著者
河瀬 絢子 崔 庭瑞 泉澤 恵 日比野 治雄 小山 慎一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.4_35-4_42, 2015-11-30 (Released:2016-04-15)
参考文献数
22

本研究では,OTC 医薬品のブランドがOTC 医薬品選択時の消費者行動に与える影響について詳細に検討するため,OTC 医薬品選択時の眼球運動を計測した。被験者は,3種類のOTC 医薬品の中から最も購入したいと思った1品を選択した。課題遂行中,「製品名」,「成分」,「使用上の注意」などの12 の外箱記載項目に対する視点の停留時間と停留順序が求められた。その結果,被験者はナショナルブランド(NB)のOTC 医薬品選択時には「製品名」を最初かつ最長時間注視し,プライベートブランド(PB)では「キャッチコピー」を最初かつ最長時間注視する傾向が認められた。面積・面積比と停留時間の相関はPB の方がNB より大きく,NB・PB いずれにおいても色数と停留時間に有意な相関は認められなかった。以上の結果から,消費者はNBではブランド名,PB では詳細な情報に依存した選択を行うことが示唆された。
著者
天貝 義教
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.25-32, 1993
被引用文献数
2

ヨーゼフ・アルバースにとって,素描とは,線から成立した視覚的形成を意味し,その主要な関心は,二次元的な手段によって三次元的な効果を呈示することにあった。それゆえ,アルバースの用語法に従うならば,我々は,素描において,線と線との間を我々に読み取らせるような線の観察と分節を学ぶこととなるのである。アルバースは自らの素描観を,バウハウス,ブラック・マウンテン・カレッジ,イェール大学デザイン学部における素描教育を通じて明確にしてゆくが,一方その教育活動と並行して多数の線の構成を試みており,1942年には『図的構築』の連作を完成させ,『構造の星座』の連作は1950年代初期にその制作が始められた。本稿の目的は,アルバースの素描教育の変遷過程を跡づけるとともに,その素描教育の内容とこれら線の構成による連作との関係を考察することにある。
著者
秋田 美穂 恒川 和久
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.4_59-4_68, 2018-03-31 (Released:2018-03-31)
参考文献数
27

本研究は、建築の設計教育を受講する学生を対象に、学生が課題提出のために描いたスケッチの描画や記述に注目することで、設計の際に意識している対象を知り、学習成果を得ている事例を把握することを目的とする。 建築系大学において、多くの大学で初期段階に実施されている立体を構成する課題や住宅を設計する課題提出のために描かれたスケッチの描画や記述の数と成績の関係を探った。また、描画や記述を時系列で具体的にみることで、設計の際に意識しているものを調査した。 調査より、学習成果としてスケッチの描画の状態でも幅や奥行きそして高さなどの寸法を表記することや、スケッチの描画に人を表記している傾向がみられた。また、3次元に着想し、立体を構成する導入段階での課題から敷地を設定することで、設計の際に有用な方法とされている敷地や敷地周辺も視野にいれて設計を進めていく事例も把握した。
著者
上原 勝 青山 智津子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.35-42, 1994
被引用文献数
1

最近では,登山靴やスキー靴の素材としてプラスチックが多く用いられている。プラスチック製の靴は,防水性に富む,軽い,発色に優れる,安い,というように多くの利点を持つ。ところが一方で,このようなプラスチック製の靴が使用中に突然破損した,という報告が見られるようになった。登山中やスキーの滑走中の破損は,深刻な事故につながる可能性もあり非常に危険である。本研究の目的は,これらの破損の原因を探り,破損事故防止のための適正な使用方法を示すことにある。この研究の結果,プラスチック靴の破損のメカニズムが明らかにされた。そしてさらに事故防止への対処と,靴の素材改良への提案を試みた。靴にあらわれた小さな亀裂が,使用中の突然の破損を引き起こす可能性があるため,これらの注意をはらう必要があることなどを主なものとしてあげた。
著者
宮崎 紀郎 湊 幸衛 玉垣 庸一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究
巻号頁・発行日
vol.1986, no.57, pp.39-44, 1986

週刊誌中吊り広告を提案するにあたって,その制作の手がかりを得るために,週刊誌中吊り広告とその本誌を対象サンプルとして,イメージ調査を行った。調査データを因子分析した結果,サンプルに対する被験者のイメージ評価は4因子で構成されていることが判明した。この第1因子の「好感度」と第2〜4因子の「躍動感」「大衆性」「重厚感」を軸に,それぞれのサンプルの確率集中楕円を描いたところ,各サンプルのイメージ像が浮かびあがってきた。これらの調査結果を生かした,ひとつの提案として,週刊誌中吊り広告のデザインを試みた。今回の調査結果は,中吊り広告ばかりではなく,文字を主とした広告のデザインにあたっての有用な参考資料になると考える。
著者
HU Hui-Jiun YEN Jen
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.99-108, 2011
参考文献数
47

Internet is a media for information exchange and experience transmission. The purpose of a website is to conduct the most efficient communication with the biggest group. For most of people nowadays, Internet is a livelihood necessity instead of a professional noun. As Internet users own more domination and options, they would disregard the information irrelevant to the products or information with which they are uninterested in. On the contrary, they could make free propaganda without any profits for the information or products at which they are interested in. In order to design an excellent system image, the designer should make the user's model compatible with the underlying conceptual model, the design model. In this study, we demonstrate a methodology for extracting and analyzing mental models by mixed method:IQA approach is based on the desire to combine the complementary strengths of qualitative and quantitative research. After comparing different mental models of web design team and Internet user, we can conclude that the web design team is analysis-orientated and self actualization-orientated; conversely Internet user is speed & efficiency-orientated and opposing negative images of web advertisement.
著者
土屋 高康 國領 二郎 村井 純
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_19-1_28, 2017-07-31 (Released:2017-09-20)
参考文献数
22

デジタルヘルス市場では,スマートフォンを活用した新サービスの創出が活況である。しかし,市場ではコモディティー化も顕著であり,差別化戦略は益々重要性を増している。一方,健康に纏わるユーザーの価値観は定量化が難しいだけでなく,サービス価値の判断は競合サービスにも影響を受け変化することから,競合関係とともに捉えることが重要である。そこで本稿は,ユーザーレビューを活用し,テキスト解析と対応分析を駆使することで,差別化戦略を構築する上での有用な指針を抽出する方法を提示する。分析結果より,ユーザーは、体組成計データ等のグラフ表示や記録・管理機能などの一次的価値(機能そのものによる便益)を重視している傾向の他、睡眠管理や服薬管理などの分野ではコモディティー化を逃れていることが示唆された。よって、分野の特性を的確に捉えた上で差別化要素を検討する重要性などが指針として得られ、本稿で示した方法はデジタルヘルス分野における差別化戦略の構築に於いて,一助になると考えられる。
著者
時長 逸子 宇都宮 千明
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.85-90, 2009-11-30 (Released:2017-06-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1

広告戦略においてカラーバリエーションという手法は、生産的とはいえない位置づけであるにもかかわらず、広く見られるものである。その理由を知るための調査を行い、以下のような結果が導かれた。(1)製品バリエーションとしてのカラー戦略である。(2)ある製品に対する消費者の固定観念を打ち破る色彩の利用である。(3)イメージ戦略としての色彩の利用である。明らかに色彩の心理効果を活用し、展開する。これらの結果はPhilip Kotlerによる「5つの製品レベル」に即したものである。しかしながら、このレベルに当てはまらない広告が存在した。その広告に対する印象調査を行い、(4)カラーバリエーションを展開していながらも、その製品の売れ行きをあまり重視せず、どちらかというと企業イメージや製品イメージを広く認知ざせるための手段として利用されるもの、という新たな広告戦略があることが判った。
著者
増成 和敏
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.99-108, 2011
参考文献数
12
被引用文献数
1

本論は,インターナショナル工業デザイン株式会社(IID)の設立経緯について,主として文献史料とヒアリング調査より,以下の内容を明らかにした。1)IIDは,松下幸之助の主導により氏のデザインに対する考えを実現するために設立された社外デザイン事務所である。2)竹岡リョウ一は,松下幸之助の指示によりIIDの設立準備をし,初代社長として経営を任された。3)初代副社長Y・アラン島崎を見出したのは中川電機社長中川懐春であり,アラン島崎の日本進出の意志を松下幸之助へ伝えたことが,IID設立に繋がった。4)IIDのデザイン活動は,松下電器の経営幹部からも期待されていた。IIDは家電製品の典型を創出し,製品評価を高め、販売に貢献した。
著者
小関 利紀也
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.47-56, 1994
被引用文献数
1

ブルーノ・タウトの建築空間の探求は,何故にグラスハウスをもって突如として断絶したか。また,グラスハウスとジードルンクの思想とは,一般に相対立し,相互に矛盾するものと考えられているが,これらが1914年,同時に並行して実現され得た理由は何か,等々,タウトの造形思想の解明には難しい問題が数多く残されている。こうしたタウトの複雑な造形思想の問題について,ジャポニスムに始まる空間構成の探求と,工房思想を中心とする田園都市運動との両面からの解明を試みる。これらタウトの作品に通ずる二つの傾向を結びつけ,綜合する契機となったのは,タウトがファルケンベルクのジードルンクに見出した,社会的思想と呼ばれる共同体感情の空間感覚のヴィジョンであったが,この社会的思想の形成の経過から,グラスハウス成立の事情と,その造形思想の意味の解明を試みる。
著者
林 孝一 馬場 亮太 御園 秀一 小野 健太 小原 康裕 渡邉 誠
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.6_39-6_48, 2014

60年近い歴史をもつ東京モーターショーに出展されたショーカーはそれぞれの時代の社会変化を鋭く反映してきた。本研究は各ショーカーの訴求ポイントをグループ化し、そのコンセプトを、「性能」、「社会対応」、「サイズ」、「付加価値」の4カテゴリーに分類し考察を加えた。その結果、日本の自動車産業とデザインの変遷は7つの時代に分類して精査していくことが適切であるとわかった。さらにその時代ごとのデザインへの期待や役割の変化が以下の4つに区分される事も判明した。1954~70年:欧米のライフスタイルに追従するドリームデザイン、1971~84年:機能とデザインの融合により意味と独自性があるデザインの創生、1985~2008年:製品多様化と市場の飽和を背景とした新規性コンセプトの探求とデザイン領域の拡大、2009年~現在: 環境問題や高齢化を反映した車の次世代モビリティーとしての再構築である。この様に社会情勢の変化に応じたデザインへの期待、役割の変化を明らかにした。
著者
吉岡 聖美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_11-1_18, 2017-07-31 (Released:2017-09-20)
参考文献数
12

簡易な形の目口のパーツによって構成される笑った顔および怒った顔のアイコンを鑑賞・配置・描画する,という異なる創造タスクを実施する際の生理心理評価および表情変化について調査した。その結果,絵を見るのが好き,絵を描いたり落書きを描くことがある,絵や落書きを描くのが好き,と回答した実験協力者は,笑った顔のアイコンを描画することによって自身の表情も同調的に反応して表情が変化し,気分が良くなったと感じている結果が得られた。絵画や描画に対する嗜好や馴染みが生理心理評価および表情変化に影響すると考えることができる。一方,目口のパーツを配置して顔アイコンを作成する中程度の創造タスクの課題では,平均血圧の変動量がプラスに大きく,わくわく度が増し,絵画や描画に対する嗜好や馴染みに関わらず課題に能動的に取り組んだことが示唆される結果が得られた。
著者
伊豆 裕一 加藤 健郎 佐藤 浩一郎 松岡 由幸
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.2_55-2_64, 2017-09-30 (Released:2017-12-22)
参考文献数
19

多くのデザイナーはデザイン案の発想にスケッチを活用する.一方,デザインの造形教育において,対象物を観察し表現するデッサンが重視される.両者の目的は異なるものの,透視図法や陰影法など,使用される表現スキルには共通点も見られる. 本研究は,デッサンとスケッチの描画スキルと描画過程を比較することにより,両者の関係について知見を得ることを目的とした.まず,10 名の対象者のデッサンとスケッチを描画スキルにより評価し分類した結果,対象者はデッサンスキル高,スケッチスキル高,およびその他の3つのグループに分けられた.つぎに,各グループのデッサンとスケッチの描画過程を分析し比較した結果,線や陰影と言った要素の描写時間や描画手順にグループによる違いが確認された.以上について分析した結果,デッサンとスケッチの描画には,表現スキルに加えて立体形状の認識方法の違いが影響することが示唆された.
著者
滝澤 功 長尾 徹 佐藤 弘喜 大嶋 辰夫 赤澤智 津子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.4_57-4_64, 2014

本稿は,ニュースサイト上の見出し記事を探索する過程において,知覚した注視順序と認知した想起順序の相関関係に着目した。その相関関係と探索性との関係を示し,探索性の評価方法を提案した。まず,探索性に影響するニュースサイトの要素をラフ集合によって抽出し,その要素が含まれた既往ニュースサイトをもとに注視領域と想起領域を示した。そして,注視領域外と想起領域外を削除したサンプルで検証し,注視順序と想起順序の順位相関関係は探索性の主観評価に関係することを明らかにした。本稿によって示唆された注視順序と想起順序の順位相関による探索性の評価は,Web サイトにおける探索性を知覚領域と認知領域とで複合的に調査でき,探索性の高いWeb サイト作成の指針につながると期待される。
著者
吉田 美穗子 伊藤 泰子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.5_11-5_16, 2013-01-31 (Released:2013-03-14)
参考文献数
13

自然界では量的な大きさに左右されない、ある図形の部分と全体が相似であるという自己相似性が多く存在している。また、造形的なリズムの中での意外性の混在はわれわれに心地よい環境をもたらし、デザインを豊かなものにする。フラクタルはこの両面の性質をもっている。われわれにとってフラクタル幾何学図形を組み込むことは、自然界に存在する形のシステムを内包する新しい建築・インテリア形体を造ろうとする試みであると考える。フラクタル図形のもつ自己相似性のプログラムをCADに転用して空間構成を行った。大きさを持たないフラクタルに尺度を与えることで空間は幾何学図形の「美」を感じさせる、より自然形体に近いものとなった。フラクタルは居心地の良い空間を生成することのできる有効な手段であるとの確信を得た。
著者
両角 清隆 渡辺 誠 森川 博
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.29-36, 1996
参考文献数
7
被引用文献数
1

ユーザーの行動を分析・モデル化し,それを基にしてインタフェースデザインを行うことより,わかりやすいインタフェースデザインを達成することが目指されている。しかし,実際のユーザーの経験は多様であり,モデル化は容易ではない。そこで,これまでの研究で行動の類似性が認められた緊急時の操作を題材として,インタフェースデザインを考えた。緊急時の行動の特徴であるa)すぐ操作できる方法を選択する,b)一般的な知識を使って操作する,c)順方向操作との関係性(対称性)を想定して操作する,を考慮してシミュレーションモデルを作成した。その結果,ユーザーの緊急時操作の行動特性に対応したユーザーインタフェースデザインの指針として次の項目を得た。1)行動の特性に合った複数の操作経路を設定する,2)操作の対象を視覚的に表現する,特に緊急時の操作に対応する操作子は表面に設定する,3)情報の処理で認知的に高負荷をかけるダブルファンクション等は避ける
著者
藤原 惠洋
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.90, pp.57-64, 1992-03-30 (Released:2017-07-25)

伝統的細部である唐破風曲線は,明治以降の伝統的建築の評価過程で編年的指標を与えられる一方,和風建築の重要な意匠要素として応用された。本研究では,まず明治以降の建築様式史研究を基に,時代が古代平安期まで遡れば唐破風曲線は緩勾配で美しく,中世期以降の曲線は勾配を強くしながら桃山・江戸に至ると急勾配になり見苦しくなる,という形からの編年的評価が行われた点を明らかにした。次に,明治中期以降の和風建築の設計に様式設定が加わる経緯を示し,唐破風曲線の創造的構成が様式設定の時代目標を近世期から中世期・古代期へと順次遡らせた変遷過程を見出し,実際の遺構例を通し明治30年代から大正初期へかけた近世桃山様式,明治40年代以降の中世鎌倉様式,大正以降の古代平安様式へ移行した経緯とその内容を明らかにした。また,編年的評価を基にした応用は建築家の様式設定的設計に多く見られ,一方,工匠的系譜には技術的視点を有した独自の評価と応用があった点も究明した。