著者
香川 克
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.83-95, 2014-03-30 (Released:2014-12-24)
参考文献数
84
被引用文献数
1 1

本稿では,2012年7月から2013年6月までの1年間に発表された臨床心理学に関する研究の中から,児童期・青年期を対象としたものを選んで概観した。その結果,「心理療法・カウンセリングの深化」「不登校・ひきこもりへの支援」「発達障害への心理療法」「女性の“傷つき”と行動化への心理療法」「児童養護施設における心理療法」「スクール・カウンセリング」「学生相談」「親への援助」「留学生・外国人への援助」「投映法研究」「児童・思春期の適応」「青年期の適応と発達」などのカテゴリーが見られた。母親になっていく年代の女性の外傷体験や,母親自身の抱える心理的なテーマへの支援の必要性が取り上げた研究があり,さらに,社会的養護をめぐる論文も多く,子どもたちが育つ環境を整えることが難しくなっていることがうかがわれた。このような研究動向の背景に,社会経済的な状況の困難の影響が考えられる。発達障害や不登校をめぐる研究も,子育ての困難さと関連している場合が少なくなかった。このように,育つことや育てることが難しくなっている状況の中で,子どもたちに関わる幅広い立場からの協働作業が求められていることを論じた。
著者
及川 昌典
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.50-56, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
2 3

近年の日本の教育心理学における社会領域の研究は,学校組織における対人関係や集団の問題を扱うだけでなく,人々の心の仕組みを総合的に扱う分野として発展してきている。本稿では,教育・社会心理学の研究目的に照らして,日本教育心理学会第55回総会発表を整理した上で,日本における過去1年間の教育・社会心理学研究の成果について概観し,これからの研究の展望について考察した。総会での発表件数に基づき,適応,対人関係,教師,社会的スキル・社会性の4つが中心的な研究テーマとして選出された。これらのテーマごとに,日本で刊行された研究を概観した結果,いずれのテーマにおいても,理論の精緻化と実践への示唆という両方の目的において,独創的かつ有益な研究成果を見出すことができた。これからの研究の展望としては,教育・社会心理学の目的に適ったこれまでの取り組みを継承しつつ,個々の研究知見や理論を統合する枠組みを提唱していくことや,実践を見据えた理論の構築を通じて,教育・社会の問題への実証的アプローチを推進していくことが期待される。

1 0 0 0 OA 子ども虐待

著者
数井 みゆき
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.148-157, 2003-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
62
被引用文献数
1

子ども虐待は増加の一途を日本でもたどっているが, 虐待についての研究や報告は臨床現場からのものが多く, 被虐待児一般の発達プロセスについては日本ではほとんど研究が行われていない。その実施の難しさは確かにあるが, 家庭以外の場で被虐待児が日常的に関与する学校現場における問題や課題を理解していることは重要だろう。アメリカを中心にした研究の概観から, 学習意欲の減退や学業成果の悪化など基礎学力が大幅に低下をしていること, また, 攻撃性が高くて仲間から拒絶や無視を受けやすいという対人関係の問題を抱えやすいことなど, 学校生活を円滑に送り, 子ども自身が能力を高めていくことが阻害されている現実が明確になった。さまざまな問題に対する教育現場や教師の対応についても論じられている。
著者
西田 裕紀子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.25-36, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本稿では,2012年7月から2013年6月の1年間に日本で公表された,成人期・老年期の発達に関心をもつ心理学研究の動向を展望した。まず,研究の成果を「育児・親としての経験」,「夫婦関係」,「高齢者の心的発達・well-being」,「認知機能・知能」,「その他」の5つのテーマに分類して概観し,個々の研究に関して,新しい発見や生涯発達研究への示唆,今後の課題について論じた。それらの結果から,以下の全体的な傾向が指摘された。まず,成人期・老年期の心理的発達に関する論文の数は,例年と同様に多くはなかった。しかしながら,これまで研究が少ないと指摘されてきた夫婦の関係性に関する論文や,高齢化にともなって社会的な要請の強い高齢者の心的発達・well-beingに関する論文などが精力的に発表されており,この1年間の研究成果は,我が国の生涯発達研究の今後の進展に貢献するものと考えられた。最後に,成人期・老年期の発達研究の重要性と難しさ,今後の展望を議論した。
著者
田村 隆宏
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-11, 2013-03-30 (Released:2013-10-30)
参考文献数
20

本稿では2011年6月から2012年7月までの乳幼児の発達に関わる心理学的研究の動向を展望した。本稿では特に個々の研究成果の教育実践への貢献について焦点を当てた。乳幼児の発達に関する心理学的研究の現在の関心は知覚,認知,思考,言語,社会性,行動に関するものであった。これらに加えて,母親の養育行動に関わるものがこの領域に関連している。これらの研究成果の教育実践に対する貢献を位置づけることの重要性を議論した。
著者
小松 伸一 太田 信夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.155-168, 1999-03-30

記憶研究において近年話題になっているトピックとして, 作業記憶, 潜在記憶, 展望記憶, 記憶の歪み, 自伝的記憶を取り上げ, それぞれのトピックにおける研究動向を展望した。作業記憶研究においては, 中枢実行系の機能を解明していくことがこれからの研究の焦点となっていた。潜在記憶研究では, 無意識的記憶過程との対比によって意識的記憶過程の解明が試みられ, 意図的な想起, 検索結果のモニタリング, 主観的意識経験, という3つの特徴が明示された。これら3つの特徴は, 生態学的妥当性を指向した研究の中で, より詳細な分析が積み重ねられてきた。まず展望記憶は, 回想記憶と比較した場合, 自己始動型検索に依存している点が特徴となっていたが, この特徴は実行機能の反映とみなされた。次に, 検索過程のモニタリングも実行機能の反映と考えられ, その失敗は記憶の歪みや誤りを引き起こすことが指摘された。さらに, 自伝的記憶の想起には, 自己概念が密接に関わり合っていることが示された。実行機能の解明は, 今後の記憶研究にとって重要な課題であることを示唆した。
著者
東 洋
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.125-131, 2000-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
6

筆者の形成期, つまり終戦前後から1960年代初頭に及ぶ間の日本の心理学の流れを, 学生または若手研究者としての体験と印象に即して述べる。この時期はまた戦争による壊滅から, 日本の国力も学問も回復に向かった時期である。教育心理学を関心の中心におきながら, 終戦前後のこと, ゲシュタルト心理学とS-R理論, 戦後の講習会を通じてのアメリカ心理学の影響, 教育心理学の独立, 臨床心理学, 心理学における数学と推計学, コンピューターと認知心理学などの話題から成る。

1 0 0 0 OA 人格7

著者
石黒 影二 落合 良行
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.24, 1985-03-30
著者
牟田 悦子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.124-131, 2002-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
33
被引用文献数
1 5