示したのち、今回MES上で開発した1つの計画問題向き機能の概要と、そのMES上での実現方法を述べる。そして、最後にドメインシェルのインタフェースについて触れる。
著者
宮部 義幸 青柳 早苗 吉田 純 石川 幹人 中瀬 義盛 鷺島 敬之
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.67(1986-CG-023), pp.1-8, 1986-10-04

画像生成用高速コンピュータMCを用いた放送用文字図形生成システムについて述べる。本システムの特長は放送用として十分に用いることのできる高品質文字が生成できること、2次元アニメーションが実時間で実現できることである。文字生成は対話的フォント作成の容易さを考慮した骨格ストローク方式を採用している。又、高密度フレームメモリと2次元フィルタを用いてジャギー、フリッカを除去した高品質な文字図形を表示することができる。更に、MCと塗り潰しハードウェア、線描画ハードウェアによる高速描画を実現しており、ムーブ、ズーム、ロール、円グラフ等の2次元アニメーションが可能である。
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.81-84, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
9

本稿では,疑似科学的言説に対する消費者向け教材開発のガイドラインの作成過程を報告している.疑似科学の問題が深刻化している社会的状況に対して,消費者教育などの関連分野における既存の教材ではその対応が十分でなく,既存の教材では一般消費者が疑似科学の判定を行うには不十分である(ES0.11,95%CI[-0.21, 0.44]).そうした現状を打破するために本研究では,疑似科学に対する消費者向け教材開発のガイドラインの提案を目的として,関連領域における既存のガイドラインおよび筆者らが運営する「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」の実践よって生じた課題から,新規ガイドラインの具体的観点を抽出した.作成したガイドラインは試験的なものであるため,より厳密化するための方策を講じる必要がある.
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.5-8, 2018

<p>たとえばPISA(OECD 生徒の学習到達度調査)では,生徒が習得を目指す科学的リテラシーに関して,科学・技術に関する議論に積極的に参加できる態度の形成が望ましいとしている.また,議論を建設的に行うために,誤った論法=誤謬に陥らないようにすることが重要である.そこで,筆者らが構築・運営している「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」におけるコメントを事例とし,科学が関与する議論においてどのような誤謬がみられるかについて分析した.結果,議論を閲覧する第三者に向けて自身の主張の正当性を演出するような誤謬が多くみられた.これを,現代社会におけるネット上での議論に特有の問題として位置づけ,こうした方面を重点的に学習する教材開発を目指している.<tt> </tt></p>
著者
清水 武 石川 幹人
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.5-16, 2012-03-01

本研究では、乱数生成器(REG/RNG)によるフィールドRNG実験を実施し、フィールド意識と非意図的PKが、事前に記録された物理乱数をターゲットにした場合に、過去遡及的な影響を及ぼし、偏りを与える可能性を検討した。実験者は、日本のプロ野球の試合が開催された時間に8回、野球場にエントリーした。事前記録された複数の乱数ターゲットがノートブックPCに提示され、同様に物理乱数もリアルタイムに生成された。実験の結果、残念ながら事前記録のターゲットに対して、過去遡及的な効果はみられず、リアルタイムに生成した物理乱数においても偏りが得られなかった。最後に、フィールド意識に関連した今後の課題が議論された。