著者
牛久保 美津子 近藤 浩子 塚越 徳子 菊地 沙織 上山 真美 恩幣 宏美 堀越 政孝 常盤 洋子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.67-72, 2017-06-20 (Released:2017-06-21)
参考文献数
10
被引用文献数
3

目的:病院看護職による退院後の暮らしを見据えた看護活動の自己評価の結果をもとに,在宅ケアの視点をもつ病院看護職育成のための課題を明確化すること.方法:9病院,13名の看護師を対象にしたグループインタビューを行い,質的帰納的に分析した.結果・考察:退院後の暮らしを見据えた看護活動の現状として,6カテゴリ:《他職種にまかせきりにしている》,《院内連携ができていない》,《訪問看護師との連携には格差がある》,《社会資源の知識がなく活用ができていない》,《勉強会参加,経験年数,興味関心により在宅ケアの視点をもつことができる》,《在宅ケアの知識があっても実践力がない》が抽出された.社会資源に関する知識不足や多職種連携ができてないことから,実践に結び付いていないことが考えられた.結論:退院後の暮らしを見据えた看護職育成の課題として,社会資源に関する実践的な知識不足を補うこと,かつ他分野他部署を超えた看護経験の積み重ねができるような勤務体制・施設間交流の工夫を行うなど,会得した知識を実践へと結び付けるための個人の資質向上と組織的な教育的取り組みが必要であることが示唆された.
著者
内田 信之 芝 陽子 平形 浩喜 島村 修 神邉 雅良 大久保 百子 飯塚 みゆき 中島 美江
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.16-20, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
8

目的:原町赤十字病院における過去10年間の医科歯科連携の取り組みの意義を検証する.また当院入院患者の口腔内の実態について調査し,今後の活動について考察する.方法:医科歯科連携に関するアンケート結果や実態調査からその成果を見出す.また歯科医師による口腔アセスメント開始後の現状を,歯科医師不在時の状況と比較する.結果:平成17年に院外の歯科衛生士が当院のNST回診に参加する.その後,入院患者に対する口腔内アセスメント,手術,化学療法前患者の歯科医受診の奨励,医療者を対象とした口腔ケアセミナーを行う.この結果,病院職員の口腔ケアに対する意識や手技は向上した.平成25年から歯科医師による口腔アセスメントおよびケアを開始したが,外科入院中の患者の口腔内の問題の割合や術後肺炎の頻度は必ずしも低下していない.考察および結論:医科歯科連携には一定の効果があった.今後は一般住民に対する歯科検診や歯周病対策の啓蒙も必要と考える.
著者
太田 龍一 向山 千賀子 福澤 康典 森脇 義弘
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.21-26, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
14

目的:小児喘鳴発作とサトウキビ製糖作業との関係性を検討する.方法:沖縄県南大東島の幼稚園,小中学校に通学する全児童167人を対象に,喘鳴発作を含めた毎日の症状の有無を前向きに収集した.喘鳴発作の発生率を2ヶ月ごとに算出し通年変化を検討した.また喘鳴発作の有無を従属変数とし,児童の背景因子を独立変数とするロジスティック回帰分析を行った.結果:チェックシート回収率は62.5%,年齢の中央値は7.5歳,男女比は8:7,喘息既往者は36%であった.製糖作業期間である1-3月における喘鳴発作発生率はそれ以外の期間より有意に高かった.喘息の既往のない小児においても一定数の喘鳴発作がみられた.結論:小児喘鳴発作発生率の増加とサトウキビ製糖作業の関係性が示唆された.
著者
津島 久孝
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.94-97, 2016 (Released:2016-06-24)
参考文献数
14

目的 : 臓器不全のない非がん高齢者終末期の予後に影響する要因の検討対象および方法 : 2011年10月1日から30ヶ月の間に当院医療療養病棟にて, 終日臥床状態で軽度意識障害があり経口摂取が不可能でかつ臓器不全を伴わない非がん高齢者のうち, 皮下輸液および血液検査をおこなってその後死亡した36例を対象とした. 後ろ向きに輸液開始より死亡迄の日数 (予後) を算出し, 予後に影響する血液検査結果を中心に検討した.結果 : 平均年齢は85.1歳, 男女比は19 : 17. 基礎疾患は認知症 (21例) , 老衰 (8例) , パーキンソン病 (4例) , 多発性脳梗塞 (3例) であった. 予後は中央値31日で平均34.9日であった. 血液検査結果と予後との関係では, 単相関でも重回帰解析でも統計的に有意な要因はなかった. しかし, 血清アルブミン値3g/dl未満群 (24例) では3g/dl以上群 (5例) に比べ有意 (p=0.001) に予後が短かった (27日vs 61日) .結論 : 上記対象症例の予後予測は困難であるが, 血清アルブミン値がその指標の一つとなる可能性がある.
著者
宮本 みき 高橋 秀人 松田 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.2-12, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
27

目的 : 老年期の人工的水分・栄養補給法 (artificial hydration and nutrition, 以下AHN) の導入について, 高齢者が事前に意思決定できない (「決められない」) ことに関連する要因を明らかにすることを目的とした.方法 : 地域で自立した生活を営む単独で外出可能な60歳以上を対象に, 自記式質問紙調査による横断研究 (平成23年8月~11月, 有効回答116人, 有効回答割合90.6%) を行った. AHNに対する事前の意思決定と, AHNの知識, 事前指示や終末期医療に関する意向, 介護経験等との関連を, 多重ロジスティック回帰分析を用いて解析した.結果 : 「AHNに対する事前の意思」について, 「決められない」が25人 (21.6%) であり, 「決められる」は91人 (78.4%) であった (「何れかのAHNを望む」は16人 (13.8%) , 「AHNの全てを望まない」は75人 (64.7%) ) . 「決められない」に関連する要因として選択されたのは, (1) 「認知機能の低下に関連する失敗をした経験がない (失敗の経験) 」 (OR=12.0, 95%CI=1.42-100.41, p<.022) , (2) 「家族を介護した経験がない (介護の経験) 」 (OR=3.0, 95%CI=1.04-8.53, p<.042) , (3) 「意思表示不能時には治療の判断を他者に委ねる (他者に委ねる) 」 (OR=5.6, 95%CI=1.95-16.24, p<.001) であった.結論 : 「AHNに対する事前の意思」を「決められない」ことに関連する要因として, 認知機能の低下に関連する失敗の経験がないこと, 家族を介護した経験がないこと, 意思表示不能時には治療の最終的な判断を事前指示よりも他者に委ねたいとする意向が見いだされた.
著者
富永 あや子 冨田 晴樹 石田 岳史
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.383-385, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
6

昨今モニタ・アラーム関連事故報道が後を絶たたず, 我々はこの原因をアラーム疲労と考えている. この問題を解決するために当院では多職種で構成したモニタ・アラーム・コントロールチーム (以下MACT) を発足し, 循環器内科病棟を対象に介入を行った. その効果を介入前後のアラーム数で評価し, 介入前1,263.4±453.4件あったアラームが介入後264.1±128.4件となったので報告する.
著者
和泉 泰衛 矢野 聡 佐藤 早恵 西野 文子 大野 直義 荒木 利卓 矢嶌 弘之 中島 一彰 伊東 正博
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.122-124, 2016 (Released:2016-06-24)
参考文献数
8

症例は24歳男性. 主訴は感冒症状が先行する右頸部痛. 画像上, 右内頸静脈血栓を認め, Lemierre症候群と診断. 抗生剤と抗凝固療法にて症状改善した. 退院後に腰痛, 乾性咳嗽が出現し頸部-骨盤造影CTにて右総腸骨静脈, 左内腸骨静脈に新たな血栓, 右下葉の肺炎, 椎体の骨髄炎の所見を認めて再入院となった. 各種感染症検査を提出したが原因は特定できなかった. 抗生剤治療を継続したが, 両側胸水が増悪し, 椎体の溶骨性病変が多発, 増大した. 骨病変の生検を施行した所, 転移性腺癌の診断に至った. 内視鏡検査にて進行胃癌を認め, 多発骨転移, 癌性リンパ管症を合併した進行胃癌と診断された. 以上の経過より, 上気道炎から内頸静脈血栓を合併したのは, 進行胃癌に伴う過凝固状態が一因であったと推察した. つまり, 進行胃癌に伴うTrousseau症候群の一例と考えられた. 本症例のように血栓症を繰り返す症例では若年者でも悪性疾患合併を考える必要があると感じた症例であった.
著者
氏川 智皓 加藤 大祐 栗本 美緒 新道 悠 原田 直樹 澤 憲明
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.401-403, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
3
被引用文献数
3

この度, 著者の5人である氏川, 加藤, 栗本, 新道, 原田が第2回日英プライマリ・ケア交換留学プログラムの英国短期訪問プロジェクトの派遣団員として, 2014年9月末から10月初めにかけて, それぞれ異なる英国の家庭医療診療所を見学し, 英中部Liverpoolで開催された英国家庭医学会 (Royal College of General Practitioners, 以下RCGPと略す) 主催の年次学術大会に参加した. 本プログラムは, 日本プライマリ・ケア連合学会とRCGPとの正式な交流の一環として, 本学会国際キャリア支援委員会とRCGP若手国際委員会 (Junior International Committee, 以下JICと略す) が窓口となり, 2013年に行なわれたパイロット事業の理念と成功を受け継ぐものである.今回の渡英に先立ち, 英国家庭医5人 (Dr Greg Irving, Dr Jessica Watson, Dr Shazia Munir, Dr Seher Ahmed, Dr Anna Romito) が2014年5月に来日し, それぞれ異なる家庭医療後期研修プログラムを見学し, 岡山で開催された本学会学術大会でポスター発表を行なった. 本稿では, 派遣団員が本事業を通して印象深かったもののうち, 「診療所の質の担保」「医師の質の担保」「家庭医のコミュニケーション技術」の3つを紹介する.
著者
斜森 亜沙子 森山 美知子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.102-110, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的 : プライマリ・ケア診療所において, 診療所の果たすべき機能とそこで働く看護師の役割, 必要な能力を明らかにする.方法 : プライマリ・ケア診療所に勤務する医師6名と看護師11名を対象に, フィールド調査 (面接法及び参加観察法) を実施し, 質的帰納的分析を行った.結果 : プライマリ・ケア診療所には「外来機能」「在宅支援機能」「地域支援機能」の3つが抽出され, それを支える看護師の役割として「個人及び家族の健康を守る役割」「人々が住み慣れた場所で安心して療養でき/最期を迎えることを支援する役割」「地域の健康問題に対処する役割」, これらの機能を支える「診療所をマネジメントする役割」の4カテゴリーが, 役割に対応する能力として9カテゴリーと, プライマリ・ケアを実践する専門職者に必要な4つの基本能力が抽出された.結論 : 診療所におけるプライマリ・ケア看護師は幅広い役割と能力が必要とされていることが明らかになった.
著者
吉澤 瑛子 岡田 唯男 小原 まみ子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.209-213, 2015 (Released:2015-09-28)
参考文献数
24

目的 : 日本の透析患者は増加傾向だが, CKD診療からみた必要専門医は概算1万2千人にも関わらず実際は4~7千人しかいない. 透析の質の維持向上に工夫をしながら, 透析非専門医が行う当施設の透析医療の現状と, 透析の質について検証した.方法 : 当施設で2011年に血液透析を行った全患者を対象とし, 後方視的診療録レビューを行い, カルテ上の記載から情報収集. 日本透析医学会ガイドラインの管理目標の達成率を算出した結果 : 目標達成率は, Kt/Vdpは80.0%, ヘモグロビン69.9%, 血清アルブミン63.6%, 血清補正カルシウム85.4%, 血清リン78.3%, インタクトPTH 56.8%だった.結論 : 今回の検証において, 当施設が行う透析でも質は確保されていた. 他の分野同様, 安定した患者を家庭医などジェネラリストが受け入れることで, 専門医は, より専門性の高い患者の治療に専念できる可能性がある.
著者
錦織 宏
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.360-361, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
3

卒前医学教育において省察 (Reflection) を導入する際には, 経験学習論から考えると, 診療参加型臨床実習がその基盤として必要である.
著者
市川 元啓 山中 克郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.273-276, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
5

診断推論の流れのうち, 最も素早く診断に至るsnap diagnosis. これが全ての症例で可能であれば, こんなに楽なことはない. しかしながらどんな名医であっても当然全ての症例でsnap diagnosisには至らない. 経験と知識を増やして疾患のパターンを記憶することによりsnap diagnosis可能な症例を増やすことは可能である. ここでは疾患を想起して単純な検査などを行えば診断に至る (そして見逃せば致命的な予後が待っているかもしれない) 疾患をいくつかの実例をあげて紹介する. ちなみに症例は多少の脚色はあるが全て自験例である. これらを参考に皆さんのsnap diagnosisのパターンが少しでも増えて実臨床に役立てていただければ有難い.
著者
小嶋 一
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.167-170, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
3

バリントグループとは医師患者関係を改善するためのグループセッションである. ハンガリーの精神分析医であるマイケル・バリントがイギリスのGPを対象に1945年に始めたグループセッションで, 医師患者関係を改善する教育方法としてアメリカの家庭医療研修プログラムでは広く採用されている. 提示された症例に関して議論し医師患者関係を振り返ることは医師患者関係を省察する機会となり, 省察的実践家を養成するための手段として今後日本でも導入・展開が期待される.
著者
鳥飼 圭人 石井 修 稲村 祥代 清水 裕子 根本 隆章 武岡 裕文 秋山 佳子 土田 浩生 成田 信義 松田 隆秀
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-114, 2010 (Released:2015-05-30)
参考文献数
10

当院の総合診療内科は他の臓器別の専門8内科と独立した内科の1科として存在する. 外来では内科全体初診患者の約40%にあたる1日30~40人の診療にあたり, 入院では30床を担当し診療にあたり, 初期臨床研修医, 後期臨床研修医の教育を行っている. 今回, 診療実態を把握する目的で, 2007年4月から2008年3月まで当大学病院総合診療内科に入院した593症例 (男性289名, 女性304名, 平均64.2±21.2歳) の診断について検討した. 主な疾患は, 肺炎111例, 尿路感染症44例, 感染性腸炎34例, 気管支喘息24例, 不明熱12例, 心不全11例, ウイルス感染症9例, 憩室炎8例, 悪性リンパ腫7例, 伝染性単核球症7例, リウマチ性多発筋痛症6例等であった. 初診外来だけでは診断に至らない症例の診断・治療など専門分野にとらわれない診療を実践する場として, 総合内科病棟の存在は不可欠である.
著者
今村 弥生
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.47-49, 2013

<b>要 旨</b><br> 精神科治療における面接は, 対話を通してクライアント自身の問題を見つめるための「鏡」であるとも言える. この鏡を作り出すのが治療者の役割で, 「鏡」が曇っていたり, 歪んでいては, 正しく状態を映し出すことができず, 適切な治療を行うことができないため治療者が自分自身の鏡を調整することが重要なことは, 自明なことである. 本稿では筆者が有用性を実感し, 同業の精神科医にすすめている省察の具体的な方法を論じる.