著者
井上 憲臣 河西 稔
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.453-456, 1997-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
3
被引用文献数
3 1

気管内挿管時には,歯牙の状態によって喉頭鏡の操作により歯牙や補綴物(継続歯,架工義歯)が脱臼,破損,脱離する可能性がある.これを防止するために,現在,われわれはモデリングコンパウンドを使用しているが,今回,このモデリングコンパウンドと既製のマウスプロテクター,マウスコレクター(成人の平均値的模型上で成型試作したもの),および,プレス式カスタムマウスガード(各症例ごとに歯型をとり,模型上にプレスをして作製)を比較した.モデリングコンパウンドは,気管内挿管操作直前に作製し,各症例の歯牙に合った成型ができたことより,その効果も満足すべきものであった.しかし,装着する際に,ある程度手技の熟練さが必要であり,モデリングコンパウンドの厚さが喉頭鏡による喉頭展開操作に制限を感じさせることがあった.これに反し既製のマウスプロテクター,マウスコレクターは,装着に熟練度は必要でなかったが,すべての症例に適合させることは困難で,歯牙損傷の目的を完全に達成できるとは考えられなかった.プレス式カスタムマウスガードは,作製時間と,実費で600円程度の費用を要するが,各歯牙に確実に適合し,モデリングコンパウンド以上に健全隣在歯との連結による固定効果があるため,特に動揺歯のある場合に安心して挿管できるものと考えられた.
著者
池内 昌彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.381-385, 2013 (Released:2013-07-13)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

人工関節手術の術後急性期疼痛は強く,機能回復の阻害因子であるだけでなく,患者の満足度とも密接に関係する.術後鎮痛として,オピオイドを使用したIV-PCAや持続硬膜外麻酔,末梢神経ブロック,さらに最近注目されている関節周囲カクテル注射などが主に行われている.それぞれの鎮痛法の特徴を把握し,副作用を低減しながら最大の鎮痛効果が得られるように,いくつかの鎮痛法を組み合わせた多角的鎮痛法を採用することが望ましい.関節周囲カクテル注射は手技的な容易性と確実性で優れており,多角的鎮痛法のなかでも中心的な役割を担うと考えられる.
著者
中尾 正和
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.692-699, 2012 (Released:2012-11-13)
参考文献数
1

術中覚醒はまれだが,患者にも麻酔担当者にとってもつらい経験となる.術中覚醒例を紹介し,よく起こしがちな事例・防止策の共有を試みた.その原因には麻酔薬の投与不足,痛み刺激による鎮静作用の相対的不足,個人差の評価ミスのほか,不明確なものもある.脳波モニターはコストもかかり完璧な信頼度ではないが,筋弛緩状態のように呼吸・体動では麻酔不足を判断できないときには特に有用性が高い.装着していてもその限界を知って判断の遅れや間違いがないようにするなどの注意が必要である.一方,術中に覚醒したと気づいたときにはその場で説明することができれば,心的外傷後ストレス障害(PTSD)を減らせる可能性も考えられた.
著者
稲田 英一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.582-587, 2005 (Released:2005-11-29)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

術前評価において術前検査のおもな役割は, 病歴や身体所見から示唆される病的状態の程度を評価し, 周術期の管理計画を立てる手がかりとなることである. 術前検査は, 患者のもつ疾患, 予定術式, 検査の特性などから決定される. それぞれ感度や特異度が100%という検査はなく, 偽陽性や偽陰性が起こりうる. さらに, 検査を行う患者群の有病率によっても, 感度や特異度は異なる. 心電図, 胸部X線検査, ヘモグロビン濃度測定などの術前検査はスクリーニング検査としての意義は低く, 病歴や身体所見から示唆されるものについて行うべきである.
著者
足立 裕史 牧野 洋 三条 芳光 佐藤 重仁
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.929-934, 2008-11-14 (Released:2008-12-13)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

【背景】血液型がO型の患者は第 VIII 凝固因子, von Willebrand Factorが低値で, 術中出血の多い可能性が報告されている. 当院手術患者の過去10年間の傾向を調べた.【方法】麻酔データベースから症例を抽出し, 年齢, 性別, 身長, 体重, 手術時間のほか, 非O型あるいはO型かで多変量解析を実施した. また, 下位解析として, 幽門側胃切除, 単純子宮全摘術, 股関節人工関節置換術, 帝王切開術の症例を抽出し, 出血量の差異を検討した.【結果】15,857例について検討したところ, 年齢 (回帰係数: -0.63g/yr) , 性別 (女性で回帰係数+62g/sex) , 体重 (+2.1g/kg) , 手術時間 (+85g/hr) が有意な寄与因子として選択された. 血液型は下位解析を含めたいずれの検討においても有意な説明変量とはならなかった.【結論】O型でも出血量は臨床的に差異がないと考えられた.
著者
菅 弘之 能沢 孝 安村 良男 二木 志保 田中 伸明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-10, 1988-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
21

収縮性の変化が心臓の酸素消費量に及ぼす影響は古くて新しい問題である. 我々は, この問題に新しい概念-収縮期圧容積面積 (PVA)-を用いて挑戦している. PVAは, 圧容積図面中の特定の面積であるが, 収縮によって発生する心臓の総機械的エネルギーを表すと考えられる. イヌ心臓を用いての実験では, 収縮性が一定なら, PVAは酸素消費量と直線的に良く相関した. 収縮性を高めると, この関係は酸素消費量を増すように平衡移動した. それは主として興奮収縮連関のための酸素消費量の増加による. この際, PVAに依存する酸素消費量は常にPVAの変化に比例することから, 収縮機構そのもののエネルギー効率は不変と考えられる.
著者
坂口 嘉郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.130-137, 2015 (Released:2015-02-17)
参考文献数
9

カプノグラフィーは,換気のリアルタイムモニターとして有用である.さらに,カプノグラムの波形分析および動脈血-呼気終末炭酸ガス分圧の関係から換気量の妥当性や,換気血流不均衡,死腔換気などの病態を評価することが可能である.量カプノグラムでは死腔量を解剖学的死腔と肺胞死腔に分けて算出できる.非気管挿管患者にカプノグラフィーを換気モニターとして用いる場合は,低換気に伴うカプノグラムの異常パターンを正しく判別する必要がある.
著者
冨田 晶子 大竹 孝尚 生津 綾乃 橋田 和樹 大目 祐介 山下 茂樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.423-426, 2017-07-15 (Released:2017-08-26)
参考文献数
5

70歳の男性.肝細胞癌に対して,全身麻酔および硬膜外麻酔下に腹腔鏡下肝拡大左葉切除術が施行された.術中,中肝静脈を損傷し圧迫止血操作を行った際に,一時的に収縮期血圧が60mmHgまで低下したが,血管縫合により血行動態は安定し手術を完遂した.手術終了前の体内異物遺残チェックでガーゼの枚数が不足したため胸腹部単純X線撮影を行い,左肺門部にガーゼと思われる線状陰影を認めた.この時点では肺塞栓を疑う症状は認めておらず,カテーテルによる肺動脈内異物除去を行う方針とした.迷入したガーゼは左肺動脈に達していたものの,重篤な転帰に至ることなく,血管内治療と鼠径部小切開手術で摘出し得た.
著者
井出 徹 水口 公信 伊東 範行 野口 照義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.22-26, 1991-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
15

アルコールは人間生活の潤滑剤であるが,飲酒が直接・間接の原因となり発症した外傷は数多い.アルコールは外傷の病態を複雑化し,診断・治療に多大の影響を及ぼす.このため飲酒外傷患者に対する緊急手術の麻酔は様々な問題点を抱えている.今回我々は血中アルコール濃度を測定し得た外傷患者の麻酔管理につき検討を加えたので報告する.
著者
稲垣 喜三
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.674-680, 2017-09-15 (Released:2017-10-20)
参考文献数
5

麻酔科術前診察では,感染症のスクリーニングとして,梅毒やB型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルスの血中抗原や抗体価を検査している.施設によっては,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のスクリーニングも実施し,術中・術後の患者および医療従事者の感染予防に役立てている.成人では,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やクロストリジウムディフィシル腸炎(CDI)の感染の発見と予防が,その後の創部感染や院内感染の防止に繋がる.小児では,年齢によって発症しやすい感染症が存在する.術前診察では,発疹や上気道症状,消化器症状の既往を注意深く問診し,診察による理学的所見を的確に取ることが求められる.不活化ワクチン接種から手術までの期間は2日間で,生ワクチンの接種から手術までの期間は21日間である.手術後の予防接種は,少なくとも術後7日間以上の間隔を空けて実施する.
著者
濱田 宏 木村 健一 遠藤 恵美子 福井 明 藤田 喜久 高折 益彦
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.471-479, 1991-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
23

局所麻酔薬に添加した血管収縮薬が脊椎麻酔の持続時間に及ぼす効果を検討した.下肢の予定手術患者を対象に,ネオペルカミンS単独群(C群),エピネフリン0.1mgおよび0.2mg添加群(E1群,E2群),ノルエピネフリン0.1mg添加群(NE群)に分けた.最高レベルより2椎体,4椎体低下する時間(分)はE1群でそれぞれ平均120分,178分,E2群でそれぞれ145分,191分,NE群でそれぞれ142分,180分で,ともにC群の95分,135分より有意に延長していた.しかし,E1,E2,NE群の間に有意差を認めなかった.NEがEより勝る利点を見出すことはできなかったが,NEの添加でも有意な延長効果を認めた.
著者
加藤 正人 黒澤 伸
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-8, 2006 (Released:2006-01-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

大侵襲手術によって, Interleukin (IL) -6をはじめとする各種の炎症性および抗炎症性サイトカインが誘導されることが知られている. また, それらのサイトカインに加えて, 好中球を遊走させるIL-8に代表されるケモカインと呼ばれる一群の炎症因子も手術侵襲により産生が増強され, 炎症細胞を局所に集積させる. これらの生体反応は適度な範囲であれば, 周術期の生体防御に有利に働くと考えられる. しかしながら, こうした反応がまったく制御されないままに過剰な生体反応として放置されると仮定すれば, むしろ免疫能をはじめとする生体防御能を抑制する方向に働き始める可能性がある.   これらの知見を含めて手術侵襲により惹起される炎症反応について概説し, さらには揮発性吸入麻酔薬による免疫抑制作用の機序についての当教室の研究を紹介するとともに, injury-induced immunosuppressionについても展望する.
著者
岡本 慎司 森本 昌宏 森本 充男 前川 紀雅 森本 悦司 古賀 義久
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.570-575, 2006 (Released:2006-10-25)
参考文献数
10

進行がんに対する治療法の進歩による患者の延命に伴い, 痛みを訴える患者が増加していると推察される. このような患者は痛みのコントロールが困難であるとして当科に紹介されることが多く, これらの痛みに対しては神経ブロック療法の併用を積極的に行っている. 特に骨転移による痛みは医療用麻薬のみでコントロールすることは不可能であり, 持続硬膜外ブロックを選択することが多い. さらに, 当科では在宅での管理を積極的に行っており, 硬膜外持続注入用アクセスを用い, 21名で良好な除痛効果を確認している. がん性疼痛患者に対しては, 医療用麻薬一辺倒ではなく適切な時期に適切な神経ブロック療法を行うべきであり, 在宅での管理にあたっては, 硬膜外持続注入用アクセス植え込みを積極的に施行すべきと思われる.
著者
野村 岳志
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.612-618, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1

腹直筋鞘ブロック,腹横筋膜面ブロック,傍脊椎ブロックは胸壁,腹壁の体性痛管理に用いられている.特に超音波ガイド法の普及によって安定した効果発現と合併症の低下を認め,近年広く普及してきた.硬膜外ブロックに比べて鎮痛作用は劣るものの創痛管理中の副作用は少ない.最近推奨されている多様性(multimodal)疼痛管理の一法として,これらのブロックを併用すると,早期離床に向けた優れた術後痛管理が可能となる.しかし,比較的簡便な手技とはいえ,コンパートメントブロックのため局所麻酔薬の1回投与量は多い.異所投与では効果不十分で,局所麻酔薬中毒の可能性のみ高くなる.より安定した手技となるよう解剖学的構造や超音波画像の理解が重要である.
著者
箕越 靖彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-8, 1999-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4
著者
野崎 京子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.494-506, 2005 (Released:2005-09-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

ここ数年, 女性医師の増加傾向が著しい. 平成16年度の新臨床研修医制度導入により, 従来の大学医局を中心とした労働供給システムが変化し, 病院現場における労働力不足が深刻になってきた. そのため, 病院の管理的立場での対策が取り上げられるようになった. 日本臨床麻酔学会第24回大会におけるシンポジウム 「女性医師の生産性」 が設けられたのもその意味があったと思われる. そもそも, 女性の労働生産性について考えるとき, 単なる生物学的な差をもって男性との差を論ずることはできない. 文化的・社会的背景からくる性別役割分担意識が大きく影響している. まず, 労働基準法など母性保護・育児支援に関する現行の法律の尊重が重要である. また, 文明国として男女共同参画社会の実現に向けての社会的・個人的努力が必要であり, そのためには医療現場におけるさまざまな工夫が期待される. そのような施策により, 女性医師の生産性は現在より高くなっていくと予想されるので, 現時点で女性医師に特有の社会システムを構築するのは時期尚早であろう.
著者
髙畑 治
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.131-138, 2010-01-15 (Released:2010-02-19)
参考文献数
17

術後鎮痛法における硬膜外鎮痛法の役割について概説し, 新たに臨床導入されたレボブピバカインの特徴を述べた. レボブピバカインは, その長時間作用性とブピバカインに比較して運動神経遮断作用が軽減されていることから, 上腹部手術での有用性を検討した. レボブピバカイン単剤による硬膜外鎮痛では, 施行する椎間により下肢運動機能への影響が異なり, 上腹部手術症例では十分な鎮痛と下肢運動機能を維持することができた. このことは, 周術期における麻薬性鎮痛薬使用量を削減する可能性も意味している. 術後早期離床が重要視される上腹部手術において, レボブピバカインが硬膜外鎮痛薬として優れていることが示唆された.
著者
小幡 典彦 溝渕 知司
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.879-891, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
40
被引用文献数
1

術後痛対策として硬膜外鎮痛法は非常に効果的な方法であり,最近では術後の鎮痛だけでなく中長期的なアウトカムまで改善する可能性が示されている.硬膜外鎮痛の薬剤投与方法には,単回投与法,持続投与法および自己調節硬膜外投与法(自己調節硬膜外鎮痛 patient-controlled epidural analgesia:PCEA)があるが,PCEAは単回投与や持続投与のみに比べ,鎮痛の質や患者の満足度が高く,さまざまな専用デバイスも開発されたことにより,安全かつ確実に行われるようになっている.使用される薬剤は,局所麻酔薬とオピオイドが主体であり,現在では両者を併用することが一般的である.最も適した薬液の種類,濃度,投与方法などは,議論のある点で今後の更なる検討が必要であるが,硬膜外に投与するおのおのの薬剤の特性を知って使用する必要がある.
著者
衛藤 由佳 丹保 亜希仁 国沢 卓之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.176-182, 2018-03-15 (Released:2018-04-07)

麻酔科医にとって抜管は毎日行う手技であるが,その方法は統一されておらず,抜管について詳細に述べた教科書や日本のガイドラインも存在しない.麻酔科標榜許可を得るまでは専門医とともに抜管するが,それ以後は一人で麻酔をする機会も増え,上級医に相談することも減ってくる.疑問をもったまま,あるいは疑問ももたずになんとなく抜管に臨んでいる後期研修医もいると考えられ,全国の後期研修医を対象に抜管について困っていること等についてWebアンケートをとった.本稿ではそのアンケート結果を踏まえ,若手麻酔科医が知りたい抜管についてのなぜを考察する.
著者
川瀬 小百合 橘 一也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.542-547, 2018-07-15 (Released:2018-08-29)
被引用文献数
1

妊娠すると母体には生理学的変化が生じるが,それは母体に投与した薬物の代謝にも変化をもたらす.また妊娠中,母体に投与した薬剤は胎盤を経由して胎児に届き,胎児奇形や児の出生後の呼吸抑制や神経障害などを生じる可能性を有する.しかし,妊娠中の薬物治療や非産科手術の麻酔,胎児治療,分娩時の麻酔などで母体に薬剤を投与する機会は少なくない.そのため母体の生理学的変化による薬物動態の変化や,胎盤通過性,麻酔関連薬物の母体・胎児への影響を理解する必要がある.