著者
中村 幸代 堀内 成子 桃井 雅子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.190-200, 2012 (Released:2013-08-31)
参考文献数
32
被引用文献数
3 2

目 的 日本人女性を対象に,妊娠時に冷え症であることでの,前期破水発生率について,冷え症でない妊婦と比較分析し,冷え症が前期破水の誘因であるかについて,因果効果の推定を行うことである。対象と方法 研究デザインは後向きコホート研究である。データ収集期間は,2009年10月19日から2010年10月8日までの約12カ月である。調査場所は,首都圏の産科と小児科を要する総合病院6箇所である。研究の対象は入院中の産後の女性2810名であり,質問紙調査と医療記録からの情報を抽出した。また,分析方法には,傾向スコア(propensity score)を用いて交絡因子のコントロールを行い,その影響を調整した。結 果 前期破水であった662名(23.6%)のうち,冷え症がある女性の割合は348名(52.6%)であり,冷え症でない女性の割合は314名(47.4%)であった。冷え症でない妊婦に比べ,冷え症である妊婦の前期破水発生率の割合は,1.67倍(共分散分析)もしくは1.69倍(層別解析)であった(p<.001)。結 論 冷え症と前期破水の間の因果効果の推定において,因果効果がある可能性が高いことが示唆された。
著者
内藤 和子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.14-20, 1991

夫の分娩参加が夫婦にもたらす情緒的経験の意味について, その実態を探るために25組の夫婦に対し, 分娩前・後および1か月後に主として半統制型の面接を行い, 以下の結果を得た.1.夫の分娩立ち会いのおもな動機は,「分娩経験の共有」,「誕生の瞬間の共有」であり, 妻の理由は,「安心」,「誕生の瞬間の共有」であった.妻主導の分娩立ち会いが多かった.<BR>2.分娩立ち会いの予想と結果については, 夫・妻ともに予想と結果が一致するか, 予想以上の結果が多かった.施設の助産婦・スタッフのサポートが結果に影響する要因と考える.,<BR>3.分娩立ち会いの評価では, 夫の大部分と妻の全員が満足した.妻のself-esteem (自尊感情) を分娩前後で比較すると, 分娩後に有意な上昇が認められた.<BR>4.夫婦のintimacy (親密性) が分娩後に増加した夫と妻は, 1か月後も続いている傾向があった.
著者
シェリル 大久保 山海 千保子 柳沢 初美 加納 尚美
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.233-248, 2008
被引用文献数
2

本研究は,弟妹の誕生に立ち会うことがその子どもにどういった影響を及ぼすかを明らかにしようと試みている。妻の出産に立ち会った場合,男性には概ね肯定的な影響が見られることは先行研究からわかっているが,出産立会いが子どもに及ぼす影響に関してはまだほとんど研究されていない。しかし,近年,家族全員が出産に立ち会うケースが増えていることを鑑みると,根拠のない奨励を避けるためにも,出産立会いが子どもに及ぼす影響を評価することが必要である。<br> 本研究では,言葉と比較してイメージのほうが,子どもにとってより自由に考えや思いを表現しやすいことから,描画を用いて出産立会いが子どもに及ぼす影響を評価した。描画は,2歳から12歳の子ども24人に,出産立会い前,立会い中,立会い後の3回,描いてもらった。回収した描画は,全体的な傾向,ケーススタディという2つの観点から分析した。<br>I 全体的には,描画からトラウマあるいはショックの兆候は見られなかった。2ヶ月に渡る調査期間,子もどの描き方には,出産立会い前,中,後と回を追う毎に細部まで描くようになる,どの回も描き方がほぼ一定,回を追う毎に整然さを欠く,の3つのパターンあるいは傾向が見られた。24人中半数で,弟妹誕生後の描画に進歩が見られた。8人には,全期間を通して大きな変化は見られなかった。残り4人には,立会い後の描き方に,乱雑,後退などの変化が見られた。しかし,この4人も出産立会いからは肯定的な影響を受けていた。<br>II ケーススタディでは,母親の難産に立ち会ったことで否定的な影響を受けた様子の男児が描いた描画を詳細に分析した。描画からは,男児が最初に感じた不安,驚き,恐れなどが次第に形を変え,新たに家族の一員に加わった赤ちゃんと共存する道あるいは術を探すことへと向かったことがわかる。<br> 本研究結果から,出産立会い自体より家族間のサポートのほうが,子どもに対する影響という点で大きな要因となっていることがわかった。加えて,特に幼い子どもや男児には,実際かなりの痛みに耐える母親を目の当たりにすることで,否定的な感情を持つ傾向があることもわかった。このことから,子どもが出産に立ち会う際には,前もって出産の実際について十分準備してやることが必要であり,出産にかかわる誰にとっても肯定的な経験になるよう計らうべきである。
著者
榮 玲子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.49-55, 2004-06-30 (Released:2010-11-17)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3
著者
寺岡 歩 齋藤 いずみ 田中 紗綾 佐藤 純子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.82-91, 2019
被引用文献数
1

<p><b>目 的</b></p><p>分娩取扱い病院で約8割を占めている産科混合病棟の,助産師と看護師による分娩期の看護時間と看護行為を明らかにし,助産師と看護師が協働する分娩期看護の安全性の向上に資する示唆を得ることを目的とする。</p><p><b>対象と方法</b></p><p>正期産経腟分娩の事例を対象とした。産婦の入院から分娩後2時間値の測定終了までを分娩期とし,調査員がタイムスタディ法を用いて産婦と新生児に関わった全ての看護者の看護時間と看護行為を測定した。</p><p><b>結 果</b></p><p>調査期間の14日間に10例(初産婦4名,経産婦6名)の分娩があった。</p><p>分娩期の経過時間中央値は467.0分で,1組の母児に対して分娩期に関与した人数の中央値は助産師が6名,看護師は2名,提供した看護時間中央値は助産師が436.5分,看護師が41.0分であった。</p><p>観察された看護行為26項目のうち看護時間の上位3項目は,助産師では「助産診断(産婦の観察)」「看護記録」「直接分娩介助」,看護師では「新生児介助」「間接分娩介助」「(診療,処置の)準備・後片付け」であった。</p><p>助産師と看護師の看護時間および看護行為は,事例の個別性および分娩進行状態に対応して変動がみられた。</p><p>入院から子宮口全開大に至るまでの時間に看護者間の連絡回数が集中しており,情報交換や業務調整が行われていた。</p><p><b>結 論</b></p><p>分娩期に観察された看護行為から,助産師と看護師はそれぞれの専門性に応じた役割分担をしていることが実証された。</p><p>産科混合病棟では分娩第2期までの経過時間に看護者間の連絡を密にして,他科患者への業務調整ならびに分娩準備を行うことが重要である。それにより,分娩第2期・第3期に母児に対し集中して看護することが可能になり,分娩期の安全確保につながることが示唆された。</p>
著者
杉岡 寛子 森 明子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.323-332, 2016 (Released:2017-03-08)
参考文献数
35

目 的 正期産における前期破水の発生に関連する要因を明らかにすることである。方 法 主にローリスク妊産婦を対象とする産科病院(二次医療機関)と助産所の2施設において,正期産に出産した妊産婦の妊娠・分娩記録を用い,前期破水の発生に関わる要因を検証する関連検証型研究である。分析では,各変数の記述統計および各変数と前期破水発生との関連を明らかにし,最終的に2項ロジスティック回帰分析(変数増加法)を行った。検定の有意水準は両側5%とした。なお,本研究は聖路加看護大学(現聖路加国際大学)研究倫理委員会の承認を得て実施した。結 果 2010年8月から2012年10月に出産した610名(産科病院310名,助産所300名)の妊産婦を分析の対象とした。平均年齢31.46歳で,初産婦30%,経産婦70%であった。前期破水は全体の20%に発生していた。 前期破水発生と関連のあった8変数(初経産,BMI,出産回数,出生体重,性感染症,早産期の内診,正期産の内診,調査場所)における欠損値を除去した,474名分のデータで2項ロジスティック回帰分析を行った結果,前期破水発生と関連する因子として統計学的な有意差が認められた変数は,「初産婦(オッズ比=2.145,95%信頼区間:1.308-3.519, p=.003)」であり,「正期産の内診実施(オッズ比=1.837,95%信頼区間:0.998-3.383, p=.050)」は有意水準には満たなかったが比較的強い関連がみられた。初経産婦別に分析すると,経産婦では「性感染症(オッズ比=3.129,95%信頼区間:1.378-7.015, p=.006)」であった。結 論 正期産における前期破水発生の要因として「初産婦」,有意水準は満たさなかったが「正期産の内診実施」,そして経産婦においては「性感染症」が明らかとなった。前期破水の予防・対策に向け,妊婦(特に初産婦)への指導や,性教育など非妊時からの性感染症対策の必要性が改めて示された。正期産の内診については,今後その実態を明らかにしたうえで,その適応やあり方について検討していく必要がある。
著者
吉田 安子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.28-38, 2000

本研究は, 分娩期に出現する嘔吐と分娩進行との関連に焦点をあて, その実態を調査したものである。目的は, 嘔吐の出現と分娩進行との関連を明らかにすることである。対象者は低リスク初産婦37名, 研究者が分娩中産婦を受け持ち, 観察ガイドに従い観察を行った。その結果, 対象を嘔吐あり群, 嘔吐なし群に分類して比較検討し, 嘔吐あり群の嘔吐出現状況と分娩の進行について分析を行い, 次の点が明らかとなった。<BR>1) 低リスクの初産婦17名 (46%) に嘔吐が出現していた。<BR>2) 嘔吐は分娩各期において子宮収縮が強くなった時に出現し, 食事摂取後3時間以内, 子宮口開大3cmの時に出現する傾向にあった。<BR>3) 子宮頸管熟化の良好な産婦が嘔吐した場合, 分娩進行は初産婦にしては速い経過をたどった。分娩進行が早くなると予測される産婦に対し, 進行状況に関する情報を与え, 産婦自ら身体のコントロール感をもてるようなケアが必要である。<BR>4) 子宮頸管熟化の不良な産婦が嘔吐した場合, エネルギーを喪失し心身共に疲労を来し, 続発性微弱陣痛となり分娩が遷延した。このような産婦に対し, 早期に不安の除去, 食事摂取の配慮, 疲労の緩和を行い, 産婦の生理機能が最大限に生かせるようなケアが必要である。
著者
清水 かおり 片岡 弥恵子 江藤 宏美 浅井 宏美 八重 ゆかり 飯田 眞理子 堀内 成子 櫻井 綾香 田所 由利子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.267-278, 2013
被引用文献数
3

<b>目 的</b><br> 日本助産学会は,「エビデンスに基づく助産ガイドライン―分娩期2012」(以下,助産ガイドライン)をローリスク妊産婦のスタンダードケアの普及のため作成した。本研究の目的は,助産ガイドラインで示された分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所での現状を明らかにすることを目的とした。<br><b>方 法</b><br> 研究協力者は,東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の分娩を取り扱っている病院,診療所,助産所の管理者とした。質問項目は,分娩第1期に関するケア方針18項目であった。調査期間は,2010年10月~2011年7月であった。本研究は,聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った(承認番号10-1002)。<br><b>結 果</b><br> 研究協力の同意が得られた施設は,255件(回収率37.3%)であり,病院118件(回収率50.2%),診療所66件(20.8%),助産所71件(54.2%)であった。妊娠期から分娩期まで同一医療者による継続ケアの実施は,助産所92.9%,診療所54.7%と高かったが,病院(15.3%)では低かった。分娩誘発方法として卵膜剥離(病院0.8%,診療所3.1%,助産所1.4%)および乳房・乳頭刺激(病院0%,診療所1.5%,助産所5.6%)のルチーンの実施は低かった。入院時の分娩監視装置による胎児心拍の持続モニタリングの実施は,助産所の38%が実施していた。硬膜外麻酔をケースによって行っているのは,病院の31.6%,診療所の31.3%であった。産痛緩和のための分娩第1期の入浴は,助産所では92.7%,病院48.3%,診療所26.7%で可能とされていた。産痛緩和方法として多くの施設で採択されていたのは,体位変換(95%),マッサージ(88%),温罨法(74%),歩行(61%)等であった。陣痛促進を目的とした浣腸をケア方針とする施設は非常に少なかった(病院1.7%,診療所9.1%,助産所1.4%)。人工破膜をルチーンのケア方針としている施設はなかった。<br><b>結 論</b><br> 分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所における現状と助産ガイドラインのギャップが明らかになった。本研究の結果を基準として,今後助産ガイドラインの評価を行っていく必要がある。本研究の課題は,回収率が低かったことである。さらに,全国のケア方針の現状を明確化する必要がある。
著者
高畑 香織
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.251-261, 2015
被引用文献数
1

<b>目 的</b><br> 分娩前7日間に妊婦が行った陣痛発来への取り組みの実態と分娩誘発の関連を探索することを目的とした。<br><b>対象と方法</b><br> 2013年7月から10月に,病院,診療所,助産所20施設にて,正期産児を分娩し条件を満たした褥婦694名に質問紙調査を行った。有効回答を得られた530名(76.3%)について統計的に分析を行った。<br><b>結 果</b><br>1.何らかの陣痛発来への取り組みを実施したのは530名中491名(92.6%)で,その割合は重複回答にて,ウォーキング66%,乳頭刺激55%,スクワット44%,階段昇降42%,鍼灸指圧20%,下剤13%,性交9%であった。<br>2.初産婦ローリスク群において,【ウォーキングを中等度の運動強度で1日最低50分以上7日間合計300分以上実施した】グループでは,分娩誘発を有意に減らしており,オッズ比は0.425(95%CI:0.208-0.866)であった。<br>3.乳頭刺激は自然な陣痛発来を期待できる方法とされているが,研究で推奨されている方法で実行されていなかった。<br><b>結 論</b><br> 陣痛発来への取り組みとして運動が上位を占め,特に初産婦ローリスク群ではウォーキングの実施と誘発減少との関連が認められた。
著者
柴山 知子 江藤 宏美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.293-302, 2015 (Released:2016-02-24)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目 的 分娩第2期に会陰部に温罨法を行うことで,第1度,第2度会陰裂傷の発生を減少させることができるかを明らかにすることである。対象・方法 対象は正期産,経膣分娩予定,単胎,頭位であり,医学的合併症がない初産婦とし,historical controlled trial designを用いた。介入方法は,産婦が子宮口全開大に近い時期から外陰部消毒を行う前まで,温湿タオルを用いて会陰部を温めた。タオルは30分毎に交換し温度を保つようにした。会陰裂傷の程度は,分娩に立ち会った医師が分娩直後に判断した。同時に,産婦の基本的情報を医療記録より収集した。データ分析は,t検定,χ2検定を行った。本研究は倫理委員会の審査を受け,承認を得て実施した。結 果 対象は,介入群49名,コントロール群50名であった。対象者の特性について両群間に有意差はなかった。 会陰裂傷の発生頻度について,介入群では第1度会陰裂傷は28名(57.1%),第2度会陰裂傷は16名(32.7%)であった。コントロール群では,第1度会陰裂傷は31名(62.0%),第2度会陰裂傷は13名(26.0%),2群間で有意差はなかった(p=0.517)。また,第3度会陰裂傷は介入群3名(6.1%),コントロール群3名(6.0%),第4度会陰裂傷は両群ともに発生しなかった。 温罨法の実施時間は,介入群で平均2.77±2.43時間であった。温罨法の実施時間と会陰裂傷では,第1度会陰裂傷における温罨法実施時間は平均2.27±2.59時間,第2度3.98±1.99時間,第3度1.85±1.51時間で有意差が認められた(p=0.002)。出血量と温罨法の実施時間,出血量と温罨法開始から児娩出までの時間に有意な相関はなく,温めることによる出血量の増加は見られなかった。結 論 分娩時に会陰部に温罨法を行うことによる第1度,第2度会陰裂傷低減の効果を得ることができなかった。しかし,温罨法は生理学的に皮膚の伸張性の向上や,循環血液量の増加,回復に影響があると言われるheat shock proteinが喚起されるといったメリットがあり,効果が期待できる。今後その時期や方法を検討していく必要がある。
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.261-270, 2010 (Released:2011-04-07)
参考文献数
13
被引用文献数
7 3

目 的 本研究では,臨床での汎用性を高めるため,清水,関水,遠藤他(2007)が開発した多面的な育児幸福感を捉えるCHS(Child-care Happiness Scale)の短縮版を作成し,その信頼性と妥当性の検討を行った。対象と方法 6歳以下の乳幼児を持つ母親を対象に,CHSの育児の中で感じる幸せな気持ちが生じる様々な場面についての41項目を,5段階で評価を求めた。併せてCHS短縮版の妥当性の確認のため,心理的健康を測定する「主観的幸福感」と「ベック絶望感」の回答も求めた。結 果 有効回答672名であった。短縮版の項目を選定するために,CHSの41項目の回答について因子分析を行い,「育児の喜び」,「子どもとの絆」,「夫への感謝」の3因子からなる13項目を選定した。3つの因子のそれぞれの項目の内的整合性を表すα係数は,0.77~0.86と充分な値が得られた。CHS短縮版と主観的幸福感との間には,有意な正の相関があった。一方,ベック絶望感とは,有意な負の相関があった。また,「育児の喜び」と「子どもの絆」は母親年齢が高くなると低下する傾向が,一方「夫への感謝」は末子年齢が4歳以上よりも1歳以下の母親の方が高く,また1人っ子の母親が最も低くかった。結 論 考察では,CHS短縮版とオリジナルCHSとの違いやその実用性,そして今後の問題ついて議論した。CHS短縮版は心理的健康との関連性が示唆された。CHS短縮版はコンパクトとなったので,個々の母親の育児幸福感の様子を表すプロフィールを母親自身にすぐフィードバックすることができ,母親たちが自分の子育てに対する気持ちを振り返る資料として今後役立てられることが期待できる。
著者
中島 久美子 常盤 洋子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.45-56, 2011 (Released:2012-02-04)
参考文献数
21
被引用文献数
4 3

目 的 妊娠初期の夫婦を対象に,妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識の共通性および差異を明らかにし,妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助への示唆を得る。方 法 妊娠初期の夫婦8組を対象に半構成的面接法によりデータを収集し,分析はベレルソンの内容分析法を参考に行った。カテゴリー分類のスコットの一致率では,夫婦の認識の共通性88.0%,夫婦の認識の差異では,妻のみの認識87.0%,夫のみの認識89.0%となり,信頼性が確保された。結 果 妊娠初期の妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識として,【妻の健康と情動への気づかい】【家事労働の援助】【親になるための準備】の3カテゴリーが抽出され,夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなった。結 論 妊娠初期の妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識の共通性および差異として,3カテゴリーが抽出された。夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなり,妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助として,夫婦の間で気持ちの共有と夫婦の良好なコミュニケーションが強化されるよう夫婦に働きかけることが重要であると示唆された。
著者
小川 久貴子 恵美須 文枝 安達 久美子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1_52-1_63, 2005-06-30 (Released:2008-02-29)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

目的国内の10代妊婦に関する保健医療・看護領域の研究動向を明らかにするために, 文献の年次推移やエビデンスレベルに焦点を当てて検討する。方法本研究の検索範囲は, 10代で妊娠を継続し, 出産・育児に関連する対象と設定した。対象文献は, 医学中央雑誌刊行会『医中誌WEB:』 (1990年1月~2004年3月) と, 日本看護協会刊行『最新看護検索』 (1990年~2003年) を用い, キーワードは「未成年者妊娠, 若年初産婦, 10代妊娠, 思春期妊娠」を用い検索した。分析方法は, 文献の筆頭著者の所属機関・職種・文献数の年次推移, 研究主題のレベル別分析, さらに看護に有用なエビデンスレベルの高い文献の分析を行った。結果1) エビデンスレベル分類の結果, レベルIのRCTやレベルII―1のコホート研究などは皆無であり, レベルII―2の比較研究や症例集積研究は23件であり, エビデンスレベルの高い研究は少なかった。2) 対象文献の約6割が1990年から1993年の4年間に含まれ, 医師によるエビデンスレベルIIIの現状報告が多かった。3) 1996年以降の文献数は減少しているが, 心理・社会面に焦点を当てたインシデトスタディや質問紙調査等の研究が微増し, この分野の研究が次第に進展し始めている。4) 今後, 看護に有用なエビデンスレベルの高い研究を増やすために, 多様な研究方法を取り入れた量的研究を行うと同時に, 対象の複雑な社会・心理状況を考慮した質的研究によって, 10代妊婦の多面的な問題把握とその解決策に結びつく研究を発展させることが必要である。結論本文献調査より, 10代妊婦の多面的な問題把握とその解決策に結び付くような研究が必要なことが明らかになった。
著者
田中 利枝 岡 美雪 北園 真希 丸山 菜穂子 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-26, 2018
被引用文献数
3

<p><b>目 的</b></p><p>産科看護者に向けた,早産児の母親の産褥早期の母乳分泌を促す教育プログラムを開発する端緒として,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアについて探索する。</p><p><b>対象と方法</b></p><p>PubMed,CINAHL Plus with Full Text,医学中央雑誌Web, Ver.5を用い文献検索を行った。さらにCochrane Libraryに掲載されている搾乳に関するレビューに用いられている文献を追加した。その中からタイトル,抄録,本文を参考に,早産児の母親の母乳分泌量をアウトカムとする文献を抽出し,Cochrane Handbook,RoBANS,GRADE Handbookを用い,文献の質の評価を行った。また,研究目的,方法,結果について整理し,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアを抽出した。</p><p><b>結 果</b></p><p>35文献が抽出され,介入研究24件,観察研究11件であった。無作為化,隠蔽化,盲検化に関する記述が不十分で,サンプルサイズが検討されていないなど,ランダム化比較試験の質は低く,交絡変数の検討が不十分なために非ランダム化比較試験の質も低かったが,観察研究から実践に活用可能と考えられるエビデンスが得られた。早産児を出産した母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアでは,分娩後,可能な限り1時間以内に搾乳を開始すること,1日7回以上の搾乳回数,1日100分以上の搾乳時間を確保すること,手搾乳と電動搾乳の両方について十分な説明を行い,乳汁生成II期に入るまで電動搾乳に1日6回以上の手搾乳を追加すること,カンガルーケアを実施することが有用だとわかった。</p><p><b>結 論</b></p><p>今後は,産科看護者による早産児を出産した母親への搾乳ケアに関する実態把握を行い,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアが実践できるような教育プログラムを開発していく。</p>
著者
木村 千里 松岡 恵
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.23-30, 1995

分娩期に助産婦が産婦と共に過ごす共有率, 産婦への助産婦の発語回数, 夫以外の家族の立ち会いと産婦の主観的体験との関係を明らかにする目的で, 初産婦16名に分娩時ビデオ録画, 産褥3日に自己記入式質問紙法を行った。<BR>その結果, 娩出期の共有率の平均値は極期よりも有意に高かった (P<0.05)。さらに, 娩出期の共有率と, 助産婦の手段的サポートに対する産婦の評価得点との間に有意な相関関係を認めたが (r=0.51, P<0.05), 極期の共有率との間には有意な相関関係を認めなかった。また, 極期から娩出期にかけての単位時間当たりの助産婦の発語回数と, 助産婦の手段的サポートに対する産婦の評価得点との間に有意な相関関係を認めた (r=0.68, P<0.01)。また, 夫以外の家族の立ち会いがあった群は, なかった群に比較して有意に陣痛・出産時の対処・達成感の自己評価得点が低かった (P<0.01)。<BR>これらの結果から, 極期における助産婦の選択的存在, 極期・娩出期における夫以外の家族の存在について検討し, さらに分娩時, 出産に集中する産婦を妨害しないように, 産婦が必要とするときに効果的に言葉かけを行う必要性が示唆された。
著者
平岡 敬子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
pp.JJAM-2018-0010, (Released:2019-10-05)
参考文献数
9

目 的日本,アメリカ,インドネシアの女子大学生の子育て意識を比較することで,日本の女子大学生の特徴を明らかする。対象と方法2015年12月から2016年4月にかけて,日本,アメリカ,インドネシアの女子大学生を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は子供の教育・子育て役割など子育てを問う11項目(4件法)及び基本属性から構成される。収集したデータの分析にMann-WhitneyのU検定,カイ二乗検定,Spearman相関分析を用いた。結 果日本185名,アメリカ101名,インドネシア188名の計474名から回答を得られた。どの国の学生もそのほとんどが子供を望んでおり,教育に男女の差をつけるべきではないと回答した。アメリカとインドネシアの学生の99.0%以上は,子供にはできるだけ高い教育を受けさせるべきだと回答したが,日本の学生の場合,そのように回答したものは66.1%であった(p<0.01)。反対に,「そう思わない」が3.3%,「どちらかというとそう思わない」が30.6%で,合わせて33.9%は高い教育を受けさせるべきとは思っていなかった。また,日本の学生は,「子育ては女性の仕事である」と考える割合が31.4%で,アメリカの学生(28.0%)やインドネシアの学生(20.7%)より高く,インドネシアの学生とは有意な差が見られた(p<0.05)。子育てにおける父親と母親の役割を別と考えている学生は,日本の場合67.6%,インドネシアの場合75.0%であり,アメリカの学生(25.0%)と比べて有意に多かった(p<0.01)。親権については,日本の学生(54.1%)とインドネシアの学生(72.2%)は,「子供が小さい場合,離婚後の親権は母親が持つ方が良い」と回答し,アメリカの学生(19.0%)に比べると有意に多かった(p<0.01)。結 論日本の学生は,子供の教育や進路指導に関しては性別による差をつけるべきではないと考えているが,「幼い子供は母親が育てるべき」など子育てに関しては性別による役割の差があると考えていた。また日本の学生にとって,子供にかかる高い教育費が子育てをするうえでバリアとなる可能性が推察された。