著者
白石 光昭 杉山 和雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.117-124, 2002-05-31

情報技術の進歩により,ワークスタイルが徐々に変化し,それに応じてオフィス形態も変化し始めている。しかし,業務を遂行していくためにはワーカー同士のコミュニケーションは基本である。本研究では,これまで設計者の経験あるいはユーザーの一方的な要求で設定されてきた,コミュニケーションを行う場所である会議室数の算定に待ち行列理論を応用した算定法を提案しようとするものである。まず応用するための基本事項を整理し,それをもとに実際のオフィスにおいて使用状況(会議開始時間,会議時間,会議への参加人数)を調べ,待ち行列の理論式を応用できることを確認した。次に算定の目安として,「会議室が塞がっている確率」を提案している。また,ワーカーの会議室数への不満を調べ,「会議室が塞がっている確率」との関係を調べた。以上から,現在の会議室の使用状況をもとに「会議室が塞がっている確率」を求めることで,ユーザーに提案するための会議室数の目安を得ることが可能となった。
著者
シャクルトン ジョン 杉山 和雄 渡辺 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.37-46, 1996-11-30

本研究は,前報の成果に基づき,日本のRV車に焦点を当て,RV車の類別化にはある種の認知の焦点が存在し,いわゆるプロトタイプ理論によってそれが説明できることを,類別に寄与した属性パターンから示したものである。まず第一に,被験者にRV車を自由にグルーピングして貰う実験を行い,まず一様性分析により分析した結果,各被験者のグルーピングに寄与したと思われる属性を非線形正準相関分析により抽出したところ,各グループの識別は,ある幾つかの際だった属性により成り立っているのではなく,各グループの有する諸属性の一般的な傾向の違いに基づいていた。類別化は,示される属性の複合的な関係に依存していることを明らかにしたのである。
著者
寺沢 秀雄 折田 芳和 飯野 亜耶
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
pp.60-61, 2010-07

日常生活において私たちは,人の残した痕跡の違いを察し行動している.この痕跡を行動ログと呼ぶ.本研究では,その見え方を用いたユーザインタフェース(UI)デザインの方法を提示し,事例として人本来の感覚を用いたウェブサービスを考案することを目的とする.スポーツ鍛錬において,心(精神)技(技術)体(身体)は均衡を保つべき3要素として用いられることが多い.筆者らは,この3要素を組み合わせて系統的にUIデザインのアイデア発想を行う手法をコンセキメソッドと名づけた.体とは,人の経験の履歴である痕跡を示す.心とはウェブサービスの楽しさを示す.技とは技術動向を示す.行動ログの見え方を収集し,それを残した人の状況と思考を抽出し10種類に分類した.また,多くの人の心をつかむウェブサービスには,クラクラする楽しさが隠されていると仮定し,5種類に分類した.行動ログの見え方とクラクラする楽しさを組み合わせ,50個のウェブサービスのアイデアを考案した.魅力あるウェブサービスを構築するために,今後は本質的な人の経験から系統的にアイデアを導く手法が求められると考える.
著者
粂川 美紀 堀田 明裕
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.49-56, 2007-07-31

我が国の社会環境及び技術環境の変化は、デザインの概念および要求を変化させた。この変化の中で,特にデザインの新たな価値に関するデザイン・コンセプトの作成が重要となってきている。本研究はデザイン・コンセプトの構築手法を提案することを目的に、その構造化を試みた。文献調査によってデザイン、コンセプト、デザイン・コンセプトの定義を収集し、分析した。その結果、デザイン・コンセプトを構成している要因として行動、価値、手段が抽出された。この3要因を基にデザイン・コンセプトの改善と新たなデザイン・コンセプトの構築に関する2つのプロセスモデルを提案した。更に、このモデルを既存の事例と高齢者の装いに関する調査データによって検討し、その有効性を確かめた。
著者
張 化燮
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.55-64, 2005-01-31

本研究は、幾何学的形態による動的イメージ生成過程に、ある特定の視覚要素が重要な手がかりとして働いていることに着目し、それらの抽出を試みた。まず、動的ィメージの生成が想起と操作といった認知記憶システムの働きと不可分の関係にあるということから、言葉の意味解釈を行って我々の記憶に保持されていると考えられる、動きに関わる情報の全体的な類型を調べた。そして、その結果に基づいて作品に対する印象評定を行い、因子分析による解釈を求めた。その結果、動的イメージ生成過程には「方向、間隔、角度、大小、位置、多少」といった6種類の視党要素が密接に関連していることが明らかになった。6種類の視党要素は、想起と操作過程を媒介する役割を果たして様々な動的イメージを引き起すと推測され、今後、操作過程との関係に関する検討が必要であると考えられる。
著者
氏家 良樹 松岡 由幸
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.9-16, 2008-05-31

曲線デザインにおいては,形状全体の特徴を巨視的に認知するヒトの特性から,形状要素の組合せによって発現するマクロ形状情報の適切な把握と操作が重要である.しかし,CADを用いた現行の曲線デザインにおいては,微視的な形状特徴を定量的に表現する情報の提示が主流であり,マクロ形状情報の把握と操作はデザイナの経験や直観に依存している.このような背景より,筆者らは,マクロ形状情報「複雑さ」を対象として,マクロ形状情報の定量化法構築とマクロ形状情報を操作可能な曲線形状生成法の構築に関する研究を進めてきた.本報では,解像度を考慮したマクロ形状情報「複雑さ」の定量化法として提案した曲率積分および平滑化手法の定義,事例適用による有用性の検証,および同定量化法を導入した曲線形状生成法のデザインへの応用について述べる。そして,提案した手法による解像度を考慮した「複雑さ」の定量化の可能性と,曲線形状生成法による曲線デザイン支援の可能性について示す.
著者
伊藤 恵士 桐谷 佳恵 小原 康裕 玉垣 庸一 宮崎 紀郎
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.21-26, 2007
参考文献数
13
被引用文献数
2

商品購入時のパッケージデザインの重要性をふまえ、日本酒のパッケージデザインのあり方を考察するため、まず本研究では、日本酒ラベルの現状を探った。日本酒ラベルのデザイナーのインタビューからは、1)デザイナーと蔵元との間のイメージの不一致、2)吟醸酒などのクラスを意識したデザインがされていない、3)蔵元の保守的傾向、が問題点として上がった。そして、現行の日本酒ラベル689点に加え、20年前の日本酒ラベル245点、瓶などの形状が日本酒に似た焼酎と泡盛から、それぞれ207点、113点のラベルを収集し、デザインを分析した。その結果、クラス別に差別化が行われているとは言いがたいが、多少の傾向の違いはみられた。数量化理論剛類の結果から、現行ラベルは「単純一複雑」、「調和一独立」の観点から記述できる事がわかった。そして、過去のデザインの特徴と合わせて考えると、複雑で独立的なデザインから、調和あるいは単純な方向への2つのデザイン潮流も見いだされた。
著者
Shu-Yuan Lin Jen Yen Kwoting Fang
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.5_11-5_20, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
16

The purpose of this study is to facilitate the discovery of categories for packaging-design benefits and brand equity in order to further examine the impact relationship among categories in the two dimensions, as seen from the perspectives of packaging design experts. Finally, this article will develop research propositions that were used as a basis for formulating hypotheses in empirical studies. Research results showed that the dimension of packaging-design benefits included 13 categories that are aesthetic, cultural, symbolic, convenient, environmental, informative, visibility, protective, innovative, identifiable, systematic, memorable and displayable qualities. In the brand equity dimension, the literature review and coding analysis obtained 22 categories. In examining the categories relationship between packaging-design benefits and brand equity, this study found 68 category relationships between the two dimensions. Furthermore, analysis from the perspective of packaging design experts showed that the relationship between packaging-design benefits and brand recognition was the strongest and also the most important. Packaging design experts considered the influence of packaging-design benefits on brand awareness and brand association equally important. However, in terms of brand association, the relationship strength and importance of packaging-design benefits and non-product-based association was low compared to product-based association.
著者
三橋 俊雄 宮崎 清 坂本 勝比古
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.82, pp.49-56, 1990-11-30
被引用文献数
1

本小論は,大正期から昭和戦前期における農村・農家副業としての工芸生産に関する史料を解析し,今日の地域産業おこしに対する基本的視点を見定めようとしたものである。本小論の検討内容ならびに結論は,次のように要約される。(1)疲弊する農村救済策としてなされたこの時期の農商務省による副業奨励施策は,時代の推移につれ,その中心を,地域資源を活用した地域工芸の創生に移していった。(2)初期商工省工芸指導所ならびに高崎におけるブルーノ・タウトは地域工芸のあるべき理念・方法を提示した。両者は,ともに,伝統的・地域固有資源の再認識に基づく工芸デザイン活動が地域社会に根づいていくことこそ,調和ある社会発展にとって不可欠であることを説き,実践した。(3)初期工芸指導所および高崎におけるブルーノ・タウトの活動には地域産業自体の「内発的」活性化に向けての要件が含まれ,今日の地域工芸産業の振興に関しても示唆する点が多い。
著者
宮木 慧子 石村 真一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.147-156, 2001-11-30
被引用文献数
1

本論は、有田(伊万里)焼のワラ荷造りにおける「輪巻き」と「菰包み(小口切り)」の特色ある形態に関する造形要素について考察することを目的とする。絵画資料および現地調査によって得られたワラ荷造りの造形要素等を考察した結果、次の結論を得た。(1)「菰包み」・円筒形俵タイプは、日本の伝統的包装技術である俵、苞、菰、縄の技術文化の発展とみられる。形態については、海上輸送を主体とする衝撃に強い小型陶磁器専用包装として発展してきた。(2)精緻な「輪巻き」は、造形要素である太縄(ドグラワ)の格別な意匠に特徴がある。意匠の独自性は、大型陶磁器を対象として、遠距離海上輸送における保護機能を最優先して発展した可能性が強い。さらに、調査の結果、輪巻きタイプの成立は、陶磁器包装にみる樽掛け縄の事例や、輪巻きの呼称が示すように、近世、酒の海上輸送用容器として発展した酒樽の〓の意匠や、樽の梱包文化との連関が類推される。
著者
吉岡 聖美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.39-46, 2010-07-31
被引用文献数
1

本論文では,抽象絵画における直線表現要素の違いと印象評価の関係を検証し,併せて,病院空間に展示された場合の印象評価について比較検証することを目的とする。方法は,直線表現の異なる抽象絵画を用いた画像を鑑賞し,得られた印象評価の評定値について分析を行った。これにより,傾きのある直線・長方形を強調したマレーヴィチ絵画は,"イライラする""激しい""動的な"という印象評価が大きくなった。境界を強調しないロスコ絵画は,"穏やかな""退屈な""静的な""リラックスした"という印象評価が大きくなった。垂直線・水平線を強調したモンドリアン絵画は,"軽い"という印象評価が大きくとなった。また,病院空間という特有の空間に絵画が展示されると,直線表現要素の違いによって固有の印象評価に差が生じた。この研究結果から,抽象絵画における直線表現要素の違い(垂直線・水平線・斜線)が印象評価に影響することが示唆された。
著者
SATO Kiminobu KON Yuichi KUSHIDA Risa IZUMISAWA Aya TSUJI Nahoko
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.109-116, 2011-01-31

This paper carries out a classification of the existing interactive exhibits at a science museum. Various interactive exhibits are examined to identify their characteristics, which are used for evaluation purposes to create a matrix for evaluation of each exhibit. The Quantification Method III is used to elucidate the overall characteristics of the target exhibits. Cluster analysis is applied to these results so as to sort into groups. By plotting the target exhibits on 'the degree-of-freedom' and 'the development of understanding vs. the opportunities of learning' axes, it is possible to ascertain the characteristics of these exhibits. It is clear that six groups can be formed, each with different characteristics. Visitor interviews and video recordings are taken of visitors'utterances and behavior to examine how the visitors engage with the exhibits. From the data is compared to examine the relationship between the characteristics of the exhibits and the evaluations of the visitors, the popular exhibits tend to be 'physical entertainment' type exhibits where 'interaction between the exhibit and the visitor' and 'communication between visitors' occurred in more or less the same proportion. In other words, the exhibits that evoke interaction with the exhibit as well as communication between visitors in good balance are considered to be very enjoyable.
著者
堀田 明裕
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.57-66, 1997-07-31
参考文献数
17
被引用文献数
2

本論は大学におけるデザイン教育の問題の分析と、今後の方向に関する提案を目的としている。戦後我が国に導入されたデザインの考え方は、経済や技術、あるいは生活スタイルなどの影響を受けて大きく変化してきた。この変化に対するデザイン教育の問題として、デザイン教育の検討体制、技術と技能、美的評価、教育におけるコンピュータ使用の位置づけ、教育と研究の関係、大学の基本的役割について分析した。これらに基づいて、今後のデザイン教育の目標を構想能力と造形能力の獲得とし、その方法として実技教育と知識教育の融合とした。また、教員の役割として、各自の教育上の特色を持つこと、教育技術の向上、教員間のデザイン評価に関する討論と学生への公開、研究作業への学生の参加を提案した。更に、今後のデザイン教育の共通基盤構築の視点から、デザインにおける美的評価の論理や教科書作成の必要性を提案した。
著者
林 振陽
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.99, pp.1-6, 1993-09-30

前報「精神薄弱児の基本形態と製品形態に対する認知」に引き続き,本稿は扇風機のボタン操作における認知と反応についての実験をまとめたものである。形状や付加記号や色彩の異なるボタンに対する精神薄弱児の認知と反応を調査・検討した。ボタン操作実験では,使用するボタンの形を正方形,長方形,円形,三角形,楕円形の5種類に,記号と色彩の配合をI:無記号・無着色ボタン,II:アラビヤ数字ボタン,III:漢字ボタン,IV:ローマ数字ボタン,V:1色着色ボタン,VI:3色着色ボタンの6種類に設定した。実験対象は台湾省台南啓智学校在学生30名で,すべて6〜15歳の軽・中度精神薄弱児である。実験は,実験組15名と,制御組15名の2班に分けて行なった。結果として,ボタン形状に対する認知において,三角形と円形と正方形の正答率が高く,文字・記号・色彩などが付けられた場合は上記VI・IV・IIの正答率が高いという知見が得られた。本研究で得られた知見は,精神薄弱児により適切な生活製品を提供するための参考になると思われる。
著者
和田 精二 大谷 毅
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.53-60, 2005-03-31
参考文献数
17

関連報告(研究1, 研究2)において, 松下電器と三菱電機のデザイン部門が成立するまでの経緯をMOD(Management of Design)[注1]の視点から調査した。本研究においては, 東芝のデザイン部門が成立するまでの経緯を扇風機のデザインを事例として調査した。その結果, 東芝のデザイン部門は, 松下電器や三菱電機と違った経緯で組織が成立したことが理解できた。東芝は, 家電製品に関し日本で最も長い歴史を持っている。その伝統が歴代の経営幹部によって引き継がれるとともに, 当該業界では日本初とも言える社外の公的機関である産業工芸試験所との強い連携, 同所からのデザイン指導, 外国人の嘱託採用などが同社デザイン部門の設立に寄与したことが理解できた。
著者
岩田 彩子 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.31-40, 2009-11-30
参考文献数
23

本稿は、JIDA機関誌掲載記事を対象にして、1960年代におけるJIDAの活動内容、とりわけ世界デザイン会議(WoDeCo)の意義を中心に、観察・考察を行ったものである。その結果、次の知見を得た。(1)1960年5月に開催されたWoDeCoにJIDAは組織としては参画しなかったものの、会議に参加したJIDA会員たちの間には世界における日本のIDへの気付きが生まれた。(2)1960年代にJIDAはIDに関する研究会活動を活発化させ、機関誌にその詳細を掲載し、JIDA会員に広く知らしめた。(3)1960年代のJIDA機関誌は、ICSID国際会議に参加したJIDA会員による詳細な報告を掲載し、世界におけるIDの動向への注視と会員への広報に意を注いだ。(4)JIDAは、1965年以降、ICSID国際会議等の海外におけるID会議の動きにも対応し、国内で活発化したID研究会の経験的蓄積に基づいて、国内におけるデザイン会議を毎年開催するようになった。(5)ICSID総会を日本に招致することをJIDAは1965年に機関決定し、1973年の日本におけるICSID国際会議開催への繋がりを築いた。
著者
桐谷 佳恵 内藤 正志 内田 和宏 赤司 卓也 杉山 和雄 渡邊 誠 小野 健太
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-10, 2005-05-31
参考文献数
8
被引用文献数
2

災害時や渋滞時には、交通情報を可変的に表示できる情報板が必要となる。本研究は、現状の高解像度LED式道路交通情報板の半数以下のLED数で迂回路を表示できる可変情報板のデザイン指標を得ることを目的としている。具体的には、地図構成要素の形状と色彩に関する指標である。直交表による実験計画法を用いて、「表示板の見やすさ」、「迂回路表示のわかりやすさ」など、表示板の見やすい表現を模索し, デザイン要件を決定した。その結果、道路形状、迂回路形状と表示方式、地名表示、ルートマーク、現在地表示、文字表示の仕方、文字や道路及び背景の色彩、などについての基本指標が明らかになった。本研究から得られたデザイン指標は、新しい道路情報提供を実現する情報板作成に貢献し、従来よりも低コストの可変情報板作成の可能性を示すものとなる。
著者
陳 明石 清水 忠男 佐藤 公信 一海 有里
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.13-18, 1999-07-31

調査対象となった岐阜県高山市の商店街路は, 私有地と公有地とを取り込み, 同じ舗装を施し, 一体感や広がり感を作り出している屋根付きの歩行者空間である。ここには, 平日, 週末を問わず, 店舗の営業時間に呼応して, 様々な仮設的要素が路上に置かれているのが観察された。それら仮設的要素の置かれ方は商店街の協定に基づいているため, 広い通行空間がほぼ確保され, 歩行者は歩きながら商品を楽しみ, 店内の様子をうかがうことが可能である。この点はアンケート調査においても肯定的に受けとめられていた。この空間は, 行政と商店側が双方の所有地を共同で計画, より幅広い歩行者空間としてデザインし作り上げた公私融合型歩行者空間ということができる。このようななりたちの歩行者空間は, 立場の異る様々な人々の多様な活動を支援し, コミュニケーションを促進する場となり, 商店街を活性化させる一つの有効なあり方を示している。