著者
小川 容子 山崎晃男 桑野 園子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.40, pp.103-108, 2002-05-18

本論文は,駅で流されている発車サイン音楽が,電車利用者にどのような印象を与えているのかフィールド調査及びイメージ調査によって明らかにしたものである。回答者は18歳から58歳までの26名。山手線を一駅ずつ乗・降りしながら,各プラットホームで,発車サイン音楽に関する質問,形容詞印象評定と駅全体の印象に関する各質問に回答させ,併せて2ヶ月後に,同じ回答者に駅のイメージ調査をおこなった。その結果,各駅で流されている発車音楽サインのふさわしい度にはそれほど違いがみられないが,発車サイン音楽を含めたサイン音全体に対する不満が「わずらわしさ」や「耳障りである」といった印象を形成していることが分かった。2つの調査でおこなった「形容詞を用いた印象評定」では,迫力性,美的,金属製の3因子が同様に抽出され,実際の乗り降りをおこなっている時の印象とイメージとして思い浮かべる印象の間には,美的因子に関する相関が見られた。The purpose of the present study is to investigate people's impressions to signal music, which rings at platforms. Two kinds of social survey were designed to investigate the subjects' impressions using Semantic Differential and the results were compared with those of laboratory experiments. Three main results were observed: (a) All responses to the signal music could be divided into the same 3 main factors: powerful, pleasant and metallic. (b) There was a correlation on the pleasant factor between social survey and laboratory experiment. (c) Similar feelings (metallic or pleasant) for 6 kinds of signal music were evoked in both conditions: social survey and laboratory experiment.
著者
赤澤堅造 真殿 隼 星野 佑一 加藤大貴 神谷善三 奥野 竜平
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.50, pp.61-64, 2008-05-21

現在,中高年者で楽器の演奏を楽しみたいという希望を持つ人が増えている.本研究室では,開発コンセプトを,"難しい楽曲でも簡単に演奏できる","演奏を楽しめる","上達が出来る"の 3 つとした,バリアフリーの楽譜内蔵型電子楽器 Cymis (Cyber musical instrument with score) の基本システムを開発してきた.本発表では練習には時間を要するが,ボーイングを模擬した動作によりピチカートやアルコなどのバイオリン音による楽曲演奏が可能な弦型 Cymis について発表する.また 6 名の被験者による演奏実験と評価実験を行い,上記のコンセプトに合致した結果を得た.We have developed a barrier-free type of new musical instrument "Cyber musical instrument with score (Cymis)", that the middle and elderly people could play music easily, and joyfully. However, it was difficult for players to control volume of sound with finger pressure. The purpose of this study was to develop a string-type Cymis (Cymis窶都tring) enabling performance of arco and pizzicato with bowing-like motion. Six healthy volunteer subjects played various sorts of musical compositions for an experiment. It was showed that they could play music with Cymis窶都tring and enjoy it.
著者
橋口 博樹 西村 拓一 矢部 博明 赤坂 貴志 岡 隆一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.16, pp.57-62, 2001-02-22
被引用文献数
5

近年,多量の音楽ディジタルデータを個人が所有するようになり,楽曲の検索ニーズが高まっている.これに伴い,著者らは鼻歌から音程を抽出し,音楽音響信号からは主旋律の候補を選定し,主旋律推定のあいまいさを考慮に入れた検索システムを開発した.この検索は,mp-CDPと呼ばれるマッチング手法により実現されている.本稿では,主旋律の検索機能に加え,歌詞を歌った場合の鼻歌を想定し音素認識に基づく歌詞検索機能も導入する.この場合,通常行なわれている音声認識の技術を単に採用するだけでは,歌のようにピッチが激しく変化するという状況を想定していないことと,ボーカル以外のBGMの影響により,音素認識は困難であると考えられる.そこで,本稿では,比較的認識しやすい母音の音素認識を取り上げ,さらに,楽曲からは,mp-CDPがたどった主旋律情報を音素認識に利用する方法を検討する.The integration of rhythm and lyric recognition in a music retrieval system is the main purpose of this paper. In order to realize a music retrieval system based on rhythm extraction, we have already proposed a matching method called "Model driven path Continuous Dynamic Programming (mp-CDP)" to retrieve a part of music signal by a hamming query. This method detects several intervals in a music signal which are similar to a hamming query. This paper focuses on recognizing vowel categories in a song signal. Lyric recognition problem is out of scope of conventional speech recognition problems. Matching paths obtained by applying mp-CDP lead to enhance the features for recognizing vowel categories.
著者
川田 一貴 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.16, pp.79-86, 2001-02-22
被引用文献数
3

我々の日常生活に最も密着した商業施設であるスーパーマーケットには様々な音が無秩序に存在しており、統括的な音環境デザインが施されている状況であるとは言い難い。そこで本論文ではスーパーの運営者と利用者に対してアンケートとインタビューによる意識調査を実施し、理想的な音環境像について検討した。売場において最も利用者に意識されている音はBGMである。利用者はBGMの音量が大きすぎたり、騒がしい曲であること、同じ曲を繰り返すことを嫌うことが分かった。またラジカセなどの販売促進ツールからの音はその音量の大きさや音楽・音声の繰り返しなどから不快に思われることが多く、売場の音環境を劣悪なものにする原因の1つであることが明らかになった。There are various sounds in supermarkets without systematic design. In order to describe the ideal sound environment of supermarket, the questionnaire survey to managers and customers and the interview with managers ware examined. Muzak are most noticeable for customers. Muzak are annoying when they are to loud or noisy. The sounds from promotion tools using public address systems are often felt noisy because they were usually reproduced by loud and low-quality sound reproduction systems. Generally, the repetitious sounds and voices are felt annoying.
著者
青木 秀憲 宮下 芳明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.50, pp.37-42, 2008-05-21
被引用文献数
1 4

本稿では,ウェブサービス「ニコニコ動画」でのコメント頻度によってその映像にともなう音楽のサビ部分の検出や映像要約に応用可能なのかを検証すべく,様々なジャンルの映像をとりあげ評価を行った.In this paper, we investigated various movies on Nicovideo, and checked the relation between the frequency of comments and chorus-section in the music used in it. We also proposed the method for video summarization using the frequency of comments on Nicovideo.
著者
高橋 直也 橋本周司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.90, pp.1-6, 2006-08-07

近年,筝とエレキベースやドラムなどの大音量楽器とのセッションが増えている.弱音量楽器のPAの際に起こるハウリング,外部音侵入,音質劣化の問題を同時に解決する手法として,共鳴部駆動による筝のエレキ化を提案する.筝に内蔵したスピーカを用いて共鳴部を駆動させることを実現した.作成したエレキ筝は10dB程度の音量増幅を実現し,外部音侵入をSN比にして12dB改善し,音質劣化の問題についても改善した.In these years, KOTO which is Japanese instrument and high-volume instrument such as electric bass and drams are often played together. In that case, the volume of KOTO sound must be increased to a satisfactory level for balancing. However there are some problems in amplifying the volume of KOTO sound such as acoustic feedback to cause howling, commingling of other back ground sounds, and degradation of sound quality. In this paper, we propose an electric KOTO with real body. The electric KOTO has a built-in speaker which makes the body resonance. We achieved 10dB amplification of sound pressure level without the problems of acoustic feedback, commingling of other sounds, and degradation of sound quality.
著者
村松 純
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.49, pp.1-6, 2000-05-31

小室哲哉氏作曲の楽譜の旋律情報から,「さび」の特徴抽出を試み,抽出した特徴に基づいた「さび」認識システムの性能を評価した結果を報告する.The extraction of features of 'sabi' from the information about the melody in the scores, which are composed by Tetsuya Komuro, will be studied. The performance of 'sabi' decision system based on the extracted features will be reported.
著者
長嶋 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.32, pp.9-16, 1993-04-23
被引用文献数
7

音楽情報科学研究会主催、日本現代音楽協会共催のコンサート「電楽II」(93年2月11日・銀座十字屋ホール)で初演された、コンピュータ音楽の実験的作品"Chaotic Grains"について、その音楽的コンセプトとシステム構築について詳細に報告する。この作品は、昨年の「リアルタイムのGranular Synthesis制御」システムに続くステップとして、音楽に関する作曲・演奏・即興・対話などを統合的に実現するための"PEGASUS Project"という研究の一環として作曲された。演奏は、ピアニストと、センサ制御も行う指揮者の2人によって行われ、作品の一部であるオリジナルソフトウェア("Chaos Generator")によって、リアルタイムに演奏されるカオス状態が音楽の個々の要素を生成する。このパラメータは、演奏者のコントロールやシーケンス情報によって刻々と変化することにより、コンピュータ音楽の重要な研究テーマの一つである「リアルタイム作曲」の実験的形態を実現した。Musical automata and automatic composition are interesting themes in computer music. This report is about one approach called "PEGASUS Project". to research musical environment for composition or perfomance, and about experimental composing one piece. The piece "Chaotic Grains" is composed in 1992-1993, and performed Feb. 11th in Tokyo (Jujiya Hall). One special software is produced with the concept of "Chaos" in this composition, and some special hardware is produced/arranged for the piece. All parameters are controlled individually by conductor or sequence data in real time, and the results of the generation of chaos are different from each other in every performances. The characters of "Chaos" are changing and metamorphosing every time in this piece, thus there is one kind of "real-time composing".
著者
山上 憲 吉川 茂
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.16(2002-MUS-049), pp.43-48, 2003-02-21

これまでの管楽器のシミュレーション研究では,楽器の気柱自体の細かい特性についての考察はあまりなされていない。本研究では楽器内部の段差に注目することで,楽器気柱の応答の違いがどのように影響するかを検討する。トランペットの管内形状において,マウスピースと楽器の接続部分に段差あり/なしの2つのモデルの反射関数を求め,それを元に物理モデルで発音シミュレーションを行なった。シミュレーションは吹奏圧を一定にする場合と,徐々に上げていく場合の2通りを行なった。その結果,管内の段差の有無による反射関数の違いは,定常音の状態では,違いがほとんど見られないが,音の立ち上がりについては,多少ではあるが違いがあることが確認された。
著者
引地 孝文 小坂 直敏 板倉 文忠
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.16(2000-MUS-039), pp.35-42, 2001-02-22

本研究では、笙の物理モデル構築を目的としている。フリーリード振動に関する文献で用いられた定式化を参考に星の物理モデルを構築し、時間領域シミュレーションを行う。また、人工吹鳴装置を用いて実際の楽器のリード振動、管内圧力、発振閾値圧を実測する。管長と発振閾値圧、管長と発音周波数、吹鳴圧と発音周波数等の関係について、実測値とシミュレーション結果を比較する。その結果、管長と閾値圧及び発音周波数について類似した傾向が見られた。吹鳴圧と発音周波数についてはやや異なる結果となった。また、電のリードは、クラリネットやオルガンのリードパイプとは異なり外向き発振をしているという結論が得られた。
著者
後藤 真孝
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.100(2002-MUS-047), pp.27-34, 2002-10-25

本稿では、ポピュラー音楽の音響信号に対して、サビの区間の一覧を求める手法を提案する。従来、楽曲の音響信号中に何度も出現するサビのどこか一箇所を、指定した長さだけ切り出して提示する研究はあったが、サビ区間の開始点と終了点はわからず、サビの転調も扱えなかった。本手法は、様々な繰り返し区間の相互関係を調べることで、楽曲中で繰り返されるすべてのサビ区間を網羅的に検出し、それらの開始点と終了点を推定できる。また、転調後でも繰り返しと判断できる類似度を導入することで、転調を伴うサビも検出できる。この検出結果は、リアルタイム音楽情景記述システムにおける大局的な記述に相当する。RWC研究用音楽データベース100曲を用いて本手法を評価したところ、80曲のサビが検出できた。
著者
村瀬 邦子
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.14(1997-MUS-024), pp.85-92, 1998-02-13

聴覚訓練機器電子耳を使って、英語、仏語、独語、米語、日本語を母国語とする被験者たちに同5つの言語パラメータをそれぞれに与え、英語を発声する時の知覚や印象、また英語の5通りの聴き取り方による受聴知覚および好みを調べ、母国語がどのように影響を与えるかを調べた。その結果、英語の発声に関しては、イギリス人、アメリカ人、ドイツ人など、高周波成分を含む言語を母国語とする在日外国人は日本語または仏語の言語パラメータでの発声が楽で、中・低周波音域の言語を母国語とするフランス人および日本人は英・米語のパラメータが容易であった。英語の受聴に関しては、在日年数の少ない外国人を除いてすべての被験者が仏語と日本語のパラメータを好んだ。
著者
高橋 理宇眞 藤澤 隆史 長田 典子 杉尾 武志 井口征士
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.90(2006-MUS-066), pp.105-108, 2006-08-08

「音を聴くと,色が見える」という現象は 色聴と呼ばれており,共感覚の1つである.こうした現象は 感覚モダリティ間の関係を明らかにする上で重要な手がかりとなることが期待される.本研究は 色聴保持者において音楽聴取時に実際に色知覚に関与している脳内領野で活動が生じているかをfMRIを用いて計測した.実験はブロックデザインで行われ 課題刺激は音楽,レストはbeep音の呈示が行われた.分析はSPM99を用いて行われた.色聴保持者固有の賦活領域として紡錘状回および上前頭回が抽出され,紡錘状回において色知覚に関わるV4/V8付近で有意な活動がみられた.このことは,色聴が聴覚系と視覚系の直接的な相互作用により生じていることを示唆している.また左紡錘状回が右に比べて広く賦活していることより,色聴は左紡錘状回が相対的に重要な役割を担っていると考えられる.
著者
為井 智也 柴田 智広 石井 信
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.82(2005-MUS-061), pp.47-52, 2005-08-05

ピアノ演奏で重要と言われる「脱力した」奏法と「力んだ」奏法の比較を、示指の3関節を用いた打鍵動作を対象に行う。本目的のため、示指の関節角度、筋電位、鍵盤の変位を同時に記録することの出来る計測システムを開発した。予備的な実験の結果、脱力した場合と力んだ場合では筋電のパターンに違いが認められ、その結果として鍵盤の挙動にも違いが現れることを示す。特に指が離鍵する際の仲筋の活性度と離鍵速度に強い相関が見られた。得られた結果から、今回開発した計測システムを用いることによって演奏者の熟達度を評価する手法となり得ることが期待される。
著者
倉島 研 金地美知彦 畑山 俊輝
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.111(2004-MUS-057), pp.125-130, 2004-11-06

被験者は同一の楽曲を様々なテンポで聴取した。被験者はそれぞれについて印象評定を行い、同時にテンポの好みの程度を判断した。印象評定に用いた44形容語について因子分析を行ったところ、「明るさ」「速さ」「くつろぎ」の3因子が抽出された。これらの因子は80bpmから240bpmのすべてのテンポ条件で抽出された。また被験者に最も好まれたテンポは160bpmから180bpmであった。これらのテンポの時、3つの因子の平均評定値は高い順に「明るさ」、「くつろぎ」、「速さ」となった。各因子の平均評定値がこのような順番となる時に好みのテンポという印象が生じると考えられる。
著者
小林 茂
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.82(2001-MUS-041), pp.9-14, 2001-08-04

1995年の登場以来、BeOSはマルチメディア処理に適したOSとして一部で高い評価を得てきた。しかし、残念ながら一般への普及度は低く、実際にどのようなことができるのかについてはあまり知られていないというのが実情である。BeOSはモダンOSの一つであり、よくデザインされたC++によるマルティメディア(ビデオ・オーディオ・MIDI)処理のためのフレームワーク・プリエンプティブなマルチタスキング・マルチスレッド・高性能な64bitジャーナリング機構付きファイルシステム、といった特徴を持っている。ここでは、リアルタイムのマルチメディア処理環境という視点からBeOSを紹介してみたい。
著者
後藤 真孝 橋本 裕司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.109, pp.1-8, 1993-12-10
被引用文献数
15

本稿ではMIDIとLANを融合した分散協調システムについて述べる.本システムでは,コンピュータの支援を受けながら複数のユーザがMIDI楽器を合奏できる.本システムにより,MIDIに対応した専用機器を用意しなくても,汎用のコンピュータを組み合わせて様々な演奏の支援や特殊効果を得られる.例えば,広域ネットワークを使って遠隔地間の合奏をしたり,他のユーザの演奏状態を視覚化したり,演奏情報に反応して変化するCGを表示したりすることなどができる.これらを実現するために,MIDIプロトコルをそのまま用いるのではなく,ブロードキャストなどの特徴を持つ通信プロトコルRMCPを設計した.本システムは実際にネットワークで結ばれたワークステーション上に実装され,3人での合奏が可能であった.This paper presents a distributed cooperative system, which integrates MIDI and LAN. This system allows the users to play an ensemble with computer support. Because of the integration of MIDI and LAN, various kinds of support are obtained by exploiting existing computers without special MIDI materials. For example, the users may play a remote session through a wide area network. They also may see visualized information of other user's play, and computer graphics reacting to the play. This paper also shows RMCP (Remote Music Control Protocol), which is an extension of MIDI protocol; it supports broadcasting, for example. This system was implemented on workstations connected to Ethernet. In our experience, 3 users were actually able to play an ensemble.
著者
宮宇地 秀和 福田 忠彦 諏訪 正樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.14, pp.13-18, 2005-02-18
被引用文献数
1

本研究は合奏を構築するプロセス,及びそこで見られるコミュニケーションを分析し,熟達者がどのようにして合奏という協調活動を維持しているのかを明らかにするのが目的である.本稿では音楽大学に通う,ペア内で経験の長さの違う女子学生1ペアに焦点をあて,2曲のヴァイオリン二重奏曲の主に合奏練習の過程で生理計測を行い,発話を収録した.眼球運動を計測した結果からは,合奏中には2回しかアイ・コンタクトが行われていないことがわかった.また,呼吸運動データの分析からは,個人,合奏練習にかかわらず,練習の最後の演奏の方が振幅,呼気相間の長さが共に多様になることがわかった.さらにプロトコル分析手法により,ペア内でより経験の長い奏者は音楽的アイデアを楽譜の音楽的形式や強弱,つながり等の要素に基づいて生成し,又それを言葉よりも演奏や弓のジェスチャなどによって表現し,伝達する傾向が明らかになった.The purpose of this study is to prove how expert maintain cooperative activity in ensemble by analyzing process of constructing ensemble and communication in ensemble.Focusing on a pair of female music academy student that there was a difference in experience between player while practicing two pieces of duet for violins,psychological data was measured and protocol was recorded.Analysis of eye movement proved that there was only twice eye-contact in ensemble.Analysis of respiration proved that an amplitude and expiration interval of respiration diversified in the latter performance of rehearsal both separated and joined practice.Protocol analysis revealed that more experienced expert tended to create musical ideas based on musical form or elements from music and convey these by musical performance or gesture than by language.
著者
川上 央 三戸 勇気
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.111(2004-MUS-057), pp.143-148, 2004-11-07

Rauscher(1993)のモーツァルト効果とはモーツァルトのピアノソナタの第一楽章を聴いた場合,空間課題の得点が上がったというものであるが,この研究ではモーツァルトとサリエリの作品での効果の違いを,3分間の計算課題を行った前後の心拍,血圧,血流量,発汗,脳波を指標に検討した.その結果,モーツァルトとサリエリの作品において,顕著な生理反応の違いは見られなかったが,脳波パワスペクトルのβ1帯域において,楽曲による有意差が見られた.このことより,モーツァルト効果は脳波の一部の周波数に影響を及ぼすのではないかと考えた.
著者
渡辺 哲朗 近山 隆
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.113(2006-MUS-067), pp.27-32, 2006-10-27

今日のコンピュータ音楽においては,本来の人間の演奏に内在するずれやゆらぎといった「グルーヴ感」を表現することに困難がある.本研究では,プロのドラマーが実際に演奏したドラム演奏を収録した音源を解析することにより,演奏に内在するグルーヴ感の定量的評価を行い,グルーヴ感を持った「人間らしい」演奏を自動生成するシステムの構築を目指す.本稿においては,演奏中のハイハットシンバルの打点時刻から仮想的なメトロノームの位置を定め,その仮想メトロノームに対する各楽器の打点のずれと打点音量を解析した.その結果,グルーヴ感の種類によって打点のずれの標準偏差や打点音量の平均値に特に大きな差が生じることがわかった.