著者
増子 敬公
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.217-223, 2012 (Released:2017-12-11)

ワインはpHが低く,アルコールとSO2があるので微生物汚染に強い,と考えられていた。しかし,このような条件であっても醸造中や醸造後のワインの品質に危害を与える微生物はワイナリーに潜んでおり,安定して高い品質を維持するには適切なサニテーションが欠かせない。これまで日本語の解説が少なかったワイナリーのサニテーションに関する情報を紹介していただいた。
著者
岩野 君夫 伊藤 俊彦 中沢 伸重
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.526-533, 2004-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
4 8

1, 吟醸酒, 純米酒, 本醸造酒及び普通酒のアミノ酸組成を調べ平均値の差の検定を行った結果, 製造区分間に全アミノ酸含有量と組成に大きな違いが認められ, 醸造法の違いが製成酒のアミノ酸組成に影響することを知った。2, アミノ酸を甘味,酸味,苦味,その他の4区分にグルーピングし, 各種清酒間の有意差を調べた結果, 吟醸酒は他に比べて甘味アミノ酸, 酸味アミノ酸の割合が高く苦味アミノ酸が少ないなど, 製造区分によって構成比が異なることが明らかとなった。3, アミノ酸を変数とする変数選択型判別分析を行った結果, グルタミン, プロリン, リジン, グルタミン酸, アラニン, ヒスチジンの6個のアミノ酸を変数として吟醸酒, 純米酒, 本醸造酒及び普通酒を高精度で判別できる判別関数を得た。
著者
松井(岡村) 徳光 大杉 匡弘
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.766-773, 2002-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

酒類は酵母のアルコール発酵力を利用して製造されている。最近, きのこがアルコール発酵するという興味深い現象が発見され, 酵母の変わりにきのこを用いて酒類が製造された。製成酒には疾病の予防効果を示す成分が検出され, お酒の機能性が強調された品質になっている。酒類の品質や製造方法の今後の展開を模索する上で本研究は貴重な情報を提供している。
著者
西谷 尚道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.489-500, 2002-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10

日本の伝統的な蒸留酒である本格焼酎と泡盛は, それぞれ独自の製造方法と酒質を確立している。一方, 現在の酒税法では焼酎は「アルコール含有物を蒸留したもの」と定義され, 本格焼酎と泡盛の顔が見えてこない状況にある。本格焼酎と泡盛が世界に向けて発展するためには, 国際的に通用する定義の必要性は論を待たない。本格焼酎と泡盛の21世紀の展望シリーズ第2弾として, 筆者に本格焼酎と泡盛の定義について展望していただいた。
著者
鈴木 俊二
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.10, pp.658-663, 2016 (Released:2018-08-06)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ワイン用のブドウを夜間に収穫(ナイトハーベスト)すると,より優れた品質のワインが醸造できることが経験的に知られている。ブドウの温度が低いうちに収穫することで低温での原料処理が可能となり,酸化や微生物汚染のリスクを低減できるのがナイトハーベストのメリットだと考えられていた。しかし,筆者らのグループは,近年甲州の香気成分の一つとしても注目されているチオール系香気成分の前駆体に着目し,早朝に前駆体量がピークになることを明らかにしている。ナイトハーベストの意義を香気成分の面から明らかにした興味深い研究成果を解説していただいた。
著者
蛸井 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.88-97, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
27
被引用文献数
1

近年,アメリカやドイツでは古典的なアロマホップ,ビターホップという区分の品種だけではなく,フムロン(苦味物質)を高濃度で含みながら,極めて特徴的な強い香りをビールに付与できる「フレーバーホップ」と呼ばれる品種が開発され,クラフトビールなどで注目されるようになった。著者らの研究は,フレーバーホップの特徴香に寄与する成分を,ビール中のホップの香気成分として代表的なモノテルペンアルコール(ゲラニオール,リナロール,シトロネロール)の含有量,相互作用,酵母の代謝による変換という観点から考察したものである。
著者
吉田 充 堀金 明美
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.10-16, 2008-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

日本においては, 炊飯前に米を水に浸けることが習慣となっている。これにより米粒の中に水が浸透し, 加熱されたときに米粒の中心までデンプンが充分に糊化して米がふっくら炊きあがる。弥生時代の昔から米を栽培し, 米食に親しんできた日本人のやり方である。日本酒の醸造においても, 麹菌を生育させる米は, 蒸す前に水に浸す。浸漬時の米粒内への水の浸透とその結果である粒内水分分布は, 炊飯後, 加工後の米やその加工品の品質を決定する重要な要因である。そこで, 水の分布を画像化できる磁気共鳴画像法 (magneticresonanceimaging, MRI) を用いて, 浸漬過程における米粒中の水分分布変化を追ってみたところ, 水の浸透経路や水分分布は, 米の胚乳のデンプン細胞の粗密や並び方を反映し, 炊飯用の品種コシヒカリと, 酒米用の品種山田錦とでは, 水の浸透パターンが異なっていた。このことから, MRIにより米粒内への水の浸透を観察することで, その米の加工適性の一面を評価できるのではないかと期待される。

2 0 0 0 OA 飲酒と健康

著者
林田 真梨子 木下 健司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.2-10, 2014 (Released:2018-02-16)
参考文献数
7
被引用文献数
1 3

武庫川女子大学バイオサイエンス研究所では,2010年より久里浜医療センター監修のもとアルコール体質遺伝子検査および飲酒習慣に関するスクリーニングテストを実施している。それによって,未成年者に対しては飲酒防止のための健康教育,成人に対しては適切な飲酒習慣の指導を行っている。また,この活動には,我々にとって身近なアルコール体質検査を通じ,遺伝子診断によるオーダーメイド医療の普及・理解に向けた啓蒙を行うといった目的も含まれている。アルコール体質を5タイプに分類し,それぞれ留意すべきポイントがまとめられているので,読者の日々の健康管理に役立てられたい。
著者
本藤 智
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.868-877, 1997-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
33

米味噌も清酒と同様米麹を醸造原理の基本とする点で一致する。永年信州味噌研究所で研究業務に携わってこられた著者は, 2年前から清酒醸造技術を専攻されることになったので, この機会に両醸造技術対比につき概説をしていただいた。味噌醸造技術の新しい展開にお役に立てれば幸いである。
著者
神渡 巧 瀬戸口 眞治 緒方 新一郎 間世田 春作
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.729-736, 2003-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

We developed a method for the measurement of mono-terpene alcohols, whose characteristicsare strongly related to Kansho Shochu. The targeted compounds are nerol, geraniol, citronellol, linalool, and α-terpineol. Porapack Q was used as an adsorbent. Kansho Shochu was extracted and concentrated by solid phase extraction in order to determine the mono-terpene alcohols. Recovery of each compound by this method was 84-100% and was not influenced by compounds other than alcohol. The correlation coefficient of the calibration curve was 0.993 and above. Reproducibility (n=5) at relative standard deviation was 3.0% and below. The relative error was 2.3% and below when compared with standard addition method. In the present work, we discovered the existence of Vanillin in Kansho Shochu.
著者
金村 敦夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.326-332, 2007-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

筆者は酒造会社の販売部門で50年も, 飲酒の現場に深くかかわって来て,「酒道」はどうなっているか,「飲酒の品格」はどうか,「これで将来は?」などと深い思いを重ねて来たにちがいない。筆者は飲酒の歴史を調べ, その作法 (酒道) の由って来たるところを調べ論じている。酒道は自然や稲作を通しての祈り, 神祭の中から「盃事」となり, 武家の「武三献」そして「三三九度の盃」として長く伝えられて来た。一方, 世相の変化と共に飲酒に無礼講や一気飲みの酔態など, 乱れが案じられる, と。しかし筆者は日本人の品格ある飲酒の道は日本人の和の心, 繊細な感性と武士道の精神があるから大丈夫だろうと説いています。お酒を提供する側の方々には, 生活様式が変ってしまっている今日ですが, 品格ある飲酒の道を実践して, 楽しい会話や団樂によって愛酒をひろげ, 業界の活性化にも, と願うものです。
著者
山本 晃司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.76-80, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
3

麹菌は,さまざまな穀物に増殖し麹にすることが可能であるが,使用する原料に応じてそれぞれ適した製麹法が必要となる。ここでは,これまでその色合いに着目した用途が主であった小豆を,麹にして醸造に利用するための工夫と,小豆麹が持つ効能について解説していただくが,穀物の新規利用の試みとして非常に興味ある報告である。
著者
北陸酒造技術研究会
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.682-684, 1995-09-15 (Released:2011-09-20)
被引用文献数
1 1

金沢国税局管内で使われていたいわゆる「金沢酵母」は, 他の地域の製造場から是非使用してみたいとの希望が多かったが, 当酵母に関するプライオリティを有する北陸酒造技術研究会の御好意により, 平成7年度から協会14号 (金沢酵母) として全国に配布されることとなった。従来の協会酵母の中にはその来歴が明らかでないものがあったので, 全国配布に先立ち金沢酵母の来歴, 特徴, 仕込み上の留意点, 製成酒の酒質等について解説していただいた。
著者
久留 ひろみ 玉置 尚徳 和田 浩二 伊藤 清
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.741-748, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
20

実験室(鹿児島大学)及び奄美大島でミキを調製し,並びに市販のミキを購入した。それらのミキ中の乳酸菌を16SリボゾームDNA解析により同定した。実験室で調製したミキ中の乳酸菌を30種同定したが,全てLactococcus lactis subsp. lactisと同定された。しかし,奄美大島で調製したミキ中の乳酸菌(6種を同定)は実験室由来のものとは異なり,Leuconostoc lactis(3/6), Leuconostoc citreum(2/6)及び Lactococcus lactis subsp. lactis(1/6)であった。また,市販のミキ中の乳酸菌(6種を同定)はLeuconostoc citreum(5/6)及びLeuconostoc mesenteroides(1/6)であった。これらの結果は,ミキ中の乳酸菌は原料サツマイモや環境の違いによって異なることを示しているが,詳細な調査は今後の課題である。Lactococcus lactis subsp. lactisはナイシンの生産菌として知られているが,ミキ中のLactococcus lactis subsp. lactisもナイシンを生産した。ミキ中のバクテリアには乳酸菌の他に好気性菌も存在するが,ミキ培養の後半には好気性菌(CaCO3プレート上でのハロー非形成菌)の存在はなくなり,乳酸菌3(ハロー形成菌)だけでフローラを形成した。乳酸菌のスターターを使用することにより,ミキ初期の好気性菌の存在を大幅に低減した。スターターの使用は,ミキを安定的に製造する上で重要であると判断した。
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.585-593, 2007-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

イギリス, フランスに引き続き, 今回はスペイン産のリンゴ酒について紹介していただいた。同じリンゴ酒でありながら日本市場においてはアストリアス地方のシドラもバスク地方のサガルドアも知名度が低い。スペイン産リンゴ酒の歴史的背景, 原料リンゴ果からリンゴ酒の醸造, 醸造場に併設されるレストラン, 飲酒文化についての話まで巾広い話題を提供していただいた。
著者
西谷 尚道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.240-246, 2002-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

日本酒復権のシリーズ第2回目は「味覚」に着目し, 日本酒を発展させるためには既存清酒と多様化清酒の住み分けが必要と唱える。既存清酒では旨口と熟成の味わいにスポットを当て, 燗酒のあり方を含めて述べられている。また, 多様化清酒ではこれまでにはなかったまったく新しい味わいが必要であるとし, それを低アルコール清酒に求め, 具体的な品質設計のモデルが提案されている。
著者
奥田 将生
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.510-519, 2007-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

酒造原料米の最大成分であるデンプンの性質が清酒醸造にどのような影響を与えるのか興味深い課題である。デンプンはアミロースとアミロペクチンにより構成される。近年, 本解説にも紹介されているデンプン変異体米を用いた研究により, 米デンプンの詳細な分子構造とその生成機構が解明されつつある。今回は, 著者の最近の研究成果からデンプン分子構造と蒸し米の酵素消化性, 蒸米のデンプンの老化特性, さらにイネ登熟期気温が米デンプンの分子構造に及ぼす影響と幅広く解説していただいた。品種や気象条件による酒造原料米の性質の違いを理解する上で参考になるものと思う。
著者
堀尾 哲也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.411-417, 2008-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

麹菌などの糸状菌の先端細胞には核が多数存在し, 活発な代謝を行うとともに先端部からの酵素分泌と先端成長を行っている。また, このように多核体ゆえに糸状菌は酵母に比べて数十倍という速度で伸長しなければならないという。最近明らかになってきた菌糸先端成長のしくみについて, 麹菌の近縁の糸状菌での最新の成果について解説していただいた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.712-727, 2016 (Released:2018-08-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1 7

シャンパーニュ委員会技術部門で研修を受けられた筆者には,これまでにブドウ栽培,アサンブラージュ,醸造の前編としての果汁の調製について詳細な解説をしていただいている。今回はベースのワイン(原酒ワイン)の醸造について,通常のスティルワインとの違いや新しい醸造技術を含めて解説していただいた。シャンパーニュの原酒ワインは,シャンパーニュ製造に特化して造られていることがよく理解できる。
著者
小崎 道雄 岡田 早苗 関 達治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.46-61, 2002
被引用文献数
1

酒は農耕文化の産物で, 酒の原料はその民族の主食と一致している。米は日本人の原味覚となっており, 米を原料とした酒は日本人の心の故郷といえる。筆者の提唱される「米の種類を問わず米を原料として醸した酒」を「米酒」とする定義は日本酒, 焼酎の国際化をも考えなければならない現在, 大いに役立つものであろう。<BR>タイ国のいろんなタイプの米酒の詳細な製法が臨場感をもって記述されており, 大変興味深い。筆者の長年の調査研究の成果を, 写真, 図を交えて解説いただいた。「米酒」に関心のある方のご一読をお勧めする。