著者
藤居 勇貴 蔵谷 勇樹 下國 達志 中川 隆公 佐々木 文章 中西 勝也
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.932-937, 2018 (Released:2018-10-31)
参考文献数
26
被引用文献数
2

症例は83歳の男性で,発熱と腹部違和感を主訴に来院した.造影CT検査で,右腹腔内に脂肪濃度を呈する13cm大の腫瘤性病変,および周囲脂肪濃度の上昇を認めた.大網原発脂肪肉腫や大網捻転の可能性が考えられ,準緊急的に手術の方針となった.手術は大網腫瘍摘出,腹壁・回盲部合併切除術を行った.術後は創離開を生じたが保存的治療により改善し,術後47日目に退院となった.病理所見は大網原発の高分化型脂肪肉腫であった.脂肪肉腫は大腿,臀部,後腹膜に発生することが多く,大網原発のものは極めて稀である.脂肪肉腫は高分化型・粘液型・円形細胞型・多形型・脱分化型に分けられ,高分化型は比較的予後が良いとされる.しかし,腹腔内発症の脂肪肉腫は,腫瘍の完全切除が難しい,十分量の放射線照射ができないなどの理由により,他部位発症のものより予後不良である.本症例では拡大腫瘍切除が奏効し,11カ月間の無再発生存が得られた.
著者
清水 忠博 清水 忠治 清水 晶子 中澤 功
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.2549-2553, 2006-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 7

乳腺腫瘤を形成する肉芽腫性乳腺炎(granulomatous mastitis)は稀な疾患で,癌との鑑別が問題となることがある.今回われわれは画像診断上乳癌が疑われ,治療経過中結節性紅斑を併発し副腎皮質ホルモン療法が著効した肉芽腫性乳腺炎の1例を経験したので報告する.症例: 41歳,女性.既往歴:十二指腸潰瘍.鬱病.現病歴: 2002年8月20日より右乳房に張り感,圧痛を伴う腫瘤を自覚し8月22日当院受診.現症:右C領域に大きさ38×26mmの軽度圧痛を伴う弾性硬な腫瘤を認めた.超音波検査:右乳腺CE領域に一部境界不明瞭,不整形,内部エコー低な腫瘤を認めた. MMG:局所的非対称陰影(カテゴリー3)と診断. CT:右乳房CEに36×26mmの大きさで早期より造影効果を示し,辺縁に棘状構造を伴う悪性を否定できない腫瘤を認めた.経過:初診時乳腺穿刺吸引細胞診はClass III, 7日後圧痛増悪時はClass IIであった.画像診断上癌も否定できないため,確定診断の目的で生検施行.病理組織診断は肉芽腫性乳腺炎であった.また同組織を用いて行った細菌検査では,一般細菌,抗酸菌ともに陰性であった.抗生剤(CFDN),消炎剤の投与を行うも生検創および腫瘤の改善はみられなかった. 1カ月後両下肢に熱感,紅斑を伴う皮下結節が多発し結節性紅斑と診断.プレドニゾロン10mg/日より開始した.結節性紅斑は速やかに消失し,肉芽腫性乳腺炎も徐々に縮小した.
著者
岩本 明美 岸 清志 竹本 大樹 西江 浩 前田 迪郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.2791-2794, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

症例は75歳,男性.StageIIIa直腸癌と診断され,低位前方切除術を施行した.24病日に術後補助化学療法としてUFT/ユーゼルの内服を開始した.口内炎(Grade3)のため7日目に内服を中止.骨髄抑制が増悪し11日目に入院となった.汎血球減少が急速に増悪し,連日G-CSFと血小板輸血,抗生剤投与をおこなった.22日目より増加に転じ,36日目に退院となった.DPD活性は13mol/min/mg proteinと著しい低値でありDPD低活性と診断した.
著者
木下 博之 岩本 博光 馬野 泰一 椿原 秀明 坂田 好史 森 一成
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.1020-1024, 2015 (Released:2015-11-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2

症例は51歳の男性.腹膜播種を伴う高度進行胃癌に対してXP (capecitabin/CDDP)療法を6コース施行した後に胃全摘,2群リンパ節郭清術を施行した.術後も2コースを追加したところ,Grade 4の汎血球減少と頻回の下痢を認め,大腸内視鏡検査と血液検査からサイトメガロウイルス(以下CMV)腸炎と診断した.その後,ガンシクロビルの投与で腸炎は著明に改善した.なお,末梢血単核球中のdihydropyrimidine dehydrogenase(以下DPD)蛋白量は21.5U/mg proteinと基準値(33.6~183.6U/mg protein)に比して低値を示し,DPDの活性低値により重篤な副作用が発症したものと判断した.DPDが欠損または活性低下を示す患者の存在と日和見感染症としてのCMV腸炎の発症にも留意することが肝要であると考える.
著者
三竹 泰弘 平松 和洋 加藤 岳人 柴田 佳久 吉原 基 青葉 太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2247-2251, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

症例は78歳の女性で横行結腸癌イレウスに対し,横行結腸切除術を施行した.病理診断は,中分化腺癌,SE(T4),ly1,v1,N0(0/7),H0,P0,M0,Stage IIであった.再発高リスク群であり,術後補助化学療法としてカペシタビンの投与を開始した.投与開始後,発熱性好中球減少症(Grade2),下痢(Grade3),口内炎(Grade3)を発症し入院となった.抗菌薬とG-CSF製剤の投与で発熱性好中球減少症は改善したが,腸炎が重篤化し敗血症性ショックとなった.末消血単核球でdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)蛋白量を測定すると11.8U/mg proteinであり,DPD活性低下症と診断した.
著者
細田 充主 高橋 將人 高橋 弘昌 藤堂 省
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.645-649, 2009 (Released:2009-09-05)
参考文献数
11

乳房超音波エラストグラフィは非侵襲的診断方法として徐々に普及が進んでいるが,その診断的位置づけは未だ明らかにされていない.2006年11月から2007年11月に当科にてエラストグラフィを施行した72乳腺腫瘤(良性31腫瘤,悪性41腫瘤)を対象にその診断的意義を検討した.機器は日立メディコ製のEUB-7500を使用し,判定にはTsukuba elastography scoreを用いた.平均スコアは,良性腫瘤1.8±0.9,悪性腫瘤3.7±1.3(p
著者
黄 泰平 藤川 正博 安政 啓吾 田中 恒行 広田 将司 西田 幸弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.3240-3244, 2009
被引用文献数
3

正中切開法は通常は臍をよけて切開されている.一方,欧米では臍に切開を加えても合併症に差はなく,むしろ美容上よいと報告されている.最近,臍を利用した腹腔鏡手術,豊胸術などの報告を認める.2007年2月より当科では腹腔鏡手術のみならず正中切開は臍に切開を加えてきた(臍切開法).手技の要点は,臍の最深部の直上および直下の白線に吸収糸をかけて臍がずれないように縫合閉腹する.臍の上,下の皮膚にはステープラーをかけるが,臍の皮膚は縫合しない.特有の合併症もなく,切開創が直線的であり,皮膚切開線が短縮でき,美容上よい.白線が狭い下腹部でも臍部から正中を容易に同定できる.結語:臍をよけて切るという慣習的な考えを捨て,臍切開法は一般的に行われるべき標準手技であると考える.
著者
古賀 裕 村上 光彦 高松 祐治 柏木 孝仁
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.2941-2944, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

破傷風は,適切な治療を迅速に開始しないと死にいたる感染症である.症例1は82歳,男性で開口障害のため前医を受診し,けいれん発作を発症し当院に紹介受診となった.右下腿に汚染創を認め,破傷風として治療を開始した.人工呼吸管理を2週間行い,入院35日目に軽快退院となった.症例2は78歳,男性で咽頭痛,嚥下困難のため当院受診となった.外傷はなかったが,呼吸困難とけいれん発作を認めたため破傷風として治療を開始した.人工呼吸管理を5週間行い,入院60日目に軽快退院となった.嚥下困難や項部硬直のある患者は破傷風も鑑別診断として考慮すべきである.DPTワクチン接種による基礎免疫獲得は破傷風予防に有効であるが,追加接種をしないと20年で効果は減弱する.基礎免疫のない症例の急性期の予防には,トキソイドとともに免疫グロブリン投与が勧められ,さらに2回のトキソイド追加投与で基礎免疫を獲得することが重要である.
著者
飯田 豊
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.617-621, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
16

当科で経験したバセドウ病手術症例124例の手術成績を術式別に検討した.手術適応は,抗甲状腺薬治療に対する抵抗性が52%,抗甲状腺薬の副作用が33%,眼症合併が8%,腫瘤性病変合併が6%,患者の希望が1%であった.術式の内訳は亜全摘(ST)38例(30.6%),超亜全摘(SST)42例(33.9%),全摘(TT)44例(35.5%)であった.ST群,SST群,TT群の甲状腺摘出量(平均値)は,それぞれ109.4g,80.5g,88.9gであった.ST群,SST群,TT群間で手術時間,術後合併症(反回神経麻痺,術後出血,テタニー)の発生率に有意差を認めなかった.再発率はST群が10.5%,SST群4.8%であったが,有意差を認めなかった.TTの手術成績はST,SSTと比較して遜色がなかった.バセドウ病手術の基本術式として,再発の心配が全くないTTが妥当であると思われた.
著者
坪井 光弘 畠山 茂毅 竹原 雄介 津田 洋 澤田 成彦 佐尾山 信夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.2219-2222, 2007
被引用文献数
1

患者は58歳, 男性. 自宅アパート3階の窓より転落し救急搬送された. 胸部単純写真および胸部CT検査で左多発肋骨骨折, 左肺の透過性低下および左横隔膜の挙上を認めた. 血液検査上transaminaseおよびamylaseの上昇を認めたが, 腹部に身体的異常所見は認めなかった. 腹部CT検査でも異常所見を認めなかった. 入院後血液検査およびCT検査による経過観察で腹腔内臓器損傷は否定できたため, 外傷性左横隔膜ヘルニアの診断で受傷後第3病日に経胸的に手術を施行した. 開胸したところ, 横隔膜の断裂と腹腔内臓器脱出に加え, 心嚢の破裂を認めた. 腹腔内臓器を還納し横隔膜を縫合閉鎖した. 術後特に合併症なく患者は術後23病日に退院した. 外傷性横隔膜損傷は他臓器損傷を合併していることが多く, 合併損傷も考慮し有効な手術経路を選択することが重要と思われた.
著者
森 俊治 長谷川 洋 小木曽 清二 坂本 英至 伊神 剛 太平 周作 服部 弘太郎 水野 隆史 杉本 昌之 深見 保之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.1239-1243, 2002-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

症例は79歳の男性で,パーキンソン病があり,抗パーキンソン病薬を内服していた.日常生活は介助により起立が可能だが,ほとんど臥床の状態であった.主訴は心窩部痛,腹部膨満で近医よりイレウスの診断で紹介となった.腹部に巨大なガス像を認め, S状結腸軸捻転症を疑い緊急内視鏡検査を行ったが,上行結腸の肝彎曲部まで正常であった.腸閉塞の診断で経過観察していたが,改善が見られず手術を行ったところ,盲腸は反時計方向に180度回転し,さらに頭側に180度屈曲して盲腸が横行結腸と癒着して著明に拡張していたため,盲腸軸捻転症と診断した.自験例はその誘因としてパーキンソン病と長期臥床による大腸のatonyが深く関与していると考えられた.
著者
西垣 大志 金城 達也 伊禮 靖苗 西巻 正
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1855-1858, 2017

63歳,男性.前医にてS状結腸癌穿孔,腹膜播種の診断でS状結腸切除,小腸部分切除,横行結腸人工肛門造設術を施行.化学療法目的に当院紹介となり,外来化学療法中であった.傍ストマヘルニアを伴うストマ脱を認め,腹痛を繰り返すようになったため,ストマ修復およびヘルニア修復術を施行した.<BR>術前まで血清CEA値は504ng/mlと高値を示していたが,術後に10ng/mlと著明な低下を認めた.また,精査では約4.5cm大の播種巣1箇所のみであったため,ストマ脱手術の3カ月後に播種巣切除術を施行した.術後再発なく経過している.<BR>本症例のCEA高値の機序はストマ脱腸炎による可能性が示唆された.<BR>今回,腹膜播種を伴う進行下行結腸癌術後に発症した傍ストマヘルニアおよびストマ脱に対する手術後,著明なCEA値の低下を認めたため,播種に対する根治術が可能であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.
著者
代市 拓也 奥野 厚志 若林 康夫 越川 尚男
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.707-710, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

症例は78歳,男性.虫垂腫瘍の診断で,術中所見から悪性を疑い回盲部切除術(D3)を施行した.切除標本では虫垂は横径6 cmと腫大し内腔に白色ゼリー状物質が充満していた.病理検査では中等度の核異型を示す高円柱状の細胞が単層性および小乳頭状に増殖し,一部粘液が漿膜にまで及んでおり,WHO分類に基づきLow-grade appendiceal mucinous neoplasm (LAMN)と診断された.LAMNは組織学的には良性と思われても腹膜偽粘液腫をきたし得るなど臨床的に悪性の性格を示すため,WHO分類では悪性腫瘍に分類され,大腸癌取扱い規約第8版においても低異型度虫垂粘液性腫瘍として新たに分類された.LAMNの治療法に関しては明確なガイドラインは存在しないが,潜在的に悪性であることを考慮すると,十分なマージンを確保した外科的切除を行いつつ,術後の厳重な経過観察が必要であると思われた.
著者
田中 貴子 有上 貴明 石神 純也 上之園 芳一 大久保 啓史 夏越 祥次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1780-1784, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
9

症例は50歳,女性.胃十二指腸潰瘍に対する保存的治療の既往があり,上部消化管内視鏡検査で胃粘膜下腫瘍を指摘された.腹部造影CT検査では転移性肝腫瘍を指摘された.肝転移を伴う胃原発ガストリノーマの診断となり,幽門側胃切除術(D2リンパ節郭清,肝外側区域切除術)を施行した.手術直後,ガストリン値は著明に低下したが,術後4カ月から再上昇を認め,肝転移再発の診断となり,分子標的薬治療を施行した.ガストリノーマはガストリノーマトライアングル内に多く発生することが知られているが,異所性ガストリノーマの報告は少なく,胃原発ガストリノーマの報告は極めて稀である.肝転移を伴うガストリノーマの予後は極めて悪く,外科切除以外にも分子標的薬あるいは肝転移巣に対する局所療法として選択的肝動脈塞栓術などが有用という報告もある.当科で経験した肝転移を伴う胃原発ガストリノーマについて,文献的考察を加えて報告する.
著者
岩出 珠幾 住田 亙 渡邉 芳夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1374-1377, 2011 (Released:2011-12-25)
参考文献数
16

中心静脈カテーテル:central venous catheter(CVC)を留置されている患者において,カテーテル関連血流感染症:Catheter-related blood stream infection(CRBSI)で,真菌感染を認めた場合にCVCの抜去を余儀なくされる.今回われわれはエタノールロック療法:Ethanol-lock therapy(ELT)を用いてCVCを抜去せず真菌感染がコントロールできた症例を経験した.患者は19歳,女性.生後1カ月時に慢性特発性偽性腸閉塞症と診断され,CVCでの高カロリー輸液を必要とし,これまでにMRSAやP. aeruginosaによるCRBSIを頻回に発症していた.某年8月に発熱で入院,CVCからの逆流血培養でCandida parapsilosis(C. parapsilosis)検出した.ELTおよびfluconazole(FLCZ)の経静脈投与にて治療し,CVCを抜去することなく感染コントロール可能であった.CRBSIに対するELTの有効性が海外および本邦で報告されており,それらの文献的考察も含めて報告する.
著者
庭野 元孝 青木 孝文 大石 達郎 笹野 満
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.3048-3051, 2002-12-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

症例は64歳の女性. 13年前から脳梗塞後遺症の右半身完全麻痺と左半身不全麻痺を認め, 5年前より18Fr尿道フォーリーカテーテルを常時留置されていた.平成13年9月中旬より近医での膀胱洗浄時に糞尿,気尿を認め本院へ転院,膀胱鏡,膀胱造影により尿道カテーテルによる膀胱S状結腸瘻と診断された.手術は腹腔鏡下に瘻孔を含めてS状結腸を部分切除してハルトマン式で単孔式人工肛門を造設した.膀胱壁の瘻孔は硬く,腹腔鏡下の縫合が不十分なため6cmの下腹部正中切開を置き直視下に縫合閉鎖した.膀胱S状結腸瘻の報告は比較的稀で,その大多数はクローン病や憩室炎などの炎症に由来するものであるが今回,われわれは極めて稀な留置カテーテルによる膀胱S状結腸瘻を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.
著者
岩中 督
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.1691-1692, 2017 (Released:2018-01-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
林 憲吾 羽田 匡宏 大島 正寛 加藤 洋介 小竹 優範 原 拓央
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.532-535, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は7歳,女児.前日より増悪する腹痛と発熱を主訴に当院小児科を受診し,急性虫垂炎の診断で当科に紹介となった.腹部CTでは,腫大した虫垂内に歯牙様の形態をした石灰化を伴う構造物を認め,歯牙迷入による急性虫垂炎を疑い同日単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.虫垂に穿孔はなく蜂窩織炎性虫垂炎の所見であり,型通りの虫垂切除術を施行した.摘出標本を開放すると9mm程度の歯牙を内部に認め,病理学的には壊疽性虫垂炎の所見であった.術後経過は問題なく,術後4日目で退院となった.異物による急性虫垂炎は比較的稀であり,その頻度は0.2~0.75%と報告されている.異物としては魚骨や義歯,種子などが多く,乳歯が誘因となった報告は検索した範囲では認めなかった.義歯や歯牙による異物性虫垂炎は穿孔しやすいという報告もあり,本症のように誤飲した歯牙が原因と思われる小児虫垂炎症例は速やかな手術が望ましいと考えられた.
著者
梅邑 晃 遠藤 義洋 鈴木 雄 渋谷 俊介 渋谷 香織 梅邑 明子 谷村 武宏 北村 道彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.962-967, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
15
被引用文献数
3

目的:切除不能悪性腫瘍に伴う上部消化管狭窄に対する胃空腸バイパス手術の直接成績や予後に関する報告は少ない.当科におけるバイパス手術症例について検討したので報告する.方法:1999年1月から2007年12月までにバイパス手術を施行した33症例について,背景因子,術後経口摂取開始日および経口摂取期間,術後生存期間,術後生存期間に影響を及ぼす因子について検討を行った.結果:平均年齢は69歳,男女比は19:14,疾患は胃癌が16例で最多であった.平均術後経口摂取開始日は7.2病日,経口摂取期間中央値は127日間,32例で術後5分粥以上を摂取できた.退院率は93.9%,50%生存期間は149日であった.術後生存期間は,術前全身合併症,貧血,低栄養,術後化学療法未施行の群で有意に低下した.結語:バイパス手術は,術後早期の経口摂取が可能で,切除不能悪性腫瘍患者のQOLの改善に大きく貢献する.ただし,全身合併症,貧血や低栄養などがある場合には適応を慎重に決定する必要がある.
著者
東園 和哉 三宅 大 矢野 秀朗 橋本 政典
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.2052-2056, 2015

症例は59歳,女性,腹部腫瘤を主訴に当院を受診した.造影CTでは,左腎臓を内包し,内部は脂肪を示唆する低吸収域を主体とし,一部に不均一な高吸収を示す充実性腫瘤を認めた.画像所見から,後腹膜脱分化型脂肪肉腫と診断した.術中所見にて膵・横行結腸に直接浸潤が疑われ,腫瘍切除とともに左腎摘出,膵体尾部脾合併切除,および横行結腸部分切除術を施行した.摘出標本は3,500g,病理診断で脱分化型脂肪肉腫と診断された.大動脈剥離面で断端陽性であったが,肉眼的に切除しえたと考え経過観察とした.術後1年目の造影CTで右肺野に結節影を認め,転移が疑われたため右上葉区域切除を施行した.術後病理で脱分化型脂肪肉腫の肺転移と診断された.その後,再発・遠隔転移など新出病変を認めていない.術後単発肺転移再発をきたしたが切除し,局所再発および肺転移再再発なく経過している脱分化型脂肪肉腫は稀であることから,文献的考察を加えて報告する.