著者
平林 邦昭 戸口 景介 吉川 健治 山口 拓也 硲野 孝治
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.3330-3333, 2009 (Released:2010-04-05)
参考文献数
12

症例は76歳,男性.盲腸癌に対する右半結腸切除術の3カ月後に腹痛発作で入院した.腹部単純X線,腹部CT検査,腹部エコー検査で,腹腔内に線状金属陰影を認めた.腹部症状が悪化し,X線下に開腹手術を施行したところ,小腸を突き破る長さ7cmの金属片を確認した.摘出した金属片をただちに調査し金属スタイレットの先端部分であると断定した.先の手術の麻酔導入時に食道挿管されており,その時に金属疲労した先端部分が折損し食道内に進んだものと推察された.術後経過は順調で術後10日目に退院した.現在術後3年半が経過したが,合併症なく外来通院中である.
著者
角岡 信男 加洲 保明 宮内 勝敏 杉下 博基 谷川 和史 河内 寛治
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.313-317, 2007
被引用文献数
1

症例 : 37歳, 女性. SLE経過観察中に胸部レントゲン, CTにて肺動静脈瘻を指摘された. 増大傾向のため当科に紹介された. 全身にチアノーゼを認め, CTおよび血管造影では, 右S<sup>6</sup>に存在し一部葉間に突出する最大径50mmの瘻で, A<sup>6</sup>・V<sup>6</sup>が拡張し, 独立した流入・流出血管と考えられた. 患者が若年者であったため核出術の方針とした. 手術所見では瘻は葉間に突出しており, 血流の乱流が観察された. まず太いA<sup>6</sup>およびV<sup>6</sup>を露出し根部で結紮したが, 瘻は縮小せず静脈血の噴出を認め流入血管が他にもあると考えられた. 核出術を続けるが出血を認めるため, 核出術のみは困難と判断し, S<sup>6</sup>の区域切除術を行った. 切除標本ではS<sup>6</sup>に対しA<sup>7</sup>からの分岐血管を認めるなど区域間の枝が瘻に入り込んでいた. 術後は合併症もなく, チアノーゼは消失し血液ガスも正常化した. まとめ : 流入血管が太く大きな瘻の症例を経験した. 流入血管の術前評価が難しく数本存在しており, 区域切除術で安全で確実に手術を行えた.
著者
上田 毅 濵上 知宏 福本 陽二 中村 誠一 澤田 隆 清水 哲 遠藤 昭博 浅井 泰雅
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.846-850, 2011 (Released:2011-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

症例は62歳,男性.多発結腸癌および直腸癌に対しD3郭清を伴う直腸切断術が施行された.総合所見がf-StageIIIaであったことから補助化学療法としてカペシタビン単独療法を外来にて開始した.内服開始4日目,歩行困難,全身倦怠感,精神錯乱にて再来され,脳MRIにて白質脳症と診断された.薬剤の中断と対症療法により数日で症状は軽快しMRI所見でも白質脳症に伴う変化は消失した.薬剤性の白質脳症は様々な抗腫瘍薬で発症が報告されているが,カペシタビンによる白質脳症の本邦報告例は無い.自験例ならびに海外の報告からは,内服開始から発症までの期間が数日間と短い傾向があり,初回投与の際に十分な注意が必要と思われる.
著者
河村 祐一郎 金谷 誠一郎 小原 和弘 長久 吉雄 砂川 理三郎 松下 貴和 五味 隆 和田 康雄 大歳 雅洋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.2620-2627, 2009 (Released:2010-02-05)
参考文献数
12

当科では,低侵襲性と機能温存を期待して,早期胃癌に対し,腹腔鏡下自律神経温存D1+β郭清術を行ってきた.本稿では,特にその迷走神経腹腔枝温存の手技と臨床評価について報告する.2001年5月から2008年6月までに当院で施行した腹腔鏡下幽門側胃切除術(デルタ吻合によるB-I再建)150例のうち追跡調査可能であった129例(温存群:84例,非温存群:45例)の患者アンケートおよび内視鏡検査により評価した.結果,非温存群では,便の性状が軟便傾向となる率が高く(20.5%対44.4%),胃内容こみ上げも有意差を認めた(17.9%対33.3%).内視鏡検査所見では,胆汁逆流が非温存群で有意に高い結果(44.1%対62.2%)となった.今回の検討では,両群間で郭清程度,病期といった背景が異なるものの,迷走神経腹腔枝の温存によって,下痢,逆流症状といった,術後後遺症が軽減される可能性があると考えている.
著者
石井 亘 藤井 宏二 飯塚 亮二 下間 正隆 泉 浩 竹中 温
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.2969-2973, 2007

症例は72歳, 女性. 左乳房のしこりを自覚. 初診時, 左乳房D領域にしこりを1個, 同側腋窩リンパ節腫大を認めた. CT上, 腫瘍本体の長径は34mm, 乳頭腫瘍間距離は30mmであった. 同側腋窩リンパ節の長径は, 25mmであった. informed-consentを行った結果, 経口抗癌剤併用療法を術前に3コース行い, CT上の腫瘍は長径8mmと著名な縮小を認め温存手術を可能にしえた. 以前より当院では, 乳癌患者の経口併用抗癌剤として, DMpC療法 (Doxifluridine+Cyclophosphamide+Medroxyprogesterone acetate) を行ってきた. TS-1がこれまでの経口フッ化ピリミジン系抗癌剤と比較して抗腫瘍効果が高く, 外来治療が可能であるため, DoxifluridineをTS-1に置き換えることによってより高い治療効果が期待される. 現在われわれは, 進行・再発乳癌に対する経口併用化学療法 (TS-1+Cyclophosphamide+Medroxyprogesterone acetate) の第I/II相臨床試験を進行中である.
著者
江本 慎 蒲池 浩文 田原 宗徳 神山 俊哉 松下 通明 西田 睦 藤堂 省
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1589-1595, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
18

背景:胆嚢の隆起性病変はしばしば診断に難渋する.今回われわれは胆嚢腺筋症(adenomyomatosis:ADM)に合併した胆嚢隆起性病変の質的診断に造影超音波検査が有効であった症例を経験したので報告する.症例:58歳,男性.2009年2月,職場の健診で腹部超音波にて胆嚢腫瘍を指摘され当科紹介となった.血液検査ではCEAが8.3ng/mlと上昇していた.体外式ultrasonography(US)では乳頭状隆起性病変を指摘でき,肝床部浸潤を疑う所見であったが,CT,MRIでは隆起性病変の良悪性の鑑別は困難であった.Positron emission CT(PET-CT)では隆起性病変に異常集積を認めなかった.腹部造影超音波検査では乳頭状隆起性病変に強くdiffuseな造影効果を認め,ADMに合併した胆嚢癌と考えられた.悪性を否定できず,同年3月に開腹拡大胆嚢切除術を施行した.肉眼所見では分節型ADMと乳頭状の胆嚢癌を認めた.病理診断ではtub1>pap. s(-),ss,pHinf0,pBilf0,pPV0,pA0,pN0,pBM0,pHM0,pEM0,int,INFβ,pn0,ly1,v0,pT2,pN0,fStageIIであった.結語:胆嚢の隆起性病変の診断に造影超音波検査は有用な検査となりうる.治療に際し検査所見から総合的に判断することが重要と考えられる.
著者
窪田 公一 田中 知博 纐纈 真一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1462-1466, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アナフィラクトイド紫斑は,IgA抗体優位の免疫複合体の沈着が小血管に証明される血管炎で,主に小児の疾患である.成人の発症は少ないがときに重篤な腎障害をきたす.症例は75歳の女性.食道癌術後に腸閉塞手術を経て創部MRSA感染症を合併し,2日後に腹痛,発熱が出現した.創部処置にて腹痛,発熱は治まったが下腿に紫斑が出現した.臨床所見と免疫血清検査によりアナフィラクトイド紫斑と診断した.安静と止血剤で紫斑は一時改善したが,その後,再燃して紫斑病性腎炎からネフローゼ症候群を呈した.ステロイドによるパルス療法と内服の後療法を行い病態は安定した.成人でのアナフィラクトイド紫斑の発症はdermadromeとしての報告は散見する.しかし術後発症の報告はあまりみかけず,自験例は興味深い症例と思われた.発症誘因は悪性疾患や手術侵襲を背景とした全身状態下における創部MRSA感染症と考えられた.

1 0 0 0 OA 口演:19日-02

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S521-S550, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 示説:20日-01

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S851-S880, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 口演:21日-01

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S661-S690, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 招請講演

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S270-S276, 2009 (Released:2010-11-02)

1 0 0 0 OA 口演:21日-02

出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.Supplement, pp.S691-S720, 2009 (Released:2010-11-02)
著者
高橋 克行 森田 裕人 土用下 和之 丸野 要 宮島 伸宜 酒井 滋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.90-93, 2001-01-25 (Released:2009-08-24)
参考文献数
15

われわれは術前CODE療法,放射線療法および温熱療法にて切除しえた正岡分類IVb期の浸潤型胸腺腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は33歳,女性.右前胸部腫瘤を主訴に来院,精査にて浸潤型胸腺腫,肺転移,縦隔臓器浸潤を伴う正岡分類IVb期の診断にて入院,生検にてthymoma, mixed cellular typeと診断された.術前にCODE療法,放射線療法および温熱療法を施行したところ腫瘍は著明に縮小し,拡大胸腺胸腺腫摘出術を施行.腫瘍は大部分が硝子化していた.
著者
窪田 智行 長坂 徹郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.14-18, 2013 (Released:2013-07-25)
参考文献数
12

乳腺単発で発症した神経鞘腫の極めて稀な症例を経験したので報告する.症例は62歳,女性.現病歴は,平成21年2月右乳頭部のしこりと痛みで受診.右乳房E領域に30mmの軽度圧痛を伴う腫瘤様硬結を認め,超音波検査にて右乳頭下に30mmの境界明瞭な腫瘤あり,外側に乳管内進展を思わす,境界明瞭,内部均一な索状影を認めた.マンモグラフィは所見なし.細胞診施行するも,陰性(裸核状細胞が散在する背景に異型の少ない上皮細胞が少量見られる)の結果であり,乳管内乳頭腫を考え経過観察.平成21年8月,US径45×25mmと増大.平成22年2月に再び細胞診施行するも陰性.切除術を希望されたため平成23年4月手術となった.手術は,乳房が小さく病変が乳頭下より乳房外側に広く分布,患者が乳房全摘を希望されたことより,単純乳房切除術を施行.腫瘤割面は白色均一で,病理所見は神経鞘腫.腫瘍の主体は乳頭下の皮下に存在していた.
著者
山口 智之 片岡 直己 冨田 雅史 坂本 一喜 新保 雅也 牧本 伸一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.1722-1726, 2012 (Released:2013-01-25)
参考文献数
11

症例は55歳,女性.慢性関節リウマチに対しインフリキシマブの投与を受けていた.全身倦怠感と採血上の貧血の進行を認め,下部消化管内視鏡検査を受けたところ,回腸末端の潰瘍性病変を認め,生検の結果腸結核の診断となった.胸部CT検査では全肺野に小粒状陰影を認め粟粒結核と診断され,喀痰TB-PCR陽性,塗末で抗酸菌陽性であり,腸結核,粟粒結核の診断となり結核専門病院へ紹介入院となった.このころから腹痛と頻回の下痢を認めていた.結核専門病院を退院後,腹痛が増強したため受診し,CT検査上回盲部の狭窄像と回腸直腸瘻を認めたため外科紹介となった.回盲部切除術と直腸瘻孔部の縫合閉鎖を行った.術後は正常便となり特に合併症なく17日目に退院となった.インフリキシマブが結核発症の危険因子であるのは周知の事実であるが,腸瘻を形成する症例は極めて稀であるので文献的考察を加え報告する.
著者
田村 淳 北口 和彦 崎久保 守人 上村 良 大江 秀明 吉川 明 石上 俊一 馬場 信雄 小川 博暉 坂梨 四郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1565-1572, 2008 (Released:2009-01-06)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

当院外科入院患者において,腸炎症状を発症した症例に偽膜性腸炎またはMRSA腸炎を疑ってバンコマイシンの経口投与を行ったのでその投与状況と効果について検討した.2001年1月から2005年4月までの外科入院患者4867例のうちバンコマイシンの経口投与を受けた症例は41例で,約9割が手術症例であった.その内訳はCD抗原陽性で偽膜性腸炎と診断された症例が10例,便培養検査にてMRSA腸炎と診断された症例が10例,これらを疑ってバンコマイシンを投与したが検査結果により否定された症例が21例で,臨床症状からの正診率は49%であった.治療により全例において症状は軽快し,腸炎による死亡例は認められなかった.腸炎発症前に投与された抗菌薬をセフェム系とカルバペネム系に分けて検討すると,後者の方が腸炎発症リスクが高いと考えられた.手術部位別の比較では,MRSA腸炎は上部消化管手術後に多く発症する傾向がみられた.バンコマイシンはこれらの腸炎の標準的治療薬であるが,腸内細菌叢を攪乱することによりVRE等の新たな耐性菌感染症の発症リスクとなるため,適正な投与基準を設ける必要があると思われる.
著者
椎木 滋雄
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.3040-3043, 2003-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

症例は52歳,女性.乳房温存療法施行後タモキシフェンの投与を受けている.投与8カ月を経過した時点で,発熱,咳嗽を主訴に来院した.胸部X線写真, CTでは左肺上,中葉にconsolidationを認め, BOOPと診断した.プレドニゾロンの内服により症状は軽快し,胸部陰影は消失した.この時点では,薬剤が原因かどうか特定できなかったため,タモキシフェンを再開したところ,今度は右肺上葉にすりガラス様陰影の出現を認めた.上記経過により,自験例はタモキシフェンによる薬剤性肺炎と診断された.
著者
後町 武志 石田 祐一 高橋 直人 三森 教雄 柏木 秀幸 矢永 勝彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.696-701, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

症例は64歳,女性.進行胃癌に対する胃全摘術+脾摘術施行後S-1を内服中で再発徴候は認めていなかった.術後2年5カ月目に発熱,下痢,意識障害にて緊急入院.精査にてインフルエンザ桿菌性髄膜炎・菌血症を発症しているoverwhelming postsplenectomy infection(OPSI)と診断した.抗菌剤,ステロイドによる治療で軽快し第50病日に退院した.OPSIは脾摘後に敗血症,髄膜炎などで突然発症する重症感染症で,発症すると高率に死亡することが知られている.予防として適切な予防的抗菌薬投与,患者教育,ワクチン接種が重要とされるが,脾摘後長期間経過後に発症することもあり,脾摘後患者では常にOPSIを念頭におく必要がある.今回われわれは胃癌に対する脾摘術後化学療法中に発症したインフルエンザ桿菌によるOPSIの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
千須和 寿直 田内 克典 大森 敏弘 森 周介 岸本 浩史 小池 秀夫 樋口 佳代子 宮澤 正久
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2462-2467, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

目的:急性虫垂炎の診断におけるCTを重視したプロトコールの正確性と虫垂径の測定の有用性の評価.対象と方法:2002年1月から2004年6月の間に急性虫垂炎と診断した連続した239人を検討した.CTでの診断基準は6mm以上の虫垂径または2次性の炎症変化とした.病理学的な診断基準は筋層以上の炎症細胞浸潤とした.結果:239人のうち235人がCTを受けていた.222人が虫垂切除術を受け,205人が病理学的に急性虫垂炎と診断された.CTで虫垂径が6mm以上あった200人中193人が病理学的に急性虫垂炎と診断された.手術症例の陽性的中率は92.3%(205/222)で,CTで虫垂径が6mm以上あった手術症例の陽性的中率は96.5%(193/200)であった.また保存的治療症例の35.3%(6/17)が再発し,10mm以上で再発率が50%(5/10)と高かった.結論:CTは急性虫垂炎の診断に有用である.
著者
碇 直樹 松山 悟 下西 智徳 那須 賢司 大田 準二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1095-1098, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は62歳,男性.2007年1月27日(土)心窩部痛,右下腹部痛を主訴に夜間外来を受診した.30年前虫垂炎の診断で開腹されたがドレナージのみで治療され未切除だった.血液検査で炎症所見を認め,US施行されたが診断は困難であったため,CTを施行し当直医は急性腸炎と診断し外来で抗菌薬加療を開始した.翌日,圧痛を右季肋部に認めた.翌々日,症状及び炎症所見は改善傾向であったが,放射線科医によるCT再読影で,盲腸の頭側偏位と腫大した虫垂,糞石を認め,移動盲腸を伴う急性虫垂炎と診断された.虫垂根部の処理を考え右上腹部傍腹直筋切開で開腹すると盲腸・上行結腸周囲は右側腹部,右上腹部で強固に癒着しており,これを剥離し盲腸壁の一部を含め虫垂を切除した.移動盲腸は稀ではなく,急性腹症の診断においては念頭に置く必要がある.今回,CTで移動盲腸に伴う急性虫垂炎と診断し,適切な皮膚切開での病変切除が可能であった.