著者
高橋 宏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.182-204, 1992-12-15
被引用文献数
9

自動車の駆動系やシャシ系の制御を考えるとき、自動車メーカにとって最適な制御特性を実現するための制御戦略を決定することは容易なことではない。車両がどのような環境を走行しているかを認識することは、最適な制御戦略決定のため有益な情報となる。従来こうした走行環境の認識を考える方法論としては、C.C.D.カメラやその他のハードウェアデバイスを自動車に装着して外的情報を入手することが考えられた。しかし、この手法では自動車の価格を引き上げてしまう。そこで、上記のようなハードウェアの追加無くして、走行環境や車両の状態が検知できる手法が望まれていた。本論文では、ドライバーの操作から走行状況を認識するヒューマンセンサを提案した。ドライバーは彼等の目や耳で外的状況を知覚した結果としてハンドルやアクセルおよびブレーキなどを操作している。つまり、ドライバーは自動車にとってセンサと位置付けられる。よって、センサの出力であるハンドルやペダルの動きを解析することによって、ドライバーが知覚した対象を推定しようとした。しかし、こうした推定モデルの検討は、ドライバーの操作特性があいまいなため厳密に扱うことが難しい。そこで、ドライバーの操作から操作分布を考慮しながら、ファジィデータを生成し、ドライバーの運転操作をあいまいな量として扱った。さらに、このファジィデータにファジィ数量化理論第II類を適用することによって、走行状況を認識するための判別指標を生成した。本手法の適用例として、自動車のサスペンション制御への適用を検討し、その状況判別の効果を評価した。またドライバーの個々の操作特性に対する適応化についても検討した。
著者
椹木 哲夫
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.463-467, 1996-06-15
被引用文献数
4
著者
岩田 満 鬼沢 武久
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.532-540, 1996-06-15
被引用文献数
14

本論文では、人間とコンピュータとのコミュニケーションの一例として、目的地までの道順が自然言語で与えられた場合を想定している。そして与えられた道順を理解し、経路決定を行うモデル、およびその経路決定モデルの状況に応じて、「喜びの表情」「不安な表情」などを表現する表情表現モデルを計算機上に実現する。経路決定モデルでは、自然言語の持つ意味のあいまいさを処理するためにファジィ集合を用いている。教示で与えられた言葉の意味を表すファジィ集合とモデルの周囲に見える情報の意味を表すファジィ集合との適合度を定義し、この適合度を用いて経路を決定する。一方、表情表現モデルでは、経路決定モデルの状況からファジィ推論を用いて感情を推測し、学習したニュートラルネットワークを用いて顔の各部の変化量を求め、顔の表情を表現している。いくつかのシミュレーション結果から、あいまいな教示が与えられたとしても経路決定モデルは目的地に到達できること、しかし、あいまいさの程度が大きくなると人間のように道に迷ってしまうことがあることがわかった。また表情表現モデルによって、経路決定モデルがどういう気持ちで目的地まで進んでいるかなどがわかるようになった。
著者
津田 栄 勝又 保雄 山下 元 清水 誠一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.570-584, 1994-06-15
被引用文献数
30

ソシオメトリーは, モレノ[1]の提唱した集団成員の関連構造の測定法で, 成員相互の好き嫌いの程度から解析されるが, その構造を明確に表すことは, 仲々困難である.筆者等は, ファジィグラフを応用することにより, 新しいソシオメトリー分析法を考案した.本方法は, 幾つかの質問から得られる応答データから成員の関連状態を測定し, ファジィグラフを構成し, 解析するものである.ファジィグラフのクラスター分析, 近似構造分析などを適用することにより, 近似的なソシオグラムが構成でき, 集団構造の特徴をかなり明確に抽出することができる.本稿では, ファジィグラフを応用したソシオグラムの構成法, 分析法を論ずると共に, 学校教育に関する適用事例を通じて, その効用を述べる.
著者
張 昆竜 廣田 薫 中川 友紀子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.131-139, 1997-02-15
被引用文献数
2

クリーネのファジィ論理はクリーネ代数で表現され、クリーネ代数を一般化したものがドモルガン代数である。本論文では、クリーネ代数、ドモルガン代数が中心をもつための必要十分条件と分配束がクリーネ代数、ドモルガン代数になるための条件を考察する。また、中心をもつクリーネ代数とドモルガン代数の構造について述べる。

1 0 0 0 PID制御

著者
須田 信英
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.768-771, 1995
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
磯本 征雄 野崎 浩成 吉根 勝美 長谷川 聖美 石井 直宏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.54-64, 1996-08-15
被引用文献数
12

本論文では, 感性情報を伴う情報検索に印象語のキーワードが有用であることに注目して, シソーラス中での印象語の類義語関係の強さを定量的に決める手法を議論する。一般に, 美術作品の批評や鑑賞は情緒的・主観的・感覚的であり, この領域の情報検索では, キーワードとして印象語が多用される。ところが, 印象語には複雑で曖昧な多数の類義語があり, 情報検索にはファジィ・シソーラスによる統制が不可欠である。本論文では, 印象語を一群の刺激事象が持つ属性のファジィ集合とみなし, 曖昧な類義語関係をメンバーシップ関数や類義語係数として実験的に定量化する手法を提案する。この手法の特徴は, 複数被験者に一連の刺激事象を提示して印象語に関連した反応データを収集し, これらの解析を通して印象語のファジィ類義語関係を算出することにある。この結果は, 感性情報検索の印象語シソーラスとして, ファジィ・データベースの機能に組み入れて活用できる。
著者
向殿 政男 菊池 浩明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.209-222, 1990-05-15
被引用文献数
15

真, 偽の他に未知や矛盾の情報を表現するために, 無限多値論理としてのファジィ論理を拡張した「ファジィインターバル論理」を提案する.そこでは, いかなる命題も区間真理値[n, p]を取ることが許されており, そして, その区間真理値は言語真理値の特殊な場合として, また数値真理値の一般化として定義されている.ここで, n及びpは区間[0,1]の間の任意の値である.本論文では, あいまいさと真偽それぞれについて2つの半順序関係を導入して, 基本論理演算が定義されている.それによって構成されるファジィインターバル論理関数のいくつかの性質が明らかにされる.ファジィ論理で成立していたクリーネ律は, ここでは必ずしも成立しない.新しく証明される量子化定理を用いることで, 二つのファジィインターバル論理関数が等しいための必要十分条件は, 4つの区間真理値{[0,0] , [1,1] , [0,1] , [1,0]}についてのみそれらが互いに等しいこと, すなわちファジィインターバル論理は本質的に4値論理であることが証明される.
著者
石 岩 水本 雅晴 湯場崎 直養 大谷 正幸
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.103-113, 1996-08-15
被引用文献数
13

ファジィ規則の自動生成あるいは微調整を行う方法として, 最急降下法によるガウス基底型メンバーシップ関数を用いたニューロ・ファジィ学習アルゴリズムがよく知られている。しかしながら, この従来法は入力変数が増えると共に, チューニングされるパラメータの数が膨大になり, ファジィ規則表による表現が困難になり, 低発火現象が生じてくるという問題点を持っている。本論文では, 従来法を議論すると共に, その改善法を提案する。この方法では, 前件部のメンバーシップ関数が入力変数ごとにより設定されているというもので, 学習を行う時, パラメータの数が少なく, ファジィ規則表が変化せずに, しかも低発火現象を抑制できるという特徴を持つ。これにより, いわゆるファジィ規則表のチューニングを本手法の下で実現することができる。また, 関数の同定を行い, 従来法との比較・検討をすると共に, 提案した手法の有効性を示す。
著者
岩崎 隆至 森田 温 丸山 寿一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.639-649, 1993
被引用文献数
2 1

本論文では、制御対象の同定結果に基づいて制御対象をクラス分けし、予め用意されたそのクラスに最適なルール群を用いてPIDゲインのチューニングを行うファジィオートチューニング法を提案する。このチューニングアルゴリズムの特長は以下のようにまとめられる。(1)制御対象の運転中の出力を繰り返し評価しながらPIDゲインを修正できるので、この方式によるチューニングは外乱に強くなる。(2)提案したアルゴリズムが適用できる制御対象の範囲は、従来のファジィオートチューニング法より広くなる。(3)同定結果はプラントのクラス分けにのみ用いられるため、チューニング性能は、同定誤差の影響を受けにくい。この方式を、一次遅れ+むだ時間系を制御対象とするPIコントローラのオートチューニングに適用し、シミュレーションおよび実験により、提案した方式が様々な特性を持つ一次遅れ+むだ時間系に有効であることを示した。
著者
高柳 浩 山ノ井 高洋
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.402-407, 1997-06-15
被引用文献数
1

農作物の選別作業において、曲がり具合は重要な要因の一つである。特にアスパラガスやキュウリなどの曲がり具合は商品価値に直接影響する。曲がり具合の選別基準が曖昧なために選別の自動化は容易ではないにも関わらず、限られた時期に効率よく出荷するために選別の自動化に関する要求は極めて高い。アスパラガスの形状選別を自動化するために、我々はファジィ論理を曲がり度合の確定に用い、ニューラルネットワークを曲がり具合による形状の分類に用いた。この手法により、アスパラガス100本のサンプルで93%が熟練者の視覚による選別と一致した。
著者
鎌野 琢也 福見 淳二 鈴木 茂行 原田 寛信 片岡 雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.47-56, 1996-02-15
被引用文献数
13

複数の駆動軸を有するプラントにおいて, 各軸を定常状態のみならず過渡状態においても高速に同期化できれば製品精度や作業効率の著しい向上が期待できる。しかしながら, 各軸の動特性は一般に大幅に異なっており, それらは運転状態により変動する。また, 著しい非線形性を有する場合もある。それゆえ, ベルト掛けなどによる機械的な駆動方式あるいは, 固定ゲインコントローラを用いる従来の制御方式では高速な同期化に限界がある。本論文では, 自己調整ファジィフィードフォワードコントローラを用いた高速同期システムを提案している。本システムは固定ゲインフィードバックコントローラと自己調整ファジィフィードフォワードコントローラから構成されており, 各軸間に同期化コントローラが設置されている。各軸のファジィコントローラの後件部変数は各軸の追従誤差信号だけでなく、両軸間の同期化誤差をともに零収束させるようにチューニングされる。チューニング終了後, 両軸は同期状態を維持しつつファジィコントローラにより制御対象の等価的な逆システムが構成されるので追従特性が改善される。DCサーボモータを用いた二軸位置決めシステムに提案するコントローラを適用した場合, 優れた追従特性および高速な同期化特性が得られることを実測により確認している。
著者
菅野 道夫 室伏 俊明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.174-181, 1990-05-15
被引用文献数
2
著者
山田 耕一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.78-88, 2001-06-15
被引用文献数
1

確率と可能性間の変換はZadehが可能性理論を提案して以来多くの研究者により研究されてきた。しかし、既存研究の多くは確率と可能性間の変換時に満たすべき条件を議論し、発見的に考案した変換式がその条件を満たすことを証明するに留まる。したがって提案された変換式が与えられた条件を満たす唯一の式とは限らないものが多い。本研究では証拠理論に基づく3種類の変換法を新たに検討し、議論する。これらの方法はいずれも確率と可能性間の変換において満たすべき原則を与え、その原則から一意に導かれる変換法を得る。1つの変換法(T1)では可能性を順序尺度と見なして与えられた確率分布から可能性の大小の順序構造を得る。残る2つ(T2、T3)は可能性を不確実性の比例尺度として扱い、確率分布から可能性分布を導く。特にT3に使われる原則は双方向に変換可能な式を導くが、それはDubois & Pradeが発見的に導いた変換式と全く同一になる。これらの3種類の変換法は、確率から可能性を求める場合にはまたく同一の可能性の順序構造を得るが、可能性分布についてはT2とT3で異なる。そこで確率分布から可能性分布を求める場合、T2とT3のどちらがより望ましいかを与えた原則の観点から考察する。考察の結果T3が望ましいことが示唆される。
著者
工藤 康生 村井 哲也 伊達 惇
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.108-117, 1999-08-15

可能性理論の枠組において信念更新を正確に定式化する.信念更新は世界の動的な変化に対応して所有する情報を変更する操作を定式化し, その理論的な性質を扱う.Katsuno and Mendelzonは論理的枠組における信念更新の操作として更新および消去, 対称的消去の3種類の操作を提案している.Dubois and Pradeは論理的枠組における更新の操作を, また, Kudoは論理的枠組における消去の操作をそれぞれ可能性理論の枠組で表現しているが, 定式化に不正確な部分が多い.本論文では, Dubois and Pradeによる可能性理論における更新の定式化では更新の結果が常に構成できるとは限らないことを指摘し, 可能性理論における更新を正確に再定式化することで, この問題点を解決した.また, 消去の操作および対称的消去の操作を可能性理論の枠組で新たに定式化し, 動的な世界の変化によって所有する情報を失う場合の極小変化として特徴付けた.更に, 不確実な情報に基づく信念更新を提案し, 対称的消去は不確実な入力に基づく信念更新における本質的な操作であることを例示した.