著者
菅間 敦 泉 明里彩 瀬尾 明彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.191-198, 2014

ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着して拡張現実や複合現実感の元で3Dコンテンツを視認する場合,頸部や体幹を傾けた不自然な姿勢を取る場合がある.そこで本研究では,HMDを装着して覗き込みを行った際の身体負担を定量的に評価し,HMDの装着と視認位置が身体負担に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験は11名の被験者を対象とし,座位で覗き込み姿勢をとらせ,HMDの有無2条件と視認対象物の位置9条件を実験条件として行った.関節角度,関節の最大トルク比,筋電図,主観的な負担感の指標について解析した結果,HMD装着時には頸部の側屈が小さく体幹の側屈と回旋が大きい姿勢をとることで,身体負荷を軽減する姿勢をとることが明らかとなった.
著者
持田 徹
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.261-267, 1982-10-15 (Released:2010-07-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

人体に関する平均対流熱伝達率を生理特性の配慮のもとに, 熱および物質伝達論に基づく工学手法により理論的に導いた. まず環境との間の熱平衡から裸体と対流熱伝達的に等価な円筒直径として18cmを得, この円筒に Hilpert と Oosthuizen らの無次元式を適用して, 人体に関する平均対流熱伝達率の式: hc=3√270V2+23〔Kcal/m2h℃〕(0.1≦V≦3.0〔m/s〕) を定めた. 本式の特徴は自然対流と強制対流を同時に考慮し, 特に低風速域における自然対流の影響を評価している点にある. さらに, 着衣状態は裸体円筒に衣服を着せた取り扱いをし, 最終的に求められた熱伝達率の検討と過去の提案式との比較も行った.
著者
村野 良太 佐藤 健 友野 貴之 加藤 麻樹
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.103-112, 2023-06-15 (Released:2023-06-21)
参考文献数
38

本研究は靴紐の締め方の強弱(tightness)が歩行動作に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験参加者は男性9名(22.8±1.2歳),女性9名(21.9±1.8歳)とし,歩行課題(自然歩行,努力歩行)と靴紐の締め方の強弱(fit条件,loose条件)を操作した歩行実験を行った.Kinect v2を用いた歩行姿勢測定システムで歩行速度,歩幅,歩隔を,体幹2点歩行動揺計で歩行周期時間,胸椎背部(以下,Th6)および仙骨付近(以下,S2)における3方向(左右,上下,前後)の平均動揺量とHarmonic Ratio(以下,HR)を計測,算出した.すべての分析項目を用いて対応のある二元配置多変量分散分析を実施した結果,歩行課題と靴紐条件について主効果が認められた.loose条件ではfit条件よりも,歩行速度,S2の上下動揺量,Th6の上下方向のHRは有意に小さく,Th6の左右動揺量,S2の前後動揺量は有意に大きかった.本研究より,靴紐の締め方が緩い(loose条件)と歩行中の体幹の動きに影響を与えることが示された.
著者
塚原 進 森永 昭
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.340-348, 1969-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
4

室温に長時間おいた水と油に同時に手を入れてみると水の方がつめたい. 温度計では同じ温度を示している. 著者らは高感度の輻射温度計を用いて測定した結果, 伝導形の温度計では見られなかった著しい差のあることを見出した. もちろん水の方が低く, 伝導形のもので0℃のとき約8℃の差がみとめられた。このことから手ざわりで温度差のある物質とくに衣料について比較してみると, 輻射量に相当の差があって, ほぼ感覚量に比例しているように判断された. これらの結果から, 温度覚は実は輻射熱によって起こされるものであろうと推定した. この観点から考えると, 温度覚に関するいくつかの問題が, 容易に説明できることがわかった.
著者
廣瀬 通孝
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.135-139, 1993-06-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
2
著者
劉 建中 久保 光徳 青木 弘行 寺内 文雄
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-38, 1996-02-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
4 3

本研究では, 5名の男子学生を被験者とし, 弛緩状態での座姿勢と仰臥姿勢において, 2-20Hzの垂直正弦振動を受ける人体の振動伝達特性を, 伝達率と位相差によって検討した. 伝達率は, 人体上の振動加速度実効値を振動台垂直加速度実効値に対する比率で表したものとし, 位相差は, 人体と振動台間の振動加速度の位相角で表した. また振動刺激に対する身体各部位の揺れの感覚について主観評価を行った. その結果, (1) 2Hzでは座姿勢, 仰臥姿勢ともに体全体が1つの剛体として, 振動台とほぼ同じ振幅と位相で振動した. (2) 5Hzと8Hzでは身体の振動が強くなって, しかも姿勢と被験者により各部位の振動状況がかなり異なった. (3) 11-20Hzの範囲では足部と頭部の振動を強く感じる一方, 腹部と胸部はほとんど減衰していることが明らかとなった. 本実験の結果から, 人体における振動の伝播は振動刺激の種類, 方向, 周波数, 強度のほかに, 被験者の体型と姿勢などから大きな影響を受けていることが明らかとなった.