著者
佐藤 洋 白井 保久 田中 定典 今村 太郎 宮ノ下 明大
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.97-100, 2003 (Released:2003-11-25)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

The purpose of this study was to determine the mechanisms by which Plodia interpunctella (Hübner) infest chocolate cartons and to test the effect of sealing tightness of wrapping film on infestation. The carton samples were wrapped with 25 μm thick OPP film by an industrial wrapping machine. Each chocolate carton was placed in a closed plastic box (215×147×130 mm) together with 5 mg of eggs, two weeks old larvae, three weeks old larvae or five pairs of mating adults of P. interpunctella. The plastic boxes were kept at 25°C and 70% R.H. The number of larvae infesting chocolate was recorded after 10 days. Only newly hatched larvae were able to invade the chocolate cartons in these experiments. However, no entry holes made by the larvae were found on the outer coveringfilm, indicating the larvae invaded through tiny unsealed portions of the outer coveringfilm. To test the effect of tightness of the film on larval invasion, outer coveringfilm of chocolate cartons with different air leak values (>100, 100–200, 200–300, 300–500 cc/min) were exposed to newly hatched larvae. A carton without wrapping was used as a control. In cartons with less than 100 cc/min air leak, no larvae were found three weeks after the beginning of the experiment. Furthermore, the number of larvae which invaded cartons increased as the air leakage value increased. It is recommended that the air leakage value of the outer coveringfilm should be less than 100 cc/min to protect chocolate cartons from the infestation of P. interpunctella.
著者
水谷 光良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.58-62, 1982-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

植生とライト・トラップとの位置関係から蛾の飛来の規則性を調査し,蛾類群集の研究のためのライト・トラップ最適設置場所について考察した。総個体数と総種数では林縁或いは林縁から約30mはなして設置したトラップで最も多く採集された。一方個々の種においては全体と同様に林縁付近に飛来のピークを持つものと,ピークを持たずほぼ一様に採集されるものの2つの飛来パターンが見られた。そしてこれらはそれぞれ木本食の種と草本食の種にほぼ対応していることが明らかになった。したがって全体での林縁付近のピークは森林からの飛来によって形成されているものと考えられる。また林内に設置したトラップでは個体数,種類数ともに極端に少なかったが,これはライト・トラップの光が林にさえぎられて狭い範囲にしか広がらない為と考えられる。そして林内のみで採集された種が皆無であった点を考え合わせると森林の蛾,或いは森林と草原両方の蛾を最も効率的に集めるためのライト・トラップの設置場所としては林縁付近30m以内が最適と考えられる。
著者
西野 敏勝 大串 龍一 小野 公夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.39-43, 1970
被引用文献数
2

コアオハナムグリの最適防除時刻を決めるため,カンキツの花にたいするこの虫の訪花活動の日周変化を観察した。<br>カンキツの花上のコアオハナムグリは,晴天の日の10時∼12時に最も多い。夜間は一部の個体を除いてカンキツ園外に去る。雨天の日は訪花活動はほとんど見られない。ミツバチの訪花活動もこれとよく似ているが,小雨の日は訪花が見られる。ヒメヒラタケシキスイは昼夜ともカンキツ花中にいる。雨天の日も訪花数は減らない。<br>コアオハナムグリは,温州ミカンでは16時をすぎると大半が園外に去るが,ブンタンでは花や小枝にとまって夜をすごすものがかなり残る。これは,この虫の品種に対する選好性と関係しているように思われる。<br>訪花するのは雌が多いが,夜間を花ですごす個体は雄が多かった。<br>雨天のさい訪花を阻害する要因として気温,地表温度,照度などを検討したがいずれも晴天と雨天でとくに注意すべき差がなく,雨そのものが飛来活動を阻害するものと思われる。
著者
佐々木 正己
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-40, 1975-03-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

12時間明,12時間暗の光周期,恒温条件下で,ウリキンウワバの諸行動にみられる日周期性の有無位相と強度を調べた。その結果,孵化と幼虫の摂食行動には周期性が認められず,4令から最終令への脱皮には弱い,蛹化と羽化には比較的強い日周期性が観察された。蛹化と羽化の位相は逆の関係にあり,蛹化が暗期の終り付近に,羽化は明期の終りにそのピークを示した。成虫は顕著な3山型の夜間活動性を示した。雌雄共通の飛翔ピークが1日に2回,消灯後と点灯時にみられた。残るピークは消灯約7時間後に始まり,雌では3時間にわたって継続的に性フェロモンを放出,雄ではこれに同調して,しかし雌の性フェロモンの存在とは無関係に,1∼1.5時間の激しい飛翔ピークを示した。これらのリズムの生成は遺伝的に組み込まれたものである可能性が強い。
著者
高井 幹夫 若村 定男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.115-120, 1990-05-25
被引用文献数
3 1

施設ネギにおいてシロイチモジヨトウに対する高濃度の合成性フェロモン処理とライトトラップによる成虫捕獲の効果を現地実験と成虫の放飼実験により調べた。<br>1) 1987年7∼9月に行った現地実験では,10a当り合成性フェロモン剤500本で処理した場合,および同様の処理を行った上でライトトラップを設置して成虫を捕獲した場合,ほぼ1か月以内に幼虫密度は激減した。同100本で処理した場合には顕著な密度低下は起こらなかった。また,無処理区では幼虫密度は急増した。<br>2) 雌雄成虫の放飼実験により合成性フェロモン処理とライトトラップ点灯処理が交尾率に及ぼす影響を評価した。無処理の場合,第2夜までにすべての雌が交尾した。合成性フェロモン処理またはライトトラップ点灯処理の場合,第1夜の交尾率は20∼50%に,第2夜までの累積交尾率は35∼65%にそれぞれ抑制された。両方の処理を同時に行うと,雌の交尾率はさらに著しく低下した。<br>3) 合成性フェロモン処理による交尾率の低下は雌雄間の交信攪乱効果,そしてライトトラップによる交尾率の低下は雄成虫の大量捕獲効果(雄除去効果)によって引き起こされると考えられた。また,ライトトラップには雌成虫の捕獲による防除効果も考えられた。
著者
大矢 慎吾 平井 剛夫 宮原 義雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.206-212, 1987
被引用文献数
6 24

スクミリンゴガイの北部九州における越冬生態を明らかにするため,本種の低温耐性,水田内および用水路における生存率の消長および米麦二毛作慣行栽培条件下での越冬状況を調査した。<br>1) 低温(恒温)条件下ですべての貝が死亡するのは,0°Cでは25日,-3°Cでは3日,-6°Cでは1日内外であり,温度の低下とともに生存期間は急激に短縮した。<br>2) 水田の落水とともに本種は,それぞれの殻高程度の深さで土中に潜入した。土中の貝は落水3か月後の12月下旬に80%以上が生存していた。<br>3) 用水路の雑草の下などにいる貝は,土の中に潜った貝よりも低温の影響を強く受け,死亡率が高まる傾向が認められた。<br>4) 水田内や用水路の土中の貝も,厳寒期の1月以降生存率は急激に低下し,4月中旬には約20%以下となった。<br>5) 殻高2∼3cmの貝の生存率が,殻高3cm以上の成貝よりもやや高い傾向が認められ,成貝の耐寒性が必ずしも強いとはいえなかった。<br>6) 米麦二毛作栽培体系下の水田内で越冬した貝は,水稲移植後水田地表面に一斉に現れることはなく,経時的に現われた。前年秋の生息貝数に対する移植12, 17日および28日後の水田内への出現貝数はそれぞれ2.3, 4.1および6.8%であった。これらの値は水稲の被害発現に関与する見かけの越冬率といえよう。<br>7) 本種は,かなりの寒冬年でも,北部九州の平坦部水田地帯の用水路や水田内で,越冬が可能である。
著者
刑部 正博 吉田 正義 廿日出 正美
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.294-299, 1982-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ガスクロマトグラフィーを用いて,コガネムシ類の各ステージにおける呼吸量の測定と幼虫における皮膚呼吸の有無について検討した結果,以下のことが明らかとなった。1) オオサカスジコガネの卵のCO2呼出量は卵の発育に伴って上昇する傾向を示した。2) オオサカスジコガネとチビサクラコガネの幼虫期の単位体重当たりのCO2呼出量は1齢で最も多く,齢期が進むにつれて減少した。3) オオサカスジコガネとドウガネブイブイの越冬3齢幼虫で,気門を閉鎖したところ,CO2の呼出が認められ,皮膚呼吸の可能性が示唆された。4) 蛹期のCO2呼出量は蛹化後7∼9日目に最低となり,その後急増した。5) 成虫では,昼間活動性のものと夜間活動性のものとの間に,CO2呼出量で一定の関係が認められた。
著者
松浦 博一 内藤 篤
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-48, 1991-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

ハスモンヨトウの中∼老齢幼虫と蛹を0°C以下に冷却し,虫体凍結温度と低温致死温度を調査した。1) 過冷却点は幼虫では-8°C前後で,齢期による顕著な差違はなかった。蛹は過冷却点が-16°C前後のグループと-9°C前後のグループに分かれた。後者は前者より蛹齢が5∼6日若かった。2) 冷却時間の長さと幼虫の虫体凍結の関係については,0°Cでは48時間でも凍結しなかったが,-5°Cでは36時間で,-10°Cではわずか2時間で全個体が凍結した。凍結した個体はすべて死亡し,耐凍性はみられなかった。3) 冷却時間の長さが蛹化に及ぼす影響については,-5°Cの場合,3時間では蛹化に異常はみられなかったが,24時間では半数が,36時間では全個体が蛹化できずに死亡した。-10°Cの場合,2時間の冷却で全個体が蛹化できずに死亡した。-5°Cは本種の生存を左右する重要な低温であった。4) 蛹は幼虫に比べて凍結しがたく,-5°Cに48時間さらしても8割以上の個体が凍結しなかった。しかし,これらの個体は加温飼育の途中ですべて死亡し,回復不能な低温障害を被った。5) 湿った土や湿らせた濾紙上に置いた幼虫は,低温冷却に伴う植氷により,風乾土や乾いた濾紙上に置いた幼虫に比べて虫体凍結する個体が多かった。
著者
一瀬 太良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.26-30_1, 1960-03-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
7

タマナギンウワバさなぎの体重と,幼虫およびさなぎの期間中の死亡率とに及ぼす温度の影響を検討し,また幼虫およびさなぎの色と温度との関係を調べた。飼育は25°Cおよび30°Cの恒温と,種々の室温下で行ない,20頭前後の集合飼育と単独飼育とを併用した。1) さなぎの体重は供試した2種の食飼植物,キャベツ,アブラナによって大差なく,またそれぞれ雌雄間において有意差をみとめえなかった(第1表)。2) さなぎの平均体重は温度の相違によってほとんど変わらないが,高温30°Cにおいて非常に小さい個体が得られ,体重の減少する傾向がみられた(第1表)。3) 集合飼育区の平均さなぎ体重は単独飼育区のそれに比べてわずかに小さな数字を示したが有意差は認められなかった(第2表)。4) 一般に30°Cでは死亡率がより高くなり,特によう期に死ぬ個体が多い。25°Cでは,その他の条件のよいときはきわめて羽化率が高かった(第3表)。5) 本種では,幼虫の表皮に見られる色の変異すなわち黒化の程度は,温度や飼育密度に対し特にめいりょうな関係を示さない。6) さなぎの色は表皮の黒化の程度によってきまり,幼虫期の温度に支配される。高温30°Cで全部黄かっ色となり,低温20°C以下で全部黒色,25°Cで中間的色調となる(第4表,第1図)。
著者
一瀬 太良 渋谷 成美
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.157-163, 1959-09-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

蔬菜害虫タマナギンウワバの各態を25°Cおよび30°Cの恒温と種々の室温下で飼育して,卵,幼虫およびさなぎの発育と成虫の寿命に及ぼす温度の影響を調べ,あわせて東京都府中付近における発生経過を考察した。飼育法は20頭前後の集合飼育と単独飼育とを併用した。1) ゴボウ葉供試,集合飼育の場合,本種の有効積算温度はそれぞれ卵期66.7日度,全幼虫期223.6日度,よう期101.8日度であって,理論発育零点は卵8.0°C,幼虫8.0∼9.6°C,さなぎ12.2°Cである。各態,各令の発育期間と温度との関係を第1, 2表に示した。2) ゴボウ葉供試区は発育が良好であって雌雄の発育速度には差が認められなかった(第4表)。またこの区では集合,単独両飼育条件の間において令の発育速度に若干の相違がみられたが,全幼虫期,あるいは幼虫とさなぎの全生育期を通じると両飼育条件間に有意差を認めることができなかった(第5表)。3) 本幼虫の令数は普通5令であるが,しばしば6令型幼虫を生ずる。高温において6令型幼虫の増加する傾向がみられたが,温度がこの現象を支配する有力な因子であるとは考えられない。4) 飼育による成虫の寿命は22°C付近で17日前後,28°C付近で9日前後であり,雌雄間に差を認めえなかった。5) 本種は通常各態とも決して休眠することがなく,積算温度の法則より,東京府中地方では年間最大5回発生しうるように推定される。
著者
一瀬 太良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-106_1, 1959-06-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

タマナギンウワバ(オオワイキンモンウワバ)Plusia nigrisigna WALKERは本邦において最も普通の蔬菜害虫であるが,この種名は従来誤ってガマギンウワバP. (≠Phytometra) gamma L.として取り扱われてきたようである。この混同のいきさつや原因などを考察し,種名(属名を含む)の取り扱い方を論じた。タマナギンウワバについては従来あまり詳しい報告がない。よってその形態を述べ,あわせてガマギンウワバその他の近似種との比較を行った。
著者
大津 正英
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.25-30, 1973
被引用文献数
2 1

山形県の中央部に位置する白鷹山(海抜:992m)の東側山麓,標高500&sim;520mにおいて,互に隣合った落葉広葉樹林地,アカマツ造林地,スギ造林地および農耕地において,野ネズミが種類によりどのように移動しているのかについて1969年6月から1971年5月まで調査した。<br>1. ハタネズミは非常に定住性の強い種類で移動性個体は総個体の11.1%であった。また移動範囲は狭く移動する時期は4月から8月までであったが,その行動は2月から11月まで行なわれた。<br>2. ヤチネズミの移動性個体は本種の総個体の22.2%であった。またその移動範囲は狭く移動する時期は2月から11月までであった。<br>3. アカネズミは非常に移動性の強い種類で移動性個体は本種の総個体の36.7%であった。また移動する範囲は広かった。本種は食料の豊富な土地につぎつぎと移動し,その移動する時期は4月から11月までの無積雪期であった。<br>4. ヒメネズミの移動性個体は本種の総個体の20.5%であり,その移動する範囲は広かった。本種の移動は年間を通じて行なわれたが雄のみであった。<br>5. 野ネズミの種類ごとに捕獲された最長の期間は,ヒメネズミは11か月間,アカネズミは10か月間,ハタネズミは8か月間,ヤチネズミは4か月間であった。
著者
高田 肇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.71-76, 1991-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

ヌルデシロアブラムシの虫えいの発育と有翅虫の虫えいからの脱出について,京都の山地および圃場のヌルデで調査し,次の結果を得た。1) 虫えいは5月中旬から6月上旬に形成され,10月中旬から11月初めに裂開した。3個の虫えいについて,最大長・幅・高を定期的に測定した。その値から求めた「表面積指数」は,虫えい形成後9月初めまで指数的に上昇し,その後増加率はやや低下したが,9月末まで上昇をつづけた。10月にはいると発育は停止した。幹母(虫えい内第一世代)は6月下旬に,第二世代無翅胎生雌は7月末にそれぞれ産子を開始し,最終世代の有翅胎生雌は9月中旬に3齢幼虫になった。8月中に少なくとも1世代は経過すると思われるので,虫えい内では4世代を経ると考えられる。2) 10月に調査した15個の虫えいは,最少1,343匹,最多8,438匹の有翅虫を包含していた。観察した2個の虫えいから,有翅虫はそれぞれ11日,13日間にわたって脱出した。脱出は9∼17時に見られた。時間別脱出虫数は調査した6日のうち5日については,12∼13時をピークとする一山型の消長を示した。
著者
前田 太郎 坂本 佳子 岡部 貴美子 滝 久智 芳山 三喜雄 五箇 公一 木村 澄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.109-126, 2015
被引用文献数
4

2010年頃から,飛べないニホンミツバチApis cerana japonica Rad. が巣の周辺を這いまわり,多くのコロニーが消滅していく事例が日本各地で見られるようになった。その症状が,セイヨウミツバチAp. mellifera L. で報告されているアカリンダニ症と酷似していることから,原因としてミツバチに寄生するアカリンダニAcarapis woodi (Rennie)の寄生が疑われた。しかし,実際にアカリンダニの存在を確認した例は少なく,2013年3月までの公式報告はわずか4件のみであった(農林水産省,2014)。前田(2015)の2013年度の調査によると,すでに日本の広い範囲でニホンミツバチがアカリンダニに寄生されており,今後さらに寄生地域が拡大していくことが懸念される。アカリンダニの生態や防除法に関しては,ヨーロッパやアメリカを中心に,セイヨウミツバチを用いた研究調査が行われてきたが,日本ではアカリンダニについて正確な情報が十分知られておらず,現状の把握と対策が遅れている状況にある。
著者
浅野 昌司 宮本 和久
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.121-127, 2007-05-25
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

B剤の紫外線(UV)保護剤の効果を室内試験で評価する方法として、市販のUVランプ(東芝健康用蛍光ランプFL20S・E、波長270-370nm、ピーク波長:315mm)を照射光源に用い、照射後の生物活性をカイコ2齢幼虫に対する発育阻害活性をもとに評価する方法を検討した。市販のB剤(エスマルクDF水和剤)の1000ppm懸濁液を上記UVランプに1-4日間照射すると、照射日数に対応してカイコに対する発育阻害活性が低下し、4日間で照射前の活性の約1/200に低下した。これに酸化鉄を添加して同様にUVランプを照射すると添加濃度(0.01、0.03および0.1%)に対応したUV保護効果が見られた。酸化鉄0.01%を添加したB剤懸濁液の4日間照射による活性低下は無添加のそれに比べ約1/10に抑制できることが推定された。
著者
鷲塚 靖
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.205-210, 1980-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9

生態系のリンの循環で,昆虫類が果たす役割を明らかにする目的で,59種の昆虫類と,これらの一部についてはその食物に含まれるリンの含量を調べて,食性別および食物連鎖の栄養段階別に比較考察した。分析方法はリンをモリブデン酸アンモニウムと反応させて測定する間接原子吸光法を用いた。検体は野外採集によるものと室内飼育によるものとがあり,いずれも新鮮な材料を用いた。またオサムシ類にヨトウガ,ハスモンヨトウ,モンシロチョウ幼虫を捕食させた実験を行い,リンの含量の推移を調べた。その結果,リンの含量は食糞性昆虫が最も高く5.42(以下ppm),食肉性昆虫3.56,腐肉食性昆虫3.17の順であった。食植性昆虫では花蜜吸収性昆虫2.93,植物吸収性昆虫2.79,樹液吸収性昆虫2.14,食樹性昆虫2.06,食葉性昆虫2.04であった。その他,雑食性昆虫1.33でその値は低かった。いずれの場合も,食物より,それを摂食した昆虫の方がリンの含量が高かった例は本調査の94%を占めていた。また,オサムシ類の捕食実験の結果では,ハスモンヨトウを捕食したオオオサムシの場合を除いて,ヨトウガ,ハスモンヨトウ,モンシロチョウの各幼虫を捕食した場合,オサムシ類のリンの含量は高くなった。
著者
村越 重雄 上門 敏也 張 清芬 桜井 成 田村 三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.26-30, 1976
被引用文献数
2

葉を主体とした地上部のメタノール抽出物が,カイコの生育に悪影響を与えることを確認した4種類の植物に含まれる活性成分を単離し,それらの成分のカイコの生育におよぼす影響を調べた。<br>1. キバナオランダセンニチに含まれる活性成分はspilantholであった。spilantholを人工飼料中に200ppm添加すると,すべての幼虫は6日後までに死亡した。<br>2. ジギタリス中の活性成分はdigitoxinにdigitalinが加わったものであると推定された。digitoxinは25ppmで虫体を軟化させ,100ppmで6日後にすべての幼虫を死亡させた。digitalinでは100ppmで虫体の軟化が見られたが,400ppmでも死亡するものはなかった。<br>3. コブシの活性成分としてsesaminとkobusinが単離された。kobusinは新しく見い出された化合物で,400ppm添加飼料を与えると,幼虫に強い生育阻害が見られ,すべてのものが5日後に死亡した。sesaminはkobusinの約1/2の活性を示した。<br>4. キツネノマゴからは活性成分として,justicidin AとBが単離された。justicidin Aでは20ppm添加飼料を与えると6日後にすべての幼虫が,Bではほとんどの幼虫が死亡するという強い活性が認められた。
著者
大津 正英
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.37-42, 1967-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

1963年9月から1966年4月まで,トウホクノウサギの毛色変化を起こす要因と,更にその要因の詳細を研究し,次の結果を得た。1) 白変期に入った動物に,蛍光燈を1日に12時間以上照射すると,白変がほとんど停止し,褐変期に入ろうとする動物を暗室に入れ,これに1日10時間蛍光燈を照射すると,褐変はほとんど進まない。2) 毛色変化の遅速は,蛍光燈の照射時間の長短とほぼ一致し,長いほど褐変を促進し,白変を抑制する。したがって毛色変化を起こす最も重要な要因は,日照時間とみられる。3) 毛色変化は,環境温度・周囲の白色または褐色にほとんど影響されない。