著者
細野 芳樹 古田 智彦 須原 貴志 松尾 篤 桑原 生秀 平岡 敬正
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.165-168, 2005-01-25 (Released:2009-05-26)
参考文献数
8

症例は28歳,男性.以前より胆石を指摘されていたが無症状の為放置していた.職場の検便検査でサルモネラ菌の排菌を指摘され,抗菌薬にて除菌治療を行った.しかし,その後も同様に除菌治療を行ってもサルモネラ菌の排菌を繰り返し,再び抗菌薬治療を行ってもサルモネラ菌を便中に排菌する可能性が高いと考えられた.原因の一つとして胆石が疑われた為,胆嚢摘出術を行った.術後の細菌学的検査では,破砕胆石より便培養で検出されたものと同種のサルモネラ菌を検出した.術後経過良好にて術後第12病日に退院した.術後11カ月後に便培養を行ったがサルモネラ菌を検出しなかった.胆石や胆嚢奇形があるとサルモネラ菌無症候性長期保菌者になりやすいといわれている.胆石を有するサルモネラ菌長期保菌者は,原因の1つとして胆石症を疑い,積極的に胆嚢切除を考慮する必要があるものと思われた.
著者
前田 浩晶 森 啓太郎 革島 悟史 高野 義章 加藤 恭郎 若狹 朋子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.1032-1037, 2018 (Released:2018-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

症例は55歳,男性.繰り返す腸閉塞にて当院へ入院した.PET-CT検査を含む精査では悪性疾患を疑う所見に乏しく,腸閉塞の原因検索および根治術目的に腹腔鏡下に手術を施行した.手術では,回腸末端より約50cmの回腸にMeckel憩室様の突出腫瘤および腹膜結節を認め,Meckel憩室癌・腹膜播種と診断し,回腸部分切除術および腹膜腫瘤生検を施行した.病理組織検査では高~中分化腺癌を検出したが,明らかな迷入組織は認めなかった.術後は化学療法を施行するも,術後約1年4カ月で癌性腹膜炎を併発し死亡した.Meckel憩室癌は画像診断が困難であり,進行癌の状態で発見されることが多く予後不良である.今回,診断に苦慮し,腹腔鏡下に診断しえたMeckel憩室癌の1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
著者
小川 利久 辻 英一 林原 紀明 丹羽 隆善 多田 敬一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.2869-2873, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

頸部手術の際,胸管損傷により発生する乳糜瘻の頻度は1.0-2.5%と報告されており,低頻度ではあるが起こりうる.しかし,本邦における報告は極めて限られていて,詳細は不明である.われわれが行った380例の甲状腺癌手術,頸部リンパ節手術症例を対象に検討した.頸部郭清を伴う甲状腺乳頭癌手術症例は314例で,うち5例(1.6%)に,また頸部リンパ節生検や摘出術は66例あり,うち2例(3%)に術後乳糜瘻が発生した.いずれも左側の頸部郭清やリンパ節生検であった.乳糜胸水を認め胸腔ドレナージを要した症例は2症例であった.治療は,軽度な症例は脂肪食制限のみで治癒したが,一方で再開創・胸管結紮を行い治癒した症例は5例あった.近年,オクトレオタイドによる全身治療で治癒した2症例を経験した.オクトレオタイドは安全で有効な治療法と思われた.
著者
栃木 透 森 幹人 夏目 俊之 赤井 崇 林 秀樹 松原 久裕 大出 貴士
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.386-390, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
18

Glomus腫瘍は四肢末端の皮下や爪下に好発し,胃原発のGlomus腫瘍はまれである.症例は52歳,男性.平成22年8月,胃粘膜下腫瘍の診断にて当科紹介.入院後精査から前庭部大彎の大きさ25cmの胃carcinoidの診断となり手術施行.病理組織所見および免疫染色から胃原発のGlomus腫瘍の診断であった.現在,WHOによるGlomus腫瘍のCriteriaによれば,大きさ2cm以上の胃Glomus腫瘍は,転移性病巣を形成するリスクのある悪性病変と定義されている1)2).しかし,本邦報告例では転移再発例はなく,海外の報告例4例のみであった.胃Glomus腫瘍に関して若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
森松 克哉 山中 直樹 林 昌孝 亀岡 宣久 横畑 和紀
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.2086-2090, 2018 (Released:2019-04-30)
参考文献数
13

症例は68歳,女性.19歳時に他院で潰瘍性大腸炎(以下UCと略記)に対し結腸全摘術,回腸直腸吻合術を施行された.術後49年目に当院内科を受診した際,高度の貧血を指摘され精査加療目的に入院となった.貧血の原因は特発性赤芽球癆と診断され,免疫抑制剤の投与により改善したが,貧血の精査目的に施行した下部消化管内視鏡検査で回腸直腸吻合部近傍の回腸に腫瘍性病変を認めた.生検の結果,印環細胞癌の診断で,回腸部分切除術を施行した.切除標本では筋層までの浸潤を認め,リンパ節転移を1個認めた.以前はUCに関連した小腸癌の発生はないとされていたが,近年,頻度は少ないが長期罹患UC患者に発生した回腸癌が報告されている.大腸全摘術施行後の長期罹患UC患者に対しては回腸癌の発生に対し留意し,定期的に回腸嚢の観察を行う必要があると考えられた.
著者
山吉 隆友 下山 孝俊 山下 秀樹
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.2721-2725, 1999-10-25 (Released:2009-08-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

症例は56歳の男性で胃小彎の4型胃癌に対し胃全摘術を施行,腹腔動脈~脾動脈周囲リンパ節に転移があり可及的な郭清を行った.術後60日目に突然の大量吐血が出現し,腹腔動脈造影で脾動脈根部に仮性動脈瘤を認め,これが再建に用いた空腸係蹄に穿破したものと考えられた.再び吐血が生じたため緊急血管造影を施行,金属コイルを用いて塞栓を行い良好な経過が得られた.定期的なCTの観察では動脈瘤はほとんど指摘できなくなっている.上部消化管癌手術後に生じる仮性動脈瘤について本邦の文献を集計し,成因,治療を中心に考察した.
著者
安達 剛弘 赤尾 恵子 古川 克郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.855-859, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
15

症例は67歳,女性.2017年3月に胸腺腫に対して拡大胸腺摘出術が施行された.最終病理結果はtype AB胸腺腫であった.術後1年頃から気道感染症状を繰り返していたが2019年2月に肺炎を発症し低ガンマグロブリン血症が判明し,Good症候群と診断された.低ガンマグロブリン血症に対して免疫グロブリン投与とマクロライド維持療法が継続され,外来通院中である.Good症候群は胸腺腫に低ガンマグロブリン血症を合併した比較的稀な疾患である.明らかな病態は解明されておらず,繰り返す感染症により予後不良とされる.手術を含めた治療についてもその有効性は議論されており,症例の蓄積が必要と思われる.
著者
大川 尚臣 古田 斗志也 金川 泰一朗 小畑 卓司 野上 浩實
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.1041-1049, 2017 (Released:2017-11-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

症例1は63歳,男性.虚血性腸炎で入院加療中に排便困難のため,グリセリン浣腸(glycerin enema:以下GE)を施行した.直後から肛門痛と下血および血尿を認めた.肛門鏡にて歯状線近傍に裂傷と,腹部CTにて直腸周囲の脂肪織濃度上昇と遊離ガス像を認め,直腸穿孔と診断した.絶食と輸液・抗生剤投与を行い,血尿に対し強制利尿とハプトグロビンを投与した.腎不全には至らず,保存的に軽快した.症例2は78歳,男性.頸椎損傷で施設療養中,便秘に対しGEを施行した.粘血便が出現し,下部消化管内視鏡で直腸壁損傷を,腹部CTにて直腸壁肥厚,壁内気腫と直腸周囲遊離ガスを認め,直腸穿孔と診断した.血尿や溶血はなく,絶食と輸液・抗生剤投与のみで軽快した.GEの誤注入による直腸壁の損傷は急性腎不全や腹膜炎等の重篤な合併症をきたすことがある.今回,われわれはGEによる直腸穿孔の2例を経験したので考察を加え報告する.
著者
安岡 利恵 藤木 博 森田 修司 満尾 学 門澤 秀一 埴岡 啓介 門谷 洋一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.3011-3017, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は79歳,女性.両側乳腺浸潤性小葉癌で手術施行.術前検査時より腹部CT検査で,胃壁の肥厚と軽度の造影効果を認めていたが,上部内視鏡検査では異常所見は指摘されなかった.乳癌術後,腫瘍マーカーは上昇し,さらに腹部CT検査で胃壁肥厚が増強した.3回目の上部内視鏡検査で,乳癌の胃十二指腸転移と診断した.その後,Paclitaxelでの化学療法を行っていたが,幽門狭窄症状が出現したために,胃空腸バイパス術を施行した.バイパス術後11カ月経過したが,腹膜播種や閉塞性黄疸が出現し,全身状態は悪化傾向である.今回,上部内視鏡検査で診断に苦慮した乳癌の胃十二指腸転移の1例を経験したので報告をする.
著者
倉持 純一 五関 謹秀
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.3236-3238, 2000-12-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は53歳女性,上腹部痛および蕁麻疹を主訴として来院した.上部消化管内視鏡にて胃幽門洞前壁に2型進行癌を認めたが,アニサキス幼虫がその潰瘍底に迷入し周堤は浮腫状を呈していた.鉗子を用いアニサキス虫体を除去し,症状は改善した.後日胃癌に対し幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的にはアニサキスによる炎症細胞浸潤や肉芽腫性変化は認められず,漿膜面の変化もなかった.本症例はアニサキス幼虫が進行胃癌に迷入しておりまれな1例である.
著者
末久 弘 松田 英祐 坂尾 伸彦 宮本 章仁 藤澤 憲司 松野 剛 坂東 健次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.2214-2219, 2017 (Released:2018-04-30)
参考文献数
12

症例は55歳,女性.38度台の発熱,両側手・膝・足関節の疼痛・腫脹を主訴に当院を受診した.胸部CTにて左肺上葉に長径3.5cm大の充実性不整形腫瘤あり,PET検査では強いFDG集積(SUVmax=36.7)を認めた.肺門・縦隔リンパ節転移や遠隔転移を疑う所見は無く,少量の左胸水を伴っていた.四肢X線では,大腿骨や脛骨骨膜部に二重線を認め,大腿骨MRIでも骨幹部の骨膜下に高信号を呈していた.理学所見では,ばち指・趾も認めた.以上より,肺性肥大性骨関節症を合併した肺癌cT2aN0M0 stage IBを疑い,審査胸腔鏡後に開胸で左肺上葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した.術後経過は良好,関節痛は術後1日目から消失した.病理検査の結果,多形癌,pT2aN0M0,stage IBだった.肺性肥大性骨関節症は進行肺癌を合併することが多いが,肺病変の治療により関節炎の症状が劇的に改善することが期待できる.
著者
三野 和宏 田村 元 正司 裕隆 小丹枝 裕二 片山 知也 今 裕史
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.622-626, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

維持透析中に発症した乳癌の治療は,患側のvascular access,薬物療法という問題があるため慎重に行う必要がある.今回,維持透析中に発症した乳癌に対して治療を行った4症例の検討を行った.症例は50歳~75歳の女性で,1例は患側に内シャントがある症例であった.手術に関しては乳房は全摘と温存,腋窩リンパ節は郭清症例とセンチネル生検症例が含まれていた.手術時間は53分~143分で,出血量は全例少量であった.抗凝固剤は,術後初回のみメシル酸ナファモスタットを使用した.術後補助療法として全例に通常量のホルモン療法を行い,1例で通常量のtegafur/uracilを追加投与した.乳房温存症例に対しては通常量の放射線を照射した.術後1年1カ月~5年3カ月経過した時点で,いずれの症例も透析関連のトラブルはなく,無再発生存中である.
著者
西村 潤也 寺岡 均 北山 紀州 埜村 真也 野田 英児 西野 裕二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2836-2841, 2015 (Released:2016-05-31)
参考文献数
22
被引用文献数
3 4

症例は63歳の男性で,右鼠径ヘルニアに対して2013年8月に腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行した.同年10月より右鼠径部の膨隆を自覚したため外来受診し,CTにて創部に膿瘍形成を認め術後感染と診断した.保存的加療では軽快せず,同年11月に手術を施行した.鼠径部からのアプローチにて膿瘍腔を開放し,壊死組織の除去および洗浄を行ったが,膿瘍腔とメッシュは接しておらず,メッシュの摘出は行わなかった.術後,創部に留置したドレーンを用いて洗浄を継続するも軽快せず,2014年1月に腹腔鏡下でのメッシュ除去術を施行した.メッシュは周囲組織と強固に癒着しており摘出に難渋した.術後,創部感染は速やかに改善し,現在までヘルニアの再発も認めていない.今回われわれは,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後のメッシュ感染に対して,腹腔鏡下にメッシュ除去を行い根治しえた貴重な1例を経験した.
著者
稲田 健太郎 志田 大 松田 真輝 井上 暁 梅北 信孝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1488-1492, 2011 (Released:2011-12-25)
参考文献数
20

症例は63歳,男性.2010年7月に腹痛と嘔気を主訴に当院を受診した.腹部単純エックス線検査で大腸イレウスと判断,腹部造影CT検査でS状結腸に造影効果を伴う壁肥厚像およびその口側に2cm大の異物を認めた.種子嵌頓による大腸癌イレウスを疑い,緊急下部消化管内視鏡検査を行った.S状結腸に2型病変による全周性の狭窄を認め,経肛門的イレウス管を挿入して口側腸管を減圧した.入院6日後にリンパ節郭清を伴うS状結腸切除術を行った.切除標本では腫瘍口側に梅の種子が確認できた.総合診断SSN1H0P0M0,fstageIIIa.術後は合併症なく経過し,術後7病日で退院.植物種子は大きさや形状から通常イレウスの原因となりにくく,植物種子によるイレウスを疑った際は,器質的疾患,特に大腸イレウスに関しては大腸癌を念頭においた治療方針を検討する必要があると考えられた.
著者
野村 真治 桂 春作 久我 貴之 河野 和明 加藤 智栄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.570-574, 2003-03-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

2000年2月から2002年3月までに7例の上肢急性動脈閉塞症を経験した.年齢は61歳から91歳で平均77.3歳.男性4例,女性3例であった.全例に不整脈を認め,うち6例は心房細動で, 1例は洞不全症候群であった.症状は冷感6例,知覚異常1例,疼痛3例,脱力感2例であった.閉塞部位は鎖骨下動脈2例,腋窩動脈1例,上腕動脈2例,橈骨動脈2例で,右4例,左3例であった.全例にまず血栓溶解療法を施行し, 4例で改善を得た.他の3例で,経皮的血管形成術, Fogartyバルーンカテーテルによる血栓除去術,バイパス術をそれぞれ1例ずつ追加した.全例手指の機能障害なく改善した.本疾患への治療の第一選択として血栓除去術が頻用されているが,当科ではまず血栓溶解療法を施行し, 7例中4例で有効であり,第一選択の治療法となりうると考えた.
著者
杢谷 友香子 長谷川 順一 三方 彰喜 金 鏞国 川野 潔 根津 理一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.2379-2383, 2011 (Released:2012-03-25)
参考文献数
20

膵十二指腸動脈瘤は稀な疾患であるが,近年の画像診断の進歩とともに発見される機会が増加している.われわれは膵十二指腸動脈瘤に対し腹腔鏡下手術を施行し,良好な経過を得た症例を経験したので報告する.症例は67歳,男性.腎嚢胞および高血圧症にて内科通院中にスクリーニングCTを施行したところ十二指腸近傍に径30mm大の動脈瘤が発見された.3D-CT血管撮影像にて胃十二指腸動脈の末梢側に動脈瘤が確認され,膵十二指腸動脈領域に発生した真性動脈瘤と診断した.治療は低侵襲性と長期成績とを考慮して腹腔鏡下動脈瘤切除術を行った.周術期合併症は認めなかった.術後2年5カ月現在,腹部症状を認めることなく外来で経過観察中である.仮性動脈瘤や破裂例を除く膵十二指腸動脈瘤に対して腹腔鏡下動脈瘤切除術は,安全で効果的な治療法の一選択肢として考えられた.
著者
原 真也 澤田 成彦 松岡 永 畠山 茂毅 津田 洋 佐尾山 信夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.2141-2145, 2005-09-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
被引用文献数
5 4

症例は56歳の男性.統合失調症にて療養中であった. 2003年9月29日にサワラの骨を咽喉につまらせた. 10月1日より発熱を認め,抗生剤投与にて経過観察していたが改善せず10月6日当院に紹介された. CT上,頸部から縦隔内に及ぶ大きなair densityを認め,魚骨の食道穿孔による縦隔炎と診断し,同日緊急縦隔ドレナージを施行した.頸部横切開にてドレナージ術を試みたが,後縦隔下方にまで炎症が及んでおり右開胸を追加した.頸部と縦隔内にドレーンを計5本留置し,術後ドレーンからの持続洗浄を行い,第38病日に軽快退院した. 食道穿孔は保存的治療で対処できることもあるが,縦隔炎などの合併症を引き起こした場合,ほとんどの症例が緊急手術の適応とされる.また穿孔からの経過時間が短いほど治療成績は良いとされており,早期診断と的確な治療方針の決定が重要となる.
著者
大西 惠美 吉田 直裕 青柳 武史 爲廣 一仁 緒方 俊郎 谷口 雅彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.1041-1048, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

孤立性上腸間膜動脈解離は比較的まれな疾患であるが,近年CTの普及に伴い本疾患の報告は増加している.多くは保存的加療で良好な予後が得られるが,観血的治療を要する症例もあり時に致命的になることもある.しかし,本疾患の原因,分類,治療法について一定の見解は得られていない.2008年2月から2019年2月までに孤立性上腸間膜動脈解離と診断した20例の患者背景,症状,血液検査,治療法,転帰について後方的にまとめ,Sakamoto分類・Zerbib分類・Yun分類・Luan分類・Li分類により分類し,どの分類が治療方針の決定に有用か検討した.全例男性で平均年齢は56歳.18例は保存的加療,1例は血栓溶解,1例は血栓溶解をするも腸管虚血を認め腸管切除を行った.全例が再発なく生存.(観察期間中央値756日,四分位範囲:109-3,845)当院で経験した20例ではYun分類Type I~II bでは保存的加療が可能であり,Type IIIで観血的な治療が必要で,Yun分類が治療方針の決定に最も有用であった.
著者
中川 暢彦 阪井 満 村井 俊文 末岡 智 篠塚 高宏 藤田 恵三 露木 琢司 中島 広聖
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.113-117, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
14

症例は74歳の男性.深夜に急激に生じた腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部膨満を認め,上腹部に腹膜刺激症状を認めた.腹部造影CT検査では,横行結腸に著明な浮腫性肥厚と周囲脂肪識の濃度上昇を認めた.NOMIによる腸壊死を疑い,緊急手術を施行した.術中所見では,肝彎曲部からの横行結腸および間膜に著明な浮腫と発赤を認めたが,壊死や穿孔の所見は認めなかった.肉眼的に正常な回腸末端から横行結腸中央部までの右半結腸切除術を施行した.病理組織学的検査では静脈を主体にリンパ球浸潤を認め,一部では静脈閉塞も認めた.動脈には炎症所見を認めず,enterocolic lymphocytic phlebitis と診断した.術後経過は良好で術後第9病日に退院し,以降再発は認めていない.今回,稀なenterocolic lymphocytic phlebitis を経験したので報告する.