著者
石原 舜三 佐藤 興平 左 容周 金 鍾善
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.143-158, 2006
被引用文献数
1 3

花崗岩風化殻への REE の濃集を見るために,韓国の中部の花崗岩地域 4 箇所(平均降雨量 1,300 mm/ 年)で予察的な調査を実施した.嶺南帯と沃川帯境界部に沿って伸長する三畳紀の片麻状黒雲母花崗岩(帶江岩体)は REE に富み,平均 414 ppm REE+Y,LREE/HREE = 4.8 である.沃川帯の三畳紀咸昌(ハムチャン)花崗岩類は,アルカリとREEに富むグループ(平均 359 ppm REE+Y,L/HREE = 19.0)と,低いグループ(平均 127 ppm REE+Y,L/HREE = 23)に分けられる.他方,嶺南帯南東部の初期ジュラ紀の陜川(ハプチョン)閃長岩は REE+Y(171 ~ 217 ppm)に乏しい.慶尚盆地の杞溪(キゲ)花崗岩は南山アルカリ花崗岩の断層による片割れと言われているが,その含有量は 200 ~ 300 ppm REE+Y であるに過ぎない. 完全風化帯であるB層を中心とする花崗岩風化物は,帶江岩体では花崗岩平均値が 414 ppm REE+Y であるのに対し,風化土壌は 240 ppm REE+Y で希土類元素が減少しており,風化課程における REE の溶脱が考えられる.杞溪岩体でも 342 ppm から 243 ppm REE+Y へ希土類元素は減少している.その他の岩体での増減は不鮮明である.韓国では花崗岩の風化課程で希土類元素の明瞭な濃集は見られない. 忠州鉄鉱床の採掘跡におけるランダム サンプリングによると,この鉱床は平均 0.2% REE+Y 程度の鉱石を保有していたと推定される.
著者
柳沢 幸夫
出版者
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Geological Survey of Japan
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.105-123, 2010

2006年に実施された「しんかい6500」による潜航調査によって釧路海底谷から採取された12個の岩石試料の珪藻化石分析を行い,これらの試料の堆積年代を明らかにした.釧路海底谷の上流部の側壁から採取された試料の珪藻化石帯は,NPD8帯下部~NPD10下部であり,年代は後期鮮新世~前期更新世である.一方,海底谷の下流部では,斜面堆積物と推定される試料から前期更新世(NPD10帯上部)の珪藻が産出した.また,外縁隆起帯の変形した堆積物からは,中期中新世(NPD7Ba帯),前期中新世(NPD2B帯)及び後期漸新世(<i>Rocella gelida</i>帯)の珪藻が産出した.
著者
ハン チャンタオ チャン アルヨン ホウ シンウェイ Lijun Shan Zhongdao Zhu Ning Wang Eryong Zhang Xinwei Hou Cunrong Gao Yingchun Shi Hongmei Zhao Jianqing Ding Xingchun Liu Baogui Li
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.59-86, 2009
被引用文献数
1

黄河流域の主要な平野や盆地は中国の社会・経済開発にとって極めて重要な地域であるので,その地域の地下水の収支と循環を明らかにすることもまた重要である.本研究では,黄河源流域,銀川平野,呼和浩特・包頭平野,太原平野,関中平野および黄河下流域を地下水の収支と循環に関する研究対象地域として選定し,地下水の水素・酸素の安定同位体比,水質などの特徴を明らかにする.また,地下水の流動系や水収支について考察する.
著者
Nasution Asnawir 村岡 洋文 Rani Mawardi TAKASHIMA Isao TAKAHASHI Masaaki AKASAKO Hideo MATSUDA Koji BADRUDIN Muhammad
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.87-97, 2002
被引用文献数
1 1

フローレス火山弧の溶岩類は玄武岩からデイサイトの組成範聞をもつが,とくに安山岩に卓越し,ソレイアイト岩系ではビジョン輝石,カンラン石を,カルクアルカリ岩系では角閃石や黒雲母を斑晶とし て合む.化学的には,広い範囲のSiO<sub>2 </sub>(51ー67 wt.%)およびAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub> (14-20 wt.%)合量と低いTiO<sub>2</sub> (<1 wt.%)含量を示し,比較的高いRb,SrおよびBa含量を示す. これらKグループ元素はべニオフ帯の深度の増大につれて増加する. ソレイアイトからカルクアルカリ溶岩にかけてのストロンチ ウム同位体比は0.7042-0.7045であり,これも島弧を横断して沈み込むスラブの深度に比例していると推定される. フローレス島の地熱有望地域は若い安山岩や玄武岩の火山地域に位置し,標高500-1000 m にあって,火山活動後の断裂と断層や,カルデラ構造に伴う. 湧出熱水は広い化学的タイプを示 し,硫酸塩型,塩素型,重炭酸塩型に分けられる.硫酸塩型は主に噴気に伴って,高い火山地域 (標高 700-1100 m)に位置し,表層におけるH<sub>2</sub>Sの酸化を示す(Ulumbu, Mataloko, NageおよびSokoria). 重炭酸塩型熱水はLangagedaやSokoria2のように火山中腹 (標高400-700 m)に位置する. 中性塩素型熱水は低い火山地域 (標高5-600 m)に位置し,温度210-280 ℃の地熱貯留層からのアウトフローを示す.地熱井はUlumbu とMataloko地熱有望地域でそれぞれ700-1800 mと200m の深度まで掘削されているが,200から240°C の地下温度を示し,その高い硫酸塩濃度が蒸気卓越型に伴うことを示している. 同様の型はSokoria地域にも期待される. 他方,高塩素型の地熱有望地域はおそらく熱水卓越型か混在型を示すのであろう (Wai Sano, Wai Pesi, Jopu, LesugoloおよびOka).
著者
工藤 崇 檀原 徹 岩野 英樹 山下 透 柳沢 幸夫
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.273-280, 2011

新潟県加茂地域,三条市塩野淵において,中部中新統の七谷層から黒雲母に富むテフラを発見し,塩野淵バイオタイト(Sbi)テフラと命名した.本テフラは灰色を呈する層厚9 cmの結晶質中粒~極粗粒砂サイズの凝灰岩で,七谷層の玄武岩~安山岩火山砕屑岩と明灰色塊状泥岩の間に挟在する.本テフラの構成鉱物は,斜長石(オリゴクレース及びバイトゥナイト組成),石英,サニディン,黒雲母,不透明鉱物を主体とし,微量のジルコンと褐れん石を伴う.本テフラのジルコンFT年代は13.8±0.3 Maであり,微化石層序と調和する.本テフラは,同じく七谷層に挟在し,紀伊半島の室生火砕流堆積物に対比されるKbiテフラと同様な層準にあり,非常によく似た層相を示す.しかし,SbiテフラとKbiテフラは,斜長石組成の不一致,微量に含まれる重鉱物の組み合わせの不一致,ジルコンのウラン濃度の不一致から対比されない.したがって,今後,両者の対比にあたっては注意が必要である.
著者
村岡 洋文
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.27-43, 2008

和歌山県本宮温泉の成因解明のため,その湧出を規制している石英斑岩貫入岩体のK-Ar年代や化学分析値等を検討した.本宮温泉の熱源は四国海盆拡大軸の沈み込みによる高い熱流量に求められる.K-Ar年代測定の結果は高山岩株が14.6 Ma,川湯岩床が14.4 Maを示す.化学成分のQ-Or-Ab系相図から,高山岩株や川湯岩床は深度約 20 km付近で発生したと推定される.高山岩株や川湯岩床の主成分や微量成分は典型的なSタイプ花崗岩で,音無川層群の砂岩に類似し,アナテクシスの融解度が限定された条件で,フリッシュ堆積物のうち,砂岩が選択的に融解した可能性を示す.本宮温泉の熱水貯留層は周辺のフリッシュ堆積物に比べて,冷却節理に富み浸透率の高い石英斑岩岩床や岩脈に求められる.地殻熱流量の高い地域に,深度20 km程度から地上まで透水体が存在すれば,広範な熱水対流が起こる.これが本宮温泉の成因といえよう.
著者
今西 和俊 内出 崇彦 椎名 高裕 松下 レイケン 中井 未里
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.23-40, 2021-03-30 (Released:2021-04-14)
参考文献数
45
被引用文献数
1

中国地域の地殻内応力マップを作成するため,過去12年間にわたるマグニチュード1.5以上の地震の発震機構解を決定した.気象庁一元化カタログもコンパイルし,10 kmメッシュの応力マップとして纏めた.小さな地震まで解析して発震機構解データを増やしたことで,先行研究よりも応力場の空間分解能を格段に高くすることができた.得られた応力マップから,この地域は東西圧縮の横ずれ場に卓越しているが,島根県・鳥取県の日本海側になると応力方位が時計回りに約20°回転して西北西−東南東方向を示すようになる様子が詳しくわかるようになった.応力マップをもとに活断層の活動性について評価を行ったところ,地震調査研究推進本部 地震調査委員会(2016)が評価対象とした中国地域の30の活断層のうち,現在の応力場,一般的な摩擦係数のもとで再活動する条件を満たしているのは28あることがわかった.残りの2つの活断層は現在の応力場では動きにくく,再活動するためには,異常間隙水圧の発生や隣接する活断層の破壊に伴う応力変化でトリガーされるなどの外的要因が必要になると考えられる.
著者
村岡 洋文
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1-2, pp.27-43, 2008-03-31 (Released:2013-08-28)
参考文献数
43

和歌山県本宮温泉の成因解明のため,その湧出を規制している石英斑岩貫入岩体のK-Ar年代や化学分析値等を検討した.本宮温泉の熱源は四国海盆拡大軸の沈み込みによる高い熱流量に求められる.K-Ar年代測定の結果は高山岩株が14.6 Ma,川湯岩床が14.4 Maを示す.化学成分のQ-Or-Ab系相図から,高山岩株や川湯岩床は深度約 20 km付近で発生したと推定される.高山岩株や川湯岩床の主成分や微量成分は典型的なSタイプ花崗岩で,音無川層群の砂岩に類似し,アナテクシスの融解度が限定された条件で,フリッシュ堆積物のうち,砂岩が選択的に融解した可能性を示す.本宮温泉の熱水貯留層は周辺のフリッシュ堆積物に比べて,冷却節理に富み浸透率の高い石英斑岩岩床や岩脈に求められる.地殻熱流量の高い地域に,深度20 km程度から地上まで透水体が存在すれば,広範な熱水対流が起こる.これが本宮温泉の成因といえよう.
著者
金井 豊 三田 直樹 竹内 理恵 吉田 信一郎 朽津 信明
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1-2, pp.1-15, 2006-04-21 (Released:2015-12-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

洞窟内の沈殿物や河床に生成する沈殿物に棲息する微生物などを日本各地から採取し,その中の微生物のマンガン酸化活性を調べた.更にマンガン酸化能を持つ微生物の分離を行い,その分離株について分類や16S rDNA による同定を試みた.また,予察的にボーリングコア中のマンガン酸化細菌の調査を行った. その結果,洞窟や河床からの沈殿物からはグラム陽性桿菌の Bacillus や Curtobacterium,グラム陰性桿菌の Burkholderia 等が分離された.ボーリングコアでは 20 m以深においても微生物の存在が確認され,堆積性の地下環境でも微生物研究が重要であることが示された.更に,微生物生態学的に様々な条件下における微生物のマンガン酸化活性についての実験を行い,最適環境条件等を調査した. 微生物は核種移行に関わる化学環境に直接・間接的な形で影響を与えるため,微生物の総量,種類とその特質,生存環境と活性の有無とが重要な課題である.このようなデータは微生物の種類ごとに相違すると考えられるため,系統的にデータを収集してデータベース化を進める必要がある.
著者
石原 舜三 中野 聰志 寺島 滋
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3-4, pp.93-98, 2005-06-30 (Released:2014-11-15)
参考文献数
18
被引用文献数
9 7

滋賀県南部,田上花崗岩体の代表的試料6 個について主化学成分と微量成分とを明らかにし,特に希土類元素と放射性元素の持つ意味について考察した.田上花崗岩は珪長質 (73.3 ~76.7% SiO2; 8.0 ~8.9% Na2O+K2O) であり,Rb/Sr比は高くマグマ分化が進んでいる.アルミナ過剰度は1.05 前後であり,I タイプに入る.粗粒な中心相はF, Liなどに富み,細粒周縁相はこれら揮発性成分に乏しい.田上花崗岩は全体的に希土類元素と放射性元素に富み,特に重希土類元素に卓越し,フラットな希土類パターンを示す.その原因は,原岩が還元的な珪長質物質であり,かつマグマ分化作用が進んだことに求められる.雲母粘土化変質作用の熱源は花崗岩中の放射壊変熱であった可能性が指摘された.
著者
植木 岳雪
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.21-24, 2015

三重県中部,長島地域の度会郡大紀町阿曽において,大内山川の低位段丘上には大規模な石灰華が発達してい る.石灰華の転石に含まれる木本の葉の AMS <sup>14</sup>C年代は約130年前であり,江戸時代から明治時代初期のものであった.
著者
柳沢 幸夫 山口 龍彦 林 広樹 高橋 雅紀
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1-2, pp.29-47, 2003-02-28 (Released:2015-01-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4 7

福島県南部の東棚倉地域に分布する海成の上部中新統の久保田層から,生痕化石Rosseliaの試料を採取して珪藻分析を行い,計数可能な数の珪藻化石を検出した.これにより 従来曖昧であった後期中新世における珪藻化石層序と放散虫・石灰質ナンノ化石・浮遊性有孔虫層序との直接的な対応関係を明らかにできた.久保田層中部の凝灰岩鍵層Kt-1の直上からKt-4BとKt-4Cの中間までの区間と,久保田層上部の基底部は,Yanagisawa and Akiba (1998)のThalassiosira yabei帯(NPD 5C)の上部に相当する. 久保田層における珪藻化石層序と放散虫・石灰質ナンノ化石・浮遊性有孔虫層序との対応関係は,斎藤 (1999) の標準微化石年代尺度とほぼ一致するが,一部問題も残されており今後の検討を必要とする.久保田層中部は,全体としては外部浅海帯の環境にあったものの,3回の相対的海水準の変動があり,3層準に海氾濫面が認められる.このうち凝灰岩鍵層Kt-3の直上にある最初の海氾濫面が最大のものであり,この層準で外洋性珪藻が多産して珪藻深度指標が最大値を示す.久保田層で認められた古水深(相対的海水準)の変化のイベントは,生層序によって栃木県烏山地域の荒川層群上部に対比できる.相対的海水準の変化は,両地域でほぼ同期している.このことは,この相対的海水準の変化がローカルなものではなく,より広域のイベントであり,グローバルな静海水準変動に支配されている可能性もあることを示唆する.
著者
内野 隆之 石田 直人
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.25-39, 2017-04-05 (Released:2017-04-12)
参考文献数
46
被引用文献数
2

三重県志摩半島の秩父累帯南帯には,中期~後期ジュラ紀付加体からなる築地層群と中期ジュラ紀~前期白亜紀浅海層からなる今浦層群が分布する.5万分の1地質図幅「鳥羽」を作成する過程で,両層群の泥岩から中期及び後期ジュラ紀の放散虫化石を見出し,多くの化石種を基に,より精度の高い堆積年代を示すことができた.築地層群の泥岩はカロビアン期前半~中頃を,そして今浦層群の泥岩はバトニアン期中頃~カロビアン期後半,カロビアン期後半~オックスフォーディアン期中頃,チトニアン期前半という3つの時代を示すことが明らかになった.これらの時代はこれまで報告されていた年代データの範囲に収まる.
著者
Tatsuro Matsumoto Tamio Nishida Seiichi Toshimitsu
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3-4, pp.131-159, 2003-04-30 (Released:2015-01-19)
参考文献数
37
被引用文献数
6 11

アンモナイト類Acanthoceratidae科のUtaturiceras及びGraysonitesの2属は,北海道北西部の添牛内地区の白亜系セノマニアン階下部にかなり産出する.それに基づき両属の特徴を改めて認定し,U.属の3種(内1種は新種)とG.属の2種を記載し,それらの特徴を明示した.U. vicinale (Stoliczka), U. chrysanthemum n. sp., G. wooldridgei Young, G. adkinsi Youngはセノマニアン最下部を特徴付ける.しかしこれらが国内でも海外でも散点した地区からその産出が報告されている事実が気付かれ,若干論述を試みたが,産状についての結論にはさらに研究を重ねるべきである.
著者
柳沢 幸夫 渡辺 真人
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.259-285, 2017-12-28 (Released:2018-04-12)
参考文献数
119
被引用文献数
1 14

新潟県佐渡島の大佐渡地域南部に分布する新第三系~第四系堆積岩類は,これまで下戸層,鶴子層,中山層,河内層,貝立層及び質場層に区分されてきたが,この研究では,珪藻化石年代層序の詳しい研究成果に基づいて,矛盾や問題のあった新第三系堆積岩類の層序区分を改訂し,新たな層序学的枠組みを提案した.従来の下戸層は分割して下部を下戸層(再定義)とし,従来の下戸層上部を「羽二生川層」として独立した地層とした.また,硬質泥岩からなる鶴子層を廃止し,硬質泥岩層を珪藻質泥岩からなる中山層に含め,中山層を再定義した.さらに,従来の中山層上部に認められる海緑石層より上位の無層理塊状泥岩を従来の中山層から分離し,新たに独立した地層として「野坂層」を設定した.この結果,大佐渡地域に分布する新第三系~第四系堆積岩類の層序は,下位より下戸層,羽二生川層,中山層,野坂層,河内層,貝立層及び質場層となった.
著者
今西 和俊 内出 崇彦 大谷 真紀子 松下 レイケン 中井 未里
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.273-298, 2019-06-28 (Released:2019-07-06)
参考文献数
59
被引用文献数
7

関東地域の地殻応力マップを作成するため,過去14 年間にわたるマグニチュード1.5以上の地震の発震機構解を決定した.気象庁一元化カタログや我々の先行研究の結果もコンパイルし,10 kmメッシュの応力マップとして纏めた.小さな地震まで解析して発震機構解データを増やしたことで,先行研究よりも応力場の空白域が減少し,さらに応力場の空間分解能を格段に高くすることができた.得られた応力マップは非常に複雑な様相を示しており,最大水平圧縮応力方位(SHmax)が急変する場所があること,伊豆半島から北部に向けてSHmaxが時計回りに回転すること,数十kmスケールの複数の応力区が確認できること,太平洋沿岸域は正断層場が卓越するなどの特徴が明らかになった.これらの特徴は,この地域のテクトニクスの理解や将来の地震リスクを評価する上で重要な情報である.
著者
中野 俊 下司 信夫
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3-4, pp.197-201, 2008-11-20 (Released:2013-08-28)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

鹿児島県,トカラ列島の北部に位置する小臥蛇島は直径0.5×1 km,角閃石安山岩- デイサイト質の小さな火山島で,底面の直径5×10 km,比高800 m以上の海山の山頂部に当たる.この島の東半分は熱水変質を被っており,2005年及び2006年の現地調査では数ヶ所で噴気・温泉活動を確認した.最近,後期更新世のK-Ar年代が報告されたが,小臥蛇島は第四紀火山であるだけでなく,噴気活動の存在から現在でも活動的な火山であることが明らかになった.
著者
久保田 好美 田尻 理恵
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1-2, pp.211-224, 2019-03-29 (Released:2019-04-12)
参考文献数
13

近年,研究のためのアーカイブ,あるいは教育・普及用の展示物としての保存を目的とし,長尺のサンプリングツール(アルミ型枠)を用いて柱状堆積物試料を板状に長く採取する試みがなされている.一方,海底堆積物や湖底堆積物の柱状試料(コア試料)を半永久的に保存する方法として樹脂包埋法がある.本論は,半割されたコア試料からアルミ型枠を用いて採取した長尺試料(ロングスラブ)の樹脂包埋法について報告する.統合深海掘削計画で採取された日本海の堆積物試料を用い,アセトンでの試料の脱水,さらにエポキシ樹脂の置換を行い,熱重合させ試料を硬化させた.今回用いた堆積物試料は,1 mm厚のアルミ型枠で容易に採取できるほどの柔らかさであったが,堆積物を構成する粒子が小さくよく締まっていた.その結果,樹脂は完全には浸透せず,内部は未固結のままであった.内部の不均一性が影響を与えうるような研究に活用するためにはさらなる手法の改善が必要であるが,展示用としては十分な品質であった.
著者
松本 哲一 中野 俊 古川 竜太 山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.153-163, 2018-08-10 (Released:2018-08-29)
参考文献数
21
被引用文献数
3

山形・福島県境に位置する第四紀の大型複成火山である吾妻火山について,同位体希釈法による38溶岩試料のK–Ar年代測定を行い,火山活動の時間的空間的変遷を明らかにした.吾妻火山は安山岩の溶岩流が主体の火山であり,一部の火山体を除き,岩石学的にはほとんど区別できない.年代測定に基づき,完新世に形成された浄土平火山を含め,12の火山に区分した.最も古い活動は 1200 ka 頃に東側で開始し,徐々に西方へ移動し,700 ka 頃に西端で活動,その後,再び東側に時間をおって活動中心が移動している.従来は,吾妻火山の活動は300 ka 以降,完新世の活動までの長い休止期が存在するとされていたが,その期間にも活動は継続しており,現在まで長い休止期を挟まずにほぼ継続的に活動が続いていることが明らかになった.
著者
山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.323-340, 2003
被引用文献数
8 24

沼沢火山は福島県の西部,火山フロントの背後50 kmにある活火山である.本研究では噴出物層序と噴火年代を再検討し,噴出量の時間積算図を新たに作成した.本火山の噴出物層序は,約11万年前の尻吹峠火砕堆積物及び芝原降下堆積物,約7万年前の木冷沢溶岩,約4.5万年前の水沼火砕堆積物と約4万年前の惣山溶岩,約2万年前の沼御前火砕堆積物及び前山溶岩,紀元前3400年頃の沼沢湖火砕堆積物からなる.沼沢火山の総マグマ噴出量は約5 DRE km<sup>3</sup>であるが,前半6万年間で約1 DRE km<sup>3</sup>のマグマ噴出量であったものが,後半5万年間で残りの約4 DRE km<sup>3</sup>のマグマが噴出している.沼沢火山のマグマ噴出率の上昇は,給源でのマグマ生産率の上昇と対応しているものとみられる.