- 著者
-
高木 敏
- 出版者
- 一般財団法人 日本消化器病学会
- 雑誌
- 日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.2, pp.184-195, 1979-02-05 (Released:2007-12-26)
- 参考文献数
- 49
- 被引用文献数
-
2
アルコール中毒者における免疫異常の状態を,肝障害との関連において,多角的に検討した.アルコール中毒者の免疫グロブリン値は,とくに血清IgAの上昇が著明であるが,肝硬変になるとIgA, IgM, IgGいずれも上昇してきた.細胞性免疫能はPPD反応,DNCB反応,Tcellの数,PHAに対する幼若化現象いずれも高率に低下がみられた.特にDNCB反応では肝障害のないアルコール中毒者でも高率に異常がみられた.エタノールと肝特異抗原の存在下でLMITを行うと50%に陽性がみられ,アルコール性肝障害では一部エタノールに対する細胞性免疫異常が成立し,それによつて肝障害が進展することが示唆された.アルコール性肝障害のHBウイルスの関与については,HBs抗原,抗体陽性率が健康人のそれと差異がなかつたことから積極的に支持できなかつた.