著者
小林 俊司 丸山 直子 石井 菜々子 石山 諭 鶴野 広大 森本 正昭
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.163-167, 2016-03-15 (Released:2016-04-20)
参考文献数
10

デスフルランはセボフルランより覚醒は早いが,覚醒時咳嗽の頻度が高い.レミフェンタニル持続投与はそれを減らすため,覚醒時に併用することがある.血中レミフェンタニル濃度の上昇は,セボフルランのOAA/Sスコアを低下させるが,デスフルランとレミフェンタニルにも,同様の関係があるかは知られていない.したがってレミフェンタニル持続投与下でもデスフルランからの覚醒がセボフルランより早いかは未知であり,それを検証した.予定手術患者80名をデスフルラン群(DES),セボフルラン群(SEV)に分け,覚醒抜管時レミフェンタニル0.02μg/kg/minで,覚醒時間,抜管時間を比較した.覚醒時間(秒)はDES 266±105,SEV 346±157,抜管時間(秒)はDES 331±108,SEV 411±154(Mean±SD)であり,DESで有意に短かった(P<0.01).
著者
末廣 浩一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.496-503, 2018-07-15 (Released:2018-08-29)
被引用文献数
1

中等度リスクの症例は手術数全体の40%程度を占めると推定されている.これらの症例ではハイリスクなものと比較して重症合併症は少ないものの,約30%に何らかの術後合併症が生じていることが報告されている.Goal-directed therapy(GDT)は術後合併症を軽減し,予後を改善する可能性が示唆されているが,GDTの適用率は本邦においても低いのが現状である.本邦におけるGDTの低施行率の理由としては,GDTのエビデンスレベル,GDTプロトコールの複雑さや多様性などの問題点が挙げられる.本稿ではGDTプロトコールを中心に低侵襲血行動態モニターを使用した輸液管理について考察し,GDTプロトコールの問題点を解決する可能性がある自動輸液負荷システムについて概説を行う.
著者
寺井 岳三
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.627-636, 2006 (Released:2006-12-22)
参考文献数
9

救急救命士の気管挿管が認められ, 病院での気管挿管実習が始まった. 大阪労災病院で実習を修了した救急救命士12名の問題点として, 麻酔器を用いたマスク換気が十分にできず, 人形を用いた事前訓練による悪い癖がついているため喉頭鏡操作がうまくできないことがある. 気管挿管成功率は92±6%であり, 個人間で技術にばらつきがみられるが, 年齢と成功率には有意な相関はなかった. 合併症は咽頭痛が12.5%, 嗄声が19.1%にみられた. 指導医は, 救急救命士が気管挿管を行うことの意義をよく理解し, 気管挿管実習とは総合的な気道管理実習の一部であると認識しなければならない. まずマスク換気がしっかりできること, そして確実かつ合併症を起こさない挿管技術を指導することが重要である.
著者
相田 純久
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.204-216, 2008 (Released:2008-04-16)
参考文献数
55

硬膜外鎮痛法は周術期や慢性・急性疼痛の管理に有意義である. 使用される薬剤はモルヒネが主流であるが, さまざまな薬剤が試用され, その評価もさまざまである. 硬膜外投与された薬剤は拡散して脊髄に作用するため, 血液脳関門は関与しない. 脊髄には多数のμおよびκ受容体が発現しているが, モルヒネなどのμ作動薬に比較してκ作動薬は副作用が少なく, 安全性が高い. それ故, 硬膜外κ作動薬は有意義な鎮痛法であり, 全身の鎮痛 (頭部・顔面に対しては頸部硬膜外鎮痛で可能) に応用できる. 一方, NMDA拮抗薬は, 痛覚過敏や中枢性感作などの疼痛の促通・増幅を抑制し (鎮痛とは異なる) , オピオイドとの相乗作用や耐性・依存性抑制作用がある (オピオイドの補助薬としての適応) . しかし, 一次求心性インパルスをブロックしないためNMDA拮抗薬に脊髄性鎮痛作用は期待できない. 全身投与によるNMDA拮抗薬は上位中枢神経系の統合機序に影響すると考えられ, 中枢痛・視床痛などには効果が期待できる. しかし, 硬膜外NMDA拮抗薬の効果は脊髄に限られるので, 全身投与に優る効果は期待できない. ケタミンについて考えると, この薬剤は作用特異性が低く, 多彩な効果が期待できる. これにより, 大量投与で全身麻酔作用が, 少量投与で鎮痛作用が現われると考えられる.
著者
山口 智子 山口 昌一 後迫 江理奈 小林 充 高橋 浩
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.606-610, 2017-09-15 (Released:2017-10-20)
参考文献数
10

巨大腹部腫瘍摘出術の麻酔管理では,特に呼吸・循環管理に注意を要し,腫瘍が大きいほどその管理に難渋する.今回,われわれは腫瘍重量約70kgの超巨大卵巣腫瘍摘出術の麻酔管理を経験した.症例は37歳女性,左卵巣摘出術の既往があった.入院時,貧血,酸素飽和度(SpO2)の低下と軽度の拘束性換気障害以外に大きな合併症はなかったが,腹囲が大きすぎるためMRI等の術前検査を十分に行うことができなかった.導入時の低酸素血症と再膨張性肺水腫を念頭に呼吸管理を行い,心拍出量,1回拍出量変化,中心静脈圧を指標としながら循環管理を行った.気道確保器具の選択や,術後呼吸器合併症にも注意が必要であった.
著者
仲 俊行
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.104-108, 2021-01-15 (Released:2021-02-19)
参考文献数
12

シミュレーションスペシャリストの視座からみた医療シミュレーションの歴史を,シミュレータ,教育,ファカルティの3つに焦点を当て,主要なトピックスとして,医療シミュレーション黎明期:医療安全を契機としたシミュレーション教育の拡大期における高機能シミュレータの意義,ディブリーフィング:シミュレーション教育で採用されているさまざまなディブリーフィング手法,医療シミュレーション専門家:シミュレーション教育の専門性が高まった結果誕生した教育と運用のシミュレーション専門家国際認証制度について解説する.
著者
佐藤 清貴 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.352-357, 2009-07-15 (Released:2009-08-10)
参考文献数
48
被引用文献数
1

脳保護を目的とした全身低体温療法は1955年から行われている. 体温30℃以下での脳外科手術が多くの症例で行われたが, 循環合併症が多く, 1970年頃から行われなくなった. 1987年, 軽度低体温の脳保護効果が実験的に示され, 1990年頃から臨床応用された. 脳動脈瘤手術, 頭部外傷, 脳梗塞, 蘇生後脳症などで軽度低体温管理が行われ, 2001年以降大規模臨床試験の結果が発表された. 心停止後の蘇生後脳症, 新生児低酸素脳症では有効性が確認されたが, 脳動脈瘤手術, 頭部外傷ではnegativeの結果であった. 脳温の低下は脳保護的に作用することは明確であるが, 全身の体温低下は感染, 出血など合併症の原因となり, 最終的な予後を必ずしも改善しない. 現在のところ, 短期間の軽度低体温は蘇生後脳症などで適応となる. 脳局所の温度下降が可能となれば, さらに有効な治療手段となる可能性がある.
著者
原野 和芳 甘蔗 眞純 佐藤 道子 高松 純 高橋 成輔
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.293-299, 2002-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
10

患者が麻酔とその危険性を理解するための支援について調査・検討した.情報提供の方法として麻酔前回診,「麻酔に関する説明書(以下同意書)」,麻酔・手術室全般をイラストで説明したパンフレットという3種類を用いた.結果は,麻酔および手術室手順の理解では同意書やパンフレット配付の有無で差はなかった.同意書は危険性への認識を高めた反面,不安を感じたという評価の割合が高く,前向きな気持ちに負の影響を与える可能性が示唆された.パンフレットは不安を軽減する可能性を認めた.以上のことから麻酔に関する危険性の理解を促進し,かつ不安を軽減するためには,同意書とパンフレット両方を麻酔前回診に配付することが有用であると考えた.
著者
福井 明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.663-667, 1998-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
14

過去5年間に経験した血液製剤使用拒否患者12名の麻酔前の問題点について検討した.全員がエホバの証人信者で,麻酔回数は13回,すべて全身麻酔症例であった.麻酔前の問題として,血液製剤使用拒否の意思表示の遅れ,補助手段に対する知識不足,初回提出の免責証書に受入れ可能な補助手段の記載もれ,家族間での意思不統一などが認められた.信者自身が使用可能な血液製剤と補助手段を熟知し,記載もれのない免責証書の作成と携帯および家族間の意思統一が望まれる.一方,医療機関と医師は,血液製剤使用拒否患者への対処方針決定とマニュアル作成とその明示が必要である.
著者
石山 由香里 加藤 清司 松崎 重之
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.324-327, 1997-06-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
12

33歳,妊娠27週に発症した急性妊娠性脂肪肝の妊婦の帝王切開の麻酔管理を経験した.著明な凝固障害と出血傾向を合併していたため,全身麻酔のみで管理した.診療上,輸血は不可避であったが,患者は「エホバの証人」だったため,最初は手術そのものを拒否していた.患者の全身状態と手術,輸血の必要性を十分説明し,「最大限の努力をしたうえで,最小限の輸血にしてほしい」という了解を得たうえで輸血を行ない,救命しえたが,患者の希望を尊重した結果,輸血開始時期の判断に苦慮した.
著者
境 徹也 樋田 久美子 原 哲也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.819-823, 2015-11-14 (Released:2015-12-04)
参考文献数
9

患者は71歳の男性.4年前,腰部脊柱管狭窄症による左腰下肢痛に対して,椎弓切除術を受けて痛みは軽快した.その後,痛みが再発したため,当科を受診した.痛みはL5およびS1神経根痛であり,硬膜外ブロックと神経根ブロックの効果は一時的であったため,硬膜外腔内視鏡を行った.L5-S1椎間レベルで癒着があり,左L5椎間孔付近では高度であった.慎重に癒着剥離および局所麻酔薬とステロイド注入を行い,痛みは軽減した.その後の6年間で,下肢の神経根痛の増強時に硬膜外腔内視鏡の繰り返し施行を計6回行った.痛みの軽減も初回と同様に得られ,合併症も起こっていない.
著者
三好 寛二 中村 隆治 安氏 正和 中布 龍一 濱田 宏 河本 昌志
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.564-568, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
8

術中にアナフィラキシーを生じた肝門部胆管癌症例を経験した.アレルゲンは術中には確定できなかったが,後日行った薬剤リンパ球刺激試験でタココンブ®と判明した.タココンブを貼付したまま閉腹したためか,術後もアドレナリンの持続投与が必要な状態が続き,約20時間後にアドレナリンを離脱できた.血漿中ヒスタミンとトリプターゼの定量測定では,両者とも検出できず,これらを介さない機序でのアナフィラキシーを生じたものと考えられた.
著者
木内 恵子 中川 美里 香河 清和 松浪 薫 清水 智明
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.576-582, 2006 (Released:2006-10-25)
参考文献数
13

著者の所属する施設では予定帝王切開術の96%を脊髄くも膜下麻酔で行っている.0.5%高比重ブピバカイン2.5mLにモルヒネ0.1mgを添加して使用している. ブピバカインはテトラカインと比較して術中鎮痛補助薬の使用が少なく優れた鎮痛効果を示す. またモルヒネを添加することにより術中術後の鎮痛作用を増強させる. 脊髄くも膜下麻酔は手技が容易かつ効果が確実で運動神経遮断効果が高く, 3種類の区域麻酔法のなかで, 効果発現が最も早い麻酔法である. 欠点としては, 低血圧の頻度が他の区域麻酔法に比べて多いことがあげられる.
著者
三根 奈々 谷川 義則 園畑 素樹 平川 奈緒美 坂口 嘉郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.802-807, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

経口補水液(OS-1)と高濃度炭水化物含有飲料(AW)の術前水分補給効果と飲水量に関する比較検討を行った.手術当日2例目以降予定の脊髄くも膜下麻酔下に施行される人工股関節全置換術症例を対象とし,封筒法にて各群20例(OS-1 1,000ml群,AW 1,000ml群,AW 250ml群の3群)に分け水分補給効果を前向きに調査した.OS-1 1,000ml vs AW 1,000ml群,AW 1,000ml vs AW 250ml群ともΔFENa(fractional excretion rate of Na)に有意差なく,効果は同等であった.術前摂取飲料に両飲料水とも適することが示唆された.
著者
石部 裕一 有光 正史 宇野 洋史 辻村 謙二 福喜多 邦夫 塩川 泰啓 末包 慶太
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.142-146, 1993-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
4

小児に対する前投薬として,ミダゾラム注腸投与の効果を,1~6歳の小児109例を対象とし,投与時間(導入30分前と60分前),投与量(0.2mg/kgと0.4mg/kg)および年齢(1~3歳と4~6歳)に分けて検討した.鎮静スコア1(導入時にマスクを嫌がるもの)を無効,スコア2~4を有効,スコア5を過剰鎮静として評価すると,30分前投与群で,投与量に関係なく,年長児の有効率(92~100%)は年少児(54~58%)に比較して有意に高く,この傾向は投与時間を導入60分前にしても同様であった.以上の結果からミダゾラム0.2~0.4mg/kgの30~60分前注腸投与法は,年少児での有効性は十分でないが,4~6歳の就学前児童の前投薬としては有用な方法と思われた.
著者
細川 豊史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.368-371, 1994-06-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
10
著者
田中 克明
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.836-842, 2018-11-15 (Released:2018-12-26)

酸素運搬能は心拍出量,酸素飽和度,ヘモグロビン値,動脈血酸素分圧の4因子で規定される.しかし,これらを連続的かつ正確にモニターできる機器の開発・普及は途上にあり,急激な経過をとり得る産科危機的出血の病態評価において,汎診療科的に使える段階にはない.産科危機的出血への対応指針ではショックインデックス(SI)が病態評価基準である.特にSI 1.0,1.5は臨床判断上の分水嶺である.妊産婦では通常,心機能・呼吸機能が大きくは障害されていないために,酸素運搬能維持のために最も重要となるのはヘモグロビン値の維持である.そのためには迅速な輸血の供給体制構築と安全・確実な輸血の投与が必要である.
著者
高橋 進一郎 高地 哲夫 石橋 史子 富永 静子 坂下 美彦 長谷川 里砂
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.755-758, 1998-12-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
6

純酸素吸入は,より低濃度の酸素吸入時に比べ吸収性無気肺を起こしやすいことが実験的に示されている.そこで,麻酔導入時と抜管時の純酸素吸入が,臨床的に問題となる術後の酸素化障害や,無気肺を引き起こしているか否か検討を行なった.幽門側胃切除を予定された呼吸器合併症のない21例を対象とし,麻酔導入時と抜管時の各10分間,純酸素吸入を行なう群と40%酸素吸入を行なう群に分けて,術中から術後24時間までの動脈血酸素分圧,術直後と術後第1日の胸部X線写真を比較した.その結果,両群間で有意な差を認めず,麻酔導入,抜管時の吸入酸素濃度の差は術後の酸素化障害および無気肺の発生に寄与していなかった.
著者
五十嵐 寛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.459-463, 2014 (Released:2014-06-17)
参考文献数
13
被引用文献数
1

麻酔導入後に気道確保困難に遭遇する場合,的確な診断と迅速な対応が必要となる.そのためには,日頃から気道確保困難に対する麻酔科医自身の気道確保困難を意識した日常診療でのトレーニングとまれな事態に対するシミュレーショントレーニングに努めることと同時に,スタッフ教育や物品管理を含む組織改革を医療安全対策の一環として取り組むべきである.
著者
丹羽 英智 木村 太 廣田 和美
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.468-473, 2015-07-15 (Released:2015-09-18)
参考文献数
18

帝王切開術を全身麻酔で管理する場合,吸入麻酔薬と静脈麻酔薬のどちらが母児の管理上,利点を多く有するかは不明である.今回,われわれは,当教室の臨床データ(2002~2013年,N=635)を示しつつ最近の文献をもとにどちらが良い麻酔法かを考察する.妊娠子宮筋を用いた基礎研究の結果は,全身麻酔で用いられるほぼすべての薬剤が子宮筋の収縮を抑制することを示した.これは,児娩出までの間は生体に有利に働くが,児娩出後は,母体の出血量の増加につながる.しかしながら,術中の出血量は静脈麻酔薬と揮発性麻酔薬の間に差を認めなかった.一方,母体のPONV発生頻度が低い点では,TIVAにおける母体の満足度が高くなることが推察される.