著者
平井 洋子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.112-122, 2001-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
59
被引用文献数
2
著者
須藤 邦彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.171-178, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
40
被引用文献数
3

本研究では,近年の自閉症スペクトラム障害(ASD)における応用行動分析学をベースにした実践研究の動向を明らかにした。2012年から2017年までの国内における応用行動分析に関連した学術雑誌を対象とした。まず,(a)ASDを対象とする,(b)何らかの介入を行った研究などの規準を満たす論文を抽出した。次に,(a)執筆者や支援実施者の特徴,(b)支援の場,(c)支援対象者の人数と年齢,(d)標的行動,(e)維持と般化,(f)研究デザイン,(g)支援の文脈適合性と社会的妥当性,という7つのカテゴリに分類した。その結果,執筆者や支援実施者に教員や保護者のような関係者が含まれている論文が多く,支援の場についても,全体の69%が教育機関,自宅,施設,あるいは地域であった。また,支援の文脈適合性と社会的妥当性による連携を関係者と行っている論文も多かった。標的行動については,対人コミュニケーションや問題行動がどの年代においても多く該当した。ASDの実践研究において,教員や保護者のような関係者と丁寧に連携している研究のエビデンスが蓄積されていく必要性が示唆された。
著者
平石 賢二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.15-39, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
216
被引用文献数
5

本稿は,日本において2016年7月から2017年6月までの1年間に公刊された国内学会誌5誌と2017年10月に開催された日本教育心理学会第59回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発達研究を概観し,その現状と課題について論じることを目的とした。対象となった研究は日本教育心理学会第59回総会での研究発表と学会誌論文とに分けて研究の動向を分析した。また,分析の対象として選出した研究はそれぞれ青年期と成人期以降に分け,青年期に関する研究はさらに学校段階に応じて分類した。そして,それぞれの研究については,テーマ別に分類し,研究内容やテーマを要約して記載した。 動向分析の結果,成人期以降の研究が少ないこと,青年期研究の中では高校生に関する研究が少ないことが判明した。また,大学生研究におけるサンプリングやサンプルサイズの問題と研究知見の再現性と頑健性に関する問題を指摘した。他方で,モデルとなる大規模研究の存在や縦断研究,実践研究の増加もわが国における発達研究の望ましい傾向として取りあげられた。 また,今後の展望として,生物-心理-社会モデルや理論生成の重要性について論じた。
著者
孫 媛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.109-119, 2010-03-30 (Released:2012-03-27)
参考文献数
71
被引用文献数
2 2
著者
対馬 忠 村山 正治 河合 隼雄 鐘 幹八郎 玉城 政光 水島 恵一 荻野 恒一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.87-93,185, 1980-03-30 (Released:2012-12-11)

The term “human nature” should, according to the symposium organizer, imply both its positive side or humanitarian love, and negative side or aggression-destructive tendency, cruelty, and jealousy, etc. By recognizing human nature as such, we shall be able to have deeper insight and better understanding both on ourselves and other people.In the twentieth century, after the two World Wars, human nature has been discussed from the viewpoint of “war and peace”,but it should be discussed now in relation to the great development of technology as well as the social systems and its structures.The first speaker, M. Tatara mentioned from the point of view of psychoanalysis the malformation and recovery of human nature. He mainly stressed on Erikson's point of view, but pointed out the fact that the recovery also depended on social situations to some extents.The second speaker M. Murayama, a Rogerian introduced the characteristics of C. Rogers' point of view on human nature. The third speaker H. Kawai, a Jungian, grasped human nature with two opposite poles-logos and pathos-and at present he thinks that human nature should be broadly considered in relation to the highly developed technology. He believes that to understand human nature as a whole it should be based not only on organized logical approach, but also on phenomenological one faithful to facts.The fourth speaker, a Skinnerian, M. Tamaki introduced B. F. Skinner's theory on human nature. As Skinner's opinion was thorough going and stimulating though simple in a way, his talk aroused discussions in a heated atmosphere.The fifth speaker, K. Mizushima connected the above four speakers' talks rather systematically in relation to his own 200 clinical caces.The invited discussant, K. Ogino, a psychiatrist, put much emphasis on the importance of the unreasonable quality of human nature, and he was against Skinner.A question was asked by the audience on the relationship between dependence and Amae, and M. Tatara and H. Kawai were requested to answer.They answered that dependence and Amae had not exactly the same meaning, and in relation to this point, the difference between the concepts of ego in the West and Japan should be considered. Both felt further medication was necessary before well-matured answer could be given.
著者
藤澤 伸介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.158-167, 2003-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
52

1999年後半から,「学力低下」が国民的関心事となった。学習指導要領の改訂と関連して, 初めのうちは「ゆとり教育推進派」対「基礎学力徹底派」の対立として議論が展開しそうになったが, 教育心理学者の働きかけもあり, 現在は比較的多面的な認識が世論の主流を占めているように見える。教育心理学の立場からは, これまで教育観に含まれる誤概念が数々指摘されており, これが日本の教育を変質させて学習の質的低下を招き, 学力が低下してきている可能性を見てとることができる。そこでは, 自己を成長させるはずの学習が単なる「労役」と化し, 学習者に意義の感じられないものとなり, 学びからの逃走が発生しているのである。教育心理学の「実践化」の動きとして, 学習の質的向上への働きかけが直接学習者になされ, 教育の質的向上を目指した試みが教員養成活動としてなされている。その他学校への働きかけまで含めると, 教育心理学の「実践化」は加速している。

1 0 0 0 OA 作文の心理学

著者
内田 伸子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.162-177, 1986-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
71
被引用文献数
2 1
著者
日下 菜穂子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.16-29, 2015-06-30 (Released:2015-08-25)
参考文献数
93
被引用文献数
2 4

本稿では,2013年7月から2014年6月までの期間に,日本において発表された青年期・成人期・老年期の発達研究を概観したものである。1年間の研究は,認知・知能に関する発達研究,自己・自我の発達に関する研究,社会的行動・関わりの発達研究,進路・キャリア・社会参加の5つのテーマに分類した。この1年に,認知・知的機能に関する領域を中心に,青年から老年までの成人期全般にわたる幅広い年齢を対象とした研究が報告されていた。年齢的変化を検討する研究に加えて,個人の発達の過程を他者の発達と関連づけた研究や,文化や社会との相互作用に注目する生涯発達的視点からの研究も活発に行われていた。1年間の発達研究には,臨床や教育の場における実践的な応用を念頭におく研究が目立ち,臨床実践から研究への示唆を含む研究も見られた。発達研究の概観を通して最後に,発達の基礎研究と臨床実践との間の往還的関係の重要性について論じた。
著者
松尾 直博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.165-182, 2016

日本の道徳教育は大きな転換点を迎えようとしている。小中学校において, 今まで領域とされていた道徳の授業が, 「特別の教科 道徳」として教科として位置付けられ小学校では平成30年度(2018年度), 中学校では平成31年度(2019年度)から実施されることとなった。道徳教育, 道徳科の授業の目標が明確化され, 効果的な授業についてもより開発の必要性が高まっている。近年日本で行われた道徳性や道徳教育に関わる研究を概観しつつ, その知見が道徳教育にどのように貢献できるかについて考察を行った。その結果, 道徳的判断, 子どもの道徳性の経年比較, 感情が道徳的認知に及ぼす影響, 共感, 海外の道徳教育, 道徳の授業実践に関する研究などが行われており, そのような研究の道徳教育への応用可能性について考察した。今後の展望として, さらなる基礎, 授業に関する実践研究などの必要性が述べられた。
著者
井沢 千鶴子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.194-204, 2002-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
58

The Atkinson-Shiffrin (A-S, 1968) model enhanced James' (1890) dual memory processes (short-, long-term memory/STM, LTM) over Ebbinghaus' (1885) unitary process. But, Baddeley and Hitch (B-H, 1974) attempted to replace STM by working memory (WM).The Japanese Monbu-sho previously translated WM as “Sagyo Kioku, ” but later changed to “Sado Kioku.” All 30 Japanese-English bilinguals (Exp.1) and 19 Chinese-English bilinguals (Exp.2) selected “Sagyo Kioku” as expressing WM best, and 98% rejected “Sado Kioku”. Results underscore the necessity for reviving the older, more accurate terminology, “Sagyo Kioku” henceforth.The alleged demise of STM/replacement of STM by WM claimed by some WM enthusiasts/sympathizers appears inappropriate: No objective signs of the diminution of STM research, contrasted with WM activities, emerged via Psychological Abstracts, Citation Indices, and the thrusts of 39 critiques in Cowan (2001). Both STM research and the evolution of A-S type models continue to thrive with greater vigor than those of WM.Definitions of WM diffe r greatly among individual models/experiments. Such difficulties are compounded because WM does not adequately describe the psychological processes by excessively limiting itself to the memory components alone, stifling creative development of this field.To resolve current terminological chaos, Izawa (2001) proposed Working Cognit i o n (WC), a far more comprehensive construct that involves all cognitive processes (including memory) necessary for solving any task. The strengths of WC dwell in its capacity to accommodate many problems/issues raised by representative models because WC includes all cognitive processes and their dynamic and flexible properties toward a Newell (1990) type unified theory.
著者
永松 裕希 松川 南海子 大井 真美子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.166-175, 2004
被引用文献数
1

知的能力や言語に遅れがなく,また主要な感覚の障害あるいは麻痺などの運動機能に関わる疾患がないにも関わらず,運動技能に困難さを示す子どもたちがいる。このような障害は発達性協調運動障害(DCD)と呼ばれ,子どもの学習や日常生活において問題を生じさせている。従来から「不器用」という言葉で認識されていたこの障害が,公式の国際的な分類体系の中で,独立した障害として認識されるようになったのは,ごく最近になってからである。本稿では,特に,DCDの学習への影響として,眼球の協調運動の問題と読み能力について言及し,読みに問題がある子どもの半数以上に眼球の協調運動の問題が確認されたという調査結果を紹介した。さらに,このような協調運動における問題が2次的に自己認知や社会的有能感の低下を生じさせるという報告もあり,一人ひとりに応じた心理教育的援助の必要性が大きいと考える。
著者
高橋 美保
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.98-112, 2017-03-30 (Released:2017-09-29)
参考文献数
61
被引用文献数
4

本論は2015年7月から2016年6月末までの1年間の教育心理学における臨床心理学領域の研究動向と課題を論じるものである。前半は日本教育心理学会第58回総会の発表について, 研究の動向と課題を論じている。後半は, 臨床心理学に関する3つの学術雑誌から56の論文を抽出し, 臨床心理学的問題, アセスメント, 臨床心理学的援助, 専門職教育の視点から研究動向を整理し, 最後に, 今後の課題を述べた。