著者
谷垣 靜子 乗越 千枝 長江 弘子 岡田 麻里 仁科 祐子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.111-115, 2016 (Released:2016-06-24)
参考文献数
16

目的 : マグネット訪問看護ステーションの管理者を対象に職員の定着のためにどのような組織育成を行っているのか, 管理者の考えや取り組みを明らかにする.方法 : 訪問看護ステーション管理者6名を対象にインタビューを実施し, 質的帰納的分析を行った.結果 : 管理者は, ≪看護実践を共有し訪問看護のレベルをあげる≫努力をし, ≪利用者・家族の期待に応える≫ため≪多職種とチームを組む≫ことで【訪問看護の使命を示す】ことに取り組んでいた. また, 管理者は, ≪スタッフの強みを伸ばす≫≪スタッフの主体性を育む≫ことに努め, ≪スタッフのワークライフバランスを考える≫ことで【スタッフ個々の個性を活かし育む】職場づくりに取り組んでいた.結論 : 訪問看護ステーションの管理者は, 訪問看護のレベル向上と職員の労働環境整備に取り組むことで, 職員の定着を図っていることが明らかとなった.
著者
沢崎 健太 星川 秀利 宮崎 彰吾 向野 義人
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.260-264, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
14

目的 : 非侵襲性の微細突起による皮膚刺激を用いて, 大学生の便秘に及ぼす影響を検討した.対象 : 便秘の事前調査を回収できた280名の内, 研究趣旨に同意が得られた17名とした.方法 : 微細突起を耳甲介腔に各自貼付するS群 (9名) とプラセボP群 (8名) を封筒法により無作為に割付け, 便秘 (CAS-J) , 体重, 体脂肪率, 血圧の評価を行った.結果 : S群では介入開始前と比較して研究終了後にCAS-Jが有意に低下 (P=0.02) したが, P群では有意な差はなかった. 両群共に体重, 体脂肪率, 血圧は研究終了後に有意差はみられなかった.結論 : 本研究は耳甲介腔への微細突起による非侵襲性の皮膚刺激が便秘の改善傾向, 特にセルフケアの一手段として活用できる可能性を示唆する.
著者
新森 加奈子 木村 琢磨 松村 真司
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.18-23, 2018-03-20 (Released:2018-03-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1

近年,我が国では患者の“ケア移行”(患者が医療サービスを受ける医療機関や療養の場を移行し,ケア提供者が変わること)が増加しているが,我が国では「ケア移行という概念」や「ケア移行に伴う望ましくない患者アウトカム」について不明な現状である.我が国において「ケア移行」について考慮する際には,患者背景(年齢,基礎疾患,介護力),やりとりされる臨床情報,臨床情報をやりとりするツール,を考慮する必要がある.欧米では「病院を退院した患者の診療所外来へのケア移行」の際に,「薬物に関する有害事象」「入院中の検査結果が確認されない」「患者に予定されていた診療方針が実行されない」などの望ましくない患者アウトカムが退院患者の19%から50%で発生しているという.今後,我が国でも,ケア移行の現状把握がなされ,我が国の医療システムをふまえた対策について検討される必要がある.
著者
佐々木 春喜
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.333-337, 2013

臨床検査において感度・特異度などベイズの定理が利用されていた. 近年, 病歴や身体所見の尤度比が報告されるようになりベイズの定理を用いた確率的推論が可能になってきた. シャーロック・ホームズの探偵術における確率の発言に注目し, 逆向きの推理はベイズの定理に一致することを示した.
著者
大河原 知嘉子 森岡 典子 柏木 聖代 緒方 泰子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.85-91, 2019-06-20 (Released:2019-06-26)
参考文献数
28
被引用文献数
1

目的:訪問看護事業所の教育・研修内容の実態を可視化し,事業所規模により比較する.方法:2015年度介護サービス情報公表システムのデータを用い,東京都の訪問看護事業所を対象とした混合研究法を実施した.研修内容に関する自由記載から研修主催情報とテーマのカテゴリを作成し,事業所規模とのコレスポンディング分析と,各研修の実施割合と規模を量的に解析し結果を統合した.結果:311か所を分析対象とした.研修主催機関8カテゴリのうち,「医療機関」は中規模でより記載され,規模が小さいほど実施割合が高かった.研修テーマ38カテゴリのうち「精神科看護」「小児看護」などは中規模以上で記載されており,量的にも規模が大きいほど実施割合が高かった.結論:東京都の訪問看護事業所における教育・研修主催機関・テーマが明らかとなった.規模によらず様々な研修機関を活用していた一方,テーマは規模との関連が見られた.
著者
中西 真一 藤原 純一 加賀谷 結華 高橋 久美子 澤邉 淳 三浦 勉 粕谷 孝光 福岡 岳美 小野 剛
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.233-237, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的 : 大腿静脈カテーテル留置時に上行腰静脈へ迷入すると, 後腹膜血腫等の合併症を引き起こす可能性がある. しかし, カテーテルの迷入についてはあまり認識されていない.方法 : 2011年4月から2013年3月の間に当院で大腿静脈カテーテルを留置した患者107名を対象とし後ろ向きに検討した.結果 : 上行腰静脈への迷入は11/110回 (10.0%) で認め, 左側で5/34回 (14.7%) , 右側で6/76回 (7.9%) だった. 位置確認の腹部レントゲン検査で, カテーテルが側方へ変位している場合, 頭側に急峻に立ち上がる場合に迷入の可能性があった.結論 : カテーテル迷入は稀では無く, 迷入が疑われれば積極的に腹部CT, 側面レントゲン等の追加の検査が必要である.
著者
生坂 政臣
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.77-79, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2

診断推論のプロセスは, 疾患仮説を生成する前半と, 生成された仮説を検証する後半に分けられる. さらに前半の疾患仮説生成のプロセスは, 症例の難易度や医療者の有する経験と知識体系により, 1) 確信のある疾患を即座に思いつく, 2) 自信はないが何とか疾患を想起できる, 3) 何も浮かばない (あるいは絞り込めないほど膨大な鑑別数となる) の3パターンに分けられる. 1), 2) の場合はヒューリスティックバイアスに注意しつつ, そこから疾患仮説の検証作業に入る. 3) の場合は, ①キーワードやキーフレーズを選ぶ, ②Semantic Qualifierに置き換える, ③解剖学的またはVINDICATE+Pから検討する, などにより疾患仮説を生成する. ある疾患と診断することは, 他の疾患の確率を相対的に低下させることになるので, 危険な疾患だけでなく良性疾患を含めて適切に診断する姿勢が大切である.
著者
野口 善令
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.211-214, 2010 (Released:2015-05-30)
参考文献数
2

ジェネラリストには, 体系的に考えて診断を絞っていく診断推論が必要となる.  診断推論には大別して直感的診断と分析的アプローチの2種類がある.  パターン認識は, 患者から疾患の特徴的なパターンをつかみとって意識下で瞬間的に「ひらめき」に似た形で認識するような直感的な診断法である. 経験を積んだ臨床医にとっては正確, 迅速かつ楽に診断をつけることができるが, 経験したことのない疾患は原則的にパターン認識できないなどの弱点もある.  分析的アプローチは, 仮説形成と仮説検証をくりかえして診断を考えていくので仮説演繹法と呼ばれる. 仮説形成は患者の話を聞いて, 鑑別診断のリストを作る作業で, 仮説検証はリストにあがった鑑別疾患の可能性 (確率) を吟味していく作業である.  パターン認識と分析的診断推論は相補的なものである. パターン認識が上達すれば洗練された鑑別診断のリストを想起でき, かつ, 事前確率が高い診断仮説を形成できるようになるので, 分析的診断力も向上する.
著者
小西 竜太
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.54-57, 2014

医療組織内でのリーダーシップ, マネジメントを発揮する際に, 省察的プロセスは個人のみならず, 組織の目標達成や成長についても非常に重要なプロセスである. 組織の目標や活動を個人レベルに落とし込み, 成果を定期的に振り返って目標達成を促すようなマネジメント手法として「目標によるマネジメント」がある. また新しい知識や技術を取り入れて組織で実践する際の知識経営として「ナレッジ・マネジメント」も挙げられる. いずれも個人の振り返りや内省のプロセスを必要としている. リーダーは省察的プロセスを個人, 組織全体, そしてリーダー自身に対しても, 戦略的に仕組むことで, 組織マネジメントを確立させ, 組織と個人の成長を促すことができる. 省察的実践は, 組織のリーダーにとって必要な要素の一つと言える.
著者
坂西 雄太 原 めぐみ 福森 則男 草場 鉄周 田中 恵太郎 杉岡 隆 日本プライマリ・ケア連合学会ワクチン・プロジェクトチーム
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.254-259, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

目的 : わが国のプライマリ・ケア医のワクチンの接種状況, 接種推奨の割合および障壁を明らかにする.方法 : 2012年に日本プライマリ・ケア連合学会に属する医師から3000名を無作為抽出し質問紙調査を行った.結果 : 卒後2年以内など119名を除外した2881名のうち, 744名より回答を得た (有効回答率25.8%). 接種状況および接種推奨の割合は, 定期接種が29.0~91.4%および58.2~70.2%, 任意接種が15.2~89.5%および14.1~50.9%であった. 定期接種推奨の際の医師側の障壁は, 接種スケジュールの複雑さ, 被接種者・保護者の考えが多く, 被接種者側の障壁は, ワクチンの安全性, 対象疾患の理解不足が多かった. 任意接種推奨の障壁は医師, 被接種者側ともに, 接種費用負担, 安全性が多かった.結論 : わが国のプライマリ・ケア医のワクチンの接種状況, 接種推奨の割合および障壁の現状が明らかとなった.
著者
工藤 欣邦 河野 香奈江 木戸 芳香 兒玉 雅明 藤田 長太郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.281-284, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
8

目的 : 大学生におけるインフルエンザ対策の励行状況を調査し, 今後の感染予防対策に関する啓発活動に役立てることを目的とする.方法 : 健康診断にて保健管理センターへ来所した大分大学の学生を対象に, インフルエンザワクチンの接種や, 日常生活における感染予防対策の励行に関するアンケート調査を行った.結果 : 2,752名の学生にアンケートを依頼した. アンケートは2,579名から回収し (回収率93.7%) , 2,489名から有効な回答が得られた (有効回答率96.5%) . 学生のワクチン接種率は21.0%で, 男性19.1%, 女性23.7%と男性の接種率が有意に低かった. 手洗いの励行率は71.7%であったが, うがい, マスクの着用, 人ごみを避ける, の3項目は励行者が半数に満たなかった. また, ワクチン非接種群は接種群と比較して4項目すべての励行率が有意に低かった.結論 : 大学生のインフルエンザ感染予防対策として, ワクチン接種やうがい, マスクの着用, 人ごみを避けることを励行させるための啓発活動が必要と考えられたが, 男性に対するワクチン接種や, ワクチン非接種者に対する日常生活指導が特に重要と考えられた.
著者
渡邊 法男 細川 佐智子 山田 卓也 吉田 知佳子 鈴木 瑛子 安部 成人 伊藤 真也 丹羽 伊紀詠 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-32, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
11

目的:フェンタニル舌下錠(Fentanyl Sublingual Tablets:FST)の有用性および安全性について調査を行い,FSTの適正使用に向けた問題点について検討した.方法:薬学的管理を行ったがん性疼痛入院患者のうち,突出痛に対してFSTを使用した18名を対象に,FST使用前後の疼痛スコアおよび副作用(嘔気・嘔吐,傾眠)の変化について調査した.結果:FST使用前後の疼痛スコアは,投与直前6.4±2.4と比較して,投与30分後3.4±2.8と有意な改善が認められた(p<0.01).傾眠は,投与直前と比較して,投与30分後および2時間後に有意な発現の増加が認められた(p<0.05).嘔気・嘔吐は,有意な変化を認めなかった.FST使用患者9名に口腔乾燥が出現し,口腔乾燥出現時には,疼痛スコアおよび副作用に有意な変化を認めなかった.結論:FSTの適応を判断する上で口腔状態の観察は必須で,十分な口腔ケアを行った上でFSTを使用すべきである.また,傾眠の副作用が高頻度に出現する可能性が示唆された.
著者
髙田 大輔 松田 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.5-10, 2013
被引用文献数
4

<b>要 旨</b><br><b>目的</b> : 楽しい会話と音読による情動反応に着目し, 自律神経系に与える影響を比較検討し, 高齢者に対する会話交流の価値とケアとしての有用性を見出すことを目的とした. <br><b>方法</b> : 65歳以上の高齢者12人を対象とし, (1) 楽しい会話, (2) 音読, (3) 黙読の3つの課題を用いた. 各課題の単独の作用を導き出すために, 1日1課題を実施した. 1つの課題の所要時間として, 実施前の安静を10分, 課題5分, 実施後の安静5分の計20分間とした. 心拍変動パワースペクトル解析を用いて自律神経系の変化を調べた. <br><b>結果</b> : 5分間の「楽しい会話」は, 自律神経系への強い刺激となり, 実施中には交感神経の活動が増加し, 実施後に減少するという先行研究の「笑い」と同様の変化がみられた. この過程において, 実施後には相反して副交感神経の活動が有意に増加し, 「音読」とは異なる影響がみられた. この副交感神経の変化は対象者の心の充足感やリラクゼーションの効果の影響であることが考えられた. <br><b>結論</b> : 「楽しい会話」の導入は「音読」と比較し, 短時間の介入でも自律神経系の働きを活性化し, 終了後に心の充足感やリラックス感が得られるとともに副交感神経の活動が増加する効果が明らかとなった. この短時間の介入によりもたらされる情動の変化は, 臨床の現場でも用いることができると考えられ, 「楽しい会話」はケアとして導入可能であることが示唆された.
著者
林 健太郎 角 泰人 原田 奈穂子 富塚 太郎 大橋 博樹 前沢 政次
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.154-162, 2015

<b>目的および方法</b> : 2011年の東日本大震災において, 日本プライマリ・ケア連合学会東日本大震災支援プロジェクトPCATは, 亜急性期に米国の団体から人的支援を受け入れた. 経済的支援と異なり, 海外からの人的支援は, 移動の問題や国内外の専門資格の違いなどの諸問題が生じる. 本稿では, この受け入れの経過について報告し, 海外支援団体受け入れの利点と問題点を考察する.<br><b>結果</b> : 2011年5月から7月にかけて, 米国のNGOであるThe People to People Health Foundation, Project HOPEから5回にわたり, 在米邦人または日本語でのコミュニケーションが過不足なく可能な日系米国人の医療者が, 原則2週間の派遣期間で, 計28人 (医師12人, 看護師15人) 登用され, 東日本大震災被災地に派遣, 医療支援活動を行った. 日本の医師免許・看護師免許を持たない参加者も含まれていたが, 厚労省医政局の事務連絡に基づき, 医療行為は可能であった. 避難所での医療サービスの提供が中心業務となった. 受け入れ開始当初は, 派遣予定者と事前に直接連絡を取れない状況で, 情報伝達の遅延と齟齬が見られたが, 日本医療政策機構による仲介を受け, 事前連絡が円滑化した. また, 同様に2011年6月から12月にかけて, 在米日本人からなる精神/心理領域専門家集団のNGO「Kokoro Wellness Network (KWN) 」から総計12人が登用され, 東日本大震災被災地に派遣, 精神/心理領域の支援活動 (Mental Health and Psychological Support : MHPSS) を行った. 全ての医療者を含む全ての施術者は米国にて, MHPSS活動をする資格及び経験を持ったものである. 在米生活の長い支援者の場合, 医療や社会文化の違いによる戸惑いも見られたが, 国内からの派遣者と協働する中で現場の状況を理解し, 被災地支援の従来の流れを乱さずに継続できた.<br><b>考察</b> : 災害亜急性期には国内からの支援応募が減っており, この時期に2週間交代で人的支援を受けたことは, 支援を継続する上で大きな力となった. 今回支援のため日本へ一時帰国した在外邦人は多かったと思われるが, 組織的に派遣ができる団体と提携し, 有効な活動につなげられたことは貴重な経験と考える. 日本も国際社会の一員として, 援助するだけでなく援助を受ける立場もありうることを自覚し, そのためのシステムを整備することは重要と考える.
著者
稲熊 良仁 岡山 雅信 古城 隆雄 原田 昌範 高木 史江 山本 令子 今野 和典 石川 鎮清 三瀬 順一 梶井 英治
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.12-16, 2011 (Released:2015-11-25)
参考文献数
7

目的 : 全国の総合診療科の初診時問診票を分析し, 診察前に収集される医療情報を明らかにする. 方法 : 日本総合診療医学会 (現日本プライマリ・ケア連合学会) のホームページ6) に掲載された総合診療科を標榜する302施設 (2010年3月の時点) を対象とし, 問診票の提出を依頼した. 得られた問診票の形態と内容について分析を行った. 結果 : 収集した初診時問診票には共通した書式は認めなかった. 形態はA4版が58枚 (68%) で最多であり, 質問項目数は平均19.7項目であった. 研究協力施設間で共通して記載されていた問診票の分野は, 頻度が高い順に, 既往歴に関する項目が28項目 (31.8%), 生活歴に関する項目19項目 (21.6%), 患者社会情報と生殖歴が共に7項目 (8.0%) であった. 結論 : 全国の総合診療科で使用されている問診票の質的評価を行い, 医師が初診患者の診察前に求めている医療情報を推測することが出来た.
著者
丸尾 智実 河野 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.104-111, 2014
被引用文献数
4

<b>目的</b> : 家族介護者への認知症の症状に対応する自己効力感向上プログラム (SE向上PGM) を実施しその効果を評価した.<br><b>方法</b> : 対象者はA県下の居宅介護事業所の利用者の家族であり, 介入群 (IG) 32名, 対照群 (CG) 25名の計57名である. 認知症に関する情報提供, 介護者交流, リラクセーション体験を共通PGMとして両群に, 加えてSE向上PGMをIGに実施した. 評価は介入前, 介入直後, 介入2か月後の質問紙調査とし, 一次アウトカムを介護自己効力感, 二次アウトカムをBPSDの出現の有無と負担感, 介護負担感, 抑うつ, 認知症の知識量とした.<br><b>結果</b> : 認知症の症状に対応するSEの得点がIGはCGに比べて介入前から介入2か月後の間に有意に向上した. また, 年齢, 性別, 利用者の日常生活自立度判定を共変量とした共分散分析では, IGはCGに比べて認知症の症状に対応するSEが有意に向上した.<br><b>結論</b> : SE向上PGMが認知症の症状に対応するSEを向上させる可能性が示唆された.
著者
末松 篤樹 野口 善令 横江 正道 吉見 祐輔 久田 敦史 宮川 慶 吉田 心慈 吉田 紗衣子 渡邊 剛史 井村 洋
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.36-38, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
4

American College of Physicians (ACP) 日本支部年次総会2013において, 「誰も教えてくれなかった診断学・中級編—鑑別診断を絞り込む」をsmall group discussionとして開催した. 症例提示を行い, 鑑別診断から絞り込む思考プロセスを体験するために, マインドマップを利用して疾患の全体像を把握する試みを行った. 参加者からは概ね好評であり, 診断推論を学習する機会を提供し, 診断推論の指導方法も広めることができた. 今後もこのような企画を学会で行い, 診断推論を学ぶ環境を整えていくことが重要と考える.
著者
山村 恵子 倉田 寛行 重野 克郎 長田 孝司 足立 雄三 長谷川 嘉哉
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-48, 2011 (Released:2015-11-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

目的 : 診察時に医師がワーファリン服用患者の最新のPT-INR (Prothrombin Time-International Normalized Ratio : PT-INR) と服薬状況を把握するため, クリニックと薬局の間でPT-INRモニタリング情報共有システムを構築し, システム機能を検証する. 方法 : 患者は医療機関受診前に薬局でPT-INR簡易迅速測定器にてPT-INR自己測定する. 薬局薬剤師はPT-INR, 服薬状況を確認し施設間連絡票 (連絡票) を作成する. 医師は患者から提出された連絡票を参考に診察, 処方を行ない, 連絡票に診察情報を記載し患者に返す. 薬剤師は薬局を再訪した患者が持参した処方せん, 連絡票に基づき調剤, 服薬指導を行なう. 結果 : 薬局にて患者の誤った思い込みによるコンプライアンス不良例を抽出できた. 患者情報の共有により処方量変更なく, 服薬指導にて治療域に到達した. 結果 : 診察時に最新のPT-INR値を患者・医師・薬剤師が共有する本システムは, 通院患者のワーファリン処方量調節の迅速化に有用であり, 患者の利益に寄与すると考えた.