- 著者
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山口 博明
- 出版者
- 一般社団法人 日本アレルギー学会
- 雑誌
- アレルギー
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.4, pp.571-581, 1993
- 被引用文献数
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10
昭和42年 (1967) より昭和62年 (1987) までの21年間に, アレルギー疾患を持って九段坂病院小児科外来を受診及び入院した2157名の患児を対象として, 特異抗体を皮内反応及びRASTによって測定し, 年次推移, 性別, アレルギー疾患別, 重症度別に比較した。1) 皮内反応の陽性率が増加したのは, 家塵とスギであった。真菌類では昭和40年代から50年代前半に一時的な増加がみられた。2) 陽性率に男女差はみられなかった。3) アレルギー疾患別の検討では, 家塵で皮内反応とRASTとも喘息単独例より喘息に鼻炎を合併した症例に陽性率が高かった。4) 重症度分類では, 皮内反応で家塵, 真菌類, スギ, プタクサ, ネコ, 絹, ソバガラで重症ほど皮内反応の陽性率が高値を示した。5) 総IgE値が高いほど家塵, ダニ, カンジダ, スギの皮内反応の陽性率が高値を示した。近年のアレルギー疾患の増加は, 家塵及びスギ花粉などの皮内反応の陽性率が年次的に上昇していることからも裏づけられた。その原因として, 東京都の新築された非木造家屋が昭和44年以降に木造の2倍に増加したことなどの住宅構造の変化, また高層住宅が昭和40年初期に比べ50年以降に3倍以上に増加し, この生活環境の著しい変化が, 住居内のダニ数の増加を促し, また, スギ林の植林の増加による花粉の飛散数が上昇に加え, 大気汚染などが影響しているものと推測された。