著者
藤井 麻緒 堀 利栄 大藤 弘明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

放散虫とは、オパール(SiO₂+nH2O)やSrSO₄からなる鉱物質の内殻を持つ海洋性動物プランクトンのことである。現生の放散虫類はオパールの殻をもつコロダリア目、ナセラリア目、スプメラリア目、SrSO₄から成る骨格をもつアカンタリア目、そしてタクソポディア目の5目に分類されている。本研究では、放散虫の内骨格形成過程の観察のため、黒潮表層海域の放散虫を採取し室内における飼育実験を実施した。殻の成長観察については、蛍光試薬を用いオパールの付加成長部位を発光させる手法(Ogane et al., 2010)を用いた。その結果、従来SiO₂成分が含まれていないと考えられてきたアカンタリア目の生体骨格にも Siが含有される可能性が示されたのでそれについて発表する。検討に用いた現生放散虫は、黒潮海域であり放散虫が多種生息する高知県柏島近海にて採取した。プランクトン採集は2015年の7月12日、11月30日、2016年1月11日の全3回行い、採取した放散虫を目別に数個体ずつピックアップし、専用の飼育装置に入れて飼育を行った。飼育の際、水温を常に27℃に保ち、12時間LEDライトの照射、消灯を相互に行なった。飼育装置にて24時間静置した後、HCK-123蛍光試薬を投薬し、24時間~30時間経ったものをスライドに封入した。蛍光試薬を入れてから生体内に試薬が取り込まれその部分を蛍光発光させる事で、SiO₂を含む骨格の付加成長が起きた部分と生体内でのSi元素分布を知ることができる。作成したスライドは愛媛大学理学部設置の共焦点レーザースキャン顕微鏡(Carl Zeiss LSM510)を用いて観察した。スライドには波長488nmのArレーザー光を照射し、HCK-123蛍光試薬投薬後の蛍光発光を観察した。また、Siの含有についての真偽を検討するため、さらにアカンタリア骨格のFE-SEMおよびWDS分析を行った。採集した放散虫類の内、今回は4個体のアカンタリア目の結果について報告する。蛍光試薬投薬後Acanthometra muelleri (個体番号:20150712A-1)、Amphilonche complanata (個体番号:20151130A-1)は24時間飼育、Acanthostaurus conacanthus (個体番号:20160111A-1)、Acanthometron pellucidum (個体番号:20160111A-2)は30時間飼育し、スライドに封入した。各個体を共焦点レーザースキャン顕微鏡にて観察したところ、Acanthometra muelleriは表層の骨針と中央部、Amphilonche complanataは骨針の根元と中央の一部、Acanthostaurus conacanthusは骨針の根元の表層部、Acanthometron pellucidumは折れた骨針と新しく成長中の骨針の一部にSiO₂の付加が確認できた。更に、アカンタリア目Amphilonche complanataの異なる個体でFE-SEMおよびWDS分析を行った。アカンタリア目の主成分はSrSO₄なので、今回はSr、S、Oと、今回注目しているSiについて元素マッピング分析を行った。主成分であるSr、S、Oは骨格全体に広く含まれていたが、その中に部分的にSiの分布も確認できた。殻周辺の付着物以外でSiの反応が確認できた箇所を拡大して分析したところ、骨針の先端表層部分に集中してSiが含まれていることが確認できた。以上の蛍光試薬を用いた飼育実験結果および生体骨格の元素マッピング分析により、従来骨格にSiO₂を含まないと考えられてきたアカンタリア目は、生きている状態においては部分的にSiO₂を含有する事が示された。またそれは、殻の成長活発な部位において顕著で、アカンタリア目の骨格形成においてSiO₂成分が重要な役割を果たす事を示唆している。
著者
山元 孝広
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

島根県西部の大山火山は,約1Maから活動を開始したアダカイト質の複成火山である.噴火履歴の大枠は津久井(1984)により明らかにされているものの,その定量化にまでは至っていない.特に,大山火山では約5万年前に国内で最大規模のプリニー式噴火である大山倉吉降下火砕物が噴出したが,この噴火が大山火山の長期的な火山活動の中でどのように起きたものかまでは理解されていなかった.そこで大山火山の過去約20万年間の噴火履歴の見直しと放射性炭素年代測定,マグマ噴出量の再計測を行い,新たに積算マグマ噴出量階段図を作成した.噴火履歴の見直しで重要な点は,津久井(1984)の弥山火砕流が,本質物の化学組成の異なる北麓の清水原火砕流と西〜南西麓の桝水原火砕流に分けられることである.前者からは18,960-18,740 calBC,後者からは26,570-26,280 calBCの暦年代が得られた.分布と岩質から,前者は三鈷峰溶岩ドーム起源,後者は弥山溶岩ドーム起源と判断され,大山火山の最新期噴火は約2万年前の三鈷峰溶岩ドームの形成であることが明らかとなった.大山火山起源のテフラについても等層厚線図を書き直し,Legros (2000)法で噴出量を計測し直した.従来値よりも噴出量が大幅に大きくなったものは計測し直した約8万年前の大山生竹降下火砕物で,その最小体積は2 km3DREである.更新した階段図からは,大山火山では約10万年前から噴出率が高い状態が続いていたことを示しており,大山倉吉噴火は大山火山のこの時期の活動の中で特異的に大きいわけではない.
著者
辻 宏道 畑中 雄樹 佐藤 雄大 古屋 智秋 鈴木 啓 村松 弘規 犬飼 孝明 三木原 香乃 高松 直史 中久喜 智一 藤原 智 今給黎 哲郎 飛田 幹男 矢来 博司
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

1.背景 国土地理院はGPS等の測位衛星(GNSS)の電波を受信する「電子基準点」を全国約1,300箇所に設置し、そのデータを利用して測量や地殻変動監視を行うとともに、そのデータを公開して測量・測位、防災分野等での活用を推進している。GPSはL1帯(1.57542 GHz)及びL2帯(1.2276 GHz)の信号を送信しているが、近年、準天頂衛星や次世代GPSはL5帯(1.17645 GHz)の信号も送信しており、最新型のGNSS受信機及びアンテナは、従来よりも広い周波数帯に対応した設計となっている。 一方、携帯電話サービスでは、LTEと呼ばれる次世代高速通信サービスが全国で開始されており、この中には1.5 GHz付近の電波を利用するものも含まれる。 2.現象 電子基準点「函館」で、2013年5月から観測される衛星の信号強度(SN比)が低下するとともに、データを解析して得られる電子基準点の高さに、見かけ上の変動(振幅:最大約5 cm、周期:2~3週間)が生じた。現地測量により実際の変動でないことは確認されたが、原因の究明には至らず、当該基準点は公共測量で利用できないように措置した。 その後も、電子基準点「焼津A」で、2014年3月からSN比の低下及び見かけ上の上下変動(振幅:最大約2 cm、周期:2ヶ月)が確認されるなど、2016年2月現在、同様な現象が「函館」以外に13点でも発生している(電子基準点名:「焼津A」、「大阪」、「神奈川川崎」、「石垣2」、「御殿場」、「足立」、「越谷」、「新富」、「大宮」、「楠」、「八郷」、「厚岸」、「指宿」)。いずれも水平変動はなく、上下変動も比較的小さいため、通常の公共測量では利用できるが、GNSS測量による標高の測量を行う場合は利用できない。 地殻変動の研究を行う場合、これらの電子基準点の「日々の座標値」や関連する基線に現れる周期的な上下変動は、実際の変動ではないことに注意が必要である。 3.仮説 これらの電子基準点に共通するのは、1)マルチGNSSに対応した同一機種の受信機及びチョークリング・アンテナを利用していること、2)周辺(概ね1 km以内)に携帯電話基地局があり、SN比の低下が始まった日に1.5 GHz付近の電波を利用するLTEサービスが開始されていることである。このため、GPSのL1帯の隣接周波数帯にあるLTE信号が、従来より広い帯域に感度を持つアンテナに混入し、アンテナや受信機のアンプが飽和する等によりSN比が低下しているとの仮説が成り立つ。しかし、そのデータを基線解析すると上下方向だけに周期的な変動が現れるメカニズムはよくわからない。 4.当面の対応 メーカー提供のL1帯隣接周波数帯の1.5 GHz信号を除去するフィルターをアンテナと受信機間に挿入して、「函館」及び「焼津A」で観測したところ、SN比は現象の発生前には戻らないものの改善が見られ、見かけ上の上下変動は大きく低減した。また、5~10 dBのアッテネータ(減衰器)の挿入によっても、ほぼ同様な効果が見られることを確認している。今後、減衰量の最適値を決定し、見かけ上の上下変動が発生している電子基準点にアッテネータを挿入することを検討している。
著者
種子 彰
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

A Wegenrが大陸の南北アメリカのとアフリカの沿岸プロフィールが一致することから,大陸移動仮説を提唱して,古生物学や地質の連続性を根拠に証明しようとした.今では海洋底拡大仮説やマントル熱対流仮説や大西洋中央海嶺の発見やトランスフォーム断層の発見や地磁気の反転と海底テープレコーダー仮説など実証的な観測でプレートテクトニクスがほぼ定説となっている.しかし,ウェゲナーが示せなかった大陸移動の駆動力はプレートテクトニクスでもまだ謎のままである.ウェゲナーが指摘していた,70%を占める深海洋底(-5km)の形成起源やプレート境界の起源,プレートテクトニクスの起源を探究する努力が忘れられていた.弧状列島と海盆の起源も謎のままである. この全てを統一的に解明できる新パラダイムが望まれていた.それはアブダクションによるマルチインパクト仮説であり,地球物理学と太陽系惑星学から"地球と月のミッシングリンクの解明"で述べられた.それによると,このプレートテクトニクスの起源の他に,月の形成や深海洋底の起源,コアの偏芯や木星大赤飯の起源や水星や冥王星の起源,更には小惑星帯の起源や分化した隕石の起源も統一的に解明できる新パラダイムの提案である.アブダクションは,ある仮説による結論が複数の現状を説明できれば出来るほどその仮説の正しさが保証されるという考え方である.発想の大転換であり創造的推論と呼ばれており,物理的意味がある仮説で,アイデアが正しければ,飛躍的な進歩が得られる. 太陽系の誕生から約40億年前まで経過してCERRAが木星摂動により軌道変形し木星と太陽の張力で断裂した時,CERRAと地球は分化凝固していた. 本仮説では複数マントル破片がほぼ同じ軌道を巡りの廻り巡り間欠的に衝突することが,度重なる生物種大絶滅の原因であり,マントルを剥ぎアイソスタシーにより5km 深さの海の起源となった.アイソスタシーにより衝突マントル欠損部にダーウィンの隆起が起きたとき,周囲の地殻が剥離したプレートが凹型にへこんで,その境界亀裂が弧状列島を形成した.太平洋を中心とした弧状列島やテーチス海の形成時のジャワ島等,弧状列島の外側に連なる海溝弧はプレートが弧状列島の下に潜り込みを示しています.プレート境界は複数のマントル断裂片が地球へ衝突した時の亀裂に起因している.本仮説では,地球が自転している為,衝突により欠けたマントルがアイソスタシーで凸になった時,慣性モーメントが不均一(アンバランス)になった地球では,慣性モーメントを最小にする駆動力が発生する. 一つの仮説だけで,全ての謎を統一した進化として説明できる事は,アブダクションの成果である.
著者
古川 郁将 本田 陸人 湖平 元彌 藤井 悠野 西村 江梨花 東元 太誠 岩満 春樹 丸山 璃花 前田 稜河
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-05-06

1.はじめに市街地では、夜になっても星を綺麗に見ることができない。この光害に関心を持ち、研究を始めた。現在は市販のスカイクォリティーメーターで、夜空の明るさを数値化している。この観測値を気象条件や環境指標のデータと比較し、夜空の明るさに大きく影響していると分かった。2012年には、「北九州1/5万等光度曲線地図」(図1)を製作し、夜空の明るさを可視化した。光害とは、人工の光の環境への悪影響である(図2)。特に、街などの地表の光がエアロゾルによって散乱・反射され、夜空が明るくなる現象を研究をしている。今回、明るい暗いという曖昧な表現しかない光害を数値化するための"光害公式"を考えた。2.夜空の明るさと経時変化率「等光度曲線地図」製作の際には、1日に150ヵ所以上観測することもあり、各地点で観測した時間が異なる。そこで経時変化率を用いて、観測値を21時基準に補正した。図3は、北九州市内7ヵ所で観測した結果である。時間毎に夜空が暗くなっている。この経時変化率は、最小二乗法を用いて算出した。図4、5は19時から4時までの自動車の交通量および、マンションの点灯率である。どちらも時間の経過で減少している。このように、経時変化率は人間の活動に大きく影響される。3.光害の数値化3-1.光害公式の作成2008年に発足させた「夜空の明るさ全国ネットワーク」のデータを見ると、観測地毎に経時変化率に特徴があった。つまり、経時変化率で光害を数値化できるかもしれない。岩手県のひろのまきば天文台は光害が小さいため経時変化率は0.002と非常に小さい(図6)。逆に、三重県の津高校のように、市街地に位置し光害が大きい場所では、経時変化率が0.05と大きくなっていた(図7)。このように光害の大小は、経時変化率で表せることが分かった。そこで、経時変化率を中心に、次の光害公式を考えた。光害指数(Light Pollution Index of Sky)は、人口密度[P]、経時変化率[r]、夜空の明るさ[b]の3つを要素として、光害を数値化しており、光害指数が大きいと、光害の影響が大きいことを示す。単位は[人/(k㎡・h)]となり、人間の活動量の変化によって起こる光害を数値化した指数だといえる。人口密度が増えると、消費電力量が増えるため光害指数は大きくなる。夜空の明るさは明るくなると値が小さくなり、光害指数に反比例する。なお、人口密度を要素としたのは、新宿区のように夜まで人間の活動が盛んな場所では、経時変化が小さくなるためである。3-2.人口密度(P)と住宅率(h)人口密度は、観測地点を中心とした半径2km圏内で算出した。2012年の研究より特定の強い光源は最大2km先まで影響するためである。さらに、圏内に居住区でない部分が含まれる場合、それらを除いた部分の割合(住宅率:h)を用いて人口補正をした。住宅率は雲量の指標を参考に、有効面積内の非居住部分を目視で確認する。図8は補正後の人口密度と光害指数を比較したものである。人口密度の増加に比例してLPI-Sが大きくなっている。このように補正をしたことで、地域性をより明確に表現したものとなった。3-3.LPI-Sの実用性についてこの式が現状の光害を適切に数値化できるのかを考察するため、北九州市内各地での観測を行った。さらに、全国ネットワークの参加校へアンケートを行い、その地域特有の光害の様子について調査を行った。北九州市熊本は、観測地付近に北九州市民球場がある。そのナイター照明の影響で経時変化率が大きくなり、新宿よりも大きいLPI-S=156.4だった。人口密度だけで表せない光害を、経時変化率で表現できた。一方で、天文台はどちらも値がほぼ0であり、明確に光害を表現できた。4.おわりに 曖昧な指標である光害を、経時変化率を中心に公式化、数値化した。また、全国ネットワークへのアンケートから、LPI-Sで適切に光害の大きさを表現できるかを確認した。以前に光害をモデル化した研究はあるが、美しい星空を見るための、「暗い夜空」を数値化したものである。私たちの「明るくなった夜空」を表現した光害指数(LPI-S)は、これまでになかった。黄砂や雪など、様々な要因で夜空の明るさの地域性が生まれる。しかし、光害指数に地域性がどう表れるのかを詳細に調査するには、より多くのデータが必要だ。今後も観測を続け、全国のデータを集めていきたい。5.謝辞全国ネットワーク参加団体のデータ提供に感謝します。星空公団の小野間さんには、多大なご協力を頂きました。ありがとうございました。6.参考文献(一部)・東筑紫学園高等学校・照曜館中学校理科部(2013); 第22回「星空の街・あおぞらの街」全国大会環境大臣賞受賞記念 77pp.・環境省(2000), 地域照明環境計画策定マニュアル 2p.・J.Bortle(2001);The Bortle Dark-Sky Scale, Issue of Sky & Telescope,126p.~129p.
著者
山田 隆二 井上 公夫 苅谷 愛彦 光谷 拓実 土志田 正二 佐野 雅規 李 貞 中塚 武
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

赤石山地鳳凰山東麓小武川支流ドンドコ沢に大量に分布する花崗岩質の巨大な角礫群は、堆積層から採取した樹幹試料等の放射性炭素(14C)年代測定に基づいて、奈良-平安時代に発生した大規模岩屑なだれに由来し天然ダムを形成したと考えられている(苅谷, 2012, 地形, 33: 297-313)。本研究では、酸素同位体比年輪年代測定法を用いて、岩屑なだれの誘因や堆積過程の解明に迫った。年代測定用の試料は、ドンドコ沢天然ダム湖堆積物の地表下約1 mの砂泥層に含まれるヒノキ(樹幹直径約50 cm、年輪計数による推定樹齢約400年)からディスク状に切り出して採取した。切り出したディスクから木口面に平行な厚さ1 mm、幅1 cmの薄板をスライスして板のままセルロース化し、最外年輪を53年分切り出して、総合地球環境学研究所が所有する熱分解元素分析計付きの同位体比質量分析計で測定した。測定結果の経年変動パターンを木曽ヒノキの標準変動曲線と対比したところ、ヒノキはAD 883+α(αは1年以上、数年程度)以降に倒伏・枯死したと考えられる。岩屑なだれの誘因を地震による強震動であると限定した場合、同じ露頭から採取した樹幹の14C年代測定結果は809-987(CalAD, 2σ; 苅谷, 2012)であることから、既往文献(宇佐美ほか, 2013, 日本被害地震総覧599-2012, 東京大学出版会)によると誘因となる可能性のある歴史地震が4つ程度考えられる(AD 841 信濃、 AD 841伊豆、AD 878 関東諸国、AD 887 五畿七道)。一方、酸素同位体比年輪年代のレンジはAD 883+αであるため、誘因となる可能性のある歴史地震はこれらのうちAD 887 五畿七道地震に絞られる。苅谷ほか(JPGU 2014, HDS29-P01)は同じ樹幹試料より年輪幅を計測し、AD 887晩夏の枯死年代を得ており、五畿七道地震(仁和三年 = AD 887夏)に関連して枯死したと指摘したが、酸素同位体比年輪年代測定の結果はそれに矛盾しない。この研究は、平成27年度砂防学会の公募研究会の助成を受けた。
著者
千秋 博紀 黒澤 耕介 岡本 尚也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

A shooting star is caused by an entry of a cosmic dust particle into the planetary atmosphere. The light from the shooting star composed of thermal emission and emission lines from the gas in from of the dust particle and the vapor from the dust particle. It means that the physical and chemical condition of the dust particle can be estimated from a photometric and/or spectroscopic observations. However a shooting star is a sporadic and un-controled event, and thus the relation between the physical and chemical condition and the resulting spectroscopic observation is estimated by empirical equations.We are constructing a laboratory experimental system to simulate shooting stars by using a two-stage light gas gun at Planetary Exploration Research Center (PERC), Chiba Instiute of Technology, Japan. This gun shoots a projectile with size of 2 mm into a observational chamber filled with gas. The light from the projectile is observed by high-speed camera with 1 Mfps and its spectrum is taken by spectrometer simultaneously.We carried out a series of experiments using the system with a variety of projectile composition. The specific spectra relating to the projectile component were confirmed as a function of the location from the projectile (during head-neck-tail structure). We will give the experimental results and discuss the chemical and physical status of shooting star.
著者
五十嵐 康人 北 和之 牧 輝弥 竹中 千里 木名瀬 健 足立 光司 梶野 瑞王 関山 剛 財前 祐二 石塚 正秀 二宮 和彦 大河内 博 反町 篤行
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

著者らは, 福島第一原発事故の放射能汚染による大気環境影響評価のため, 福島県内の汚染地域に設置された観測地点で放射性セシウムの大気への再飛散を研究してきた。その結果, 1) 都市部での観測結果と異なり, 典型的な里山である観測点では,特に夏季に放射性Csの大気中濃度が上昇し(Fig. 1),2)これを担う粒子は, 見た目や光学顕微鏡像からダストと思われたが, 意外にもその大部分が実は生物由来であること(Fig. 2)を見出した。真菌類が放射性Csをカリウムと誤認し濃縮する事実を考慮すると, 再飛散を支える実体として胞子が想定できる。仮に真菌胞子のみが137Csを運ぶとして, 胞子一個当たりの137Cs量を幾つかの仮定下で推定すると, 5×10-10-3×10-7 Bq/個となり, 森林から胞子が9×103-5×105個/m2/秒飛散する必要がある。この値は,Sesartic & Dallafior (2011) Table 2のForestの最大値387個/m2/秒よりも1~3桁も大きい。しかし実際, 今夏の予備観測で,バイオエアロゾル個数濃度は5-8×105個/m3に達することが確認され, 我が国の森林から予想以上のバイオエアロゾルの飛散が起きていることがわかった。さらに上記仮定に基づくと, 大気中137Cs濃度は2.5×10-4-0.15 Bq/m3となり, 現実の放射性Csの再飛散と凡そ辻褄が合う。これらから, 夏季におけるバイオエアロゾルによる放射性Csの再飛散を真剣に考慮すべきことがわかってきた。
著者
河村 聡人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

The result of a test particle simulation will be presented and discussed as a possible interpretation on Interstellar Boundary EXplorer (IBEX) observations of InterStellar Medium (ISM) Oxygen. Due to the physical characteristics of Oxygen atom, neutral Oxygen had interacted with Hydrogen-dominated Heliosphere before they were observed by IBEX, and such Oxygen may contain some information of Heliospheric structure within its flux distribution over the sky. In order to understand this observation, we must classify the particles based on their histories of interactions with Heliosphere. We provide a unique classification on the test particles which makes the simulation result provide an insight on the IBEX observations.
著者
野津 翔太 野村 英子 石本 大貴 本田 充彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

原始惑星系円盤(以下、"円盤")は、⽐較的単純な分⼦種(e.g., H2O, CO, CO2, HCN)から複雑な有機物(COMs)まで様々な分⼦種を含む。最近ではSpitzer宇宙望遠鏡や、地上の⼤型望遠鏡(e.g., VLT, Keck)による⾚外線分光観測などで、⽐較的単純な分⼦種の様々な輝線が検出され始めている (e.g., Pontoppidan et al. 2010a&b, Mandell et al. 2012)。円盤はほぼケプラー速度で回転しているため、円盤から放射される輝線はドップラーシフトを受け広がっている。この輝線のプロファイル形状の解析から、輝線放射領域の中⼼星からの距離の情報が得られる。これまで我々は、円盤の化学反応ネットワーク計算と放射輸送計算の⼿法を⽤いて、H2O輝線プロファイルの観測から円盤内のH2O分布、特にH2Oスノーラインを同定する可能性を調べてきた。その結果、アインシュタインA係数が⼩さく、励起温度が⾼いH2O輝線を⽤いた⾼分散分光観測を実施する事で、H2Oスノーラインの位置を同定できる可能性が⽰されている(Notsu etal. 2016a, ApJ submitted & 2016b in prep.)。ここで円盤内では凝結温度の違いにより、分⼦種ごとにスノーラインの位置は異なると考えられる。その為、円盤ガス・ダスト中のC/O⽐は、中⼼星からの距離に応じて変化すると考えられる。例えばH2Oスノーラインの外側では、多くの酸素がH2Oの形でダスト表⾯に凍結する⼀⽅、炭素の多くはCOなどの形で円盤ガス中に留まるので、ガス中でC/O⽐が⼤きくなる。また、近年系外惑星⼤気のC/O⽐が測定され始めているが(e.g., Madhusudhan et al. 2014)、円盤と惑星⼤気のC/O⽐を⽐較する事で、惑星形成理論に制限を加えられる事が⽰唆されている(e.g., Oberg et al.2011)。そこで我々は、これまでの化学反応計算を発展させ、円盤ガス・ダスト中のC/O⽐や、⽐較的単純かつ主要な分⼦種(e.g., H2O, CO, CO2, HCN) の組成分布を調べている。同時に放射輸送計算も進め、C/O⽐などを同定するのに適した輝線の調査を進めている。その結果、同じ分⼦種のアインシュタインA係数(放射係数)や励起温度が異なる輝線を使う事で、円盤内の異なる領域のC/O⽐に制限を加えられる事が分かってきた。例えばHCNの場合、3μm帯の輝線では円盤外側、14μm帯の輝線では円盤内側の構造に迫る事が可能である。これは14μm帯の輝線の⽅が3μm帯の輝線と⽐べ、ダストの吸収係数が⼩さく励起温度が低いため、円盤内側のHCNガスが豊富な領域を追う事が出来るからである。本発表ではまずT-Tauri円盤の場合の解析結果を中⼼に報告し、将来の近-中間⾚外線の分光観測 (e.g., TMT/MICHI, SPICA) との関係についても議論する。また時間の許す範囲で、Herbig Ae星の場合の解析結果の報告と議論も⾏う。
著者
清水 祥伽 中西 正男 佐野 貴司
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

応神ライズ海山群はシャツキーライズと天皇海山列の間に位置する海山群である。シャツキーライズはプルームヘッドによる多量の噴火によって148 Ma以降に形成されたと考えられている(Nakanishi et al., 1999)。シャツキーライズには3つの高まり(海台)、南からタム山塊、オリ山塊、シルショフ山塊が存在する。深海掘削試料の放射性年代から、タム山塊は144 Ma頃、オリ山塊は 134 Ma頃、シルショフ山塊は128 Ma頃に形成されたとされている(Geldmacher et al., 2014; Heaton and Koppers, 2014)。応神ライズ海山群周辺のプレートの年代は134 – 125 Maである(Nakanishi et al., 1999)が、その地形的特徴や形成時期についてはわかっていない。応神ライズ海山群は、シャツキーライズの主活動期の後しばらくしてから起こった火成活動で形成されたという仮説が提案されている(Sano, 2014)。応神ライズ海山群とシャツキーライズの形成の関係性が明らかになれば、マントルプルーム活動の変遷、特に主活動期の後の火成活動を理解することにつながる。2014 年7月に研究船「かいれい」による海底地形,重力,地磁気の地球物理学観測およびドレッジによる岩石採集が応神ライズ海山群において行われた(KR14-07航海)。本発表では、重力および海底地形の解析から明らかになった、応神ライズ海山群周辺の海洋地殻構造について報告する。使用したデータは、KR14-07航海で得られたマルチビームデータとSager et al. (1999)で作成された海底地形グリッドデータ、Sandwell and Smith (2009)で作成された衛星高度計観測から作成されたフリーエア重力異常データである。これらを用いて、地殻の厚さ及びアイソスタシーの状態、弾性層厚を求めた。海洋地殻の厚さはKuo and Forsyth (1988)の方法を用いてもとめた。また、アイソスタシー及び弾性層厚は海底地形とフリーエア重力異常に関するadmittance解析(McKenzie and Bowin, 1976)から求めた。解析結果から応神ライズ海山群の平均的地殻の厚さは12km程度であることが判明した。これは平均的な海洋地殻の6kmと比べ2倍も厚い。また、弾性層厚は2.6 kmであり、エアリータイプのアイソスタシーが成り立っていることが分かった。これらの解析結果から、応神ライズ海山群の形成年代は、周辺の海洋プレートの年代とほぼ同じであることが明らかになった。すなわち、応神ライズ海山群の形成時期は134 – 125 Maであると推定される。このことから、シルショフ海台形成と同年代にオージンライズ海山群が形成されたと考えられる。
著者
西山 忠男
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

This is a union session jointed with AGU.The theme of this session is”Geosciences and society: What is the role of geoscientists? Do we really need geoscientists? And if so how to suggest vocations among the young generations?"We anticipate that this special session will be particularly stimulating, as it will provide useful comparisons of a single situation in two countries with different educational and societal contexts.List of moderator and panelists with affiliation and specialtyModerator: Prof. Asahiko Taira (JAMTEC) geology and marine geosciencePanelists :1. Prof. Haruo Hayashi (National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention) social psychology, psychology for disaster prevention, human behavior on the disaster2. Prof. Muneo Hori ( Earthquake Research Institute, The University of Tokyo) earthquake engineering, computational mechanics, simulation of social science3. Prof. Toshio Yamagata (JAMSTEC) meteorology, ocean physics, earth fluid mechanics4. Prof. Satoko Ooki (Keio University) seismology, earthquake disaster, disaster prevention education5. Prof. Stephen P. Obrochta (Akita University) paleoceanography, paleoclimate, stratigraphy
著者
渡辺 学 米澤 千夏 潤 園田 真人 大木 直弥 富井 政信 島田
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-05-19

PALSAR-2 (Phased Array type L-band Synthetic Aperture Radar 2), L-band SAR on-board Advanced Land Observing Satellite-2 (ALOS-2), data were used to detect disaster areas caused by the 2016 Kumamoto earthquake.1. Coherence change technique with coherence filter [1] was used to detect damaged urban areas.2. Alpha angle [2] and HH-VV coherence [3] change techniques were used to detect landslide areas.The coherence change technique with coherence filter identifies candidates of severely damaged urban areas located along a fault, which induces the earthquake. The detected damaged areas are Mashiro town, Koyo area in Minamiaso village, which incudes Aso campus of Tokai university, Aso Ohashi bridge, and some of landside areas.Some landslides occurred in a forest area before the disasters were detected by using the alpha angle and HH-VV coherence change techniques. But miss-identification were often observed. Additional forest mask was produced from the image taken before the disaster, and tested to reduce the miss-identification. It is confirmed that the forest mask works well to reduce the miss-identification of landslide area.[1] M. Watanabe, R. Natsuaki, H. Nagai, T. Motohka, T. Tadono, M. Ohki, R. B. Thapa, C. Yonezawa, M. Shimada, S. Suzuki, Damaged area detection caused by 2015 Nepal earthquake with coherence difference obtained by PALSAR-2 three observations, JpGU 2015, May 24-28, 2015, Makuhari Messe/Chiba[2] Pi-SAR-L2 observation of the landslide caused by Typhoon Wipha on Izu Oshima Island, M. Watanabe, R. B. Thapa, M. Shimada, Remote Sensing, 8(4), 282, 2016[3] M. Shimada, M. Watanabe, N. Kawano, M. Ohki, T. Motooka, W. Wada, Detecting mountainous landslides by SAR polarimetry: A comparative study using Pi-SAR-L2 and X band SARs. Trans. Jpn. Soc. Aeronaut. Space Sci., Aerosp. Technol. Jpn. 2014, 12, 9–15.
著者
辻村 優志 川方 裕則 福山 英一 山下 太 徐 世慶 溝口 一生 滝沢 茂 平野 史朗
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

For inland earthquakes such as the 2007 Noto Hanto earthquake (Doi and Kawakata, 2013) and the 2008 Iwate-Miyagi earthquake (Doi and Kawakata, 2012), foreshocks were reported to occur in the vicinity of main shock hypocenter. Moreover, for interplate earthquakes such as the 2011 off the Pacific coast of Tohoku earthquake (Kato, et al., 2012) and 2014 Iquique earthquake in Chile (Yagi et al., 2014), migration of foreshocks toward the main shock hypocenter was detected in one month before the main shock. In order to understand the generation mechanism of foreshocks, it is important to investigate under what environments foreshocks occur.Since 2012, stick-slip experiments have been carried out using a large-scale biaxial friction apparatus at NIED (e.g., Fukuyama et al., 2014). Based on the experimental result that foreshocks were detected only in the later period of each run, Kawakata et al. (2014) suggested that the foreshocks occur only after the generation of gouge. In this study, we carried out a series of stick-slip experiments with and without pre-existing gouge along a fault plane to confirm if fault gouge affects the foreshock activity. When foreshocks are detected, we estimate the hypocenter locations of foreshocks.We used two rectangular metagabbro blocks to make the simulated fault plane, whose dimension was 1500 mm long and 500 mm wide. The experiments were conducted under normal stress of 1.33 MPa and loading speed of 0.01 mm/s up to approximate slip amount of 8 mm. During each experiment, we continuously measured elastic waves to detect foreshocks. The sensor distribution is shown in the figure below. Gouge materials were prepared naturally during preceding experiments whose sliding speed was as high as 1 mm/s.To roughly detect foreshock activity, we calculated cumulative amplitude of continuous waveform data every 0.01 seconds. During an experiment without pre-existing gouge materials (LB13-004), a few foreshocks were detected. On the other hand, during an experiment with pre-existing gouge materials (LB13-007), much more foreshocks were detected. Then we estimated hypocenters of foreshocks for a stick-slip event (event 44) in LB13-007. Although the initial phases of the main shock were contaminated due to the coda wave signals of preceding foreshocks, the hypocenter of the main shock was roughly estimated near the right end of the fault plane. Foreshocks began to occur in the left half of the fault plane, but most of later foreshocks occurred near the right end.Therefore, we confirmed that foreshock activity was high when gouge materials were present along a fault plane, and found a similar hypocenter migration of foreshocks toward the main shock hypocenter, which was reported for interplate earthquakes.In the future, we shall examine the data obtained from other experiments to confirm if the aforementioned features are common.Acknowledgments: This work was supported by NIED research project “Development of monitoring and forecasting technology for crustal activity” and JSPS KAKENHI Grant Number 23340131.
著者
豊本 大 川方 裕則 平野 史朗 土井 一生
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

Recently, small foreshocks have been frequently detected using a cross-correlation technique (e.g., Bouchon et al., 2011, Science). For inland earthquakes, foreshocks whose hypocenters were estimated to be adjacent to the mainshock hypocenter were detected from several tens of minutes before the main shock occurrence (Doi and Kawakata, 2012, GRL; 2013, EPS). Toyomoto et al. (2015, SSJ) tried to detect foreshocks of an M 5.4 earthquake in central Nagano prefecture on June 30, 2011, in a similar manner to Doi and Kawakata (2013). Using the continuous waveforms of the vertical component at N.MWDH (Hi-net) station (the epicentral distance of the mainshock is 4.5 km), they newly detected 14 foreshocks with a cross-correlation criterion of 0.6, in addition to 27 foreshocks listed in the JMA (Japan Meteorological Agency) unified hypocenter catalogs. To efficiently detect small foreshocks for other inland earthquakes, it is necessary to design how to set the cross-correlation detection criterion for foreshock detection.In this study, we carried out foreshocks detection of the same earthquake in the same method as Toyomoto et al. (2015, SSJ) using the waveform record of N.MNYH (Hi-net) station (epicentral distance of main shock is 5.3km). In this case, the maximum correlation coefficients during one minute tended to be higher than those for records at N.MWDH station, and the result of detection strongly depends on a threshold employed in a cross-correlation method. This indicates that we should not use a universal threshold independent of data. One of alternative way is to use the standard deviation of cross-correlation coefficients. Then, we made a histogram of the cross-correlation coefficients of 1-day data. The histogram of N.MWDH data is Gaussian and the cross-correlation coefficients obey a normal distribution with the average of zero. Although the histogram of N.MNYH data is not Gaussian, so the cross-correlation coefficients have a large-deviation. In such a case, a criterion depending on the standard deviation is inadequate.Acknowledgments:We used continuous waveform records of NIED high-sensitivity seismograph network in Japan (Hi-net) and the JMA unified hypocenter catalogs.
著者
米田 直明 川方 裕則 平野 史朗
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

It has been reported that the b-value decreases prior to large earthquakes in nature (e.g., Imoto, 1991) and failure of a rok sample in laboratories (e.g., Scholz, 1968) . To discuss a temporal variation of the b-value, a sufficient number of earthquakes is required. In general, calculation of b-value prior to large earthquakes requires long-term data because seismic activity is not always high at that term. In other words, the temporal resolution of b-value variation before a large earthquake is usually low. Therefore, sufficiently high seismic activity before the large earthquake is required to evaluate the b-value variation precisely.For example, two major earthquakes occurred in northern Tochigi Prefecture: Mj6.3 in 2013 and Mj5.1 in 2014. The two events followed the increase of seismic events. One possible cause of this increase is the Mw9.0 Tohoku earthquake in 2011 (e.g., Aketagawa, 2011).In this study, we try to detect the temporal variation of the b-value in northern Tochigi Prefecture where a large number of earthquakes could be observed in a short period prior to the two major events. First, to increase the temporal resolution, we calculate the b-value for a circular region with 20km radius from the epicenter of the Mj6.3 event; the result is shown in Figure A. While the b-value was greater than 1.0 and stable before March 2011, it dramatically decreased to ~0.6 after the occurrence of the Tohoku earthquake in 2011 and recovered to around 1.0 almost within one year. After that, it decreased to ~0.7 again following the Mj6.3 event in 2013 and recovered to ~1.0 within a small period. Although it decreased to ~0.75 again following the Mj5.1 event in 2014, it did not recover but continued, at least, one year. Regarding these different variations in each sequence, we considered the seismic activity in northern Tochigi precisely. We consider regions 1, 2, and 3. The region 1 is located south of the source region of the Mj6.3 event and includes an active fault. The regions 2 and 3 include the source areas of the Mj6.3 and Mj5.1 events, respectively. The temporal variation of b-value for each region is shown in Figure B, C, and D. In region 1, constant seismic activity has continued for the whole term and the b-value was stable and greater than 1.0. The b-values are also stable but ~1.0 in region 2 and ~0.75 in region 3. On the basis of these results, we found that the temporal variation of the b-value of the entire region is affected by the temporarily activated one of the three regions. However, in regions 2 and 3, the numbers of events to calculate the b-value precisely are insufficient despite their activation. So we found that we cannot detect temporal variation of the b-value prior to the major events. This finding tells us that we need to consider the target region carefully when we research the temporal variation of the b-value.AcknowledgmentsIn this study, we used the JMA unified hypocenter catalogue.
著者
植村 美優 川方 裕則 平野 史朗
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

On the basis of experimental studies (e.g. Yoshimitsu et al., 2009 and Lockner et al., 1977), it has been expected that seismic velocity decreases prior to earthquakes. To detect temporal variation in the velocity, stable monitoring of the velocity for a long time is required. Seismic interferometry using micro-tremors is one of the potential techniques which enable us to detect such variation if seismic stations are densely located. With a seismic interferometry technique, some researchers have tried to detect the velocity variation before and after an earthquake using seismograms of a station pair whose interval was longer than ~20 km, but remarkable variation preceding target earthquakes have never been reported. If we can use seismograms of a station pair with a shorter interval, we might be able to detect the variation. In this study, we chose the 2014 Nagano Kamishiro Fault Earthquake (Mj 6.7) as a target, whose source fault (Kamishiro fault) is located between two NIED Hi-net seismic stations (N.HBAH and N.HKKH). The interval of these stations is about 7.3km.At first, we investigated how frequency contents of micro-tremors depend on time, such as day or night, weekday or weekend. After checking, we confirmed that seismograms on Saturday night are the best for our analysis. After applying one-bit normalization, we divided continuous seismograms into one-minute seismograms. Then, we calculated the cross-correlation function of each one-minute seismograms pair of two stations, and stacked all cross-correlation functions for a period of six hours, on Saturday night. Finally, we obtained stacked cross-correlation from 2011 to 2015.We found obvious and pulse-like phases around -2s, from which we estimate apparent seismic velocity ~3.5km/s. Further, we found the increase and decrease in velocity during two years before the earthquake. However, the variation of average velocity is as large as 10%, and we cannot find any corresponding phase in positive time. Moreover, we could not find any coseismic variation. It is suggested that distribution of the micro-tremor sources is anisotropic and asymmetric in space and unstable in time even though we focused only on November and December for every year. Consequently, if we try to detect the structure variation around a seismic source fault, we should confirm that the spatio-temporal distribution of the micro-tremors source does not change.Acknowledgments: We used continuous waveform records of NIED high-sensitivity seismograph network in Japan (Hi-net).
著者
若松 修平 川方 裕則 平野 史朗
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

火山性地震には多くの種類が存在する。しかしながらその分類方法は統一されておらず、研究者や火山によって分類方法や基準は異なっている。火山性地震のどの部分に着目して分類するかは筆者によって様々であるし、また同じ名称で分類していても、分類の基準となる値が違うこともある(西村・井口,2006)。以上のように、文献によって火山性地震の分類基準・名称が異なると、混乱を招く。西村・井口(2006)は、「このような基準のずれや分類項目の複雑さは、火山性地震や微動の研究を分かりづらくしている理由の一つである」と述べている。したがって、火山性地震の分類方法を統一することは重要であると言える。そのためには、火山性地震の連続波形データから、十分な量の火山性地震を抽出する必要がある。 しかしながら、火山に設置された地震計には、火山性地震による揺れ以外にも、人の生活に起因する揺れが観測される可能性がある。そのため、火山性地震とそれ以外の揺れを分け、火山性地震のみを抽出するためには、データ毎に火山性地震かそれ以外のことに起因する揺れかということを判断し、火山性地震以外の揺れをノイズとして取り除いていく、という作業が必要となる。これらの作業を行うためには、火山性地震が検出できるよう、火山活動が活発となっている時期がある火山を研究対象とする必要がある。また人の生活に起因するノイズについて解析することで、それらのノイズの強さや周波数を推定でき、火山活動が活発な時期でも人の生活に起因するノイズを発見・除去しやすくなると考えられるため、火山活動が活発ではない時期もある火山が望ましい。 以上の点から、本研究では、2015年4月~9月に火山活動が活発化した箱根火山を研究対象とし、気象庁が公開している二ノ平観測点上下成分の連続波形記録を用いて、火山性地震ではないと思われる揺れを検出・除去できるよう試みた。 二ノ平観測点のデータには、観測点の近くにある彫刻の森駅を発着している電車の波形が記録されていた。以上のことは、彫刻の森駅に電車が発着していた時間と、揺れが発生していた時間で同じであったことから推定できた。 これら電車の発着による揺れの検出について、電車の波形のテンプレートを複数選出し、これらテンプレートと観測波形で似ている部分を検出することを試みた。具体的にはまず、2015年3月29日午前5時~午前9時までの間に発着した20回分の電車による波形を54個に分けたものをテンプレートとした。これらのテンプレートのエンベロープを計算して位相情報をなくした後、時間窓1秒、ずれ0.2秒で移動平均を計算することでスムージングを行なった。これらの処理を観測波形全体にも施し、テンプレートと観測エンベロープ相関をとった。この相関を用いて、電車波形を検出する方法について検討した。 以上の処理を2015年3月29日のデータに適用したところ、合計で116回あった電車による揺れのうち、112回は検出できた。また、24時間のうち、約300秒は電車が来ていない時間帯にも関わらず電車による揺れとして検出された。これらの処理を火山活動が活発化していた時期に適用することで、火山性地震を検出しやすくなることが期待される。また、以上の処理を2015年6月29日のデータに適用したところ、電車が彫刻の森駅に発着している時間にも関わらず、電車波形として検出されなかった部分があった。これらの部分には、火山性の地震波と思われるシグナルが卓越していた。これは、火山性地震の検出という本研究の目的とてらして、成功したといえる。謝辞:本研究にあたり、気象庁火山観測網のデータを使用させていただいた。
著者
南里 翔平 鈴木 毅彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

群馬県中部に位置する赤城山は周囲約25 kmに及ぶ大型の成層火山である.守屋(1968)はこの発達史をはじめて体系的にまとめた.その中で約4.4万年前に噴出した赤城鹿沼テフラ(Ag-KP;青木ほか,2008)の上位に足尾帯由来のチャートや頁岩からなる降下火砕物があることを報告し,これを水沼石質降下火砕岩層(CLP)とした.本研究では守屋(1968)ほかで詳細に明らかにされてこなかった,CLPの分布,層序,構成岩種,噴出量,噴火様式,前後の噴火史を明らかにすることを目的とした.赤城山東麓の桐生市黒保根町下田沢を流れる清水用水沿いの露頭(赤城山山頂から南東約10 km)では,下位から榛名八崎テフラ(Hr-HP),Ag-KP,CLP,赤城小沼(この)石質降下テフラ(Ag-KLP)がそれぞれ観察できる.この地点におけるCLPは岩相から4つの噴火ユニットに分けることができ,下位から1L,2P,3P,4Lとした.このうち1L,4Lは足尾帯由来と考えられる堆積岩・火成岩(たとえばドレライトなど)の亜角礫が主体である.1Lは平均粒径13 mmの火山豆石を含む単層と,その上位に堆積する平均粒径32 mmの亜角礫層からなる.このことから1Lはマグマ水蒸気爆発の堆積物であると考えられる.2Pは発泡の悪い黄色軽石火山礫からなる.この軽石火山礫の火山ガラス部の主成分化学組成は,下位のAg-KP中のそれらとは明らかに異なり,SiO2の重量%がAg-KPのそれよりも高いことがわかった.このことから,この軽石はAg-KPの噴火以後,赤城山のマグマだまり内部で結晶分化作用が進行した結果生成されたマグマに由来するものであると考えられる.守屋(1968)はCLPを水蒸気噴火の堆積物としたが,本研究では2Pの存在からこれをマグマ噴火であると考えた.また,2Pは給源から東方に約50 km離れた日光市や鹿沼市など広域に分布していることが確認されたので,プリニー式の噴火であった可能性が高い.3Pは2P中の軽石と同じ組成を持つ軽石と,堆積岩の亜角礫層との互層からなることから,このユニットに関しても2Pに引き続くプリニー式のマグマ噴火であったと考えられる.4Lは層厚9 cmの細粒火山礫層と,その上位に堆積する亜角礫層とからなることから,マグマ水蒸気噴火の堆積物である可能性が考えられる.CLPは赤城山の類質物や異質物からなる堆積岩主体の堆積物であると考えられてきたが,以上のようにマグマ噴火による本質軽石を伴うことがわかったので,新たに赤城清水石質テフラ(Ag-SLT)の名称を用いることを提案する.Ag-SLTは総噴出量約6 km3に達する.この値はVEI=5に相当し,富士山の宝永噴火(1707年)に匹敵するレベルのプリニー式噴火である.鈴木(1990)はAg-KPの主体をなす降下軽石堆積物直上に降下火山灰を認めたが,それを覆うCLPまで含めて一連の噴火による堆積物と解釈した.本研究では清水用水の露頭においてAg-KPの降下軽石堆積物直上の降下火山灰層をAg-KP(a) とあらためて定義し,灰噴火に由来すると解釈した.またこれと区別するため,従来の赤城鹿沼テフラ(Ag-KP)と呼ばれている降下軽石堆積物をAg-KP(p) と再定義した.ところでAg-KP(a)/ Ag-SLT(1L)境界付近を詳しく観察すると,有機物に富み,層理が不明瞭で,淘汰が悪い層厚12 cmの地層が存在する.このことから,Ag-KP(a)/ Ag-SLT(1L)間にはロームが存在すると考えられる.つまり,Ag-KP(p) のプリニー式噴火後は引き続きAg-KP(a)の灰噴火が発生したが,Ag-SLTの噴火までには,わずかではあるが噴火の休止期があった可能性が示唆される.引用文献青木ほか(2008)第四紀研究,47,391-407.守屋(1968)前橋営林局,p64.鈴木(1990)地学雑誌,99,60-74.
著者
山本 哲
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

気象観測で用いられる「百葉箱」の語源については、日本で作られた語であること、中国語の「百葉」あるいは「百葉窓」に由来することなどが推定されていた(塩田1996、山口 2006)。当時の気象当局の文献を調べた結果、”Stevenson’s Box for thermometer”(図)の態様を表す”double louvre boarded box”という英語表現を直訳した「(ステイーブンソン形)二重百葉窓箱」が縮めて呼ばれるようになったものと推察された。百葉箱の日本への導入経緯についても考察する。 図(左)新型の温度計設置用の箱についてのThomas Stevensonの報告中の挿絵。2列のよろい板(double row of louvre boards)が特徴とされている。(右)10種類以上の温度計台(Thermometer Stand)を紹介した雑誌連載記事に掲載された”Stevenson’s Thermometer Stand”の挿絵。この絵は広く使われ、日本で最初に編集された「気象観測法」(1886)にも同一のものが掲載された。 参考文献塩田正平. 百葉箱の呼び名について. 気象. 1996, vol. 40, no. 7, p. 7–11.山口隆子. 日本における百葉箱の歴史と現状について. 天気. 2006, vol. 53, no. 4, p. 265–275.