著者
加籐 太一 杉浦 淳吉 飯田 誠 荒川 忠一
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.56-66, 2008 (Released:2021-07-01)
被引用文献数
1

ゲームをコミュニケーション環境と捉えるゲーミングシミュレーションの視点から、プレーヤー間の会話分析手法について検討した。第 1に、プレーヤーの経験を記述する点で重要性が高い「ゲーム展開」発話群が抽出された。第 2には、それらの特徴を示すことを目的として (1)意思決定主体の所在、 および(2)時間性の 2要因からなる、より詳細な分類方法について検討した。その結果、前者における 「他者意思」群、後者における「未来」群に分類される発話の増減を時系列で検討することで、ゲームの特徴を記述しうることを明らかにした。ゲーミング評価研究においては萌芽段階にある会話分析の今後の可能性について展望した。
著者
野島 美保
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.44-55, 2008 (Released:2021-07-01)
被引用文献数
2

本論文の目的は、 MMOの収益性の問題を、利用動機・ゲーム内行動といった消費者行動から説明する枠組みを提示することである。 MMOパブリッシャーのマーケティング戦略という経営学的な視 点に立ち、ゲームの収益性に影曹する要因を洗い出す。 まず、収益性を示す指標を導くために、バッケージ販売・定額制・アイテム課金の料金制度の違いを分析し、利用期間(定着性)。単価に着目した。次に、MMOユーザーの利用動機と行動を測定し、その変数化を試みた。日本のMMOユーザーに対してアンケート調査を行い、3つの潜在変数(成長、コミュニケーション、アイデンティティ)を導いた。最後に、 MMOユーザーの利用動機・行動によって定着性・単価がどの程度影曹されるかを知るために、構造的な定量分析を行った。 その結果、「成長」動機はゲームヘの熱中度を増加させるものの収益性に直接的に影響せず、利用期間と単価に直接的に影響しうるのは「コミュニケーション」動機であることが示唆された。
著者
浅田 恵佑
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.39-50, 2009 (Released:2021-07-01)

ネット上でのコミュニケーションの多様化は進み、現在注目を集めるのが仮想的な空間内を「アバター」を用いてコミュニケーションが行える形態である。これは「Second Life」によって注目を集めたが、一方オンラインゲームの領域では同様のコミュニケーション形態を有しつつ、長期的で実質的 運営がされている状況がある。しかしそうした新しい空間はそれ単体で存在するのではなく、従来から 行われるテキストを主としたコミュニケーションと相互に関係している。本稿はテキストベース/アバターベースに区分したコミュニケーションの歴史と相互関係に関して整理し、今後のアバターベース・コミュニケーションを対象とした研究における課題と方向性について考察する。
著者
堀内 由樹子 田島 祥 鈴木 佳苗 渋谷 明子 坂元 章
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-24, 2016

本研究では、中学生を対象とした 2 時点の縦断調査を実施し、レーティング区分ごとのゲーム ソフト利用による攻撃性および暴力に対する規範意識への影響を検討した。調査は、2008年度末と2009 年度末に実施し、東京、千葉、埼玉の公立中学校12校、1218名の中学生が分析対象となった。分析の結 果、男子学生では、C区分の暴力的ゲームソフト利用によって、1 年後の暴力に対する規範意識が低下 することが示された。B区分の暴力的ゲームソフトや非暴力的ゲームソフト利用ではこのような影響は 見られず、レーティング区分によって影響が異なることが一部で示唆された。
著者
松尾 由美 田島 祥 野原 聖子 坂元 章
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.23-33, 2008 (Released:2021-07-01)

本研究では、コンシューマゲームの中に社会性を高める特徴や工夫が含まれているのか、また、どのような社会性の特性を高めうるのかを明らかにすることを目的に、ゲームプレイヤーに対してWEB調査を行った。その結果、プレイヤーの認識では 1) コンシューマゲームによってどの社会性も育成される可能性はある、 2) 社会性を高める手法は「リハーサル」に基づく学習原理が多く用いられている、 3) 実際にゲームの中で社会性を身につけた行動を「練習・経験」することで社会性を身につけたいと思う動機が高まる可能性があることが示唆された。今後の研究では、実証的な調査によって、コンシューマゲームの社会性育成効果を確認する必要があるだろう。
著者
伊藤 憲二
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.34-45, 2007 (Released:2021-07-01)

現在、デジタルゲームは従来のゲームのあり方を超えたデジタルメディアに脱皮しようとしている。その状況において、デジタルゲームの学術的研究は、従来のゲーム研究の枠組みを超えたものに発展する可能性を持つ。この論考は、そのような将来のデジタルゲーム研究の射程を推し量ろうとするものである。
著者
藤原 正仁 ロート マーティン
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.19-31, 2021 (Released:2021-06-01)

欧州では、ゲーム市場の拡大や多様なプラットフォームの普及を背景として、多くの児童や青少年がゲームをプレイしているため、保護者へのゲームレーティング情報の提供が重要となっている。そこで、本研究は、全ヨーロッパゲーム情報(Pan European Game Information: PEGI)システムの構造と変容に焦点を当て、ヨーロッパにおけるゲームレーティングシステムの在り方について検討した。その結果、(1)PEGI システムの採用国が増加しているが、その法的地位は国ごとに異なり、「自主適用」、「自主規制」、「共同規制」の 3 つに分類される、(2)PEGI 質問票では、2018 年に質問の順番を年齢順からゲームの内容順に変更し、「ゲーム内購入」の質問とコンテンツディスクリプターを追加している、(3)PEGI S.A. は、2010 年から追加的消費者情報を公開し、ゲーム内容の情報を提供している、(4)特設ウェブサイトや PEGI アプリ、オンライン教材の提供を通じて、PEGI レーティングの普及啓蒙が図られていることが明らかにされた。
著者
Jonathan deHaan Fumiya Kono
出版者
Digital Games Research Association Japan
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.47-59, 2010 (Released:2021-07-01)
被引用文献数
9

この研究では、ゲームの双方向性が語彙習得に有効か否かを検証した。この実験では、日本の大 学生46人を、ゲームと英語の習熟度別に二人一組にし、一方の学生に市販の英語ミニゲームを10分間やっ てもらい、他方の学生にその様子をモニターで見ているよう指示した。このゲームの後で両方の学生に 同一内容の語彙想起テストを行い、認知的負荷(すなわち費やした知的努力や感じた困難さの程度)を 測定した。さらに、1週間後に再び語彙想起テストを行った。ゲームをした方も見ていた方も、英語の 語彙を記憶していたが、覚えていた語彙の数はゲームをした学生の方が少ない結果となった。これはゲー ムの双方向性が招いた認知的負荷によるものと考えられる。言語学習による教育ゲームの研究、デザイ ン、教授法、学習に対する影響を述べる。
著者
藤本 徹 岸本 好弘 西村 圭一 高橋 薫 高橋 淳 谷内 正裕 山内 祐平
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.13-21, 2015 (Released:2019-10-01)

本研究では、数学的思考力を高める学習ゲーム開発のための履歴データ記録APIと、ゲームを公 開して一般ユーザーからのプレイデータを収集、閲覧できる機能を持ったオンラインプラットフォー ムの仕組みを開発した。そして、実際に開発したゲームをプレイしたユーザーへの調査結果をもとに 評価を行った。その結果、このようなプラットフォームを通して、従来は評価を得ることが難しかっ た外部のユーザーや開発者からのフィードバックを得る機会を提供でき、開発者教育に寄与する仕組 みとして機能する可能性が示唆された。
著者
田島 祥 松尾 由美 瓜生 恭子 坂元 章
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.159-170, 2009

本研究では、MMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)の使用がプレイヤーの対人ネット ワークのサイズに及ぼす影響を実験によって検討した。学生69名(平均年齢19.95歳)を対象に、プレイ開始から 2 週間後、4 週間後、6 週間後の対人ネットワークのサイズを比較した。その結果、実験群 と対照群の間に有意差はみられなかった。また、実験群を対象に、MMORPGでの集団行動が及ぼす影響について構造方程式モデルを用いて検討したところ、MMORPGでの集団行動が対人ネットワークのサイズに及ぼす影響はほとんどみられず、対人ネットワークのサイズが大きいほどMMORPGでの集団行動が促進されるという逆方向の因果関係が確認された。
著者
林 志修 佐々木 輝美
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.9-22, 2017

本研究では向社会的デジタルゲームに関する先行研究での課題の解決を試み、向社会的行動を 文脈によって定義づけ、その定義に基づき、人i気デジタルゲームiタiイトルの内容分析を行った。内容分析の結果、分析対象になった27個のデジタルゲームタイトルでは1時間当たり平均3.59回の向社会的行動が行われた。内容分析に基づき、デジタルゲームの中の向社会的行動とプレイヤーの向社会性の関係を明らかにするためインターネット調査を行った。その結果、向社会的行動の表現が多くみられたデジタルゲームのプレイ時間とプレイヤーの向社会性の間に有意傾向の正の相関がみられた。また、向社会的行動を文脈によって分類したとき、異なる種類の向社会的行動の持続時間はプレイヤーの向社会性と異なる関係を示すことが分かった。
著者
林 志修 佐々木 輝美
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.53-65, 2018

本研究では向社会的デジタルゲームに関する先行研究での課題の解決を試み、向社会的行動を文脈によって定義づけ、その定義に基づき、人気デジタルゲームタイトルの内容分析を行った。内容分析の結果、分析対象になった27個のデジタルゲームタイトルでは1時間当たり平均3.59回の向社会的行動が行われた。内容分析に基づき、デジタルゲームの中の向社会的行動とプレイヤーの向社会性の関係を明らかにするためインターネット調査を行った。その結果、向社会的行動の表現が多くみられたデジタルゲームのプレイ時間とプレイヤーの向社会性の間に有意傾向の正の相関がみられた。また、向社会的行動を文脈によって分類したとき、異なる種類の向社会的行動の持続時間はプレイヤーの向社会性と異なる関係を示すことが分かった。
著者
一小路 武安
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.33-39, 2016 (Released:2019-10-01)

本稿の目的は、成功するゲーム開発につながる組織や環境を検討することである。本稿では組織、 環境、二つの視点から先行研究を整理し、5 つの予備仮説を導出したうえで、インタビュー調査から予 備仮説を改良し、仮説を提示した。具体的には、ゲーム開発が成功につながる要素として、人材教育(仮 説 1 )、人材獲得(仮説 2 )、トップマネジメント(仮説 3 )、ハード間競争(仮説 4 )、新ハード登場時 マネジメント(仮説 5 )に関する提案を行っている。
著者
新田 直也 久野 剛司 久米 出 武村 泰宏
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-12, 2010 (Released:2019-10-01)
被引用文献数
1

近年、大規模化するゲームソフトウェアの開発コストを低減させるため、ゲームエンジンの開発・再利用が盛んになってきている。しかしながら、ゲームエンジンのアーキテクチャに関する学術研究は今のところ少なく、ゲーム業界において混乱を招くひとつの要因となっている。そこで本研究では、われわれの研究室でJava言語を用いて開発した3DゲームフレームワークのRadishを、ゲームエンジンアーキテクチャの比較のためのベンチマークとして提案する。本論文では、Radishのアーキテクチャがベンチマークとして妥当であることを示すために、Java言語で開発された代表的なオープンソースのゲームエンジンであるjMonkeyEngineと比較することによって、ベンチマークアーキテクチャとしての定性的、定量的な評価を行った。定量的な評価に際しては、jMonkeyEngineのチュートリアルプログラムの Radish上への移植作業を行った。その結果、機能の統合容易性、実装効率および実行速度において優位な結果を得ることができ、Radishのベンチマークとしての妥当性を示すことができた。
著者
木村 知宏
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.23-33, 2015 (Released:2019-10-01)

本研究では、情動・覚醒質問紙と唾液中コルチゾール、心拍数を用いて、デジタルゲームの異な る要素が感情経験と生理反応に与える影響についての検討を行う。大学生30名を対象として実験が行わ れ、唾液の採取と質問紙による主観的反応の測定がゲームプレイ前後に 2 回ずつ行われた。実験参加者 は、対戦格闘ゲームの操作技術を学習するゲームモード、またはコンピュータと対戦するゲームモード、 ゆっくりと村での生活を楽しむゲームのいずれかをプレイした(各ゲーム内容をプレイした群を、それ ぞれスキル学習群、対戦群、統制群とした)。その結果、コルチゾール分泌量と心拍数においてはゲー ム内容の違いによる差は見られなかったが、主観的反応において差が見られた。反応速度を要求するゲー ムの要素は、緊張感と活力感を生起させることが示された。
著者
木村 知宏
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.63-74, 2017 (Released:2019-10-01)

本研究では、情動・覚醒質問紙と唾液中コルチゾール、心拍数を用いて、デジタルゲームの異な る要素が感情経験と生理反応に与える影響についての検討を行う。大学生30名を対象として実験が行わ れ、唾液の採取と質問紙による主観的反応の測定がゲームプレイ前後に 2 回ずつ行われた。実験参加者 は、対戦格闘ゲームの操作技術を学習するゲームモード、またはコンピュータと対戦するゲームモード、 ゆっくりと村での生活を楽しむゲームのいずれかをプレイした(各ゲーム内容をプレイした群を、それ ぞれスキル学習群、対戦群、統制群とした)。その結果、コルチゾール分泌量と心拍数においてはゲー ム内容の違いによる差は見られなかったが、主観的反応において差が見られた。反応速度を要求するゲー ムの要素は、緊張感と活力感を生起させることが示された。
著者
八尋 茂樹
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-36, 2012 (Released:2019-10-01)

本稿ではデジタルゲームのうちコミュニケーション可能な癒し系シミュレーションゲームを利 用した、不登校児童、あるいはひきこもり青年に対する教育福祉的支援の施療事例、すなわち、対象 児童(青年)をデジタルゲームを媒介とした施療によってコミュニケーション不全から回復させ、対 峙する問題への対処・治療ができる段階まで促進させるアプローチの試みを提示した。適切な手法に 則って利用することで、一般的な娯楽目的で流通しているゲームソフトの中にも、教育福祉的支援に も有用である、社会性育成的要素を強く含んだ作品が存在する可能性があり、今後、教育福祉分野に おいてデジタルゲーム研究が促進されるべきであると本稿では考える。
著者
鈴木 香織
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.23-28, 2010 (Released:2019-10-01)

今日様々な体験をプレイヤーにもたらすデジタルゲームであるが、その基本はゲーム機というコンピュータと、プレイヤーとのインタラクションである。デジタルゲームが持つ「インタラクティヴィティ」は、かつてはインタラクティヴ・アートとの類似性を指摘されていたが、アートとエンター テインメントという出自の違いなどが原因で、深くは議論されないままとなっていた。本論では、両者を「デジタルベースド・インタラクティヴィティ」という枠組みでくくることで、両者の出自の違 いを一度議論の外に置き、作品の比較分析等を通じて両者の共通項を洗い出すことを目的とする。