- 著者
-
酒井 大輔
- 出版者
- 日本政治学会
- 雑誌
- 年報政治学 (ISSN:05494192)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.2, pp.2_295-2_317, 2017 (Released:2020-12-26)
- 参考文献数
- 57
本稿は, 引用分析 (Citation Analysis) の手法を政治学史研究に適用し, 日本政治学史の把握のための新たな分析方法と論点を提起するものである。ここで引用分析とは, 文献間の引用―被引用関係の集積から知見を引き出す方法をさす。従来, テキストの質的分析が主流であるこの分野において, アプローチ上の制約から十分検討されていない論点が残されている。そこで, これらの論点を検証するため, 引用分析という量的アプローチを試みる。本稿では, 戦後刊行された70冊の政治学教科書の引用データをもとに, 日本政治学史についての通説を検証した。先行研究によれば, 日本政治学史には二つの転換, すなわち1945年の戦前・戦後の断絶と, 1980年代のレヴァイアサン・グループの登場による転換があったとされてきた。本稿の引用分析の結果, こうした二つの転換は確認されたが, しかし先行世代への引用の傾向について, 二つは対照的な特徴があることが判明した。この結果は, 政治学史研究における引用分析の有効性を示すものといえる。