著者
原田 利宣 田中 良介
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.1-6, 2006-01-31

近年、Webサイトの与えるイメージが、その企業や大学の印象に影響を与えている.そのため、Webサイトに関する研究が多く行われているが、ラフ集合のような非線形的手法を用いたWebサイトの構成要素とイメージ評価項目(魅力度)との関係を分析した事例は未だ少ない.そこで本研究では、デザイン及び情報デザイン分野に属する大学の学科Webサイトをケーススタディとし、ユーザーのサイトに対する価値観と、その構成要素との関係の明確化を目的とする.まず、6対の評価用語を用いて、サンプルWebサイトに対する評価アンケートを行った.次に、評価結果をもとに、重回帰分析を行い、魅力度に影響を与えているイメージ評価項目を明らかにし、被験者を価値観別に5つのクラスターに分類した.さらに、ラフ集合を用い、被験者の各クラスター別に、魅力度に影響を与えている構成要素の組み合わせを抽出した.以上の結果をもとに新規学科サイトを制作し、検証を行った結果、意図通りにイメージと魅力を制御できることが示された.
著者
寺田 英志 高橋 淳也 合原 勝之
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.39-46, 2008-11-30

本研究の目的は,WEBデザインの国籍や文化などによる嗜好の違いを調査し,企業が英語版WEBページを作成する際のデザイン手法を提案することである。文章の違いと,主に配色を中心とするデザインの違いという2つの視点から調査を行った。3つの現状調査とアンケート調査を行った結果から,以下のようなデザイン指針が得られた。文章面からは、「暖昧な表現を避け,具体的な会社紹介をする。」および、「トップページで業務内容が分かるようにする(文章・画像など)。」の2点、デザイン面からは、「日本のWEBページ平均より背景明度,文字との明度差,色差を低くする。」,「日本のWEBページ平均より白いピクセルの比率を少なく,暗いピクセルの比率を多くする。」、および、「明度の高い色同士の配色は避ける。」の3点である。以上の結果を踏まえて,企業の英語版WEBページのデザイン手法を提案する。
著者
鈴木 偵之 石塚 昭彦 中本 和宏 小野 健太 渡邉 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.4_77-4_86, 2013-11-30 (Released:2014-01-25)
参考文献数
20

本研究では子供向けデジタルサイネージのGUIデザインの指標を明らかにした。デジタルサイネージが持つ特徴のうち、大画面を有し、タッチ等によるインタラクションがある点、設置して利用される点を中心に調査を行った。子供の行動把握にはエスノグラフィ(行動観察調査)法を使い、子供特有の特徴を抽出するため、PCリテラシのある年齢(大人)についての比較調査を行った。結果の分析には、行動比較マップを用いた。これは子供と大人の行動を比較するために、子供と大人がとった行動の頻度をそれぞれ集計し、その結果をプロットしたマップである。このマップをもとに子供と大人の行動の共通部分と子供特有の部分について考察を行った。これらの結果、子供特有のデジタルサイネージの利用に関する特徴として、「目標設定」「ボタン等の操作部」「操作に対する満足」に関係する3つの観点にまとめられることが分かった。
著者
益岡 了 材野 博司
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.1-10, 1997-11-30
被引用文献数
7

人間の移動における継起的体験と空間構造との関係に基づいたシークエンスの研究において, どのような行動変化を手がかりに, 実際の空間や景観の変化に伴った行動として認識するのかが問題となる。そこで本報告は, シークエンスにおける短時間の行動や視覚の認知の連続をより正確に把握するために, 心理学などの研究で用いられている特定の装置を改良し, 景観行動の実態を解明することを目的とする。調査の結果, 特定の空間の変化と行動, および生体反応とが対応した関係にあることが明らかになった。また全く同一の空間の歩行であっも, 往路と復路という歩行方向によって行動・反応に違いがあることが分かった。これらのことから, 実際に空間や景観を体験する歩行者の行動や認識を予想することにおいて, 空間を歩行方向に向けて断面図的に解析し, 継起的な歩行者の体験に基づく景観の分析を行う手法の有効性が確認できた。
著者
川上 比奈子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.67-76, 2004-03-31

アイリーン・グレイは、菅原精造から日本漆芸を学び、漆塗り屏風を制作した。建築家に移行した後、住宅「E.1027」において、ジグザグに折れ曲がる窓をデザインし「屏風窓」と名付けた。本稿では、グレイが屏風を建築に展開する契機を探る。彼女の最初の屏風は、伝統的な形式を踏襲した絵画的調度品であったが、やがて漆塗りと屏風の特質によって、立体が浮かび上がって見える幾何学線形の描かれたものが制作される。同時期、屏風に描かれるべき図柄を、多数の小型漆パネルに分解して再構成した屏風が生みだされた。映りこんで見えていただけの立体が、実体として表現されると共に、分解・回転によってできた空隙が屏風の構成要素に加わり、視線も風も遮らないものとなる。空隙は、屏風の既成概念を取り払う切掛けとなり、グレイは、屏風を窓や壁のデザインに展開し、また、新素材の美しさを活用し、住空間に多様性を与えることになった。グレイの屏風は、空間の光や空気を調節するとともに、空間の機能と形も変える変換装置といえる。
著者
伊藤 久美子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.31-38, 2008-11-30
被引用文献数
3 2

色彩好悪と色彩象徴などに関する調査を女子学生対象に'04'05に実施し、筆者の約10年前、同様に実施した結果と比較し、経年変化を検討した。即ち、色彩好悪色、自分に最も似合う(似合わない)と思う服色、色名からの連想語、14個の象徴語(怒り、嫉妬、罪、永遠、幸福、孤独、平静、郷愁、家庭、愛、純潔、夢、不安、恐怖)から連想した色名について調べた。その結果、色彩好悪については、ピンク、青、橙、水色、黄色が最も好かれる色上位5色であり、一方、最も嫌いな色上位5色は、灰色、黄土色、紫、ピンク、赤の順となった。本研究の結果は、色彩好悪はゆるやかに経年変化するが、色彩イメージと色彩象徴はあまり変化しないことを示唆している。
著者
梁 根榮 桐谷 佳惠 玉垣 庸一 赤瀬 達三
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.79-86, 2010-09-30

本研究では,日本に在住している外国人にどのような方法で行政機関から災害の情報提供がなされているのか調査を行った。まず,日本全国都道府県と政令指定都市に対し,質問紙調査を行った。次に,提供されている情報媒体を対象とし,分類,検討を加えた。その結果,災害情報の提供方法としては,大部分の地域で印刷物やホームページを利用して提供していることがわかった。そして,それらは,主に,英語,中国語,韓国語,スペイン語,ポルトカル語に翻訳して情報を提供していた。提供媒体の分類については,最も多く利用されていた印刷物・ホームページを中心に分析を行った。まず,各自治体において印刷物・ホームページによって提供されている災害情報に関する内容の分類およびデザインの分類を行った。分類の結果,帰宅対策はあまり提供されていなかった,避難所については印刷媒体に比べてホームページを利用して情報が提供されていた,デザイン面の分類については,印刷媒体は多言語と文字・イラストでほとんど提供しているが,ホームページでは,言語は1ヵ国語で,テキストのみ提供していることがわかった。
著者
生田目 美紀 北島 宗雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.105-112, 2011-07-31

ウェブは,アクセシビリティ要件を満たしていると同時に,ユーザビリティ要件を満たしている必要がある。しかしながら,これらの二つの要件を同時に満たすようなウェブのデザイン方法が確立されている訳ではない。そこで本研究では,これら2つの要件の両立の可能性について検討するため,「理解可能」「操作効率」をとりあげ,ハイパーリンクというデザイン要素に着目し,視線計測実験を行うことにより実験的に検証した。実験は,2種類のユーザー(テキスト情報処理に優れた被験者群・イメージ情報処理に優れた被験者群)を想定し,3種類のハイパーリンクの表現方法(テキストのみ・イメージのみ・テキスト付きイメージ)を提示して行った。その結果,「テキスト付きイメージ」はユーザー特性に関係なく理解可能であり,操作効率が良いことがわかった。デザイン方法の一例として,アクセシビリティ要件とユーザビリティ要件を両立させるハイパーリンクの情報表現について明らかにする事ができた。
著者
羅 彩雲 宮崎 清 楊 静 植田 憲
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.81-90, 2008-09-30
被引用文献数
2

本稿は、台湾における伝統的な寝台「紅眠床」の制作技術に関する諸特質を、中部地域の職人からの聴き取りを通して明らかにしたものである。また、本稿は、職人からの聴き取りと文献資料との比較・考察を行い、台湾における伝統家具「紅眠床」に関する史料作成を志向したものである。本稿では次のことを明らかにした。(1)「紅眠床」を構成する部材名称は、機能特質を表現しつつも、職人の居住地域によって異なっている。(2)「紅眠床」の用材は時代によって変化するが、とりわけタイワンヒノキが「紅眠床」の歴史と密接に関係していた。(3)「紅眠床」の製造工程は、職人の営業形態によって異なるプロセスになっていた。(4)「紅眠床」の寸法規格は独特な単位に基づいており、職人の居住地により、その演算方法が異なっていた。(5)伝統家具「紅眠床」の制作は、時代とともに分業化が図られ、個々に専門技術を有する職人の連携によってなされるようになった。
著者
梨原 宏 奥田 光子 伊東 隆子 雫石 勝蔵 吉田 旺弘
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.65-74, 1996-09-10
被引用文献数
4

本報告は工業化に導いた木製車いすにおける木質環境が人間の感覚に及ぼす効果について明らかにしている。車いすの心理的イメージ評価から、木製車いすは20代の学生による外観評価では上品で温かく地味で落ち着いたイメージ、施設で介護に携わる使用評価では温かく女性的で健康的イメージと受けとめられている。日常の温度環境のもとの車いすの温度分布計測から、木製フレームは周辺温度変化に緩慢に反応し、金属フレームに見られない保温性をもつことが知られた。強調フィルターを用いた車いすの形態の認知性調査から、木材フレームの素地色は黄色系で反射率が低く、高齢による視力低下でも形態を認知できると推測された。高齢者の色彩の認知調査では寒色系および低彩度の色彩は誤認知をまねき易いことが分かった。以上から木製車いすの素材と色彩選択の設計指針が明確にされた。
著者
日原 広一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.11-18, 2010-01-31

本論は,句作法や映画手法等創作体系において知られるモンタージュに着目。それが「ヒトの心を揺り動かすユニバーサルな法則」に関係するものと考え,そのモデル構築のための定義と構造を提示した。定義において,外延を心の諸機能(主観)であるのに対し,その内包を徹底的客観によって得られる心地よい響き合いとした矛盾の解決には,夏目漱石の主観の徹底的追及の果てに現れる非人情(超客観)という概念を当てた。また,超客観的な心地よい響き合い(ハーモニクス)の解説では,視覚系,聴覚系それぞれの種差といえる色相及び音律の生成アルゴリズムを用いた。そのことから,本論でいうモンタージュとは,その背後にある循環移行性を性質とする体系の作用反作用であるとした。モデルの検証は,ヒトの心を基礎、情緒、理性の3つの機能に大別させ,それぞれに対応したモンタージュ・モデル(ハーモニクス・ホイール)を設定。そこに循環移行性がみられるかどうかの方法でおこなわれた。結果,それぞれに循環移行性をもつモデルをつくることができた。
著者
日野 永一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.89, pp.55-62, 1992-02-01

本稿は,日本における「応用美術」概念成立の歴史的過程を明らかにしたものである。1873年に西欧から美術の概念が導入され,当初明治以前の東洋の概念との間に混乱が生じた。また,1885年頃には,純粋美術と応用美術との区別も知られるようになった。当時日本の工芸品は海外で芸術的に高い評価を受け,また重要な輸出品でもあったことから,国粋主義者たちによって工芸は純粋美術であるとする論が主張され,国際主義者との間に摩擦も生じた。1900年のパリ万国博覧会で,工芸を純粋美術とする国粋主義者の論は覆され,その後純粋美術と応用美術の区別が社会に浸透した。しかし,その区別は差別となり,また美術工芸という独自の分野を生み,影響は現在にまで尾を引いている。
著者
尹 亨建
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.9-14, 1997-05-31

第1報では韓国と日本の両国の伝統工芸品を対象に, 韓・日両国の20代を中心とした若者の美意識を把握するため因子分析を行ない, イメージ構造を明らかにした。第2報では, 韓国と日本の伝統工芸品に分け, 親密度による両国の人のイメージ構造の相違を明らかにした。本報では, 伝統工芸品の造形要素が両国の人のイメージ構造の相違にどのように寄与しているかを調べた。伝統工芸品の造形要素として重要と思われる「色彩」「材料」「形」「模様・装飾」を中心にして比較分析を行なった。「色彩」では, カテゴリー「材料自体の色+別な色」に対して日本人の反応が大きく, 「多彩な原色」「黒色+別の色」においても両国の差がみられた。「材料」については, 金属材料に対して違いが見られ, 日本人は人工的, 派手という評価を示し, 韓国人は, 軽快という評価を与えた。「形」では全般的に韓国人より, 日本人が大きく反応した。「模様・装飾」では, 韓国人より日本人は全体面積に対し模様・装飾の面積比が小さいものに高い評価を与えた。
著者
橋本 創造
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.35-42, 1999-11-30
被引用文献数
1

本研究では, ヘルベルト・W・フランケのコンピュータを使う造形に関わる1962年までの業績を明らかにした。フランケは, 1950年代から, 芸術用のアナログ・コンピュータの開発を始めた。やがて開発したコンピュータで, 回路を選んで適切に組み合わせ, 知的に制御をすることで画像を生成して, オシロスコープなどに出力をした。フランケは, その出力結果を写真撮影した。そして1956年以降, 学術誌や専門誌や展覧会などで発表をした。彼は, それ以前にはなかったような造形に成功し, デザインの発展に貢献した。