著者
高橋 由利子 市川 誠一 相原 雄幸 横田 俊平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.26-33, 1998
被引用文献数
6

そばアレルギーは蕁麻疹, 喘鳴, 呼吸困難などアナフィラキシー型の反応を呈する頻度が高く, 注意深い対応が必要である疾患であるが, その羅患率は明らかではない.今回横浜市の全小学校341校の養護教諭にアンケート調査を行い, 回答のあった166校, 92680名の児童について, 学童期のそばアレルギー羅患状況を検討した.同時に調査したアレルギー疾患の羅患率は, 気管支喘息5.6%, アトピー性皮膚炎4.2%, アレルギー性鼻炎3.1%, アレルギー性結膜炎1.6%, 食物アレルギー1.3%であった.これに対しそばアレルギー児童は男子140名, 女子54名, 計194名で, 羅患率は0.22%であった.症状は蕁麻疹が最も頻度が高く(37.3%), ついで皮膚〓痒感(33.3%), 喘鳴(26.5%)で, アナフィラキシーショックは4名(3.9%)が経験しており, 卵・牛乳アレルギーより高率であった.また, 学校給食で7名, 校外活動で1名の児童がそばアレルギー症状の出現を経験していた.養護教諭を中心とした小学校児童のアレルギー歴の把握が積極的に実施されている実態が明らかになり, これによりそばアレルギーは稀な疾患では無いことが明らかになった.学校生活においても十分な予防対策を講じる必要がある.
著者
藤森 勝也 鈴木 栄一 荒川 正昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.420-425, 1997
被引用文献数
8

postinfectious chronic cough, すなわちかぜ症候群後慢性咳漱の報告は, 欧米では散見されるが, 本邦では少ない。本症の診断基準 (アレルギー44, 1418, 1995) に合致する22例の病態と治療成績を検討した。全例非喫煙者で, ACE阻害薬を内服せず, アトピー歴がない症例とした。検討対象は, 男4例, 女18例, 年齢中央値は65歳であった。胸部単純X線写真, 呼吸機能検査, 末梢血好酸球数, 血清IgE値, 肺炎マイコプラズマ抗体価, 10例で得られた喀痰検査, 2例で実施した気管支粘膜生検像のいずれにも異常所見を認めなかった。20例で咳日記を用いて, 咳漱の治療経過を評価した。臭化水素酸デキストロメトルファン (D) とオキサトミド (O) による治療で10例が軽快した。1例は脱落例で, 残り9例中, 3例は麦門冬湯 (B) 単独で, 4例はD+O+Bで, 2例はD+O+B+塩酸オザグレルで軽快した。本症は日常診療において重要であり, 標準治療の確立が必要であろう。
著者
林田 道昭 土居 悟 井上 寿茂 高松 勇 豊島 協一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-8, 1993
被引用文献数
8

DSCG吸入やテオフィリンRTC療法でコントロールできない6歳以上の慢性中〜重症喘息児78例に対し, 平均4.2±2.4年 (0.5〜10年) 間BDI療法を行った。有効性は1年後61.1%, 3年後89.5%と経年的に増加した。5年以上の長期投与で身長や副腎皮質機能 (早朝コーチゾール, rapid ACTHテスト) への抑制はみられなかった。しかし, 小児への安全性は, まだ確立されたとはいえない。さらに, 無効例や導入初期の喘息悪化による死亡例がみられ, 更なる治療法の開発が必要である。
著者
近藤 元治 池崎 稔 今西 仁 西垣 逸郎 細川 計明 増田 正典
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.519-524,539, 1976
被引用文献数
1

慢性肝炎および肝硬変患者につき, 低温で分離した血清とヘパリン血漿の補体価を検討し, 120名中8名に血清補体の著明な低下と血漿補体は正常であるという補体の解離現象を認めた.これは患者血清を37℃で分離の後0-11℃に移すと補体の低下がみられることから, 血液凝固に際して現れた因子が, おそらくproteolyticな作用で低温で補体のclassical pathwayを活性化したと考えられた.この現象は, Gjφnnaessの報告したVII因子のcold activationと類似した現象であるが, Trasylol, SBTIが補体の活性化を防止し得なかった点で多少異なるようである.またplasminの関与は, trans-AMCHAがほとんど効果を示さないことから否定的である.vitamin Eおよびprednisoloneに効果がみられたことは, その機序は不明であるが, 今後の研究の方向づけに大いに重要であると考えられた.
著者
中沢 次夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.424-427, 1984
被引用文献数
1

副腎皮膚ステロイドの前投与は遅発性喘息(LAR)の発現を抑止しうる.この事実はLARの発生機序に何らかのステロイド不全の依存を示唆する.今回はそれを解明する第一歩として喘息患者にアレルゲン吸入試験を行い, その前後の血漿コーチゾル値の変動を観察した.1.LARを呈した群のコーチゾル値は, 前値の9.22±2.96μg/dlから時間の経過とともに低下し, LAR発現時には2.76±0.42μg/dlと著明に低下した.この低下は日内変動域をこえていた.2.DARを呈した群では, 前値9.10±1.00μg/dlがIAR発現時に11.66±2.42μgと上昇し, その後低下した.そしてLAR発現時には4.23±1.45μgとやはり有意に低下した.3.IARを呈した群では, IAR発現時にコーチゾル値は上昇した.その後, 時間の経過とともに漸減傾向がみられたが, その減少は日内変動域内であった.以上の事実は, 一部のLARがおそらくはステロイドの合成あるいはregulationの一時的な不全状態に起因する可能性が想定される.
著者
楠 隆 是松 聖悟 中畑 龍俊 細井 進
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.15-19, 2002
被引用文献数
7

(目的)近年増加しているとされる学童期スギ花粉症(cedar pollinosis, CP)の実態を, 大規模疫学調査により明らかにする.(方法)京都・滋賀地域の小・中学校に通う生徒56,108人を対象として厚生省研究班の作成したアレルギー疾患疫学調査票を配布し, 回収し得た50,086人(回収率89.3%)のデータを基に解析した.(結果と考察)学童期のCP有症率は全体で5.2%となり, 年齢と共に上昇する傾向があった.誕生季節別の検討では, 秋生まれの児にCP有症率が多い傾向を認めた.農村部の多い京都府下北部地域と都市部の多い南部地域におけるCP有症率の比較を行うと, 明らかに南部地域で高い傾向を認め, 大気汚染をはじめとする都市環境がCP発症に影響を与えている可能性が示唆された.アトピー性皮膚炎及び喘息の有症者につき, 合併するCPの有無による重症度の差を見ると, アトピー性皮膚炎においてのみCP合併例で有意に重症例が多く, CP又はスギ花粉感作がアトピー性皮膚炎の病態に影響を与える可能性が示唆された.CPは, 従来小児期のアレルギー疾患としては必ずしも充分な検討がされて来なかったが, 今回の調査結果を踏まえて今後更に検討を重ねていく必要があると思われる.
著者
坂本 公也 永田 真 保谷 功 井上 憲一 木内 英則 坂本 芳雄 山本 恵一郎 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.840-845, 1993

十分量のステロイドを含む薬物療法によっても鎮静し得ず, therapeutic awakeningを試みることにより改善が得られた気管支喘息の1例を経験したので報告する。症例は33歳の女性で17歳発症の気管支喘息である。重積発作のため近医へ入院したが, 症状の改善が得られず当科へ転送となった。種々の治療により喘息症状の軽快が得られ, 順調に経過していたが, 再度早朝から始まる喘息発作が頻発するようになった。就寝前の気管支拡張剤およびプレドニゾロンの十分量の投与等を行ったが, 喘息発作の改善は得られなかった。therapeutic awakening, すなわち患者を午前3時に治療的に静かに覚醒させサルブタモール2.5mgの吸入投与を行ったところ, 自覚症状および理学的所見の速やかかつ著明な改善が得られた。治療抵抗性のmorning dippingに対して, therapeutic awakeningは試みる価値のある治療手段の1つであると考えられた。
著者
国府 肇
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.140-154, 1987

非発作時の気管支喘息患児にアストグラフを用いてメサコリン吸入テストを行った際, 誘発されているにかかわらず呼吸抵抗(Rrs)曲線が下降する現象を17%の症例に認めた.この原因を追求するため, Rrsの構成要素である口腔内圧(P)と気流速度(V)の両波について解析したところ, Rrs下降群では負荷後両波の位相差が大であったため, Pは小さな値をとり, ΔPao/ΔVmax=Rrsは小となることによると思われた.また一方P-Vリサージュの解析からは, Rrs下降群ではメサコリン吸入後のリサージュ傾斜角が大であったが, 吸入前の傾斜角もすでに高値をとっていた.これは患児の吸入前の%FEV_1が44.3%と低値で, また吸入前Rrsが4.8cmH_2O/secと高値であったことと一致していた.以上のことより, 無発作にあると思われていてもかなりの気道収縮状態にある患児に負荷をかけた場合に, PとV間の大きな位相差がさらに大きくなり, そのことがRrs下降の一因と考えられた.生体側における他の種々の要因, 例えば披検児の呼吸パターン, 胸廓, 末梢気道閉塞およびair trappingの有無などは, Rrs下降現象との間に一定の関係を見いだせず, これらの関与は少ないものと考えられた.
著者
谷崎 勝朗 駒越 春樹 周藤 真康 大谷 純 多田 慎也 高橋 清 木村 郁郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.60-66, 1986

抗原およびcomp.48/80刺激時のラット腹腔肥満細胞の ^<45>Ca uptake, およびヒスタミン遊離に対するtranilastの抑制効果について検討を加えた.1.肥満細胞の^<45>Ca uptakeおよびヒスタミン遊離に対するtranilastの抑制効果は, preincubation time20分で最高となり, 以後preincubation timeが長くなるにつれて減弱する傾向がみられた.2.抗原刺激による肥満細胞の ^<45>Ca uptakeおよびヒスタミン遊離に対して, tranilastは濃度依存性の抑制効果を示した.その最高% inhibitonは ^<45>Ca uptakeに対しては42.0±3.3%, ヒスタミン遊離に対しては50.4%±1.9%であった.また抗原とphosphatidylserine(PS)の同時刺激時には, ^<45>Ca uptakeに対する抑制効果は減弱傾向を示したが, ヒスタミン遊離に対する効果はPS添加による影響をあまり受けなかった.3.comp.48/80刺激による肥満細胞の ^<45>Ca uptakeおよびヒスタミン遊離に対するtranilastの抑制効果は, 抗原刺激時に比べかなり弱いことが示された.
著者
平 英影 寺西 秀豊 劔田 幸子 槻 陽一郎 清水 規矩雄 河合 康守
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.1200-1209, 1991
被引用文献数
17

富山県内のスギ林の分布及び雄花の着花状況を観察しスギ空中花粉調査結果との関連性について検討した結果, 次のような結論を得た. 1. 富山県の平野部におけるスギ空中花粉とその飛散パターンは30年生以上のスギ林の標高別面積, 雄花の着花状況, 花粉飛散開始日, 気象条件によってよく説明できる. 2. 富山県の平野部におけるスギ花粉の総飛散数及び最大ピークは標高200m以下の地帯に分布するスギ林から飛散する花粉によって大きく影響されていた. 3. 観測点から20〜30kmの距離に分布しているスギ天然林からの花粉はほとんど観測されなかった. そのため, 観測点から遠くに分布するスギ林ほど観測点の空中花粉に及ぼす影響は小さいものと推定された.
著者
石崎 達 牧野 荘平 荒木 英斉 根本 順吉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.753-759,778, 1974
被引用文献数
4

気管支喘息者に与えて記録させた喘息日記を集計して, 満3年間にわたり毎日の喘息発作出現率をもとめ, この出現率の日変動, 気象要因との相関関係を追跡した.気象要因は気象庁のデータからえた.統計処理の基準には移動15日平均値からの偏差をもとめ, 1SD 以上の差を増加または減少と規定した.気象要因曲線と喘息発作曲線の一致度(上昇, 平, 下降)から, 高気圧下で喘息発作数の増加傾向がみとめられた.喘息発作に関連する天候要因としては晴, 曇, 天候不定(前線通過), 雨と分類するのが重要で, 後2者の場合発作が多発する.その理由を追跡したところ, 寒冷刺激とくにその変化(前日との湿度低下)が重要で, 湿度は補助要因と思われた.これは年間の発作多発月が9月であることと一致する現象である.痰は湿度が高く天候不定, 雨の日, および乾燥日(湿度40%以下)に多発しやすいことがわかった.
著者
井上 洋西 谷 典生 飯島 秀弥 五十嵐 敦 岡田 信司 瀧島 任
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-213, 1993
被引用文献数
4

選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405が, 遅発型喘息反応 (LAR) 時の呼吸抵抗 (respiratory resistanse; Rrs) および気管支肺胞洗浄 (bronchoalveolar lavage; BAL) に与える影響を, Ascaris suum抗原感作モルモットを用いて検討した。呼吸抵抗 (Rrs) は, 30Hzオッシレーション法にて無麻酔下に測定し, 抗原吸入前のRrに対する増加率 (%Rrs) で評価した。抗原吸入2時間後, BAY u 3405 10mg/kgまたは溶媒の0.5%メチルセルロースのみを経口投与した。抗原吸入4および5時間後の%Rrsは, BAY群ではそれぞれ32.5±6.2%, 23.5±5.0%であったのに対し, 対照群ではそれぞれ101.4±27.5%, 77.5±19.9%で4および5時間後ともBAY群が対照群より有意に低値を示した (p<0.05)。抗原吸入4時間後のBALでは対照群とBAY群との間に有意な差は認められなかったが, 吸入6時間後のBAL中総細胞数, 好酸球数およびリンパ球数は, BAY群ではそれぞれ274.9±70.5, 62.5±13.1, 11.3±3.3 (×10^5cells) であったのに対し, 対照群ではそれぞれ491.9±55.1, 198.6±43.9, 32.1±7.3 (×10^5cells) で, いずれもBAY群は対照群より有意に (おのおのp<0.05) 少なかった。抗原吸入4時間後のBAL液中のhistamine (ng/ml), TxB_2 (pg/ml) およびPGD_2 (pg/ml) は増加傾向を示したが, 両群間に有意差はなく, LTC_4は, 両群とも測定限界 (20pg/ml) 以下であった。以上より, 選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405は, LAR時の呼吸抵抗の上昇と気道への炎症細胞浸潤を抑制したものと考えられ, TxA_2がLARの発現に重要な役割をしていることが示唆された。
著者
美田 俊一 小田 成人 足立 満
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.1394-1400, 1995
被引用文献数
4

当科喘息外来通院中の患者90例を対象として, 血中IgE抗体をMAST法, CAP RAST法により測定し, 両者の結果を比較した. さらに, CAP RAST法で陽性, MAST法で陰性であった例について, 吸入誘発試験, 皮内反応およびCAP RAST抑制試験を行った. 両者間の相関はハウスダスト2(r=0.617), コナヒョウヒダニ(r=0.776)およびスギ(r=0.609)で有意な相関が認められた. 一方, 検討した3種の真菌類では両者間に有意な相関は認められなかった. CAP+/MAST一例は, 各々のアレルゲンで1.4〜27.8%であったが, MAST+/CAP一例は0〜2.7%であった. CAP+/MAST一例は, CAP RAST抑制試験, 皮内反応または吸入誘発試験によりIgE抗体の存在が確認された. 以上の結果より, CAP RAST法はMAST法よりも高感度であり, MAST法で病因アレルゲンのスクリーニングを行った際, 陰性であってもアレルギー疾患を疑われる患者において, CAP RAST法等高感度の測定法で再度確認すべきと考えられた.