著者
後藤 玲子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.135-146, 2017

<p> 本稿の目的は,福祉における「情報の壁」,すなわち,知らされないことによる制度へのアクセス障害の実態と原因を一自治体の事例調査によって探索的に解明することである。調査対象は介護福祉及び児童福祉に関する自治体広報で,自治体職員への書面調査及び面接調査並びに自治体ホームページ調査により,住民ニーズが大きいのに自治体ホームページで容易には見つけられない福祉情報が多いこと,自治体職員は広報内容の不十分さではなく広報媒体の不十分さを問題視する傾向にあること等が分かった。その原因は,住民の情報ニーズと広報実態とのギャップを組織的にチェックし改善する仕組みがないこと,及び,担当職員の認知バイアスゆえに現状維持が優先されたり手段の目的化が生じてしまうことにある可能性が示唆された。当該ギャップの自覚を促し,広報内容を系統的に改善するための組織体制を構築することが必要だと考えられる。</p>
著者
山村 りつ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.116-126, 2012-01-20 (Released:2018-02-01)

障害権利条約への署名以降,わが国でもその批准に向けた議論が活発になり,それに伴って同条約に規定される「合理的配慮:Reasonable Accommodation」に注目が集まっている。条約の批准のためには,この合理的配慮について,何が(どこまでが)合理的な配慮であるのかという基準を示すことが不可欠となる。また,合理的とされる配慮が障害特性によって異なると考えられることから,その基準の設定には障害への特性を考慮することが求められる。そこで本稿では,合理的配慮の課題が表出される場であり,また判例の積み重ねによって合理的配慮の基準を構築していく手段でもある,アメリカの合理的配慮に関する裁判事例のレビューと分析から,精神障害特性のためにどのような合理的配慮が必要であり,その規定の実効力をもった運用においてどのような課題があるのかを明らかにしている。
著者
早川 佐知子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.111-126, 2016

<p> 本論文の目的は,EU諸国において,グローバル枠組み協定が形作られた背景と意義を明らかにすることである。その手段として,締結企業の1つであるVolks Wagen社を採りあげ,同社のグローバル枠組み協定への,また,CSRへの取り組みを紹介し,コーポラティズムとの関係を考えてゆきたい。 はじめに,EU諸国のCSRの特徴,グローバル枠組み協定が生まれた背景を明らかにすることにより,これがヨーロッパで生まれた必然性を論ずることができるであろう。そして,グローバル枠組み協定のもつ意義を,サプライヤー・マネジメントに焦点を当てながら,明らかにする。グローバル枠組み協定はもともと,途上国の下請け企業の労働者を保護することを目的として,ヨーロッパのグローバルカンパニーと労働組合が声をあげてつくったものである。そのような趣旨に立ち返り,サプライヤーの労働者を保護するために,自動車組み立て企業がどのような策を講じているのかを見てゆきたい。</p>
著者
南雲 智映 小沼 三智子 梅崎 修
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.94-106, 2014

本稿では,製薬会社の研究開発部門におけるメンタルヘルス不調からの職場復帰の成否に影響を与える要因について,復職者の上司および復帰者本人に対し聞き取り調査を行った。同じ会社の同じ部門内での復職事例を比較検討したことが本稿の特徴である。明らかになったことは以下の通りである。第一に復職の成否は(仕事の質が)易しい仕事から,やや難しい仕事を経て,難しい仕事に移行しているかどうかにかかっていた。メンタルヘルス不調者の復職プランを考える場合には,仕事の量だけでなく仕事の質を考慮して配分する必要がある。第二に,休職前の職場でやや難しい仕事を切り出せない場合があるが,復職成功事例では上司が復職者を他の部に異動させていた。一方,失敗事例ではこのような場合でも上司が異動させる措置をとっていなかった。第三に復職してすぐのタイミングで短時間勤務を行ったかどうかは,最終的な復職の成功に必ずしもつながっていなかった。
著者
江本 純子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.92-105, 2017-03-10 (Released:2019-04-15)
参考文献数
28

本稿は,障害者雇用の進むべき方向性の再考,実証を目的とする。 障害者雇用政策は,2000年前後から,関連法・制度改正を重ね,雇用の量的拡大を図ってきた。2013年の法改正では,障害者権利条約に伴い,質的にも拡充を図っており,障害者雇用政策は,大きな転換点にあるが,質の保証は,十分とはいえない。なぜなら,障害者雇用の量と質を拡充するには,当該障害者のみならず,すべての人に有益な社会,共生社会を目指す必要がある。 筆者は,障害者雇用がディーセントワークの実現につながると考え,職場における効用を調査した。結果以下3点が明確になった。第1に,障害者雇用の効用は,仕事の役割分担から,新規事業開拓までさまざまある,第2に,効用をもたらすためには,支援機関・制度の活用と障害者雇用に関する発想転換が重要である。第3に,障害者雇用促進には,個人から政策レベルまで一貫した制度が必要である。本稿は,この調査結果をもとに報告する。
著者
赤堀 正成
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.95-107, 2018

<p> フランスでは1968年5月のいわゆる「五月革命」を経て,ようやく企業内における労働組合活動が法認された。とくにフランス労働総同盟(以下,CGT)は第二次世界大戦後間もなくから企業内における労働組合活動の自由を強く要求してきた経緯があり,企業別・事業所組織を単位組合(サンディカ:syndicat)として位置付け,サンディカの主体性のために「分権化」を基調としている。 このような点に注目すれば,CGTの組織は,企業別労働組合を基本単位とする日本の労働組合組織とよく似ているように見えるが,その行動様式や在り様はかなり異なり,CGTは職場と地域において戦闘的な運動を展開することでよく知られている。本稿では企業別労働組合を基本単位としながらも日仏に見られるような対照的な労働組合運動が現れる理由をCGTの組合費の分配を含む組織構造の面から考える。</p>
著者
三原 岳
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.53-62, 2017-11-10 (Released:2019-11-11)
参考文献数
12

日本の医療保険制度は被用者保険(健康保険組合,協会けんぽ,共済組合),地域保険(市町村国民健康保険,後期高齢者医療制度)に分立しており,被用者保険と市町村国保の間で保険料格差が大きい。これは会社を退職後に被用者保険を脱退した高齢者が市町村国民健康保険に流入しているためである。さらに,市町村国保は被用者保険から漏れる非正規雇用の受け皿にもなっており,その財政は恒常的な赤字が続いている。 保険料賦課の仕組みで見ると,被用者保険は所得に応じた応能負担だが,地域保険は応能負担のほか,利益に応じた応益負担も組み合わせており,市町村国保では低所得者対策が課題となっている。一方,財政が豊かな健保組合も高齢者医療費に関する財政調整で財政が悪化している。こうした論点を社会保険方式の原則に沿って検討するとともに,地域単位での一元化など制度改革の方向性を検討する。
著者
若森 みどり
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.29-45, 2015-03-30 (Released:2018-02-01)

20世紀の危機の時代を生きた経済学者,ポランニー,ケインズ,ペヴァリッジ,ラーナー,ミーゼス,ノイラート,ハイエク,ロビンズらにとって,大恐慌やファシズムや世界戦争といった自由主義の危機と資本主義システムの持つ悪弊(通貨の不安定化,緊縮財政,増大する格差,大量失業,不安定な就労形態)の諸問題に正面から向き合う課題は,共通していた。これらの点を踏まえて本稿では,20世紀が経験した平和と自由と民主主義の危機の解釈をめぐって争点となる,ポランニーの「社会的保護」の考え方を明らかにする。そして,市場社会における制約された社会的保護とその可能性に照明を当てることによって,二重運動の思想的次元を問う。最後に1920年代の社会民主党市政下のウィーンに思想的起源があるポランニーの「社会的自由」の概念に立ち返りつつ,『大転換』最終章「複雑な社会における自由」の諸論点を検討し,「福祉国家と自由」の問題圏を考察する。
著者
池上 重弘
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.57-68, 2016 (Released:2018-06-11)
参考文献数
30

浜松市では輸送機器関連の製造業現場を中心に外国人労働者,特にブラジル人が数多く就労している。本稿ではまず,2006年と2010年の浜松市の外国人調査に基づき,労働市場への組み込みの実態と問題点を指摘した。次に浜松市における多文化共生施策の展開を,3人の市長の時代に応じて「黎明」「本格展開」「発展的継承」と性格づけてまとめた。浜松においては,行政,市教委,国際交流協会,NPO,大学等,多様なアクターのゆるやかな連携とNPO活動の層の厚さが強みである。一方,生活レベルで外国人と接している地縁団体(自治会)や外国人を雇用したり外国人が従業している企業の関与が不足している点と,外国人当事者団体間の連携不足が弱みである。一般市民の間に認められるゼノフォビア(外国人嫌い)と外国人の不安定就労は多文化共生に向けた脅威と言える。しかし,移住者の第二世代が受け入れ社会と外国人をつなぐ存在となりはじめている点は大きな機会である。
著者
中尾 友紀
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.141-152, 2016

本稿の目的は,労働者年金保険法案の第76回帝国議会への提出そのものを当時の社会情勢や,それを受けた議会や政府の動きのなかに位置づけて把握することで状況を描き出し,同法案提出の経緯を明らかにすることである。その際に用いたのは新聞記事,帝国議会議事録,国立公文書館所蔵の行政文書等の一次資料である。その結果,次の3つが明らかとなった。第1に議会を短縮するために,政府は同法案を一旦提出未定としていた。つまり,同法案の提出は,政府全体から戦時体制強化のために要請されたのではなかった。第2に,提出には大蔵省,財界,軍部,商工大臣等の閣僚が反対していた。しかし,保険料負担の過重に反対した財界を除き,軍部や閣僚の反対は速やかに議事運営できなくなるからであり,同法案そのものへの反対ではなかった。第3に,同法案の提出は,閣僚らの反対で閣議を通らなかったにもかかわらず,なお諦めない厚生省によって遂行されていた。
著者
伊藤 セツ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.1-3, 2011
著者
鬼丸 朋子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.93-105, 2015-12-25 (Released:2018-02-01)

1990年代初めから,日本企業は,成果主義人事・賃金制度を導入し始めた。これらの制度改革は,労働市場改革と年功賃金の見直しを促進しようとするものであった。とはいえ,成果主義へ批判が高まったために,これらの試みは必ずしもうまくいかなかった。例えば,日本型年俸制に典型的にみられたように,成果主義人事・賃金制度は,修正を余儀なくされたのである。試行錯誤の結果,近年,日本企業は役割給・成果給の導入を進めている。本稿では,成果主義人事・賃金制度に関するいくつかの先行研究を紹介し,今後の日本企業の人事・賃金制度のあり方に関する研究の発展への示唆を得ようとするものである。
著者
阿部 彩 上枝 朱美
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.67-82, 2014-09-10 (Released:2018-02-01)
被引用文献数
1

本稿は,「最低限必要な住まい」の広さや設備といった具体的な「質」について,三つの調査((1)「2011年社会的必需品調査」,(2)ミニマム・インカム・スタンダード法(MIS法)による最低生活費の推計.(3)「最低限必要な住まいに関する調査」)により明らかにしようとしたものである。三つに共通するのは,どれも,一般市民に許容範囲の「最低限の住まい」とはどのような広さや間取りであり,どのような設備が備わっているべきか,また,家賃は収入のどれくらいの割合に収まるべきかという質問を投げかけ,社会規範としての最低生活の住まいの姿を明らかにしようとした点である。これを国土交通省による最低居住基準と比較することにより,求められる住まいの具体像に接近することが可能となった。
著者
稗田 健志
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.28-40, 2015-01-25 (Released:2018-02-01)

20世紀末辺りに社会政策の一つの転換点があったことは,多くの研究者に共有された認識であろう。しかしながら,そうした変化の内実をどのように特徴付ければよいかという問いに対しては,いまだ定まった解はない。上述の社会政策の変化を「新自由主義」の発露とみる論者は,社会給付における就労要件の強化や給付条件の厳格化といったワークフェア的側面を取り上げ,そこに資本側の労働者に対する市場を通じた規律の強化をみる。しかし,近年の社会政策の変化はそうした労働規律の強化にとどまらない。ドイツのハルツ改革やフランスのRSAにみられるように,賃労働によらない社会的包摂が進められているという側面も存在する。これをとらえて高田[2012]は「非能力主義的平等主義」と呼ぶ。本報告はこの二つの見方-「新自由主義」と「非能力主義的平等主義」-のどちらが妥当であるか,ルクセンブルグ家計調査(LIS)のマイクロデータの分析から答えることを試みる。具体的には,1980年代から2000年代半ばまでのスウェーデン,オランダ,ドイツ,フランス,イギリス,イタリアという欧州6ヶ国における家計データを分析し,「労働人口にしめる非就業者の割合」や「非就業者が受給する社会保障プログラムの所得代替率」といった指標の時系列での変化をみていく。
著者
丁 智恵
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.79-89, 2016-03-31

戦後半世紀ものあいだ,冷戦構造が保護幕となって,アジア・太平洋戦争の被害者の声が届かないまま日本人の集合的記憶は形成された。戦争の加害の記憶は忘却され,長いあいた「戦後」が続いたが,90年代にはこの意識は大きく変化した。1989年には昭和天皇が死去,またベルリンの壁が崩壊し,冷戦時代は終った。それまで冷戦構造のもと強権体制にあったアジアの国々が民主化し始め,アジア・太平洋戦争の個人被害の本格的な究明が始まった。この時代に,テレビをはじめとするマス・メディアにおいて,アジア・太平洋戦争における日本の加害について追究する番組が活発に作られ,新たな集合的記憶を形作っていった。本論文では,日韓の戦後補償運動のなかでも今回はとくにBC級戦犯の問題に焦点を当て,この問題が活発に議論された90年代を中心に,テレビや記録映画などの映像アーカイブを整備し,目録を作成し,内容を検討することにより,これまで見えなかった戦後補償運動史を再検証する。
著者
猪飼 周平
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.21-38, 2011-03-20 (Released:2018-02-01)

本稿の課題は,猪飼[2010]において提示された「病院の世紀の理論」から,次代のヘルスケアと目される地域包括ケアシステムに関する社会理論を展望することである。本稿では,現在生じている健康概念の転換が,「医学モデル」から「生活モデル」への転換として生じていることを踏まえ,次の点を指摘した。第1に,健康概念の転換に適合的なヘルスケアは,より包括的かつ地域的であるという意味において地域包括ケアシステムを指向すること,第2に,健康概念の転換が,過去30年間にわたり社会福祉に広範に生じている生活支援の作法の転換を背景としていると考えられること,第3に,地域包括ケアシステムの構築に際しては,従来のヘルスケアとは質的に異なる,専門職の分業,社会関係資本の構築,コスト増大への対応等に関する課題の解決が必要になることである。
著者
池上 重弘
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.57-68, 2016

<p> 浜松市では輸送機器関連の製造業現場を中心に外国人労働者,特にブラジル人が数多く就労している。本稿ではまず,2006年と2010年の浜松市の外国人調査に基づき,労働市場への組み込みの実態と問題点を指摘した。次に浜松市における多文化共生施策の展開を,3人の市長の時代に応じて「黎明」「本格展開」「発展的継承」と性格づけてまとめた。浜松においては,行政,市教委,国際交流協会,NPO,大学等,多様なアクターのゆるやかな連携とNPO活動の層の厚さが強みである。一方,生活レベルで外国人と接している地縁団体(自治会)や外国人を雇用したり外国人が従業している企業の関与が不足している点と,外国人当事者団体間の連携不足が弱みである。一般市民の間に認められるゼノフォビア(外国人嫌い)と外国人の不安定就労は多文化共生に向けた脅威と言える。しかし,移住者の第二世代が受け入れ社会と外国人をつなぐ存在となりはじめている点は大きな機会である。</p>
著者
堅田 香緒里
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.85-96, 2010-12-20 (Released:2018-02-01)
被引用文献数
2

ベーシックインカム(以下,BI)をめぐる議論は近年盛んになりつつあるが,その多くは未だにジェンダーに無自覚だと指摘される。他方でフェミニズムの側も,BIを「家事労働への支払い」と綾小化して捉え,さほど検討しないまま批判的に捉えている向きが多い。こうした事情を反映してか,BIとフェミニズムの交差はこれまであまり論じられてこなかった。その一つの理由に,「口止め料か,解放料か」と言われるような,BIの女にとっての両義性を挙げることができる。それは,性別分業,自律的な所得保障へのアクセス権,女の劣等なシティズンシップ等,多岐にわたって論じられてきた。本稿では,これら多岐にわたる論点を整理し,BIとフェミニズムという二つの主張が生産的に交差していくための予備的考察を提出している。とりわけ,性別分業に対するBIの含意を,BIの類似政策であるケア提供者手当および参加所得との対比において明らかにした。