著者
森 靖夫
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1_241-1_262, 2008 (Released:2012-12-28)

This article examines the struggle for the control of the army between the army and political parties.   In prewar Japan only military offices could assume the military ministers. It has commonly been accepted that this rule made it difficult for civilians to control the Army and it was the decisive power resource of the army. However, this view cannot explain why party cabinets between 1924 and 1932 failed to institutionalize civilian control over the army and how the army reacted to the establishment of party politics in this period.   This paper mainly provides two new views. First, in the 1920s, the army agreed reluctantly to give up military minister posts to parties due to the rise of parties. Second, in spite of this compromise of the Army, the Army still maintained these posts because the prime ministers and the army ministers agreed to avoid a rapid rule change and control the army by their leadership.   The failure of civilian control in prewar Japan did not stem solely from formal rules. Party cabinets could develop their power and control the Army by aggressively enforcing formal rules and taking their initiative. Yet, they failed to establish their political supremacy over the Army in the 1920s and it led to militarism afterward.
著者
小林 道彦 森 靖夫 瀧井 一博 西田 敏宏 奈良岡 聰智 松本 浩延
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、山県有朋および山県系官僚閥に関する内外史料の収集と整理・分析を通じて、新版『山県有朋意見書』を編集・公刊し、「日本の近代」の再検討を行おうとするものである。底本には大山梓編『山県有朋意見書』(原書房、1966年刊行、以下「大山本」と略称)を用いる。大山本は日本近代史研究などの学問分野における最も基本的な「データベース」として、長年多くの研究者に利用され、多大なる学問的恩恵をもたらしてきた。本研究は爾後半世紀あまりにわたって関係諸機関によって、収集・公開されてきた史料を中心に、新たな史料の探索にも注力しつつ、それらを整理・統合した新版『山県有朋意見書』を公刊することを目的とするものである。2年度目にあたる本年度は、研究実施計画に沿って着実に研究実績を積み重ねることができた。その概要は以下の通りである。①大山本に掲載されている意見書の典拠確認・史料原本の複写作業はほぼ完了した。ただし、10点あまりは典拠不明である。②『公爵山県有朋伝』『明治天皇紀』『明治天皇御伝記史料・明治軍事史』『陸軍省沿革史』等の刊本からの、関連箇所の複写とデータ入力作業は完了した。上記作業に関しては、松本浩延(同志社大学法学研究科博士後期課程)、徳重伸(同博士前期課程)、井本莞司(同博士前期課程)を研究協力者として作業を行った。③前年度に引き続き、大山本に収録されていない意見書の探索を、国立国会図書館憲政資料室、防衛省防衛研究所図書館、国立公文書館、奥州市立後藤新平記念館、憲政記念館、山口県文書館などで進めており、43点あまりの未刊行の新出意見書を見つけ出すことができた。また、海外での史料調査も適宜実施した。④以上の史料リストを全部統合した「統合リスト」を作成し、それを元に出版社(千倉書房)との出版交渉を行った。
著者
松森 靖夫 一瀬 絢子
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.271-277, 2015
被引用文献数
1

本研究では, 計121人の小学校教員志望学生を対象に, 月の見かけの位置と観測時刻に関する認識調査を行った。具体的には, 計7種類の月の見かけの形(三日月, 上弦の月, 十二日月, 満月, 十八日月, 下弦の月, 及び二十六日月)を取り上げ, 夜間の肉眼観測によって見えはじめる位置と時刻, 及び見えなくなる位置と時刻について問うものであり, 質問紙法を用いて実施した。<BR>調査の結果, 科学的に認識できていた小学校教員志望学生は, 満月において約5%であり, 他の6種類の形においては皆無であった。また, 月の見かけの位置と観測時刻に対する小学校教員志望学生のプリコンセプションも認められた。
著者
松森 靖夫 上嶋 宏樹
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.99-106, 2009-03-13
被引用文献数
1

本研究の目的は,以下の2点である。(1)小学校教員志望学生の天文学的資質を高めるために,太陽から放射される可視光線を題材にした学習指導資料を作成する。(2)作成した学習指導資料の効果(太陽から放射される可視光線に対する小学校教員志望学生の認識状態が改善されるか否か)について検討を加える。その結果,以下のような知見を得たので報告する。(1)計7ステップからなる学習指導資料を作成できたこと(ステップ1:2種類の"モノの見え方",ステップ2:太陽はなぜ見える?,ステップ3:太陽の可視光線はどこから出てる?,等)。(2)作成した学習指導資料の効果が実証され,小学校教員志望学生の天文学的資質に改善が認められたこと(本学習指導資料が,太陽から放たれる可視光線に関する認識の向上に寄与できたこと)。
著者
佐々木 智謙 佐藤 寛之 塚原 健将 松森 靖夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.39-51, 2019-07-31 (Released:2019-08-29)
参考文献数
28

本研究の主目的は,腹面から描いた昆虫の体のつくりに対する小学校第2・3学年の認識状態を分析し,その結果に基づき,育成すべき子どもの資質・能力について検討を加えることにある。得られた知見は,以下の4点である。1)腹面から描いた計9種類の生き物を,昆虫とその他の生き物とに分類できた小2は約60%以上,小3は80%以上であったこと。2)腹面から描いた計6種類全ての昆虫の体を三つの部分(頭部・胸部・腹部)に正しく分けることができた小2は皆無であり,小3でも約20%であったこと。かつ,各昆虫の正答率は小2で10%未満,小3でも65%未満であったこと。3)昆虫の体のつくりに対する回答は多様であり,頭部で4類型,胸部で9類型,及び腹部で3類型が存在したこと。4)得られた結果をもとに,昆虫概念の育成を志向した学習指導方策について提案した。
著者
松森 靖夫
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.328-335, 1994 (Released:2023-03-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

In this study, the present author attempted to clarify children’s naive concepts of the embryonic development of killifish, a topic which has seldom been attempted in the past.The author tried to (1) examine whether the children had some naive concepts of the embryonic development of killifish or not before they were taught about it in elementary school science, (2) categorize the children’s naive concepts of this, if any concepts had been identified by (1), and (3) based upon these categories, analyze and consider each child’s naive concept of the development of Killifish.His findings include: (1) children who had not learned about the development of killifish yet already held some naive concepts of it, (2) the children’s naive concepts of this could be divided into four categories, (3) more than 60% of the children exmined in the fourth grade showed awareness of some concepts of epigensis, but none of them had a firm grasp of the concept, and (4) some concepts of the development of animals similar to those held by the ancient Greeks (including Aristotle) were found among the children.
著者
松森 靖夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.27-39, 1999-11-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
20
被引用文献数
4

本研究の主目的は,以下の3点である。(1)命題の科学的真偽を判断する際に,子どもが用いる命題論理について把握する。(2)子どもなりの命題論理に適合した真偽法による評価シートについて提案する。(3)提案した真偽法(評価シート)の活用可能性などについて検討を加える。そして,以下のような知見を得たので報告する。(1)自然の事物現象に言及する命題の真偽を判断する際,子どもなりの多様な命題論理(真・偽以外の新たな真理値を設定する“子どもの多値論理学”)の適用が想定されること。(2)コメット法(“子どもの命題論理学”に適合した“多値真偽法” )による評価シートを開発したこと。具体的には,(「そう思う」・「そう思わない」・「分からない」・「ほかの考え( )」という四つの真理値で構成される評価シートである。(3)提案した評価シートは,理科教育実践において活用可能であると考えられるが,解決すべき課題(命題文の表記の問題など)も想定されること。
著者
森 靖夫 Yasuo Mori
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法学 = The Doshisha law review (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.2621-2647, 2018-02

本稿は、イギリスが日本の産業動員準備をどのように見ていたかをイギリス公文書館の文書を用いて明らかにした。イギリスは世界各国が総力戦に向けた産業動員のための組織づくりを始めていることに着目した。なかでも日本は世界の中でも先んじた国として認識していた。とりわけ1927年に成立した資源局を日本のCIDと評価するなど、日本の国家総動員準備を軍国主義の萌芽と見るどころか、本国との類似点に着目していた。もっとも、日本の準備はイギリスの脅威とはならないと判断していたし、それをもって日本が戦争を企図しているとは少なくとも1937年までは考えていなかった。This paper examines British intelligence and perception of Japan's industrial mobilization from 1918 to 1937 mainly analysing the reports from British military attaché. It shows that British military perceives Japan as an advanced country in industrial mobilization. In other words, it means that they didn't regard Japan's preparation for 'Kokka Sodoin (general mobilization)' as the signs of militarism. Moreover, they saw Shigenkyoku (Resources Bureau) established in 1927 as 'Japan's C.I.D' and thought Japan's plans for industrial mobilization didn't threat to British interests in East Asia until 1937.瀬川晃教授古稀記念論集第一部(I)
著者
松森 靖夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.211-221, 1993-03-20 (Released:2017-10-20)

本研究は,今まで研究対象としてほとんど取り上げられてこなかった児童における空の水平方向の形状認知の類型化を試みるものである.そのため本研究では,(1)空の水平方向の形状認知の記述を試みるため,その調査方法を考案する,(2)調査結果に基づき,児童の形状認知をクラスター分析によって類型化する,(3)学習者の形状認知の類型結果から,教科教育における空の概念の取扱いについて考察する,(4)本調査方法について批判的検討を加える,ことを目的とする.本研究で得られた知見は,次のとおりである.(1)児童には多様な空の形状認知が存在しており,これらの形状認知はクラスター分析によって7類型(類型A〜G)に分類できる.(2)天文教育における天球概念に代表されるような球面として空を認知している者は,小学校第5学年児童のわずか5%にしか満たない.(3)各教科領域で扱われている空の概念の多義性について,教育していく必要性がある.(4)本調査方法には測定誤差等の問題点があり,今後さらに改善していく必要がある.
著者
大矢根 聡 山田 高敬 石田 淳 宮脇 昇 多湖 淳 森 靖夫 西村 邦行
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の国際関係理論は海外の諸理論の輸入に依存し、独自性に乏しいとされる。本研究は、過去の主要な理論に関して、その輸入の態様を洗い直し、そこに「執拗低音」(丸山真男)のようにみられる独自の問題関心や分析上の傾向を検出した。日本では、先行する歴史・地域研究を背景に、理論研究に必然的に伴う単純化や体系化よりも、現象の両義性・複合性を捉えようとする傾向が強く、また新たな現象と分析方法の中に、平和的変更の手がかりを摸索する場合が顕著にみられた。海外の理論を刺激として、従来からの理念や運動、政策決定に関する関心が、新たな次元と方法を備えたケースも多い。