著者
檀 健二郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.160-162, 1990-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1
著者
冨安 志郎 橋口 順康
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.561-569, 2006 (Released:2006-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

がんが発生すると, がんの増大に伴う機械的刺激やがんが誘導した炎症細胞から放出される発痛物質により持続的な侵害刺激が発生する. やがて疼痛伝達系全体に感作が発生すると, 病巣から離れた皮膚の痛覚過敏, アロディニアなどの知覚異常, 立毛筋収縮や発汗などの交感神経刺激症状, 筋肉の収縮, 周囲の圧痛といったいわゆる関連痛が発生する. 内臓や骨などの深部体性組織に発生したがんでしばしばみられる現象で, 内臓や骨が侵害刺激を入力している脊髄レベルに同様に侵害刺激を入力している皮膚, 同脊髄レベルに遠心路核をもつ筋肉, 交感神経に症状が出現する. 痛みの部位に病巣がない場合は, 関連痛を念頭において異常のある皮膚, 筋肉のデルマトーム, マイオトームから責任脊髄レベルを同定し, そのレベルに侵害刺激を入力する内臓や骨の異常を検索することが病巣の早期発見につながる. また, 関連徴候として神経障害性疼痛様の知覚異常が出現することを知っておくことは鎮痛薬選択の意味から重要である.
著者
林 玲子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.331-336, 2012 (Released:2012-07-05)
参考文献数
23

分娩の痛みは個人差があるが,陣痛の刺激により母体の血圧上昇,過呼吸を生じるような場合は二次的に臍帯血管の収縮,子宮胎盤血流低下をきたし,さらには間接的に胎児への酸素供給低下などの影響を起こしうることがわかっている.よって硬膜外麻酔による無痛分娩は,母体の痛みを取り除くだけではなく胎児に起こりうる二次的な悪影響を防ぐことが可能である.母体への硬膜外麻酔が与える胎児・新生児への影響は直接的,間接的なものが考えられるが,臍帯血流の維持を念頭に硬膜外麻酔による合併症の早期発見がなされるような麻酔管理が行われていれば,麻酔の利点を最大限に胎児・新生児に還元することが可能である.
著者
天野 完
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.237-242, 2008 (Released:2008-04-16)
参考文献数
16

分娩時の不安感, 疼痛など過度のストレスによって, 過換気により酸素解離曲線は左方移動し, カテコールアミンの遊離などから子宮胎盤血流量は減少する. 胎児にとっては低酸素負荷となり, 特にハイリスク妊娠は無痛分娩の適応となる. 無痛分娩には母児にとって安全で, 十分な効果が得られ, 分娩予後や周産期予後に影響しない方法が望ましく, 硬膜外麻酔が第一選択の方法である. 低濃度局所麻酔薬とオピオイドを併用した持続硬膜外麻酔が主流となりつつあるが, PCEA (patient-controlled epidural analgesia) やCSEA (combined spinal-epidural analgesia) も行われている.
著者
坊垣 昌彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.232-237, 2017-03-15 (Released:2017-04-21)
参考文献数
2

東京大学医学部附属病院は2011年4月から総合周産期母子医療センターに指定されているが,産科からの要望により2013年4月に麻酔科専門医を配置するための講師ポストが新設され,これを契機に周産期医療に麻酔科がより積極的に関与することが求められるようになってきている.本稿では,筆者が周産期センターのポジションを得てからの約2年間で東大病院での周産期医療がどのように変化してきたかを振り返り,周産期センターに麻酔科医のポジションを得た意義について検討を加えた.他施設での周産期医療の安全性向上のために参考としていただければ幸いである.
著者
小田 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.523-533, 2010 (Released:2010-10-28)
参考文献数
22

長時間作用型局所麻酔薬による難治性の心毒性に対しては,有効な治療法がないとされてきた.脂肪乳剤がブピバカインによる心停止からの蘇生に有効であることが動物実験で示されて以来,臨床症例においてもその有用性が示されつつある.海外のガイドラインにおいては,“20%イントラリピッド1.5ml/kg bolus投与後,0.25ml/kg/minで持続投与”が治療法として推奨されている.局所麻酔薬中毒に対して使用した脂肪乳剤による副作用は報告されていないが,多量の向精神薬による意識障害,心停止に対して使用した症例で,呼吸器系合併症が生じたことが報告されており,その使用に際しては注意を要する.
著者
市田 蕗子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.674-683, 2014 (Released:2014-10-25)
参考文献数
28

小児循環器医学の診断技術の進歩や内科的・外科的治療により,重症の先天性心疾患でも生存率は飛躍的に向上した.一方で,精神神経発達の異常が予想を超えて高頻度であることが明らかになってきた.この発達の異常には,染色体異常や遺伝子異常などの患者固有の因子,心疾患に伴う脳循環の異常や低酸素,あるいは手術や内科的治療に伴う危険性などの因子のほか,家庭や学校,職場などの環境の因子も影響を及ぼしている.先天性心疾患児の発達障害は,認知,社会性,言語,注意欠陥など高次脳機能の障害が特徴的である.早期から,心理発達検査スクリーニングを行い,発達異常を認識し,心理カウンセリングなどのサポートを始めることが重要である.
著者
長谷川 博 山崎 晋 幕内 雅敏 水口 公信 平賀 一陽 横川 陽子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.152-166, 1983

国立がんセンター肝外科グループでは, 麻酔科と協同で肝切除の術前術中後管理のほぼ一定した方式を決めることができた. この方式は, 昭和48年の肝外科独立以来の172例の肝切除の経験において, 術後直接死亡率が肝硬変合併肝癌でも非合併例でも8%前後であり, 術中出血量は最近3,000m<i>l</i>を上廻るものがなくなったという経験的事実で裏付けられている.<br>1. 基本方針: (1) dry side に維持する. (2) Naを toxic ion 的に考える. (3) 尿浸透圧, 尿中電解質濃度とその動きを, 血清電解質よりも重視する (そのためには医師が常時使用できる血液ガス分析装置, Na&bull;K&bull;Cl電極, 浸透圧計が必需品である).<br>2. 術前管理: (1) Idsep で換気訓練を行ない, (2) IVH約1週間で耐糖能を向上させ, (3) 術後の dry side の輸液に腎が耐え得るか否かを濃縮テストで調べる (800mOsm/kg以上).<br>3. 術中管理: (1) 塩酸ケタミン点滴麻酔を加湿回路をつけて行なう. (2) 術中輸液を一律に1号液のみとし, 6m<i>l</i>/kg/h滴下する. (3) 術中乏尿(0.2m<i>l</i>/kg/h程度)には積極的には対処しない. (4) 出血量に対する輸血は, 80%をなま全血, 20%以上を血漿で補う. (5) 肝硬変例では術中から Trasylol 1日10,000単位/kgを点滴し術後5, 6日続行する. (6) 術中高血糖(250mg以上) には Insulin で対処する.<br>4. 術後管理: (1) なま血漿700~1000m<i>l</i>連日点滴をPT値60%まで続行, (2) Ht値を35&plusmn;3%に維持 (45%以上では瀉血), (3) KClを術終了直後から30~40mM/<i>l</i>以上の濃度で補給, (4) ClをモリアミンSで補給 (transfusion alkalosis 予防, O<sub>2</sub>解離曲線考慮), (5) Na<sup>+</sup>はACD液から入るので輸液中には一切加えない, (6) 総輸液量を, 血漿を含めて40m<i>l</i>/kg/dayに統一する(IVHから1m<i>l</i>/kg/h, 血漿&bull;抗生物質の合計0.6~0.9m<i>l</i>/kg/h). (7) ブドー糖0.1&rarr;0.25g/kg/h点滴(1POD以降 dose up), (8) 低Na血症を原則的に補正せず, 120mEq/<i>l</i>までは尿浸透圧>300mOsm/kgである限り輸液の速度を下げるのみ. 3POD以降で尿中Na100~150mEq/<i>l</i>ならば10%NaClを20m<i>l</i>静注, 著効ある時のみ反復. (9) 乏尿には武見処方を静注し, furosemide を原則的に使用せず(Cl利尿~ACD液による相対的Cl不足や予防のために), (10) Heparin 3~4000u/day IVHに混合(細網内皮系賦活, stress ulcer や血栓の予防).<br>かくて肝外科は, 肝実質の「とり過ぎ」をしない限り安全な手術となりつつある.
著者
上嶋 浩順
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.131-135, 2017

<p>「伝えるプレゼンテーションに必要な要素は?」と聞かれると「プレゼンテーションがうまい先生を見てください」と答えてしまいそうだが,それでは答えにはならない(つまり伝えるプレゼンテーションになっていない).「伝える」には,「話す」「書く」「聞く」などの行為すべてを含む.まさに「伝える」行為は「コミュニケーション」行為と同じである.あなたの周りの「コミュニケーション」がうまい先生は,きっと「プレゼンテーション」もうまい先生に違いない.「プレゼンテーション」がうまい先生は,「伝える力を培う」「相手を惹きつける」「わかりやすく伝える」の3要素が備わっている.これが私の考える伝えるプレゼンテーションに必要な3つの要素である.</p>
著者
竹田 智雄 棚橋 徳重 飯田 宏樹 太田 宗一郎 加藤 洋海 山本 道雄
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.441-446, 1989-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
22

三叉神経障害を経過中の早期に合併した混合性結合組織病の一例を経験した. おもな臨床症状は, レイノー現象, 左顔面のしびれ感, 四肢筋肉低下, 多発性関節痛, 嚥下障害, 全身筋肉痛であり, 血清学的には抗核抗体陽性 (speckled patern), 抗RNP抗体陽性, 抗Sm抗体は陰性であった. 三叉神経障害は, 第二枝および第三枝に著明であり, ステロイド療法に抵抗性であった. チクロピジンにより一時的に寛解したものの再び増悪した. SGBにより症状は改善し, さらにSGBとOHPの併用により, 左上歯肉部を除いてほぼ左右差がなくなる程度まで改善した.
著者
藤田 宙靖
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.990-998, 2013
被引用文献数
1

訴訟法学上,古くから,「裁判(司法)は法の執行なのか,裁判が法を創るのか」ということが問われてきた.最高裁判事としての私の体験に照らせば,我が国の現行法制度下,裁判官の行動規範として期待され,また機能しているのは,「具体的な個々の紛争につき最も適正な解決を図る」ということであり,決して法律の厳密な適用や憲法・法の一般原理等の実現そのものが自己目的とされているわけではない.従来の最高裁判例の意義を正確に理解するためにも,この点についての理解は極めて重要である.
著者
西山 純一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.201-209, 2017-03-15 (Released:2017-04-21)
参考文献数
13

手術体位が原因となり周術期に種々の合併症が発生することはよく知られている.非麻酔下では無理な体位になるとしびれや痛みなどによって患者自身が体を動かして障害を回避することが可能であるが,麻酔中は非生理的な状態となっていて確認が難しく,時に重篤な障害を引き起こす.私たち麻酔科医は,手術体位についての正しい知識を身につけ,体位に関連したさまざまな合併症について,発生要因の理解と適切な予防対策を行う必要がある.本稿では,体位に関連した合併症として周術期末梢神経障害,組織・臓器機能障害について説明し,各種合併症予防の観点から麻酔期管理上の注意すべき点を解説する.
著者
江原 朗
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1029-1035, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

高齢化の進行や家庭の育児能力の低下から,夜間・休日の救急外来等の受診が増加し,勤務医の疲弊と退職が社会問題化している.こうした中で,病院における労働基準法違反が顕在化してきた.特に,当直が宿日直ではなく,夜間・休日の通常勤務であることが指摘されている.宿日直手当は,日給の3分の1程度の支給ですむものの,救急外来や臨時手術を夜間・休日に行った場合,割増賃金を支給する必要がある.継続性のある医療を構築するには,労働法規を遵守した労務管理が不可欠である.
著者
平田 直之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.742-749, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
12

2011年8月から使用可能となったデスフルランは,本邦で最も新しい吸入麻酔薬である.すでに多くの施設で使用されているが,従来の吸入麻酔薬と比較して,麻酔の維持,覚醒や回復はどのように異なるのであろうか.また,高濃度デスフルランは,気道刺激性を有し,交感神経活動を刺激することが知られているが,実際使用する際に留意すべき点としてどのようなことがあげられるのであろうか.本稿では,デスフルランを実際に臨床使用する中で見えてきた,デスフルラン麻酔の特徴および留意点について述べる.
著者
益崎 裕章 小塚 智沙代 屋比久 浩市
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.665-674, 2012 (Released:2012-11-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

世界に冠たる長寿の島,沖縄が日本屈指の肥満県,糖尿病県に転じ,平均寿命の凋落が続いている(沖縄危機).軽度肥満の段階から糖尿病発症リスクは7倍に上昇することが知られており,過剰な脂肪組織の前には生活習慣の地道な改善努力も虚しいものとなる.人類が誕生してから今日までの歴史を1年に置き換えたカレンダーの中で “飽食の時代” は最近のわずか3分間の出来事である.人類の祖先は繰り返す寒冷と飢餓,旱魃を生き抜くため栄養や塩分が得られるときに蓄えて逃さない仕組みを構築してきた.生命の知恵の結晶ともいえる省エネ・倹約体質が,今日の飽食・高塩分・運動不足・ストレス社会でメタボリックシンドローム急増の基盤となっている.
著者
安部 能成
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.715-721, 2014

緩和ケアとは,命を脅かす病気に付随した問題に直面した患者,および患者家族の人生のQOLを改善する方法,といわれている.これは,身体的,心理社会的,スピリチュアルな次元への広がりを持つため,その対応には複数の専門職によるチーム医療が必要である.日本緩和医療学会の調査によれば,全国から480以上の緩和ケアチームの登録があるが,そのメンバーは医師,看護師,薬剤師,MSW,リハビリテーション専門職,栄養士,臨床心理士,歯科医・歯科衛生士となっている.そこでのリハビリテーション専門職の役割は,その日が訪れるまで最大限のADL,およびQOLの維持に努めることであり,目的において緩和ケアの定義と同一であるが,手段において異なる.
著者
合谷木 徹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.392-403, 2013 (Released:2013-07-13)
参考文献数
19

デクスメデトミジンはin vitro,in vivoの研究で神経保護効果を有しているという多数の報告がある.動物実験では,前脳虚血,局所脳虚血,および不完全前脳虚血において脳保護効果を有し,これにはα2Aサブタイプを介して,Bcl-2の増加,Baxの低下,カスパーゼ3の減少などの抗アポトーシス効果が関与している.われわれは,デクスメデトミジンと局所麻酔薬であるリドカインの併用,およびデクスメデトミジンと低体温の併用による脳保護効果を報告してきた.近年,生後間もないラットを吸入麻酔薬に暴露させると,幼若脳ではアポトーシスが進行してしまうという報告があり,デクスメデトミジンはこの幼若脳に対しての保護効果を有しているとのin vitro,in vivoの研究報告がある.しかし,人においてはデクスメデトミジンの神経保護効果はいまだ実証されてはいない.鎮静効果を有するデクスメデトミジンは臨床でも使用されているため,臨床使用により動物実験で得られた神経保護効果を期待できると推測され,今後の臨床でのデクスメデトミジンの有用性が増加すると考えられる.
著者
尾前 毅
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.461-467, 2012 (Released:2012-07-05)
参考文献数
29

期外収縮(心房性期外収縮・心室性期外収縮)は,周術期に最も発症する不整脈の一つであるが,大部分の症例において緊急的な治療は必要ない.一方,周術期に観察される心房性期外収縮は周術期心房細動の発症と深い関連がある.この周術期心房細動を発症すると生命予後は悪化するとされるため注意を要する.心室性期外収縮は基礎疾患がない症例では経過は良好であるが,器質的疾患,特に心筋虚血に伴う症例では生命予後が悪化する.このため心室性期外収縮発症の際には基礎疾患の有無を確認することが重要である.周術期に期外収縮に遭遇した場合にはこれらのことを念頭に管理することが望ましい.
著者
中尾 慎一 冬田 昌樹 塩川 泰啓
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.001-010, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
14

全身麻酔中には,循環変動や電解質異常など明らかな原因がない場合でも,予期せぬ致死的不整脈に遭遇することがある.心室細動や高度の房室ブロック等に対する対処は同じであるが,致死的不整脈発現の予防や再度致死的不整脈を起こさないための管理は個々の疾患によって異なる場合がある.ここでは,われわれが経験したブルガダ症候群,二次性QT延長症候群と冠動脈攣縮による致死的不整脈を中心に,それらの疾患の特徴および致死的不整脈の予防と対処について概説したい.
著者
大浦 由香子 田中 基 清水 昌宏 武井 秀樹 照井 克生 小山 薫
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.90-94, 2014
被引用文献数
1

27歳,一絨毛膜二羊膜性双胎の初産婦.妊娠31週より切迫早産および妊娠高血圧腎症のため当院に入院中であった.妊娠32週に肺水腫による呼吸不全および低酸素血症が出現し,緊急帝王切開術が予定された.手術台に移動させた直後に心肺停止となり,直ちに心肺蘇生を開始するとともに産科医に帝王切開を開始するよう促した.心停止4分後に手術開始し,同時に心拍再開を確認,1分後に2児とも娩出した.児娩出後の母体呼吸循環状態は安定し,母・2児とも後遺症なく退院した.妊婦の心肺蘇生法とともに「死戦期帝王切開術(perimortem cesarean section:PCS)」の知識の普及およびトレーニングが望まれる.