著者
庄子 晃子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.55-64, 1998-05-31
被引用文献数
1

ブルーノ・タウト(Bruno Taut, 1880-1938) は, 仙台の商工省工芸指導所で, 1933年11月11日から1934年3月6日まで顧問(嘱託)として指導に当たった。この間の1933年12月15日から2か月弱, タウトは, 東京や京阪地区の伝統ある工房で工芸指導所に適切な工芸品を選択するための旅に出た。その旅先の京都から, 所員斎藤信治に宛てた2通の手紙が今日に残る。それは, 1934年1月8日付の"Brief des Herrn Prof. Taut an den Herrn Saito (タウト教授氏から斎藤氏への手紙)"と, 1934年1月12日付の "Brief an den Harrn Saito (斎藤氏への手紙)" である。翻訳を試みたところ, 前者は斎藤からの手紙に対する返書であり, 工芸指導所の金工部と木工部での規範原型の研究についての助言と工房探訪の若干の報告であることがわかった。後者は, 諸工房の訪問についての詳しい報告であり, タウトが選んだ優良工芸品の数々が記されている。彼が, 伝統ある工房で優良工芸品を選択し収集したのは, 現代の新しい規範原型を創出する基礎は伝統にあることを示すためであったといえる。
著者
井上 拓也 原田 利宣 榎本 雄介 森 典彦
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.11-18, 2002-09-30
被引用文献数
7

商品企画者やデザイナーには,製品の形態要素とイメージとの関係を知識として得たいという要望がある.また,近年,ある結果(例えばイメージ)を成立させるための最も少ないカテゴリー(形態要素)の組み合わせを得ることができるラフ集合(Pawlak,1982)が注目されている.そこで,本研究では自動車のフロントマスクデザインをケーススタディとし,ラフ集合を用いて形態要素とイメージとの関係を明らかにし,デザインコンセプト立案への応用を試みることを目的とした.以下の3つに関して研究を行った.(1)ラフ集合による縮約と数量化理論第II類との推論結果比較を行った.(2)縮約併合アルゴリズムによるデザインシミュレーションを行った.(3)多人数における縮約併合アルゴリズムの開発を行った.その結果,ラフ集合によって得られる縮約やそれら縮約の併合により,デザインコンセプトへ用いることができる知識の獲得が可能であることが考察された.
著者
谷 誉志雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.25-34, 2000-01-31
被引用文献数
1

近代デザインは, 製品の品質やグッド・デザインなどのクオリティを追究することを標準的な規範としてもっている。そのような「近代デザインのクオリティ」とは異なるクオリティを探究しようとする形態論の方向があることを考察する。この報告で注目するのは, デヴィッド・パイとクリストファ・アレグザンダーの形態論である。これらの理論で探究されているクオリティを暫定的に表現すれば, おおまかに「工芸的クオリティ」と性格づけることができる。パイとアレグザンダーの形態論は, どちらも近代デザイン批判の姿勢をとっており, 近代デザインが喪失したクオリティの重大さを理論的に述べることが基本的なテーマのひとつとなっている。形態論の標準的な用語体系の分節を組み替えるという方法によって, クオリティを顕現できるカテゴリーを理論的視野の中心にもってこようとする試みがなされている。パイでは具体的なデザイン論と工芸論の見直しにとどまるが, アレグザンダーでは「クオリティの存在論」といえる, より大胆な転換が試みられている。
著者
森田 昌嗣 曽我部 春香 石橋 伸介 池田 美奈子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.47-54, 2009-05-31
被引用文献数
3

本研究は、技術者やデザイナーなど専門家主体の一元的な評価やエンドユーザーに対して行うマーケティング調査ではなく,実践的に製品開発などの開発に携わる人々が活用できるデザイン評価・診断システムを構築することを目的とする。開発に携わるデザイナーや技術者などを作り手,経営者や営業者などを送り手,エンドユーザーを受け手ととらえ,これら3者のユーザーグループ間に存在すると考えられるデザイン評価のズレを明らかにする。そして,この評価のズレを製品開発に実践的に活かすための運用モデルを構築し,システムとしての確立を目指す。本稿では,この一連の研究の方法を示した上で,グッドデザイン賞表彰制度におけるデザイン評価とユニバーサルデザインに代表されるユーザビリティ評価の関係を整理し,本評価診断システムの位置付けを明確化する。
著者
常見 美紀子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.47-56, 2004-03-31
被引用文献数
2

桑沢洋子は1954年に「桑沢デザイン研究所」を創立した。その創立メンバーの一人、勝見勝は、その前後に「国際デザイン協会」を設立し、日本における1950年から60年代のデザイン運動を牽引した。デザイン運動とは、デザイン教育、デザイン研究、グッドデザイン運動という三つの活動の総体を指す。デザイン教育としては、専門デザイン教育機関としての桑沢デザイン研究所の創立、普通教育としての造形教育を推進するための「造形教育センター」の設立である。デザイン研究としては、「日本デザイン学会」の創立である。グッドデザイン運動としては、一般市民への啓蒙としての銀座松屋における「グッドデザインコーナー」の開設、生活を美しく豊かにするデザインの総合雑誌『リビングデザイン』の発刊である。すなわち、桑沢デザイン研究所は単にデザイン教育機関のみならず、デザイン運動の中で諸活動を有機的に関運づけるデザイン運動体でもあった。
著者
高橋 靖 シャクルトン ジョン
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.71-80, 1999-05-31
被引用文献数
1

本研究は, テレビ視聴者の嗜好に合った番組ジャンルを自動推薦することを目標として, 非線形正準相関分析と年令・性別視聴率分析から年令・性別ならびにテレビ視聴態度・価値観因子のジャンル推薦モデルを導き, 番組・ジャンル推薦機構においてそれを活用する場合の諸問題を考察した。その結果, モデル構築に関する次の指標を得た。1.両モデルを番組・ジャンル推薦機構における汎用知識ベースとして併用することにより効果的なジャンル推薦ができる。2.汎用知識ベースは, 年令・性別の1位から3位までの推薦ジャンル, 並びにテレビ視聴態度・価値観因子の推薦ジャンルのデータを生活場面ごとに持ち, 視聴者の個人プロファイルデータを得て推薦を実行することができる。3.汎用知識ベースと視聴履歴による学習・推薦は, ジャンル推薦において相互補完的な機能を果たす。4.両モデルの優先順位は, 生活場面の特性に応じて選ぶことができる。
著者
新井 竜治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.93-102, 2009-07-31
被引用文献数
3

天童木工の一般家庭用家具シリーズは住宅の室内を総合的に構成するものであった。また官公庁・公共施設・一般企業向け家具シリーズには、日本で最初に開発されたオフィス・システム家具シリーズであるOFgroup-1とその後続シリーズ、図書館用家具・高齢者福祉用家具・ベンチ・テーブル・大会議テーブル等の各シリーズがあった。そして天童木工は1986年から93年まで官公庁・公共施設・一般企業向け家具に特化していた。次に、60年代の天童木工家具デザインコンクールには、その作品の量産化よりも、家具デザイナーに研鑽の場を提供したという意義があった。また天童木工名作家具のデザイナーの中では、特に剣持勇の貢献が大きかった。それから、天童木工は50・60年代にアメリカ、北欧、ブラジルのモダニズムの影響を受けたミッドセンチュリー・モダニズムの家具を製作した。またジャパニーズ・モダニズムの家具も製作した。更に80年代にはポスト・モダニズムの影響を受けた家具を製作した他、構造体の美を追求する後期モダニズムの影響を受けた家具も製作した。
著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.69-78, 2003-11-30

浄法寺漆器は、古くから、青森県との県境に位置する岩手県浄法寺町を中心とする地域でつくられてきた漆器である。かつては、東北地方のなかでは有数の規模の漆器産地にまで発展した。しかし、浄法寺漆器は世界大戦後に衰退し、昭和30年代には消滅してしまった。この産地の壊滅状態は約20年間統いたが、昭和50年代に、浄法寺漆器再興の運動が起こされた。筆者は、浄法寺漆器の復興計画へ参画し、この漆器を現代生活で使用できる日用品として開発を行ってきた。以前につくられていた製品の復活のみならず、現代の日用品として生活様式へ適合させることが大きな課題であった。この課題に対しては、問題を解決するための手法としてのデザインが大きく貢献できると考えられ、漆器製造の技術だけでなく、新たなデザインの作業が総合的な観点から展開された。本稿では、浄法寺漆器のデザイン開発を通して得られた伝統的工芸品とデザインの関係に関する知見について報告する。
著者
翁 群儀 植田 憲 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.35-44, 2006-01-31

本稿は、台湾漆器「蓬莱塗」の意匠特質を調査・研究したものである。「蓬莱塗」は、日本領有時代の台湾において、日本人の漆器制作者であった山中公が、台湾で体験した異国情緒をモチーフとして日本人向けに制作を始めたことを起源とする漆器である。本研究では、台湾漆器の発展史とともに、「蓬莱塗」の位置づけ、ならびに、制作工程、モチーフの調査・分析などを通して、「蓬莱塗」の特徴を明らかにした。「蓬莱塗」の特徴は以下の通りである。(1)地域の実風景をモチーフとした地域性の溢れる絵柄が施されている。(2)原色の多用によって、台湾の活力が表現されている。(3)力強い彫刻によって、台湾の素朴な民風が表現されている。「蓬莱塗」は、今後においても、台湾社会を映し出す漆器デザインとして発展していくことが期待される。また、漆器のみならず、伝統的工芸品産業の発展に向けてデザインにおけるアイデンティティを確立していくことは、今後、台湾のさまざまな分野で検討されるべき重要課題である。
著者
HU Hui-Jiun YEN Jen
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.55-64, 2010
参考文献数
35
被引用文献数
1

As the Internet has already been integrated into human life in 21st century, how to design an easy-to-use Human-Computer Interaction (HCI) has become an important issue. The designer will follow the conceptualization in one's own mind to design system image. What is the mental model of designer toward website construction? We use the Interactive Qualitative Analysis (IQA) approach to conduct a qualitative data-gathering, analysis and examination made by expert participants. The findings show that first, design models among web design team members are in high accord and BD, EC, TP, SA, WP, VD, PM and OM are key influence factors on website construction to be considered. Second, the web design team are analysis-orientated and self actualization-orientated in their mindmap. Third, VD is influenced by WP, TS and PM on website construction.
著者
伊藤 教子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.207-214, 2001-11-30

本研究は, 駅の評価に大きな影響を与えると考えられる「混みあい感」が, どのような要因に影響を受け, 評価にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としたものである。このため, 学生を被験者とし, 4つの都心の駅を対象としたイメージ調査, 及びこのうちの2駅について画像呈示による空間評価実験を行い、分析を行った。その結果, 1)駅のイメージは「人が多い, 混んでいる, 疲れる, 騒々しい」というものであった。また日常的なイメージであるほど良いイメージを持たれており, 親しみやすいイメージであるほど, 総合的な評価が良いことがわかった。2)因子分析により, 「誘引性」「親近性」と考えられる駅のイメージが抽出された。3)数量化1類により, 男女共物理的要因が「混みあい感」に大きな影響を与えており, 参加意向には, 男女共に「混みあい感」とイメージが影響を与えていることが確認された。
著者
近藤 祐一郎 長瀬 公秀 青木 弘行 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.45-52, 1998-09-30
被引用文献数
1

青森県稲垣村をケーススタディとして, 籾殻燻炭を用いた生活排水路の水質浄化実験を行った。実験は中期測定(朝8時と夕4時の1日2回, 10日間連続して測定)と, 短期測定(朝6時から夜10時まで2時間毎に測定)を行った。そして, 籾殻燻炭を設置した上流と下流の水質に対して, 水素イオン指数, 導電率, 濁度, 溶存酸素, 水温, 水深, 流速を測定した。実験の結果, 以下の知見を得た。1)籾殻燻炭を通過した排水は, 魚類が繁殖可能な値まで水素イオン指数が上昇し, 稲が生長可能な値まで溶存酸素が増加することを確認した。 2)籾殻燻炭を設置した区間内で, 従来まで確認することのできなかった水棲生物を確認した。これは, 指標生物学的に排水路の水質が浄化されたと判断することができる。 3)水質浄化活動を住民が目に見える形で行うことによって, 環境美化に発展することを確認した。
著者
野呂田 純一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.17-22, 2009-07-31

幕末、幕府への報告書において、現代とほぼ同じ意味で単語「芸術」を使用したのは南画家渡辺崋山であったが、この報告書は陽の目を見ることはなかった。ペリーの浦賀来航後、幕府は外交文書の翻訳機関として蕃書調所を設立したが、その頭取古賀謹一郎は西洋の言語学、天文、地理、数学、物産学、精錬学、器械学、画学、活字術等を総称して芸術とした。その一方で物産学から活字術までを百工技芸とする者もおり、芸術と技芸は一部重複した概念であった。その後、幕府はフランス万博(1867年)の出品分類等を入手したが、その和訳においてartを絵画、彫刻、建築、版画を意味する芸術と訳す一方で、arts usuelsを日用品の製作技術だけでなく、見世物をも意味する技芸と訳しており、芸術と技芸が重複しないよう訳し分けられていることが判明した。また、Beaux-Artsは「精工」、「細工」と和訳されており、その具体的内容は精密な図柄を持つ工芸品であることが判明した。
著者
広川 美津雄 井上 勝雄 高橋 克実
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.21-28, 2002-11-30
被引用文献数
1

近年、製品デザインの現場やデザインマネジメントの立場から、デザインコンセプト策定の重要性が増大している。本研究は、橋梁という特殊な領域におけるデザインコンセプト策定についての先行研究の考察を基礎に、工業デザインの分野において曖昧に使われてきたデザインコンセプトの内容を明らかにし、工業製品のデザインコンセプト策定の方法に関する提案を行った。策定方法は、まずデザイナーが、製品開発の時系列的視点で製品価値を再構成することによってデザインコンセプトを設定する。次に、現在デザインしようとしている製品に求められる要件のうち、評価を定めたり、合意したりすることが困難な要件に対して、デザインコンセプトによって方向性を示す。このような製品価値主導のデザインコンセプト策定により、製品全体の新しい価値を明確にすることができ、以後に続く設計をリードし、製品開発の全体をコントロールできる。
著者
安井 皓一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.45-50, 2000-01-31

自動車デザインの現場において, CADプロセスが導入されて以来約20年となる。それ以来デザイン創作活動におけるデザイナーのあり方, モデラーのデザイン支援のあり方が大きく変化してきた。本論では, まず自動車デザインにおけるモデラーの歴史を振り返り, CAD導入以降のデザインプロセスから現在のCADデザインプロセスヘの移行を解説する。そして現在の自動車デザインが直面しているCADデザインプロセスにおけるモデラーにかかわる諸問題(時間と工数の問題, 品質の問題, コスト面の問題, マネージメント上の問題, CADモデラーの資質の問題)を論じ, それらの諸問題の対処法を考察し, さらに今後の提案として, CADデザインプロセス活用における自動車モデラーの課題と役割を論説する。
著者
見明 暢 萩原 祐志
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.15-20, 2006-01-31

移動しながら複数の店舗で買い物を楽しむ場合,渋滞や駐車場不足に悩まされることが多い。この問題を解決するために,カーバイシクルと呼ばれるシステムもあるが,最近の若者が好む店舗は繁華街から少し離れた地区の狭い道路に面していることが多く,また,それぞれの店舗は少しずつ離れているため,カーバイシクルも便利な方法とは言えない。本研究は,こうした問題の解決と若者のニーズに応えることを目的として,新しい移動用機器の提案・制作・評価を実施したものである。提案のために,ユーザーの意識調査・類似製品調査を行い,その結果を踏まえ,デザイン・制作を行った。その後,利用該当地区における走行実験・聞き取り調査・商品性の分析を行い,妥当性について考察した。その結果,提案物を用いた移動システムは,製品(システム)として成立する可能性を有することが示された。
著者
平野 聖 石村 眞一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.29-38, 2008-07-31
被引用文献数
2

明治時代に先進国からもたらされた扇風機は,大正時代には欧米の企業との技術提携が進み,我が国主要企業による大量生産が開始された。米国では天井扇に加えフロア扇の需要も多かったが,我が国では相変わらず卓上扇の独壇場であった。関東大震災により,直接裸火を使用しない電気製品の安全性が注目されるようになり,震災の復興期に数多く建てられた和洋折衷の文化住宅では,電化が大きなテーマとなった。企業間競争の激化による価格の下落と,新中間層の急増や大正デモクラシーの影響から女性の社会進出も果たされるようになると,大衆の購買力が向上し.家電ブームが起こった。人々のあこがれの対象であった扇風機は,その牽引役を果たした。扇風機の基本的形態の四要素,「黒色,四枚羽根,密なガード,首振機能」は踏襲されたが,エトラ扇の発明により,三枚羽根のものも加わった。この時代には,ガードが独立してデザインされるようになり,他社との差別化やモデルチェンジを明示する役割を担った。
著者
面矢 慎介
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.11-20, 2005-05-31

19世紀から20世紀中期にかけてのイギリスの鍋を事例として、近代家庭機器の成立・発展過程およびそのデザイン変遷をめぐる諸要因について考察した。19世紀末から1930年代にかけて、大容量の鍋が徐々に減少する一方、鍋タイプの細分化が進んだ。1910年代までの英国において、鍋の形態は非常に保守的・固定的であった。特に胴の中央部が膨らんだ「ベリード・タイプ」の鍋は、長年にわたって鍋形態の定型となり、家庭の台所のシンボルとなっていた。19世紀から1910年代までのベリード・タイプに代表される鋳物鍋から、1920年代以降のアルミ鍋への転換(主たる鍋材質および鍋形態の典型の交代)は、各素材に特化した鍋メー力ーの盛衰、ひいては金属加工工業の構造的変革と深く関わっていた。この時代における鍋のデザイン変化(典型の交代)を促したのは、調理器の熱源の変化に加えて、日常の料理法の変化、調理器の外観の変化、家庭生活における台所の位置づけと台所空間のデザイン変化であり、これらが、互いに関連しつつ鍋のデザインに影響していた。
著者
面矢 慎介
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.11-20, 2005
参考文献数
26

19世紀から20世紀中期にかけてのイギリスの鍋を事例として、近代家庭機器の成立・発展過程およびそのデザイン変遷をめぐる諸要因について考察した。19世紀末から1930年代にかけて、大容量の鍋が徐々に減少する一方、鍋タイプの細分化が進んだ。1910年代までの英国において、鍋の形態は非常に保守的・固定的であった。特に胴の中央部が膨らんだ「ベリード・タイプ」の鍋は、長年にわたって鍋形態の定型となり、家庭の台所のシンボルとなっていた。19世紀から1910年代までのベリード・タイプに代表される鋳物鍋から、1920年代以降のアルミ鍋への転換(主たる鍋材質および鍋形態の典型の交代)は、各素材に特化した鍋メー力ーの盛衰、ひいては金属加工工業の構造的変革と深く関わっていた。この時代における鍋のデザイン変化(典型の交代)を促したのは、調理器の熱源の変化に加えて、日常の料理法の変化、調理器の外観の変化、家庭生活における台所の位置づけと台所空間のデザイン変化であり、これらが、互いに関連しつつ鍋のデザインに影響していた。
著者
岡田 栄造 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.19-26, 1999-11-30
被引用文献数
1

特定の語を容易に検索できる電子テキストを利用することでデザイン史研究の史料収集は格段に容易になるが, 同時に多様な記述から有用な情報を得るための分析手法の確立も必要となる。本研究はその手法を確立するための具体的な試みとして, 椅子を事例として文学作品における修飾表現の分析を試みた。市販のCD-ROMに収録された100冊の文学作品を資料とした。まず, 検索システムを利用して「椅子」という語の修飾語を取り出し, それらを「印象・評価」「属性」「関係性」という三つの要素に分類してそれらの関係を示した。次に, 椅子の属性, 特に素材に関して具体的な考察を行なった。その結果, 「籐」という語と「縁側」など住空間の周縁部を指す関係性の修飾語との対応関係が明かになった。さらに詳細な考察を行ない, 昭和戦前期の文学表現において籐椅子が夏の季節感と日本的な空間の表象として機能していたこと, そうした籐椅子のイメージが1950年代の籐家具ブームを契機に失われていったことを示した。