- 著者
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鷲塚 靖
- 出版者
- 日本応用動物昆虫学会
- 雑誌
- 日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.4, pp.205-210, 1980-11-25 (Released:2009-02-12)
- 参考文献数
- 9
生態系のリンの循環で,昆虫類が果たす役割を明らかにする目的で,59種の昆虫類と,これらの一部についてはその食物に含まれるリンの含量を調べて,食性別および食物連鎖の栄養段階別に比較考察した。分析方法はリンをモリブデン酸アンモニウムと反応させて測定する間接原子吸光法を用いた。検体は野外採集によるものと室内飼育によるものとがあり,いずれも新鮮な材料を用いた。またオサムシ類にヨトウガ,ハスモンヨトウ,モンシロチョウ幼虫を捕食させた実験を行い,リンの含量の推移を調べた。その結果,リンの含量は食糞性昆虫が最も高く5.42(以下ppm),食肉性昆虫3.56,腐肉食性昆虫3.17の順であった。食植性昆虫では花蜜吸収性昆虫2.93,植物吸収性昆虫2.79,樹液吸収性昆虫2.14,食樹性昆虫2.06,食葉性昆虫2.04であった。その他,雑食性昆虫1.33でその値は低かった。いずれの場合も,食物より,それを摂食した昆虫の方がリンの含量が高かった例は本調査の94%を占めていた。また,オサムシ類の捕食実験の結果では,ハスモンヨトウを捕食したオオオサムシの場合を除いて,ヨトウガ,ハスモンヨトウ,モンシロチョウの各幼虫を捕食した場合,オサムシ類のリンの含量は高くなった。