著者
平出 昌嗣
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.249-253, 2014-03

この18世紀の小説は,小説が本来持つべき主題と秩序と統一という概念を故意に壊そうとした作品であり,遊びと笑いの精神に満ちている。主人公の人生はほとんど描かれず,描かれるものは主人公の周囲にいる父親や叔父ばかりである。またプロットも,時間を追い,因果律に従って展開するのではなく,語り手の気分によって自由かつ奔放に展開していく。連想法というのがその方法であり,主人公の物語を進めるふりをして,脱線につぐ脱線で,その脱線ぶりを楽しみ,本筋はほとんど進まないというのが,基本的なパターンになる。さらに語り手は聞き手を人格化し,紳士淑女にひんぱんに話し掛けては,おしゃべりを楽しむ。また白紙や黒塗りのページなどの視覚効果も繰り返し現れる。このように,この小説のおもしろさは小説の概念を大胆に破壊し,読者を翻弄するところにある。This eighteenth-century novel aims to destroy the idea of theme, order and unity which any novel should have as a work of art, and has the lively spirit of play and laughter. What is drawn is not the life of the protagonist, but those of his father and uncle. The plot is made, not on the basis of time and causality, but according to the mood of the narrator, so it goes along free and extravagant. The method is that of association of ideas, by which the story makes digression after digression under the pretense of progression. Furthermore, the narrator enjoys the casual conversation with ladies and gentlemen, the personified listeners of his story. He also makes an appeal to the eyes, providing a blank or a black page, or line drawings. In this way, this novel enjoys throwing readers into confusion caused by the destruction of the idea of a novel.
著者
大芦 治
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.13-19, 2004-02-28

Oashi (2003a) said that type A behavior pattern (type A) is psychologically composed of two components: One is a strong need for achievement the other is a need for maintaining self-esteem. The author tried to explain those two components from the view point of a dynamic psychological perspective. It is found that two components of type A behavior is well understood in terms of H.Kohut's theory of narcissistic personality and further studies from dynamic psychological perspective of type A is needed.
著者
岡部 裕美 冨田 久枝 七澤 朱音
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.191-198, 2017-12

[要約] 今の科目横断形になった「音楽表現」と「身体表現」の指導内容を2008年までさかのぼり,教師の指導内容や学生の学びを公演終了後の受講生の記述内容をもとに質的分析(Text Analytics)を行った。その結果,受講生達が試行錯誤や失敗,成功した実体験を元に多くを学び取り,保育者としての音楽的・身体的表現性を身に付けていく様子が明らかになった。また,過去4回にわたって実施した選修をまたぐ授業相互参観を通して,教員相互のコミュニケーションに質的,量的な変化が見られたことが見て取れた。量的な変化から言えば,明らかにコメント者からの記述量もリコメント者からの記述量も増加していた。さらに,回を重ねる中で参観者・授業者がそれぞれの視点からコメントが述べられるように質的にも変化していった。授業実践者もリコメントの内容に同じ目線と協働意識が芽生えている内容の記述が見られた。
著者
濱田 浩美 小林 静江 真砂 佳菜子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.335-344, 2004-02-28

日光白根山五色沼は,栃木県日光市と群馬県片品村の県境付近の日光国立公園内に位置している。日光白根山の火成作用によって形成された日光火山群唯一の火口湖で,湖水面標高は2,170mである。冬季は完全結氷し,2001年11月下旬の調査において氷の厚さは13cm,2002年11月末では18cm,2003年4月初旬では100cmであった。五色沼は閉塞湖であり,水位を安定に保とうとする自己調節機能をもっているが,水温・水質の季節変化と同様に明らかにされていない。そこで本研究では,日光白根山五色沼において,水位変動および水温変化を観測し,湖水の主要イオン濃度の分析を行うとともに,光波測量を行い,正確な湖盆図を作成した。これらの観測結果から,五色沼における水温・水質の季節変化および水収支を明らかにした。
著者
倉田 達
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.91-104, 1966-07-09

(1)全体として頻度の高い動詞はsing, tell, live, say,……を中心とした場合である。年代的には19世紀20世紀初期にかけて盛んに使用されたと云い得る。従って1930年前後から使用頻度は総体的に下降の傾向を示している。但しlive-lifeは20世紀に入ってから前世紀以上に良く使用され1930年以後の用例も多く,tell-taleは19世紀に良く使用されたが20世紀に入ってその用法はtell-storyに取って代られている。(2)同属目的語の前に形容詞を伴う場合形容詞と名詞との間には慣用性は見られない。(3)double object構文に用いられるcognate objectはsing-song, tell-storyの結合であるがこれらは動詞の性質に由来するものであろうし,又受身構文に用いられる結合にfight-battle, live-life, run-race, tell-tale等があるが此等両構文に用いられるcocrnate objectの種類は全体の極一部に限られていて頻度も低い。同属目的語を含む受動態構文に関しては次の如く三大別できる。i) fight-battle, run-raceの如く能動,受動両方に使用されるのもあるが,能動態構文に比し極めて低い頻度で受動態に使用されるlive-lifeの如きもの,ii) sing-song, say-wordを中心とするものは能動構文に多く使用されているが受動構文はない。又dream-dream其の他の如く能動構文の使用頻度の低いものはbreathe, dance etc.を中心とした場合の如く受身構文はない。iii) fight-fightは受動態構文のみで能動構文はない。以上の如く同属目的語を含む能動構文は受動構文を必ずしも形成できると限らないし又その逆も云い得る。(4)O. E. D.の定義或はH. Sweetの云うようにcoernate objectを取る動詞は'intransitive'である云いO. E. D.はdie-deathを示している。同様にlive-life, run-race, dream-dream, dance-dance……が同じ範疇に入る。同じintransitiveでも目的語を取る点で普通のSVと異なり,VとOの関係が意味上kindredという点で普通のSVOと異る。従ってSVとSVOとの中間的存在であるが構造はActor-Action-Goalと説明される。一部の結合であるが(3)の如くdouble objectや受身構文に用いられた場合は機能上からのみ見た場合は普通のtransitiveの動詞と異らない。唯普通のSVOOと異なるのは動詞と直接目的語とが意味上kindredであるという点だけである。(5)19世紀より20世紀初期にかけてcognate objectが盛んに使用された理由として,(i)市河博士の指摘するようにsing-song, tell-tale, live-life, dream-dream, breathe-breath, run-race, dance-danceの如くalliterationを踏むものが多いこと。又dream-dream, dance-dance等動詞と目的語とが完全反覆をする場合が或る程度多いことによるであろう。(ii) sing-song, tell-tale, dream-dream, dance-dance等,動詞と同属目的語がrhyme word となっているのも見逃せない。(iii)英語における名詞構文好みの傾向も理由の一つであろう。(iv)I型とII型との使用頻度を比較するとsing-song 6 : 15, tell-tale 4 : 4, tell-story 12 : 10, live-life 2 : 23, sav-word 9 : 6, fight-battle 1 : 4, dream-dream 1 : 5 ……となっていてJespersenの云うようにdream-dreamの場合及び同じ範疇に入ると思われるfight-battle, live-lifeに関してはI型は少いので'extremely rare'という表現はそのまま当るのであるが,tell-story, say-wordの結合の場合はI型の方が頻度は高い(tell-taleはI型とII型同じ)。此等3種のI型がII型と頻度が同一かそれ以上の同属目的語の場合には特に次の理由が考えられる。即ち同属目的語の前に不定冠詞や定冠詞が来た場合cognate objectをとる動詞も目的語も単音節語の場合が多いので----型の文章上rhythmicalなことも理由の一つであろう。此のrhythmicalなことはII型の場合も同様と考えられる。次にcognate objectの良く使用された文をC. Bronteから引用しておく。"Mr. Rochester, if ever I did a good deed in my life - if ever I thought a good thought - if ever I prayed a sincere and blameless prayer - if ever I wished a righteous wish, I am rewarded now. - C. Bronte, Jane Eyre (6)細江博士はcognate objectとadverbial accusativeは時に区別し難き場合のあることを述べているがその場合のcosrnate objectは類例と考えられるIII, IV及び,V型,VI型を指しているのであろう。以上usageを中心としてcognate objectを論じたのであるがusageや結語論の外に文体論・意味論よりの考察が行なわれなければならないがそれらは稿を改めることとする。
著者
山崎 良雄 坪田 幸政 垣内 信子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.345-355, 2004-02-28

気象に関するアンケート調査により,児童・生徒・学生の意識・知識の実態調査を行い,学校教育と社会教育の効果を評価した。天気予報の利用の頻度は,全学年で高く,天気に対する関心の高さが確認できた。特に女子は全学年で男子より高かった。気象情報の入手先は,学年進行に伴いその多様化が認められた。十種雲級や天気図記号の理解では,学校教育の効果が確認できた。天気に関することわざは,学校教育では取り扱わない動物に関する天気のことわざも多く指摘されていたことから,毎日の生活の中でも気象に関する知識が獲得されていることが示唆された。季節の変化に対する設問から,学年が低いほど直感的な指標である気温から季節変化を感じ取り,学年と共に季節の感じ方がより高次元に(間接的に)なることが分かった。気象に関する知識の修得は,学校教育とテレビや新聞なども含めた社会教育からなされるために,学年による認知度が用語によって異なることが認められた。そこで,気象用語を成長段階に対応した認知度の変化に注目して6グループ(認知型)に分類した。
著者
妹尾 裕彦
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.203-228, 2009-03

国際コーヒー価格は1989年以降,二度の大暴落・低迷期を経験した。いわゆる「コーヒー危機」である。この危機の要因としては,国際コーヒー協定(ICA)の経済条項の停止や,コーヒーの大幅な供給増が指摘されるが,問題はなぜ経済条項が停止し,またなぜ大幅な供給増が可能になったのかである。本稿は,これらの点も含めてコーヒー危機の要因を多角的に考察する。さらに,コーヒー収入の安定・向上のためには,国際コーヒー協定の経済条項を改訂した上で復活させるのが望ましいことを指摘し,そのための条件を示す。
著者
松尾 七重
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.183-190, 2014-03

本研究の目的は,就学前教育と小学校算数教育との円滑な接続を可能にするために,就学前教育と小学校教育の連続性を考慮した算数教育プログラム案を示すことである。そのために,算数科における数と計算,量と測定領域の学習指導内容の困難性に対する小学校教師の意識,及び幼稚園等での活動と,数と計算,量と測定領域の学習指導内容とのつながりに対する小学校及び幼稚園等教師の意識に関する調査結果を基に,就学前教育と小学校教育の連続性を考慮する必要がある内容を抽出する。そのうち,幼稚園等での活動を関連づけることで問題の解決が可能となる内容について,意識調査の結果とそこで生じた問題への対応策,幼稚園の体験実態,小学校低学年段階の算数の学習指導内容,幼稚園でのプレ体験,小学校での授業改善及びその効果という項目を含むプログラム案を作成する。結果として,何時何分のよみ・表現,長さ比べ等,21項目に関する案を作成できた。
著者
平出 昌嗣
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.207-212, 2011-03

小説の理想として,リドゲイトとドロシアの結婚がある。なるほど,二人は別々の人生を生き,その結婚が描かれているわけではない。しかし,ドロシアにとってリドゲイトは,医療改革をしようとする理想への献身において彼女の理想の男性像であるし,またリドゲイトにとってもドロシアは,身を捨てて夫を助けようとする献身的な態度において理想の女性像である。実際二人は,最も苦しいときに相手の魂に触れ,深い心の交流を体験しており,精神的,象徴的な意味での夫婦となっている。しかし実際の物語では,どちらもその理想を体現しない利己的な相手と結婚することで挫折する。それは作者が,理想を受け入れない社会の現実を描きたかったからに他ならない。しかしながら,その理想の夫婦像は,労働者階級のガース夫妻に描かれている。そこには,人々のために働こうとする労働者の価値観こそが社会を支えるものとする作者の信念がある。The ideal in the novel is the marriage between Lydgate and Dorothea. It is not realized, to be sure, and they live their separate lives. But Lydgate is an ideal figure for Dorothea in his dedication to the medical innovation, while Dorothea is an ideal woman for Lydgate in her self-sacrificing devotion to her husband. They have communion at the nadir of their lives, which suggests that the two are man and wife in a spiritual or symbolic sense. Each of them, in reality, is frustrated in the novel, married to an egocentric partner who does not have an altruistic ideal. The author, depicting failures of marriages instead of the ideal marriage, intends to represent the reality of society that will not accept the ideal. The ideal marriage, however, is depicted in the Garths. In it is shown the author's belief that a worker's eager and sincere intention to work for people's happiness supports the society.
著者
紙屋 信義
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.297-305, 2004-02-28

An improvisation ability, is important for an instruction on a music education, solfege of a player, and fosterage of a fundamental music ability by a keyboard harmony, music performance of an organ on a church music to be on a keyboard instrument. Improvisation importance is watched, recently, as a reaction of a music education by the technique attaching importance to employing an only score. However, in Japanese music education for content and a method about an improvisation, an object is many, and least important with no a system. An education person of music aims at recognition and an improvement to a keyboard instrument and thinks about a method in order to learn a sequence as the measure. I think about impromptu necessity and significance and propose an improvisation method with method of various music. It makes recognition for music enlarge, for a musician to learn an improvisation. It fixs its eyes upon an element of a various music and by making technique of an abundant music develop, can express an abundant music.
著者
戸田 善治 竹内 裕一 大久保 紗容 中村 友亮 松永 智貴 高橋 和雄 天野 孝太郎
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.203-213, 2012-03

本稿は,2010年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究」における,大学教員と大学院生の共同研究の報告である。そこでは,中学生を対象とする授業《ベトナムと日本のODA》を開発した。日本政府は,政府開発援助の方針を決めてきたODA大綱を新たに発表した。この旧から新へのODA大綱の変化とその背景となった要因を捉えるため,ベトナム高速鉄道計画という一つの例について考えつつ,日本の政策決定の一過程について検討させる授業の開発を行った。
著者
戸田 善治 竹内 裕一 大久保 紗容 中村 友亮 松永 智貴 高橋 和雄 天野 孝太郎
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.203-213, 2012-03

本稿は,2010年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究」における,大学教員と大学院生の共同研究の報告である。そこでは,中学生を対象とする授業《ベトナムと日本のODA》を開発した。日本政府は,政府開発援助の方針を決めてきたODA大綱を新たに発表した。この旧から新へのODA大綱の変化とその背景となった要因を捉えるため,ベトナム高速鉄道計画という一つの例について考えつつ,日本の政策決定の一過程について検討させる授業の開発を行った。
著者
平出 昌嗣 ヒラデ ショウジ Hirade Shoji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.187-194, 2009-03

家父長制あるいは男性原理の強い現代社会は,母不在の精神風土を持つ。父の元で育ち,父を失って孤児となったジュードは,深い孤独の中で,「光の都」で学者になるという夢を追う。それは心理的には,もう一度父に属したいという願望を反映する。しかしスーと出会ったとき,彼はその社会的夢を捨て,スーとの愛に生きる決心をする。それは,ジュードの中に欠如していた母を求める願望と言っていい。一方,スーも父の元で育った女性であり,愛に生きようとする女性原理が強く抑圧されている。だからジュードに愛を感じても,同時に彼を退けようともする。それでも,二人一緒に暮らし,愛を育もうとするが,内にある父の支配力は強く,最終的に,それぞれが父の元へ戻ろうとする。即ち,ジュードは「光の都」に戻り,スーは父親像を体現する最初の夫フィロットソンの元へ戻って,愛は崩壊する。このように,ジュードもスーも,母不在の社会の犠牲者になっている。The modern society governed by patriarchy or the male principle is characterized by the absence of mother. Jude was brought up by his father, but when he lost him and became an orphan, he pursued the dream of becoming a scholar in "the city of light" in his loneliness. Psychologically the dream reflects his wish to belong to the father again. But when he sees Sue, he decides to live for love with her, abandoning his dream. The decision reflects his unconscious wish to see his unseen mother. Sue, however, was also brought up by her father and her female principle is strongly suppressed. She loves Jude, but refuses him at the same time. It is true that they live in love with each other, but the father's rule within is so strong that they return to their fathers: Jude goes back to "the city of light," while Sue returns to her father-like first husband. In this way, they become the victims of the modern mother-lacking society.
著者
加藤 徹也 本田 敦也 Kato Tetsuya 本田 敦也 ホンダ アツヤ Honda Atsuya
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.387-395, 2010-03
被引用文献数
1

ハイスピード・ビデオカメラの市販により,運動する物体を撮影して力学法則を確かめるような物理教育の機会が増えている。一般に動画は容量の大きなデータで,その保存・転送・表示における技術上の問題があり,解像度が低い。このため,精度よく物体位置を取得するには限界がある。またハイスピード撮影のデータはフレーム数が多く,効率よい画像処理プログラミングが必要である。われわれは,力学的エネルギー保存の法則の成立を演示することを目的として,512×384pixels の解像度で1秒間300フレームの動画撮影を行い,振り子運動する物体の位置をOpenCVによるプログラミングを通して取得した。画像上で直径81pixel の物体位置を±0.03pixelの精度で得て,水平方向±58pixel,鉛直方向1.1pixelの弧を描く運動から,運動エネルギー・位置エネルギーを十分な精度で決定できた。Recently, the chance to use commercially supplied high-speed video cameras has been increased in physics education to confirm kinetic laws of the motion of bodies. The data files of movies are generally so large in capacity that there are the technical issues to store, transfer, and display the data. In consequence, the resolution of the movie is not enough to determine the position of moving bodies precisely. In addition, the high-speed movies consist of a large number of frames, so that we need to be computer-assisted and to use high-efficient Computer-Vision (shortly, CV) software of the image processing. Thus in order to assert the mechanical-energy conservation law in demonstrational experiments, we recorded motion of some pendulums in the videos with 512x384 pixels in resolution and 300 frames per second in frame rate, and obtained the position of the bodies with a handmade software using OpenCV libraries. In a case of a pendulum, of which the body has the size of 81 pixel in diameter on the image and sweeps in an arc with the horizontal amplitude of ±58 pixels and with the quite small vertical range of 1.1 pixel, the time-dependence of kinetic and potential energies showed the expected compensating behaviors with acceptable errors from the results with the reading positional accuracy of about 0.03 pixel.
著者
土田 雄一 川添 幹貴 尾高 正浩 川添 幹貴 カワゾエ ミキタカ KAWAZOE Mikitaka 尾高 正浩 オダカ マサヒロ ODAKA Masahiro
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.213-224, 2015-03

市原市が実施している「中1ギャップ」の軽減と夢や希望をつなぐことを目指した小中連続道徳授業の成果と課題について,A中学校区(2小1中)の2年間にわたる実践を調査・省察した。6年時に書いた「中1の自分への手紙」を基にした小中連続型道徳授業は,先進性があり,児童生徒も教師も概ね評価が高い。改善した2年目の実践はより充実。汎用性もある。課題は小学校教員の負担増,連絡調整の時間確保,転入生への対応等である。
著者
蘭 千壽 高橋 知己
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.135-139, 2006-02-28

本研究は,<合唱コンクール>を通して劇的に変わった高校の学級事例を,学級集団の自己組織化の観点から検討することで,ある高校生の突飛な行動(ミクロな変動)が学級内の多岐にわたるネットワークシステムでのコミュニケーションを活性化させ,そのことが新たな学級システムおよび生徒たちの新たな個人システムを創出すると考察された。