著者
須納瀬 弘
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.112, no.10, pp.724-727, 2009 (Released:2011-01-05)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
栗田 卓 梅野 博仁 千年 俊一 上田 祥久 三橋 亮太 中島 格
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.192-200, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
43
被引用文献数
7

喉頭乳頭腫への望ましい臨床的対応を明確にすることを目的とし, 喉頭乳頭腫60例の統計学的検討を行った. 各症例は発症年齢で若年発症型と成人発症型に, 発生様式で単発型と多発型に分類した. 性別は成人発症型で有意に男性が多かった. 発生様式は若年発症型では多発型, 成人発症型では単発型の症例が有意に多かった. 乳頭腫が最も高頻度に発生していた部位は声帯であった. 乳頭腫の再発率に関して発症年齢で比較すると, 全症例の解析では, 成人発症型に比して若年発症型の再発率が有意に高かった. しかし, 発生様式別の層別解析では, 単発型と多発型ともに若年発症型と成人発症型の再発率に有意差や傾向を認めなかった. 再発率に関して発生様式で比較すると, 全症例の解析では単発型に比して多発型の再発率が有意に高かった. 発症年齢別の層別解析では, 若年発症型では多発型は単発型に比して再発率が高い傾向があり, 成人発症型では, 多発型は単発型に比して再発率が有意に高かった. 治療は CO2 レーザー蒸散術が最も多く行われていた. 補助療法としてインターフェロンや cidofovir の局注が行われていた. 乳頭腫の悪性化例は3例であった. 乳頭腫への初治療から悪性化までの期間は3~40年と幅があり, 発症から悪性化までの期間に傾向はみられなかった. 今回の検討から, 発症年齢にかかわらず多発型の症例では再発に留意すべきと考えられた. 再発や悪性化の観点から喉頭乳頭腫に対しては長期間の経過観察が望ましい.
著者
奈良林 繁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.473-484, 1970 (Released:2007-06-29)
参考文献数
42
被引用文献数
2

鼻炎及び副鼻腔炎に対する酵素療法は, 近来日本では盛んに行なわれる様になつて来たが, 酵素剤の皮下, 筋肉内注射, 又は経口投与後どの様な過程で血中, 粘膜内又はその他の臓器組織内に移行するかについては, 今尚明らかではない. 塩化リゾチームが鼻, 副鼻腔粘膜内, 及びその周囲組織に酵素活性を有したまま移行するかについて研究を行ない, その成績を得たのでここに報告する.材料及び方法1) 家兎の血中及び臓器内リゾチーム活性を塩化リゾチーム筋注又は経口投与後, 定時的に溶菌法にて測定した.2) 家兎にFITCで標識した塩化リゾチームを注射又は経口投与して, その組織内移行を螢光顕微鏡にて検鏡した.3) complete Freund's adjuvant と共に塩化リゾチームを家兎爪廓内に注射して得た抗塩化リゾチームを免疫組織学的に調べた.成績家兎の血中リゾチーム活性値の上昇は, 塩化リゾチームの筋注例では小量でも認められたが経口投与例では大量に与えた場合にのみ認められた. 家兎にFITCで標識した塩化リゾチームを注射又は経口投与した場合の組織内移行は明瞭に認められた. 注射又は経口的に塩化ジゾチームを投与したあとの人の鼻•副鼻腔粘膜内への塩化リゾチームの移行も免疫組織学的に確かめられた.考按以上の事実から投与された塩化リゾチームは血中, 鼻•副鼻腔粘膜及びその周囲組織内に溶菌性と抗原性を有したまま移行することが明らかとなつた. 組織に移行した塩化リゾチームの働らきが蛋白分解作用, 細胞賦活作用, そして外からの細菌侵襲に対する防禦作用に関するかどうかは今後検討しなければならない. 家兎の体内に卵白より抽出した塩化リゾチームに対する抗体が産生された事実から人体内にも抗塩化リゾチーム抗体の産出の可能性もあり得ると考える.

3 0 0 0 OA 頭蓋底外科

著者
岸本 誠司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.229-239, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
91
被引用文献数
1

頭蓋底は脳頭蓋と顔面頭蓋の境界に位置し, 多くの血管や神経が存在し複雑な構造を呈している. さらに顔面深部に存在するため, ここに生じる病変の診断治療は困難である. 特に手術においては生命予後に直結する頭蓋内合併症に加えて顔面神経, 視覚, 嚥下, 咀嚼, 構音, 整容といった患者 QOL に直結する問題が生じるため, 極めて高度な手技が要求される. そのため, 頭蓋底手術を安全に行うためにはチーム医療の確立, 新たな手術手技の開発や機器の導入と解剖学的検討に基づく十分な知識が必要不可欠である. さらに内視鏡手術などの minimally invasive surgery の開発による機能や形態の温存や, 術後合併症に対する機能再建外科を確立する必要があるが, そのためにはこれまでの知識と技術を伝承していくことが非常に重要である. 本稿では頭蓋底手術に関するわれわれのこれまでの取り組みと得られた新知見, ならびに今後の展望について述べる.
著者
花田 有紀子 笹井 久徳 鎌倉 綾 中村 恵 坂田 義治 宮原 裕
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.5, pp.606-611, 2013-05-20 (Released:2013-08-21)
参考文献数
21
被引用文献数
14

上咽頭癌はわが国では40~60歳代に好発し, 男性にやや多い悪性腫瘍である.その解剖学的特徴より, 放射線治療が治療の核をなす1). 放射線治療の後期合併症として, まれに内頸動脈仮性動脈瘤を形成することがあり, 破裂により致命的となる. われわれは上咽頭癌に対し放射線治療を行った既往のある75歳男性の内頸動脈仮性動脈瘤の症例を経験した. 鼻出血で発症し, 大量出血を認めたがAngiography下コイル塞栓術により救命し得た.この合併症はまれではあるが突然破裂することで致命的となるため, 常に念頭におき放射線治療を行うべきであると考える.
著者
田村 悦代 山田 千積 飯田 政弘 大上 研二
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.1175-1182, 2020-09-20 (Released:2020-10-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

健診受診者で音声に対する明らかな症状を訴えていない健常な中高年齢者の音声機能を測定, 加齢による変化を検討し, 音声治療への対応について言及した. 対象は, 2016年9月~2018年9月までの抗加齢ドック受診者302名で, 3つの年代群に分けて検討した. 発声機能検査装置を用いて, 5種類の発声 (楽な声, 最も強い声・最も弱い声, 最も高い声・最も低い声) における基本周波数, 音圧, 呼気流率および最長発声持続時間を測定した. さらに, 基本周波数, 音圧, 呼気流率について, それぞれ2者の関連を検討し, 発声調節の変化についても考察した. 加齢と共に, 声域は狭くなり, 基本周波数では, 男性では, 楽な声や最も低い声で上昇し, 最も高い声では低下していたが, 女性では全体的に低下していた. また, 呼気流率では, 男性では加齢とともに4種類の声で増加していたが, 女性では年代ごとの有意差は見られなかった. 各パラメータ相互の関連から最も強い声は, 呼気流率との関連が男女共通して認められたが, 最も弱い声では, 性や年齢により基本周波数や呼気流率と音圧の関連が異なっていた. 以上の結果により, 加齢による音声機能の変化が男女で異なることが推測され, 音声治療施行に際して, 男性では, 過緊張発声状態を緩和するリラクゼーションを主体とした音声治療を, 女性では, 基本周波数の調節を主体とした包括的音声治療などが推奨される.
著者
松瀬 厚人 河野 茂
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.3, pp.157-162, 2016-03-20 (Released:2016-04-19)

咳嗽は呼吸器専門医に限らず, 臨床で遭遇する頻度が極めて高い疾患である. 近年胸部X線や聴診の異常を伴わずに, 慢性的に咳嗽が持続する症例が増加傾向にある. 日本呼吸器学会から, 咳嗽診療の補助として, 2005年と2012年に『咳嗽に関するガイドライン』の初版と第2版がそれぞれ出版された. ガイドラインでは, 咳嗽を持続期間により, 発症後3週間以内の急性咳嗽, 3~8週間の遷延性咳嗽, 8週間以上の慢性咳嗽に分類し, 代表的な原因疾患の診断や治療法が示されている. 喀痰の有無も治療法に関連するため確認することが重要である. わが国の慢性咳嗽の原因としては, 咳喘息の頻度が最も高く, アトピー咳嗽, 副鼻腔気管支症候群, 胃食道逆流症等がそれに次ぐ. 慢性咳嗽の初期診療で重要なことは, 明らかな誘因があればそれを除去することである. その上で, 診察と必要に応じて胸部X線検査を行う. これによって生命にかかわる肺癌と感染性のある肺結核などを除外する. 問診では, 咳嗽の好発時間, 喀痰や発熱などの随伴症状, 増悪因子など代表的な原因疾患に特異的な病歴を聞き出すことに努める. 原因疾患が想定されたら, その疾患に特異的な治療薬, 例えば咳喘息には吸入ステロイド・気管支拡張薬, アトピー咳嗽にはヒスタミン H1 受容体拮抗薬, 副鼻腔気管支症候群にはマクロライド系抗菌薬などを投与し, 鎮咳効果が得られれば治療を継続する. これらの特異的治療を行っても咳嗽が改善しない場合には, 原因疾患が複数存在する可能性も考慮する. 重症例, まれな原因疾患, 心因の関与などが考えられる場合には呼吸器専門病院への紹介を怠ってはならない. 逆に初期治療で鎮咳効果が得られたら, 漫然と同じ治療を続けるのではなく, 効果を評価して, 薬剤の減量, 中止も考慮すべきである.
著者
平野 滋 杉山 庸一郎 椋代 茂之 金子 真美
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.1113-1117, 2019-08-20 (Released:2019-09-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

喉頭・咽頭逆流症 (LPR) は, 慢性的な咽喉頭炎から音声障害を来し得る. 胃酸による逆流性炎症が後部声門の肉芽腫や潰瘍の原因となることは広く知られているが, 近年, LPR では胸焼けや吃逆などの胃食道逆流症 (GERD) 症状は10~20%程度であるのに対し, 音声障害は約70%にまで起こるとされる. 音声障害の病因は, 慢性的な酸暴露による上皮, 粘膜固有層の損傷が主体で, 上皮の肥厚・角化, 潰瘍, 肉芽, 溝の形成, 粘膜固有層の炎症と乾燥などが指摘されている. 動物モデルにおいては, 喉頭に酸やペプシンを暴露すると, 肉芽腫の発生や粘膜上皮内の炎症, 扁平上皮の過形成や潰瘍, 線維化を来すことが確認され, また, LPR 患者の咽喉頭の生検組織において, 声帯上皮, 喉頭前庭, 後部声門の上皮内のペプシンの存在, 細胞間間隙の増大, 粘膜保護作用のある炭酸脱水素酵素やカドヘリンの減少などが報告されてきた. これらの炎症が音声障害を引き起こすと同時に, LPR 患者の発声はしばしば過緊張となり, 筋緊張発声障害を招くことが多い. 最長発声持続時間 (MPT), jitter, shimmer, 雑音成分などの異常を来す. 歌手は LPR の高リスク群とされている. 歌唱に腹圧のサポートが必須で, 高い腹圧によって胃酸の逆流が生じやすいこと, パフォーマンスの前は常に強いストレスにさらされること, 食事や飲酒に無頓着であることなどが原因で, 嗄声のほか音声疲労や歌唱中の声の途切れ, 痰の引っ掛かりなどを訴えることが多い. LPR による音声障害の治療は, 食事様式の適正化, ライフスタイルの改善, 胃酸逆流の抑制で, 胃酸分泌を強力に抑えるプロトンポンプ阻害薬 (PPI) は多くの場合奏効する. これらの治療により, jitter, shimmer, HNR, VHI, GRBAS, RSI, RFS などの改善が多数報告されている. 音声障害患者において, 酸逆流の関与の有無について的確に診断し治療することが重要である.
著者
長井 慎成 東野 哲也 松田 圭二 外山 勝浩 河野 浩万 小玉 隆男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.707-712, 2007-11-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3

【はじめに】中耳真珠腫の画像診断にはCTが第一選択として用いられるが, 軟部陰影を質的に鑑別するためにはMRIが有用である. 当院では2002年よりMRI撮像に加え, 拡散強調法による撮像を用い真珠腫診断を行っている. これまでに当院にてMRI拡散強調画像で病態評価を行った中耳炎症例を用い, 本撮像法の有用性について検討したのでその結果を報告する.【対象と方法】2002年10月から2006年7月に, 当院で拡散強調画像を加えた側頭骨MRI検査を行った56例を対象とした. 男性35名, 女性21名, 年齢は3歳~76歳で, 平均42.8歳であった.【結果】真珠腫診断における拡散強調像の感度は85.4% (41/48), 特異度は100% (8/8), 陽性的中率は100% (41/41), 陰性的中率は53.3% (8/15) であった. 拡散強調像にて真珠腫を同定できた症例の画像におけるサイズは, 5mmから40mmであり, 4mmの先天性真珠腫は評価困難であった.【考察】今回の検討から, 本撮像法の中耳真珠腫診断における有用性が確認された. 今後本撮像法の分解能が向上することにより, 中耳真珠腫診断におけるMRI検査の位置づけがさらに高まるものと期待される.
著者
藤川 太郎 白倉 聡 畑中 章生 岡野 渉 得丸 貴夫 山田 雅人 齊藤 吉弘 別府 武
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.1046-1052, 2015-08-20 (Released:2015-09-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

癌治療において低ナトリウム血症はしばしば遭遇する電解質異常である. 今回われわれは, 中咽頭癌進行症例に対してシスプラチン (CDDP) 同時併用放射線治療を行い, 計3回の grade 4 の低ナトリウム血症を経験したので報告する. 初回および2回目の低ナトリウム血症は CDDP 投与後に出現し, 脱水と多尿を伴い, 輸液と塩分の補充により1週間程度で改善した. ナトリウムの排泄過剰の所見から塩類喪失性腎症が原因であると考えられた. 3回目の低ナトリウム血症の原因であった抗利尿ホルモン不適合分泌との比較から, 細胞外液量とナトリウムバランスの評価が低ナトリウム血症の鑑別と適切な治療において極めて重要であると考えられた.