著者
明比 淑子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.9, pp.597-605, 2011 (Released:2017-02-27)

シェリーといえば,ポーの「アモンティリヤードの樽」,それから「007ダイアモンドは永遠に」で,“There is no year for sherry”(シェリーには年号はないよ)といわれたジェームス・ボンドが“I was referring to the original vintage on which the sherry is based sir. 1851. Unmistakable.”(私がいっているのはこのシェリーのベースとなっている最初のビンテージさ,1851年,まちがいない)と切り返す姿である。しかし,私自身,シェリーに関する知識は少なく「ソレラシステム」ではなく正しくは「クリアデラとソレラのシステム」であることを本稿で始めて知った。さらに,ポートやマデイラについては良質なマデイラやポート自体最近まで味わったことがなかった。酒精強化とともに酸化や熱という酒には大敵とされる条件を使って作り出す独特の香味,それを生み出した歴史と風土,大変興味深い解説である。
著者
谷村 健 濱田 明美 鬼束 楠里 野崎 直樹 甲斐 孝憲 小川 喜八郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.56-64, 2005-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

宮崎県日向灘沿岸および沖縄県石垣島周辺海域からの焼酎用酵母の分離を試みた結果,酵母様微生物を547株分離できた。産膜が見られず,糖醗酵性試験により,良好な結果の得られた16株を選抜した。選抜菌株について醗酵試験,芋焼酎小仕込み試験を行い,醗酵経過が安定し,酒質も良好であったBlD-12株を最優良菌株とした。同菌株はS. cerevisiaeであると同定され,従来の焼酎用酵母よりも耐塩性およびアルコール耐性が高いことが示唆された。高耐塩性は海水域由来株の指標の1つになりうると考えられる。また, 2次膠の最高晶温35℃前後の条件下おいても醸酵は順調に推移し,BlD-12株は高温耐性株であることが確認された。さらに,実地規模での芋焼酎仕込み試験で従来の酵母よりも良好な醸酵経過を示したことから,ソバ等に代表される他の穀類原料においても実用化が期待できる。
著者
河合 弘康
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.311-317, 1996-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

食生活における高級化, あるいは食の個性化への傾向は年々増している。パン食においても同様で, 我が国独自の酒種を用いたパンも魅力ある商品となっている。長年, パン酵母の研究をされてきた筆者に, 掛け継ぎ方式による酒種の製法と生地発酵力, 並びに速醸方式による醸造酵母の酒種発酵特性と液内発酵力に対する食塩の影響などについて興味深い解説をしていただいた。
著者
稲橋 正明 武藤 貴史
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.824-835, 2008-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4

きょうかい酵母を使用して, ふと疑問に思ったこと, これでいいのかな?と抱かれた数々の疑問が協会によせられる。そのような問い合わせの中から多くの方々にとって参考になりそうな事例をまとめていただいた。きょうかい18m号酵母に対するQ &Aが中心になってはいるが, 他の酵母や一般のもろみ管理に関しても示唆を与えてくれる一文である。
著者
井上 喬
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.315-323, 2004-05-15 (Released:2011-09-20)
被引用文献数
2

古くからジアセチルは発酵飲食品の品質を左右する重要な香気成分である。筆者は長年発酵飲食品中で最も弁別閾値の低いビール中でのジアセチル生成メカニズムとその制御について研究されてきた。ここでは全般的なジアセチル問題と新しい技術を駆使した制御問題を取り上げて貰った。
著者
今安 聰 川戸 章嗣
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.274-280, 1999-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1
著者
吉田 元
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.56-61, 1993

日本に伝来した洋酒の歴史を紹介した文献は刊行されているが, 逆に外国人が日本酒をどのように自国に紹介していたかは, 大変興味深いテーマであるがまとまった文献はない。本稿は16~19世紀にかけて日本に渡来した宣教師, 貿易商, 外交官などの著作を調査し, 考証を加えたものである。(I) では16世紀を中心に, (II) では17, 18世紀, (III) では19世紀と3部作の膨大なものである。読み物として興味があるばかりでなく, 経営・製造の両面に有益なヒントが含まれている。
著者
尾崎 一隆 鰐川 彰
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.150-162, 2008-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
34

近年, 分析形の官能評価方法と機器分析データを組み合わせることで, 様々な食品の「おいしさ」や「劣化」に寄与する成分が明らかになっている。本稿では, 定量的記述分析法による官能評価と化学分析を組み合わせてビールの「おいしさ」を解析する研究について, 詳細に解説いただいた。様々な分析手法とともに, ケモメトリックス手法等も大変参考になると思われる。
著者
中村 圭寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.200-207, 1991-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

偶然に発見されたアスパルテームは甘味料として, アメリカで1981年, 日本で1983年に使用が認可された。甘味の質は砂糖によく似ており, 砂糖の約200倍の甘味度をもち, 果実7レーバー増強の効果をもつ。蛋白質の成分からできているダイエット甘味料として, 欧米及び日本では大きな注目を集めている。
著者
童 江明 李 幼均 伊藤 寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.815-821, 1997

日本の味噌・醤油のプロトタイプといわれる醤は古い歴史の中で発展してきただけあって, その種類は多岐にわたり, 今日では非発酵のドロドロした調味料も含まれる。その醤の歴史, 原料と製造法, 製品の品質特性および用途などについて, 中国で製造と研究の実務を担当している著者の情報を中心に纏めていただいた。その1は原料別に異る醤についての総論であり, その2, 3は代表的生産地における醤の各論である。
著者
村上 雄哉
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.728-735, 2016

日本産食品の海外輸出は,国の施策の後押しもあって増加しているが,イスラーム食品市場では,ハラールやハラール認証への理解と対応が必要だ。しかし,ハラールやハラール認証については,なじみが薄くよく知られていない。また,国により詳細は異なっている。これらの実態に詳しい専門家に,ハラールやハラール認証,イスラーム圏のマーケットの実態について解説をいただいた。
著者
但馬 良一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.177-184, 2012 (Released:2017-10-24)
参考文献数
49

ブショネ(bouchonne)と呼ばれるコルクからのカビ臭は,ワインの品質を著しく損なうオフフレーバとして国際的な問題となっている。コルクを使用するワインの20から30本に1本という頻度は,消費者,レストラン等の経済的損失ばかりではなく,嗜好品として大切な「ワインを飲む喜び」を奪うことになる。製造者にとっては,ぶどう栽培や醸造といった自分たちの責任範囲外に品質を損なう要因がありその頻度が高いことは容認できないであろう。しかし,この臭いの原因物質の閾地が極めて低く検査が困難である上,天然素材であるコルクの汚染にばらつきがあり,抜き取り検査だけでは汚染がないことを証明できないため,決定的な解決方法がなかった。筆者らはこの問題に対し早くから研究を進め,高圧水蒸気処理により,カビ臭原因物質を含まないコルクの生産に成功された。
著者
三鍋 昌春
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.7, pp.466-474, 2001

日本初の国産ウイスキ-はスコッチウイスキーを範として始まった。その後日本人の味覚にあったウイスキーを追求するようになり, 製造方法に独自の手法が採り入れられるようになった。ウイスキ-の製造方法はすでに周知のとおりであるが, 国産ウイスキーの品質の特徴が製造工程のどの段階のどのようなメカニズムによるものなのか興味深いところである。<BR>本稿ではウイスキーの製造方法に造詣の深い筆者に, 国産ウイスキ-が生まれた経緯と国産ウイスキーの製造方法を解説していただいた。また, 日本におけるウイスキーの将来についても言及していただいた。
著者
池田 浩二 中野 隆之 米元 俊一 藤井 信 侯 徳興 吉元 誠 倉田 理恵 高峯 和則 菅沼 俊彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.875-881, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
27

「芋焼酎粕飲料(新飲料)」の生体防御能亢進効果に関する試験を行った。新飲料のガン抑制能試験では,サルコーマを接種したマウスに新飲料区の摂取によって腫瘍の重量増加が抑制されており,両者間は5%水準の有意差であり,ガン細胞増殖抑制効果が認められた。このときの脾臓のNK活性はコントロール区に比べて高い値を示し,この両者間では0.1%水準で有意な差が認められ,非常に強いNK細胞活性を示した。新飲料の摂取によって生体防御能が高く維持され,また,新飲料に含まれるポリフェノールの抗酸化作用によっても腫瘍の増殖が抑制されたと考えられた。

2 0 0 0 OA 原料処理

著者
丸山 新次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.184-190, 1998-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25

新人の方々のために, これから6回にわたって, 清酒の基本技術について解説いただく。今回は, 原料処理について非常に詳しい筆者に解説いただいた。一通り酒造技術を学ばれた中堅の方々にとっても, 十分参考になるものと思われる。

2 0 0 0 味噌飲料

著者
大野 彰一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.885-891, 2000

"ご飯と味噌汁" は, われわれ日本人の食事の原点である.現在でも, 味噌の用途のほとんどは味噌汁用で, 一部が鍋料理など料理用, たれ, 味噌漬などに使われる。しかし, 昨今の食の洋風化, 米ばなれなど食生活の変化に伴い, 味噌入り洋風スープ, サラダドレッシングなど, 新しい味噌利用の調理例も多い。多様化する消費者のニーズとあいまって, 味噌を用いた新商品も多数販売されているが, 飲料の分野に味噌を用いた商品例は未だない。筆者は, 味噌の栄養成分, 機能性に着目され, 味噌の飲料原料としての適性を検討され, 味噌を用いた保健飲料, その製造技術を開発され, 商品化の可能性も示された。この味噌飲料について, 詳細に解説していただいた。
著者
奥田 将生
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.262-272, 2010 (Released:2012-02-24)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

着色度の増加や老香の生成などの清酒の劣化は,含まれる窒素化合物や硫黄化合物が大きく影響すると考えられている。この劣化を防ぐために,清酒メーカーでは,米を磨き,アミノ酸度の低い清酒を醸造し,活性炭ろ過を行った後,製品化している。本稿では,清酒の劣化に対する原料米や清酒中の窒素や硫黄化合物の影響について解説いただいた。