著者
五箇 公一 岡部 貴美子 丹羽 里美 米田 昌浩
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.47-50, 2000 (Released:2002-10-31)
参考文献数
15
被引用文献数
36 36

The endoparasitic mite Locustacarus buchneri Stammer 1951 (Podapolipidae) was found in commercially introduced colonies of the European bumblebee, Bombus terrestris. The average infestation rate of colonies (n=367) from the Netherlands and Belgium was 20%. Urgent investigation of the infectivity and pathogenicity of this mite to Japanese native bumblebees and the geographic distribution of this mite in Japan is required.
著者
石本 万寿広 佐藤 秀明 村岡 裕一 青木 由美 滝田 雅美 野口 忠久 福本 毅彦 望月 文昭 高橋 明彦 樋口 博也
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.311-318, 2006-11-25
参考文献数
34
被引用文献数
2 15

水田内におけるアカヒゲホソミドリカスミカメの発生消長を調査する手段として既に確立されているすくい取り法の代替手段として,合成性フェロモントラップの有効性を評価した.トラップは両面に粘着物質を塗布した粘着トラップを使用し,誘引源として合成性フェロモン0.01mgを含浸させたゴムキャップを粘着板上辺の中央部に設置した.粘着トラップは,イネの草冠高かそれよりやや低い位置に設置すると捕獲効率が高かった.そこで,2005年6月に,粘着トラップを新潟県上越市・長岡市,富山市の各水田2筆の中央部,イネの草冠高に設置し,誘殺される雄数を毎日調査した.また,約5日間隔でトラップの位置を中心に捕虫網ですくい取りを行い,成虫数の推移を調査した.すくい取り調査で,地域,品種を問わず6月中旬から7月上中旬にかけて成虫が発生し,7月中旬に減少し,その後,出穂期の早い品種で成虫の増加傾向が早くなり8月中旬までには減少するという成虫の発生消長が明らかとなった.水田内に設置した粘着トラップの誘殺雄数の推移は,概ねすくい取り調査での雄数の推移とよく似たパターンを示した.したがって,水田内で本種のモニタリング手段としてフェロモントラップが利用できる可能性を示唆している.
著者
小澤 朗人 西東 力 太田 光昭
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.161-168, 1999-11-25
被引用文献数
5 16

施設トマトのマメハモグリバエに対するイサエアヒメコバチ<i>Diglyphus isaea</i>の単独放飼による密度抑制効果を小規模な温室を用いて検討した.試験は,2月から5月の春期(試験1)と5月から7月の初夏期(試験2),6月から8月の夏期(試験3)の3回行い,試験3では細かな目合いの防虫網を張って隔離条件とした.<br>1. 試験1では,寄生蜂の雌成虫0.13頭/株を1週間間隔で5回放飼した.同様に試験2では0.19頭/株を8回,試験3では0.15頭/株を3回放飼した.<br>2. その結果,寄生蜂放飼区におけるマメハモグリバエ幼虫密度は,無放飼区と比較して,試験1では約1/4,試験2では1/36,試験3では約1/10に抑制された.<br>3. 放飼区におけるマメハモグリバエ幼虫の死亡率は,試験1では90.9%,試験2では98.4%に,試験3では100%に達した.<br>4. 放飼区における空の潜孔密度は,試験1では無放飼区の約1/6以下の1.3個/葉,試験2では約1/16の2.2個/葉,試験3では約1/6の3.4個/葉であった.<br>5. 放飼区における蛹トレイへの落下蛹の総数は,試験1では無放飼区の約1/10,試験2では約1/200であった.また,試験3における黄色粘着トラップへのマメハモグリバエ成虫の誘殺数は,放飼区は無放飼区の約1/20であった.<br>6. 寄生蜂の種類とその寄生率は,試験1ではイサエアヒメコバチのみが確認され,その寄生率は放飼区では86.5∼92.3%,無放飼区では0∼2.1%であった.試験2では,イサエアヒメコバチ以外の土着種が優占種となり,イサエアヒメコバチを含めたこれらの寄生率は38.9∼86.7%であった.一方,無放飼区は0%であった.試験3では,イサエアヒメコバチのみが確認され,7月下旬の放飼区の寄生率は95.1%,無放飼区は88.2%であった.<br>7. 以上から,春から夏にかけての高温期における施設トマトのマメハモグリバエに対するイサエアヒメコバチの実用性は高いことが示唆された.
著者
石井 象二郎 井口 民夫 金沢 純 富沢 長次郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.269-273, 1984-11-25
被引用文献数
7

イラガ<i>Monema (Cnidocampa) flavescens</i> WALKERの幼虫は非常に硬い繭をつくる。その硬さは物理的な構造と化学的な組成に由来する。<br>繭層は異質の4あるいは5層からなる回転楕円体で,繭層率は20%を越えるものが多い。繭層には蛋白質が約34%含まれ,その蛋白質は絹糸蛋白と,吐出液に含まれる蛋白質である。後者は絹糸の網目に塗り込まれる。営繭の当初淡褐色であった繭は時間の経過に伴って濃褐色となり,硬化する。硬化した繭層の蛋白質にはβ-アラニンの含量が高い。繭の硬さは化学的には硬化された蛋白質がおもな要因で,それが絹糸の網目にきっちりと詰まっているのである。<br>繭層にはカルシウムが多く含まれるが,それはシュウ酸カルシウムとしてマルピーギ管で生成されたものであり,主として繭の白斑部に局在している。カルシウム含量が高いことは,繭の硬さに直接の関係はないであろう。
著者
昆野 安彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.167-170, 1998-08-25
被引用文献数
2 3

The insecticide susceptibility of the Fall Webworm, Hyphantria cunea and its parasitoid fly, Exorista japonica, was studied. Larvae of H. cunea were hardly susceptible to organophosphorus insecticides, such as fenitrothion (LD_<50>=>100μg/larva) and isoxathion (LD_<50>=54μg/larva). However, adults of H. cunea were quite susceptible to fenitrothion (LD_50<50>=1.4μg/male and 2.2μg/female). Adults of E.japonica emerging from pupa of H.cunea were very susceptible to fenitrothion (LD_<50>=0.082μg/adult). The results suggest that a judicious choice of insecticide is necessary to control H.cunea, if E.japonica is used as a biological control agent, too.
著者
杖田 浩二 田口 義広 勝山 直樹
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.197-204, 2007-08-25
被引用文献数
2 7

タバココナジラミバイオタイプBの成虫および未熟ステージを用いて, 25, 40, 45および50℃で一定時間処理することによって本種の高温耐性について調査した.その結果,温度が高くなれば,短い時間でも死亡率が上昇し,50℃で成虫は0.5時間,蛹は7時間,幼虫は5時間ですべての個体が死亡した.施設内部のトマトをすべて抜根し,施設をビニールで密閉して太陽熱処理を行ったところ,ほぼすべての個体を閉じこめ,死亡させることができた.しかし,施設内部で誘殺が確認されなくなるには3日かかり,室内実験の結果から予測されるよりも長い時間を要した.これは施設内部の高さによって温度差が生じるため,葉温が気温ほど上昇せず,高温を回避した成虫や低位置の葉に寄生する蛹が生存・羽化するためと考えられた.以上のことから,太陽熱処理でタバココナジラミバイオタイプBの防除をするには,十分な温度が確保される晴天日に, 3日程度施設を閉鎖する必要があると考えられる.
著者
桐谷 圭治 法橋 信彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.124-140, 1962-06-30
被引用文献数
3 33

ミナミアオカメムシの最近の増殖の原因を生命表を連続3世代にわたって作成することにより解析した。調査は, 1化期にはバレイシヨ236株, 2化期は早期栽培水稲1,250株, 3化期は晩期栽培水稲1,000株を2区(1区は無処理区, 他はクモ除去区として隔日にクモを採集除去)に使用した。調査は1化期(5月7日〜7月17日), 2化期(7月5日〜8月16日)は週2回, 3化期(9月5日〜10月29日)は隔日ごとに全株調査を行なった。1化期の卵および各令期, 2,3化期の卵期, 1,2令期の個体数は実数を用いたが, 3令期以後は観測値を(1)式により補正を行ない, 各令期の中期における個体数Nを算出した。[numerical formula]A=各令期別の累積観測値, P=各令期の出現期間中における平均調査間隔, I=各令期の平均期間。各令期間は2化期についてはささげのさやを飼料として30℃で, 3化期は直接調査ほ場で測定した。3化期における卵から成虫羽化までの所要日数は25℃, 30℃, 自然温下でそれぞれ40.1日, 34.7日, 42.5日であった。産卵期間は2〜3週間で, 1株当たりの卵塊密度は1化期0.10,2化期0.10,3化期0.07で, 平均卵塊サイズはそれぞれ74.1卵, 82.5卵, 97.6卵であった。卵から成虫羽化までの生存曲線は, DEEVEY(1947)の第IIと第III型の中間の型を示した。死亡率曲線は1化および2化期は, 卵期から2令期にかけて1つのピークが見られるが, 3化期は越冬成虫の死亡による産卵前の他のピークがあると考えられる。死亡率(100qx)は1化期では, 卵から2令期幼虫にかけて減少するが, 2・3化期では逆の傾向を示す。これはおもに1化期と他の化期との間の卵寄生率の違いによる。卵期のおもな死亡要因は, 卵寄生蜂, 生理的原因による死ごもりおよび気候要因である。Asolcus mitsukuriiはどの化期でも最も優位な種である。Telenomus nakagawaiは3化期卵にはほとんど見られない。その他の卵寄生蜂2種は2化期卵にわずかに寄生した。卵寄生率は1化期74%, 2化期25%, 3化期21%であった。A.mitsukuriiによる寄生率は後期に産れた卵塊ほど高くなるが, T.nakagawaiではこのような関係は見られない。若令幼虫は強い集合性をもっているため, 若令期における捕食や気候要因による死亡は幼虫集団全体の消滅をもたらす。1化・3化期の95卵塊の観察および2化期の令期別の集団消滅率から2令幼虫が最もクモに捕食されやすい時期であることがわかった。3化期におけるクモの捕食がカメムシ個体数に及ぼす影響は, ふ化幼虫数の2.3%に当たると計算された。天候は卵期, 老令幼虫の直接的死亡要因としては通常の条件下では重要でないと思われる。若令の幼虫集団は地表面に近いところにある場合は豪雨によって消滅することがよくある。台風が卵および1令幼虫に及ぼす影響は, 発育が進んだ段階にあるものほど大きい。すなわち産卵直後のものは最も影響少なく, 1令初期のものは最も大きい。2令になった幼虫は台風による影響を全く受けなかった。卵から成虫羽化までの死亡率は1化期約99%, 2化期91%, 3化期95%であった。成虫の性比を1,産卵卵塊数2,その間に死亡がないと仮定すれば, 個体数変動の状況は1対の越冬成虫は1.48頭の1化期成虫を生じ, 続いて早期栽培水稲で11.00頭の2化期成虫, これが晩期栽培水稲では54.44頭の3化期越冬前成虫を生ずる。すなわち水稲における連続2世代の繁殖は1化期成虫のおよそ35倍に成虫密度を高める。このことは各種作付の水稲が混在しているわが国南部でミナミアオカメムシが増殖した事情を説明しているかと考えられる。3世代にわたる生命表の比較から, 1化期卵における平均寄生率74%を, 6月に産まれた卵の平均寄生率90%(5月は60%)の水準に上げる, いいかえれば早い時期に産まれた卵の寄生率を天敵の導入または増殖によって人工的に高めることができれば, ミナミアオカメムシの個体群密度を長期にわたって低い水準に保ちうる可能性があると結論された。
著者
垣矢 直俊 桐谷 圭治
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.79-86, 1972-06-25
被引用文献数
2 8

固定飛しょう法を用いてツマグロヨコバイ成虫の飛しょう能力に及ぼす羽化後の経過日数(実験I), 親の産卵開始後の日齢(実験II), 飼育密度の影響(実験III)を調べた。実験Iの飼育は25℃, 24時間照明下で, 実験II, IIIのそれは30℃, 16時間照明下で行ない, 飛しょう実験は30℃の恒温室内で, 固定したテグスの一端に試験虫の前胸背板を固定し, 上方より螢光燈で照明, 前方より扇風機で1-2m/secの風を送りながら行なった。羽化後, 雌では2日目, 雄では4日目より飛しょうを始め, 雌雄とも羽化後約8日目に飛しょう時間, 飛しょう虫率ともピークに達した。この時期は産卵開始日(平均9.7日)の少し前であった。親の日齢の影響は若齢の親(産卵開始後1-3日目), 中齢の親(6-8日目), 老齢の親(9日目以後)に産卵された卵をとり, それに由来する子世代間で飛しょう能力と生理的諸形質(幼虫期間, 成虫寿命, 総産卵数, 日当り産卵数, 後翅幅/後脚脛節長)との関係を比較した。若齢の親に由来する子世代では飛ぶ個体は飛ばない個体に比べ, 生理的形質の悪化がみられたが, 老齢の親に由来する子世代ではその関係が逆転していた。したがって若齢の親に申来する子世代で定住型と移動型の分化がみられるが老齢の親に由来する子世代では単にVigourの強い個体がよく飛ぶということが推察された。幼虫期の飼育密度を変えた個体間では集合区(チューブ当り5頭)の個体が単独区の個体に比べ飛しょう能力が高かったのに対し, 生理的諸形質がすべて劣っていた。このことから幼虫期の集合飼育は定住型と移動型の分化を促すものと思われる。成虫期の飼育密度の影響は飼育密度が低かったせいもあってはっきりしなかった。
著者
奥谷 禎一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.29-33, 1965-03-25
被引用文献数
4

Caliroa属(ナメクジハバチ属)のハバチは, わが国では今日までに4種が知られていたが, 飼育によって3新種を得たので, その記載とともに7種の検索を記した。本属の幼虫は, 前脚の前方に頸腺が発達し(図13), ここより粘液を分泌し, 生時は, 休全体粘液に覆われナメクジ状である。また, その食痕は図14に示したように, 表皮を残した特徴のあるものである。多くは7〜9月に少なくとも2世代を繰り返す。成虫の検索は次のようである。1.翅は透明;触角第3節は第4,5節の合長よりやや短い。(図7);コナラ・クヌギ等を食害する。……C.oishiiコナラナメクジハバチ(新称)-翅の基部は曇っている。……2 2.後脚は全体黒色;オウトウの害虫として有名。……C.cerasiオウトウナメクジハバチ(改称)(旧和名ウチイケオウトウハバチ)-後脚には白色または褐色部をもつ……3 3.触角第3節は第4,5節合長より明らかに短い……4-触角第3節は第4,5節合長よりわずかに短い……5 4.頭楯は前縁彎入する;♂は後翅に縁脈あり;食草不明……C.annulipesハクサンナメクジハバチ(新称)-頭楯前縁は裁断状;♂は後翅に縁脈なし;触角, 図10;食草はナツハゼ……C.vacciniナツハゼナメクジハバチ(新種)5.後腿節は汚黄色または褐色;触角, 図11;有名なモモの害虫……C.matsumotonisモモナメクジハバチ(改称〉(旧和名モモハバチ)-後腿節はほとんど黒色……6 6.後脛節と趺節は大部分褐色;触角, 図9;小型種;ケヤキの害虫……C.zelkovaケヤキナメクジハバチ(新種)-後脛節と趺節は大部分黄色;触角, 図8;大型種6mm以上;ミツバウツギを食す……C.staphyleaミツバウツギナメクジハバチ(新種)
著者
福山 研二
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.83-84, 1996-02-25
被引用文献数
3

Defoliation by Hyphantria cunea was surveyed in Tsukuba in 1988 and 1989. There was a significant positive corrdation between the proportion of deloliation and the proportion of plant ground.
著者
石島 力 佐藤 安志 大泰司 誠
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.193-200, 2008-11-25
被引用文献数
1

チャのハマキガ類の卵寄生蜂キイロタマゴバチの発育速度,性比,羽化率および体サイズを,チャノコカクモンハマキ卵およびチャハマキ卵を寄主とした場合について5つの温度(16,20,24,28,および32℃)で調査した.ハマキガ類の卵で飼育したキイロタマゴバチの発育速度は,どちらの卵で飼育した場合においても,温度と有意な関係がみられたが,卵サイズの大きいチャハマキ卵の方がチャノコカクモンハマキ卵に比べ,温度に対する発育速度の上昇率は有意に高かった.チャノコカクモンハマキおよびチャハマキ卵で飼育した発育零点と有効積算温度は,雌,11.7℃,120.5日度,雄,11.5℃,119.0日度,および雌,11.7℃,114.9日度,雄,11.7℃,116.3日度となった.チャノコカクモンハマキおよびチャハマキ卵から羽化した成虫の性比(雌個体数/合計個体数)は,それぞれ0.76〜0.89および0.71〜0.77であり,羽化成虫の性比については,チャノコカクモンハマキがチャハマキに比べ有意に高かった.また,チャノコカクモンハマキおよびチャハマキ卵から羽化した成虫の羽化率[{羽化個体数/(羽化個体数+卵塊内死亡個体数)}×100]は,それぞれ23.7〜73.4および41.8〜85.0であった.羽化率は,両寄主ともに,温度の上昇に従って,加速的に低下した.チャノコカクモンハマキ卵から羽化した雌および雄成虫の頭幅は雌0.172〜0.186mmおよび0.168〜0.188mmであった.チャハマキ卵から羽化した雌および雄成虫の頭幅は0.202〜0.216mmおよび0.195〜0.212mmであった.チャノコカクモンハマキで飼育した場合,ハチの頭幅は温度が上昇するに従って大きくなることが示唆された.一方,チャハマキで飼育した場合,ハチの頭幅は温度が上昇するに従って加速的に小さくなることが示唆された.
著者
桐谷 圭治 山下 英恵
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.77-86, 2008-05-25
被引用文献数
4

森林生息種のルイスオサムシの産卵フェノロジーと産卵数,発育零点,年間世代数を落とし穴トラップで採集した個体の解剖ならびに飼育によって調べた.越冬成虫は4月末に現れ,5月から9月初めまで成熟卵の形成がみられ,5月と8月に産卵活動(蔵部数と蔵卵雌率)のピークがみられた.捕獲消長には,5,6,8月にピークがみられ,それぞれが越冬成虫の産卵期に対応した活動期とみられた.解剖結果から有効卵巣小管数は通常5対,卵形成周期は平均3回,最高蔵卵数は15,また飼育実験からは,0.43卵/♀/日と計算された.産卵は約4ヵ月継続すると仮定すると,1雌当たりの産卵可能数は50卵以下と推定された.従来法と池本・高井法で推定した卵の発育零点と有効積算温度は,それぞれ6.36℃,133.3ddと7.86℃,120ddであったIsomorphy理論に基づき,卵から成虫羽化に必要な有効積算温度を求めるとともに,調査地における利用可能な有効積算温度から可能世代数を推定した.年間2世代の経過に温量の不足はないにもかかわらず,新生成虫の成虫休眠によって基本的に年1世代の生活史が維持されていると考えられる.さらにオサムシ科の共通の最適温度を求めたところ,15-16℃の範囲にあり,温帯圏起源が示唆された.
著者
長沢 純夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-31, 1957-03-30
被引用文献数
2

高槻系マイマイガの幼虫期における脱皮回数を, 温度25℃, 関係湿度89%の環境条件下で, 個体別飼育の方法によりケヤキの葉をあたえてしらべた。高槻系マイマイガの雌は, 幼虫期において6または7回, 雄は5または6回の脱皮をくりかえした。これはさきにGoldschmidtによって報告された結果より, 1あるいは2回多いが, 高槻系がとくにそうした脱皮回数の多い系統であるかどうかはさらに本邦各地の系統についてしらべた上でなければわからない。頭蓋の脱皮殼について, 令期間における成長様相を検討し, いづれも第3令と4令の間をさかいにして, おおむねふたつの異った直線関係をしめすことをしった。幼虫の発育過程において, このあたりにひとつの生理的な変曲点があるものと考えられよう。頭幅の瀕度分布曲線は, 3令まではいずれも大体同じ位置にあって, 頭幅による令期の決定は可能であるが, 4令以後は重複部を生じ, 頭幅の測定結果よりする令期の決定は不可能となってくる。
著者
腰原 達雄 山田 偉雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.110-114, 1976-06-25
被引用文献数
4 13

1. 小型プラスチック容器を用い,ナタネの芽ばえを飼料とするコナガ幼虫の簡便な飼育法を考案確立した。この方法による継代飼育も可能である。<br>2. 幼虫は芽ばえの子葉,茎を摂食し発育を遂げた。発育は良好で,ナタネ芽ばえ(種子重7g)を収容した容器の幼虫飼育密度を100頭とした場合,蛹化率は高く90%以上にも達した。幼虫発育速度,蛹重,蛹から羽化した成虫の産卵数は,キャベツ葉で生育したものと同等であった。<br>3. 7gのナタネ種子を用い,発芽直後の芽ばえに成虫3対を2∼3日間放飼,産卵させ,幼虫を飼育すると,25°C恒温条件下で成虫放飼約15日後には蛹化がほぼ終了し,約100頭の蛹を得ることができた。<br>4. 飼料の芽ばえは更新することなく幼虫を飼育できた。蛹化は,幼虫発育終了間ぎわに容器内に挿入した,波形に折目をつけたろ紙片下面で大部分が行なわれ,蛹を容易に採集できた。