著者
武田 宗和 名取 恵子 諸井 隆一 原田 知幸 矢口 有乃 稲垣 伸洋
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.735-739, 2013-05-31 (Released:2013-07-26)
参考文献数
10

要旨:【症例】37歳飲酒歴のない女性。意識障害で発見され救急搬送,既往は躁鬱病と境界型人格障害。来院時ショック状態で下血を認め,緊急下部内視鏡検査で直腸から左側結腸まで全周性・連続性の発赤とびらんを認めた。翌日,薄めたウオッカ約1L(推定アルコール濃度49%)を自ら注腸したことが判明,虚血性腸炎に準じ保存的治療を選択。8病日の内視鏡検査では直腸からS状結腸までは粘膜の修復が認められ保存的治療を継続した。4週間後,下行結腸の高度な腸管狭窄を合併したため,本人との話し合いの結果,横行結腸に人工肛門を造設することとなった。【考察】過去の報告では,アルコール注入による直腸結腸炎は保存的治療で治癒することが多いとされる。本例は高濃度のアルコールが大量に注入され広範囲に腸管が傷害された上にショック状態に陥り,腸管虚血をきたしその治癒過程で腸管狭窄を合併したものと推察された。本例における治療方針に関する問題点をふまえ文献的考察を加え報告する。
著者
岩田 力 磯谷 正敏 原田 徹 金岡 祐次 亀井 桂太郎 前田 敦行 高山 祐一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.773-776, 2013-05-31 (Released:2013-07-26)
参考文献数
17
被引用文献数
2

要旨:経肛門的直腸異物は,精神障害や性的嗜好あるいは事故により肛門から異物が挿入され,抜去不能となったものである。瓶類,玩具や缶の蓋などの報告例は多いが,石膏による直腸異物の本邦報告例はない。今回,われわれは石膏を経肛門的に注入し,全身麻酔下にS状結腸に切開を加え異物を摘出した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。症例は32歳男性,既往歴は特になし。10年以上前より自慰行為にて肛門より液体状の石膏を注入していた。2011年6月に液体状の石膏500mLを注入,排出困難のために当院救急外来受診した。血液検査では炎症反応の高値を,腹部CTでは直腸からS状結腸におよぶ高吸収体を認めた。石膏注入後約15時間後に全身麻酔下に経肛門的に摘出を試みたが不可能であり,開腹手術へと移行した。開腹して腹腔内よりS状結腸の異物を肛門側に押し出そうとしたが押し出せず,S状結腸に切開を加え18×6×6cmの石膏を摘出した。直腸粘膜の損傷を認めたために低位前方切除術を施行した。術後経過は良好で第11病日に退院した。
著者
久恒 靖人 松下 恒久 野田 顕義 天神 和美 佐治 攻 榎本 武治 民上 真也 福永 哲 大坪 毅人
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.875-878, 2015-11-30 (Released:2016-03-02)
参考文献数
8

性的嗜好により経肛門的異物挿入で直腸穿孔となった症例を経験した。症例1,64歳男性。以前よりホースを肛門に挿入する自慰行為を行っていた。受傷当日も,ホースを使用した自慰行為を施行していたが,行為後より腹痛を認め,経過観察するも症状悪化したため近医へ救急搬送された。近医で処置困難と診断され当院へ紹介となった。精査にて直腸穿孔を認め,ホースによる直腸穿孔と診断し,緊急開腹術を施行した。症例2,75歳男性。友人に肛門へソーセージを挿入された。その後,ソーセージの排泄は認めず,腹痛増悪したため近医を受診された。イレウスと診断され,当院紹介受診。精査にてソーセージによる直腸穿孔と診断し,緊急開腹術を施行した。性的行為による経肛門的直腸異物挿入での直腸穿孔はまれであるため若干の文献的考察を加え報告する。
著者
田村 暢一朗 山川 達也
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.919-921, 2017-09-30 (Released:2018-02-27)
参考文献数
4

症例は62歳の男性で,職場の同僚に作業場にある工業用エアコンプレッサーを殿部にむけ噴射され受傷し,当院に来院した。エアコンプレッサーと患者の殿部との距離は約50cm離れており,患者は長ズボンと下着を着用していた。来院時頸部から前胸部にかけての皮下気腫と下腹部に反跳痛を伴う圧痛を認めた。胸腹部CTで直腸穿孔による後腹膜気腫,縦隔気腫,皮下気腫への進展と診断し,緊急開腹術を行った。開腹したところ,腹膜反転部直上から約4cm口側にわたって直腸間膜対側に腸管軸方向に漿膜筋層の裂創と,その裂創の一部に全層性の穿孔部位を認め,Hartmann手術を施行した。術後,縦隔炎や後腹膜膿瘍を形成することはなく,第23病日に退院となった。エアコンプレッサー自体を肛門に挿入せずに,患者とある程度の距離から送気されたとしても,十分に直腸損傷を生じる可能性があると考えられた。
著者
保武 雄真 三毛門 佳彦 衛藤 英一 多賀 聡 矢野 公一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.919-922, 2016-07-31 (Released:2016-12-28)
参考文献数
10

症例は59歳,男性。作業着の清掃に用いるエアコンプレッサーを作業着の上から肛門部に押し当てられた状態で空気を噴射され受傷した。腹部膨満感と腹痛が持続するため当院救急外来を受診。胸腹部単純X線および腹部CT検査にて腹腔内に大量の遊離ガス像を認め,下部消化管穿孔が疑われた。初診時は腹部症状軽度であったため,準緊急的に手術を施行した。腹膜翻転部より約5cm口側の直腸前壁に約3cmの裂創を認め,周囲に便汁の漏出を認めた。Hartmann手術を施行し,損傷範囲の大腸部分切除および人工肛門造設を行った。術後経過は良好で術後14日目に退院となった。圧搾空気による腸管穿孔はS状結腸穿孔の報告が最も多いが多発穿孔や遠隔部位穿孔も報告されている。本症例では直腸に穿孔を認めたが,便や憩室など腸管の状態,圧損傷の好発部位を念頭に下部消化管全域における慎重な穿孔部位検索が重要であると考えられた。
著者
小嶌 慶太 青木 真彦 石井 智 田村 光 小島 正夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.625-629, 2013-03-31 (Released:2013-06-07)
参考文献数
18

巨大な直腸異物の2例を経験したので報告する。症例1は65歳,男性。肛門痛,腹痛を主訴に近医を受診し腹部単純X線写真上,約30cmの針金を腹部に認め当院に紹介された。腹膜刺激徴候は認めず,CTでは腹腔内遊離ガス像およびS状結腸内に靴べらとS状結腸壁を貫通する針金を認めた。同日緊急手術を施行したところ,針金はS状結腸壁を貫通しS状結腸間膜内に迷入していた。靴べらはS状結腸内に認めた。靴べらと針金は経肛門的に摘出した。穿孔部位を含め腸管切除を施行した。術後13日目に退院となった。症例2は58歳,男性。主訴は直腸異物の摘出困難。CTで直腸からS状結腸に棒状異物を認めた。穿孔所見もなく,腰椎麻酔下に異物を鉗子で摘出した。術後1日目に退院した。直腸異物では腹部症状も軽度にあらわれる可能性があり,治療方針決定においては詳細な病歴聴取,理学所見,そして画像診断も重要であることが認識された。
著者
篠崎 由賀里 隅 健次 山地 康大郎 田中 聡也 佐藤 清治
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1159-1162, 2014-09-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
11

水上バイク事故により生じた外傷性直腸肛門損傷から縦隔気腫にまで至った1例を経験した。水上バイクの後部座席に乗船した20歳女性が振り落とされて落水。肛門部痛と気分不良を訴え,6時方向での肛門直腸の断裂を確認。胸腹部CTで肛門から直腸周囲と縦隔にまで広がるairを認め,落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷,後腹膜気腫,縦隔気腫と診断した。緊急手術施行し損傷部位を縫合閉鎖,後腹膜ドレナージ,横行結腸人工肛門を造設した。術後致命的な合併症は無かったが,膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目,人工肛門形成,自己導尿状態で退院。水上バイク事故による重傷損傷は増加しており,国土交通省運輸安全委員会も注意喚起している。本症例では症状は軽度であるも骨盤神経叢の損傷が疑われ膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性もある。同様の事故を防ぐための行政対策も必要と考える。
著者
松尾 浩 小久保 光治 近藤 哲矢 三鴨 肇
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.827-830, 2003-07-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
10
被引用文献数
2 5

症例は43歳, 男性. 2001年3月22日午後9時頃より腹痛を自覚し, 腹痛が強度となり4時間後に救急車にて当院に緊急入院した. 腹部は軽度膨隆し, 全体に圧痛と筋性防御を認めた. 血液検査にてCRPは陰性であったが, 白血球の上昇を認めた. 腹部CT検査にてfree airと腹水, 骨盤腔にlow density areaを認めた. 肛門よりビニール製のひもが1mほど脱出しており, 出血を軽度認めた. 直腸異物による消化管穿孔の診断のもとに緊急手術を施行した. 開腹すると便汁を混じた腹水を認め, 骨盤腔に直径5.5Cm高さ19cmの哺乳びんを認めた. 腹膜翻転部から10cmの直腸前壁が長軸方向に10cmにわたり穿孔しており, 同部より哺乳びんが腹腔内に露出していた. 手術は同部を縫合閉鎖し, 横行結腸にて双孔式人工肛門を造設した. 経肛門的に異物が入った経過を何度も確認したが, 風呂場で転んだ拍子に哺乳びんが肛門から入ってしまったとのことであった. 術後6ヵ月後に人工肛門を閉鎖し経過良好である.
著者
三宅 亮 松山 純子 寺坂 勇亮 角原 敦夫 松山 晋平 三宅 昌 柴田 信博
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.91-93, 2014-01-31 (Released:2014-07-30)
参考文献数
17

症例は27歳男性。食事後の炭酸飲料水の“一気飲み”(約500mL)直後に,突然の上腹部痛が出現し,救急車で搬送来院した。胸腹部造影CT検査で縦郭気腫と上腹部の遊離ガスを認めた。上部消化管破裂が疑われたため,水溶性造影剤(ガストログラフィンⓇ)による上部消化管造影検査を行った。胃体上部小弯側から造影剤の流出を認め,特発性胃破裂と診断し緊急手術を行った。胃体上部小弯側に,裂創部を認め,裂創部周辺は虚血変化がなかったため,裂創部を2層に縫合閉鎖して腹腔洗浄ドレナージを行った。術後経過は良好で,術後12日目に歩行退院した。炭酸飲料水の“一気飲み”による胃破裂は,本邦での最初の報告である。
著者
永岡 智之 石田 直樹 中川 祐輔 梶原 伸介
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.1039-1042, 2017-11-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
19

症例1は77歳,女性。認知症のため施設入所中であった。腹痛と嘔吐を主訴に受診し,腹部CTでイレウス像と小腸内にらせん状の低濃度陰影を認めたため,腸重積や腫瘍,異物を疑い手術を施行した。回腸末端より150cm口側腸管を切開すると7cm大の椎茸が陥頓していた。症例2は59歳,男性。腹痛を主訴に受診し,腹部CTでイレウス像と回腸内に不整な低濃度陰影を認めた。椎茸によるイレウスが疑われ,ロングチューブを挿入し保存的加療を行ったところ,約24時間後に排便とともに2cmの椎茸が4片排出された。その後の腹部CTで低濃度陰影の消失とイレウス像の消失を確認した。食餌性イレウスはまれな疾患であり,術前診断が困難なことが多く,手術報告例が多い。今回われわれは,手術治療を行った症例と,保存的に治療可能であった症例をそれぞれ経験したので,文献的考察を加えて報告する。
著者
藤井 幸治 高橋 直樹 熊本 幸司 松本 英一 高橋 幸二 宮原 成樹 楠田 司 村林 紘二
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.833-837, 2008-09-30 (Released:2008-11-05)
参考文献数
19

58歳,男性。散弾銃が至近距離から患者の左腰部に命中し,受傷約2.5時間後に当院に搬送された。顔面蒼白であるも意識清明。血圧130/70mmHg,脈拍66/minであった。左腰部に径4cmの射入口を,右側腹部に4ヵ所の射出口と2個の弾丸を認めた。L2以下の知覚鈍麻と下半身麻痺を認めた。CTにて左腰部から右側腹部に銃創を認め,弾丸貫通による腰椎粉砕骨折,さらに腹腔内に腹水およびfree airを認めた。救急搬送約80分後に緊急開腹術を施行した。十二指腸下行脚に1ヵ所,回腸に5ヵ所の穿孔部を認め,回結腸動脈が断裂していた。腰椎を貫通した弾丸は下大静脈と右尿管の間を通過しており大血管損傷は免れていた。回盲部切除,十二指腸穿孔部閉鎖,胃空腸バイパス,腹腔内洗浄ドレナージ術を施行し,皮下の弾丸を2個摘出後,左腰部射入口を洗浄,閉創した。下半身麻痺のため,術後33日目にリハビリ目的に整形外科に転科となった。
著者
伊在井 淳子 盛口 佳宏 堀切 康正
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.1337-1340, 2014-11-30 (Released:2015-02-27)
参考文献数
6

症例は91歳女性で,繰り返す腸閉塞の治療目的に,当院へ紹介された。CTでは,骨盤内の拡張小腸内腔に気泡を含む長径3.5cmの塊状物を認めた。イレウス管を挿入し,腸管減圧後に行った小腸造影で,イレウス管先端付近の小腸内腔に,楕円形の陰影欠損を認めた。以上より,食物残渣の陥頓をきたした食餌性イレウスと診断した。食物残渣を溶解する目的で,1日計500mLのコカ・コーラゼロⓇを,100mLずつ間歇的にイレウス管先端から注入した。注入を5日間行ったところ,イレウス管の排液が著明に減少し,イレウス管先端が右側結腸まで達して,腸閉塞の解除が確認された。食餌性イレウスがイレウス管による減圧で解除されない場合,経イレウス管コーラ注入が有用な可能性がある。特に超高齢者では,手術回避の観点から考慮すべき方法であると考えられた。
著者
鈴東 昌也 東本 昌之 東 泰志 竹林 勇二 小倉 修
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.95-98, 2013-01-31 (Released:2013-04-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

瓶類は本邦で最も頻度の高い経肛門的直腸内異物である。今回われわれは,気動式骨手術器械(サージエアトームII)を用いて,経肛門的に安全に摘出し得た直腸内異物を経験したので報告する。症例は51歳男性。自慰行為中,ヨーグルトのガラス瓶を肛門に挿入した。自力で摘出できず,当院救急外来受診した。直腸診で肛門縁より5cmに瓶底を触知した。腰椎麻酔で肛門括約筋を弛緩させ,用手および筋鈎でガラス瓶摘出を試みたが,摘出困難であった。気動式骨手術器械で瓶底に直径5mm大の穴を作製し,直角鉗子を掛けて摘出した。瓶の最大直径は8cm,長さ9cmであった。術後合併症は認めなかった。今回用いた方法は,経肛門的直腸異物摘出法の一つとして有効であり,今後同様の症例に対して,有用な方法であると考えられた。
著者
二村 直樹 松友 将純 安村 幹央 立山 健一郎 多羅 尾信 阪本 研一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.73-77, 2004-01-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
29
被引用文献数
3

餅による食餌性イレウスの2例を経験したので報告する. 症例1: 66歳の女性. 主訴は腹痛, 嘔吐で, 腹部に腹膜刺激症状を認めた. 血圧は74/36mmHgと低下していた. CT検査で小腸の拡張と小腸内にhighdensity tumorを認めた. ショックを伴ったイレウスの診断で緊急手術を行った2. 回腸末端より口側30cmの回腸内に白色調の硬い異物を認め, 同部より口側の小腸が拡張していた. 腸切開を行い餅を摘出した. 症例2: 76歳の女性. 主訴は右季肋部痛で腸閉塞の診断で入院した. 入院日に腹部CT検査で胃内と小腸内にhigh density tumorを認め, 上部消化管内視鏡検査で胃内に餅を認めたため, 餅による食餌性イレウスと診断した. 入院翌日の腹部CT検査で胃内の餅は十二指腸へ移動し, 小腸の餅も移動がみられた. 保存的に治療を行い, 軽快した. 餅はCT検査でhigh density tumorとして腸管内に認められ, 餅による食餌性イレウスの診断に有用であると考えられた.
著者
呉林 秀崇 木村 俊久 小畑 真介 佐藤 嘉紀 竹内 一雄 山口 明夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1285-1288, 2013-12-31 (Released:2014-07-02)
参考文献数
11

症例は25歳の男性で,原因不明の急性腹症にて当院救急外来に紹介された。当院での問診にて,エアーブロワーによる経肛門的な高圧空気注入後からの腹部症状と判明した。来院時の腹部理学所見では腹部は全体に膨満し,腹膜刺激症状を認めた。腹部X線検査およびCT検査では遊離ガス像および小腸から全大腸におよぶ腸管拡張を認めた。また下部消化管内視鏡検査において,S状結腸粘膜は断裂し,数条の縦走潰瘍様所見を認めた。消化管穿孔および汎発性腹膜炎の診断で,緊急開腹手術を施行した。手術所見では,直腸S状部,S状結腸,脾弯部,肝弯部に漿膜損傷を認め,特にS状結腸部には腸管壁全層に及ぶ壊死所見を認めた。拡大左半結腸切除術およびdiverting ileostomyを施行し,術後39日目に退院した。経肛門的高圧空気注入による結腸損傷は極めてまれであるため,若干の文献的考察を加えて報告する。
著者
渡辺 伸元 松永 宏之 宇野 雅紀 大岩 孝
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1153-1157, 2014-09-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は35歳女性。便秘,腹痛を主訴に来院した。腹部CTで結腸に多量の便塊と小腸から結腸にかけて高度の拡張を認め,宿便性腸閉塞の診断で入院となった。保存的治療を試みたが,さらに発熱,炎症反応高値を認めたため閉塞性腸炎の診断で緊急手術を施行した。下行結腸で硬便が数珠状に連なり閉塞していた。横行結腸で双孔式人工肛門を造設した。術後は一旦経口摂取可能となったが再度腹部の膨隆が強くなった。腹部CTで腸管外にairを伴う多量の腹水を認め,消化管穿孔の診断で術後5日目に再度,緊急手術を施行した。腹腔内には便汁が充満し,人工肛門より口側の横行結腸に壊死,穿孔を認めた。拡大結腸右半切除および回腸ストマを造設した。敗血症性ショックとなったが2回目の手術より14日目に軽快退院となった。今回,健常な若年者が宿便性腸閉塞から閉塞性腸炎,大腸穿孔をきたした症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
著者
川元 真 高川 亮 福島 忠男 茂垣 雅俊 舛井 秀宜
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1047-1050, 2013-09-30 (Released:2014-01-10)
参考文献数
12

要旨:症例は21歳女性。生魚を摂取し,12時間後に下腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部所見上は下腹部に著明な圧痛がみられ,造影CTで有症状部位に一致して限局性の小腸壁の肥厚,腹腔内遊離ガス像,腹水を認め,小腸穿孔の診断で同日緊急手術となった。手術所見では,小腸に2mm大の穿孔部位がみられ,周囲は発赤し浮腫状であり,小腸部分切除を行った。病理組織診断の結果,穿孔部近傍に好中球と好酸球の浸潤を伴う寄生虫像を認め,寄生虫による小腸穿孔と診断した。また,血液検査にて抗アニサキス抗体陽性でありアニサキス症による小腸穿孔と診断した。アニサキス症のうち小腸アニサキスは4~8%程度と報告され,その中でも小腸穿孔の報告は極めて少なく,2012年までの本邦医中誌検索では本症例を含め4例の報告しかない。今回われわれは小腸アニサキス症による小腸穿孔の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する。
著者
石川 衛 岩本 久幸 近藤 優 森 美樹 宮本 康二
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.627-630, 2017-05-31 (Released:2017-09-29)
参考文献数
13

経肛門的直腸異物を2例経験したので報告する。症例1:62歳男性。受診2日前に肛門より異物挿入し,摘出困難を主訴に当院受診。腹部X線検査で骨盤内に円筒状異物を認め,腹部CTでは異物先端は直腸Rs付近に達しており外来での抜去困難なため,脊椎硬膜外麻酔下に手術を施行。手術直前,異物はすでに経肛門的に触診されない部位に移動していたため,開腹して用手的経肛門的に携帯用ガスボンベを除去した。症例2:26歳男性。直腸異物の摘出困難を主訴に当院受診。外来での摘出困難であったため,脊椎硬膜外麻酔下に緊急手術を施行。腹部を愛護的に圧迫しつつ経肛門的にバイブレーターを除去した。直腸異物の摘出にあたっては,なるべく低侵襲な治療が望まれるが,詳細な病歴聴取や画像診断により異物の形体も考慮した適切な治療法を選択する必要がある。
著者
鈴木 修司 近藤 浩史 古川 顕 河井 健太郎 山本 雅一 平田 公一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.177-185, 2015-03-31 (Released:2015-06-11)
参考文献数
62
被引用文献数
2

非閉塞性腸管虚血(NOMI)は,腸間膜血管に器質的閉塞が存在しないにもかかわらず,腸間膜虚血や腸管壊死を呈する疾患である。1974年Siegelmanらによる血管造影を用いた診断基準がgold standardであったが,最近のmultidetector-row computed tomographyの普及や超音波検査の進歩により腸管虚血を客観的に評価しうる検査法の精度が向上してきたため,新診断基準の確立が望まれている。NOMIは早期に特異的な症候はなく,重症化して診断されるため,一般に予後不良である。NOMIと診断されれば,腹膜刺激症状がない場合は血管拡張薬血管内投与の適応となるが,腹膜刺激症状をきたし,腸管壊死が疑われる場合には外科手術が必要であり,NOMIの診断の標準化と治療の新たなアルゴリズムの構築が望まれる。
著者
添田 暢俊 斎藤 拓朗 竹重 俊幸 浅野 宏 武藤 亮 高間 朗 渡部 晶之 遠藤 俊吾 五十畑 則之 三潴 忠通 鈴木 朋子 金子 明代 伊関 千書 関本 信一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.011-018, 2015-01-31 (Released:2015-05-13)
参考文献数
25

要旨:消化器外科手術後では術後せん妄の併発により重篤な合併症を併発することがある。抑肝散はせん妄に対する効果が報告されているが,経口摂取が困難な時期には使用しにくい。そこで抑肝散の座薬を作成し安全性と効果を検討した。【方法】座薬は漢方薬エキス製剤にホスコH─15を加えて作成し1日4回使用した。消化器外科手術を行った227例を対象とし,せん妄の程度は8時間毎にNEECHAM Confusion Scale(以下,Nスケール)により評価し。治療は抑肝散を第一選択とし8時間後にNスケール20pt以上へ上昇した場合を有効と判定した。【成績】227例中,Nスケール19点以下のせん妄は26例(11.5%)に認めた。この26例中23例に対して抑肝散座薬を使用し,有害事象を認めず,17例(73.9%)で有効であった。【結論】消化器外科手術後のせん妄において,抑肝散座薬は安全に使用可能で73.9%で効果を認めた。