- 著者
-
福島 順子
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.1, pp.21-27, 2011 (Released:2017-02-16)
- 参考文献数
- 13
自閉症スペクトラム障害(ASD)では非言語性対人的相互性の障害の基礎にある脳機能として表情認知の障害が注目されている。本研究は ASD における表情認知の特徴を明らかにする目的で,表情認知課題遂行中の大脳皮質活動を fMRI で調べた。ASD 群と定型発達者群各 13 名に,視覚刺激として happy(H),anger(A),sad(S),neutral(N)の 4 種類の表情からなる顔写真を用い,課題遂行中に撮像を行い SPM8 で解析した。MarsBar を用いて左右紡錘状回,左右ミラーニューロン(MN)領域,補足運動野,前部帯状回,左頭頂間溝,右島の 8 ヵ所の関心領域(ROI)を設定し,各表情の偏回帰係数を ROI 毎の ANOVA により検定し,ASD 群で AQ 値と各表情の偏回帰係数の相関を ROI 毎に求めた。ANOVA では右 MN 領域で群×表情の交互作用を認め,2 群間での有意差のあった領域は,右紡錘状回(H, S, N)と右 MN(A)であった。AQ 値と各表情の偏回帰係数では右 MN 領域においてH と N で有意な負の相関を示した。これらの結果は表情認知に際して ASD 者は定型発達者とは異なる皮質活動を右 MN 領域で行っていることを示唆し,表情に対する情報処理に違いがあることを示している。