著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.150-157, 1999-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

伊豆諸島の青ヶ島で芋焼酎の製造に用いられている粉状麹の製麹法について現地調査を行うとともに, 粉状麹の製麹過程中の麹の状貌変化や主要糸状菌の検索とその諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹法の特徴は, 原料大麦を妙こう処理してから粉状にして用い, 種麹などのスターターを使わずに自然種付によって行うことから製麹に約1週間を費やすことにあった。また, 製麹時に, タニワタリの葉が用いられていた。(2) 青ヶ島には7カ所の製麹場があり, そのうち一醸造場の製麹過程中の糸状菌の動態を調査した。引込みから24時問目にはピンク色の胞子と黄色の胞子が混在していたが, 41日目までに黄色の胞子を持った菌株が急激に増殖し, その後も穏やかな増殖が続き, 出麹まで7目間を要した。出麹時の麹は黄色の胞子が2.7×1011個/g・麹, 黒色の胞子は3.1×1010個/g・麹で, 黄色の菌株がセ体の粉状麹であった。(3) 製麹過程中の培養物および出麹時の麹より分離した菌株の同定を行った結果, 粉状麹に優勢して着生する糸状菌はA. oryzae groupに属する菌種であり, 他にA. niger groupがわずかに混在する菌相であった。(4) A. oryzae groupの生理学的牲質を調べた結果, 生酸性においては, 多酸性の株が多く, 麹酸は, 全ての株で高い生産性が認められた。また, 酵素力価は, α-アミラーゼと中性プロテアーゼ活性において菌株間に大きな違いがみられ, さまざまな性質の菌が混在していた。(5) A. niger groupの生理学的性質を調べた結果, 生酸性は, A. oryzae groupより高く, 酵素力価は, α-アミラーゼ, 中性プロテアーとも低かった。本研究を行うにあたりご協力いただきました青ヶ島酒造合資会社奥山喜久一氏ならびに青ヶ島役場の方々に深謝いたします。
著者
奈良原 英樹
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.873-881, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
6 7

我々醸造家は, 製造工程中に何か思わしくないような現象などをみると, それが麹菌の特質や生育特性に適していないことをしていながら, 時として種麹に原因を擦りつけるようなことがある。本稿は, それらの誤解をもう一度, 見直し一層優れた製品を安定して生産するよう, 種麹を供給する側から解説していただいた。
著者
金桶 光起
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.320-326, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
7

4-ビニルグアイアコールは清酒においては官能的に煙臭,薬品臭,香辛料臭と称される。その生成はワイン,ウイスキー,ビールにおいては酵母や乳酸菌等により,それぞれの原料由来のフェルラ酸の脱炭酸によって生成し,また,焼酎およびビールでは微生物の関与しない加熱工程でも生成することが報告されている。清酒における生成要因はこれまで報告がなく,筆者は清酒中の4-ビニルグアヤコールの生成要因について,微生物学的,化学的に検討した。特に高付加価値清酒の製造管理に重要なファクターになり得ると考えられる。

2 0 0 0 OA 陶淵明と酒

著者
茂田井 円 松井 康子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.587-590, 1991-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9

中国六朝時代の大詩人陶淵明の酒好きは広く知られている。彼の酒に対する考え方や酒に対する愛着, 常時接していた酒について, その造り方を彼の記述と住んでいた地域の地理的条件を加味し検討した。さらに, 彼が「緑酒」と表現した, 酒の復元の第一歩として草麹の再現を試み, 草麹が再現できるまでの不安と成功したときの喜び, できた麹から醸しだされるであろう酒の香味について想像を働かせ, 陶淵明が感じたであろう味および酒に対して抱いた神秘性について記していただいた。
著者
増田 正裕 小村 啓
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.29-33, 1993-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
44

近年著しい発展をとげている分析法や解析法によって, 複雑きわまりないウィスキーの香味もその内容が次第に明らかになりつつある。「香気成分とその由来」「香気成分分析手法の最近の話題」「官能評価と成分の寄与」の3回シリーズでウィスキーの味, 香りを著者の研究を含めて解説していただいた。
著者
大嶋 俊二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.167-178, 2017 (Released:2022-06-22)
参考文献数
50

アルコールは酵母のもたらす最大の贈り物である。その甘美な贈り物も,飲み方によっては醜悪な贈り物と化してしまうため,アルコール代謝動態の研究は重要であるが,飲酒時の様々な条件が及ぼす影響については,エビデンスが少ない。そこで,飲酒時の種々の条件の中でも特に重要な飲酒時の食事摂取が,アルコール代謝動態に及ぼす影響,ならびにその役割について主にヒトでのデータを基に今回解説いただいた。

2 0 0 0 OA 酒母 (2)

著者
黒須 猛行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.414-424, 1998-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
著者
包 啓安
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.658-663, 2000-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9

中国の酒造りの歴史は大変古く, 日本の酒造りも当然その影響を受けている。現代中国では, 穀類を原料とする醸造酒を黄酒と称しているが, その中国黄酒の酒母について, 現代の製造方法と歴史的な製造方法について解説していただいた。最近の製造技術には, 日本の影響が見られることがわかる。
著者
松尾 眞砂子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.426-431, 2008-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
24

かねて, 著者には, あらかじめオンチョム菌で発酵させた大豆とおからを利用した低塩米味噌の特性について詳細に解説して頂いた (本誌第99巻第科号) が, 今回は, 市販の代表的な味噌について, 調理温度や併用する香辛料が, 特に, 老化防止, 発癌予防効果を有する抗酸化作用, ラジカル消去力 (活性酸素捕捉力) など味噌の機能性に対する影響を検討された結果について詳しく解説頂いた。

2 0 0 0 OA 麦焼酎

著者
下田 雅彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.365-371, 1999-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

麦焼酎はここ20年あまりの消費拡大のなかで減圧蒸留あるいはイオン交換といった新しい技術を利用した香味の軽いタイプが主流になってきた。今回はその軽いタイプについて現場での実用研究を続ける著者自身の研究成果も踏まえて解脱していただいた。
著者
倉光 潤一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.327-336, 2008-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

日本のすぐ隣にある台湾とは, 観光, 商用などで相互に人の往来も盛んであるにもかかわらず, 台湾の酒類について本格的な紹介記事は少ない。台湾における酒類制度, 販売, 消費の動向など最新の調査報告をまとめた本稿はきわめて興味深いものであり, 今後酒類の輸出市場開拓にとって有益なものとなろう。
著者
岡崎 直人 下田 雅彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.532-541, 2008-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

今から500有余年前にアジア大陸から日本に伝来した焼酎の元祖は,「大陸型」の製造技術で造られた蒸留酒であった。その後, 焼酎は清酒醸造技術の導入をはじめ, 独自の技術改良を重ねて「日本型」の焼酎製造技術を築き上げ, 今や日本の伝統的蒸留酒へと進化した。本解説では, 麦焼酎技術の歩みについて, 原料大麦の水田裏作による二毛作栽培の特徴, 壱岐の伝統的麦焼酎の技術変遷と壱岐以外の新タイプ麦焼酎との比較考察, 麦焼酎に特有な製造技術として大麦の原料処理と製麹に関する技術の歩みを紹介する。さらに, わが国特有の麹に基づく伝統技術の継承と新しい技術の調和のうえに多様な「個性」を創出するとともに, 日本独自の名称表記「焼酎」を世界に発信するなど, 今後の課題についても展望していただいた。

2 0 0 0 OA ビール品質

著者
柏田 修作
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.298-306, 2001-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

人々がビールの善し悪しを判断するには五感のすべてを用いている。とりわけ,“香味”(嗅覚, 味覚, 触覚),“色”(視覚),“泡”(視覚, 聴覚),“濁り”(視覚),“噴き”(視覚) といった要素は, お客様から見て重要な品質である。使用する麦芽の特徴によって大きく左右される色を除いて, 香味, 泡, 濁り, 噴きについて解説する。
著者
中川 智行
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.9, pp.632-637, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

アセトアルデヒドという物質は,多くの人に対して負のイメージを想起させる。イメージだけでなく,実際に細胞毒性を有することもよく知られたことである。著者は,アセトアルデヒドに晒される機会の多い酵母をモデルとして用い,アセトアルデヒドに対する細胞応答機構について取り組み,多くの興味深い成果を上げておられる。アセトアルデヒドに対して酵母が有する多様な耐性機構を中心に,意外な側面である細胞の活性化に関する事柄も含め,多面的に解説していただいた。
著者
李 大勇
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.124-129, 1992-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5

本誌86巻9号に, 第1回国際酒文化学術討論会の様子を報告した。今回は同討論会の通訳を勤め, 坂口先生の「日本の酒」を中国語に翻訳紹介された筆者に, 歴史, 自然, 文化に恵まれた中国四川省の酒周辺について解説していただいた。本稿は筆者が, 自から日本語で書かれた文章なので, その実際と雰囲気を直に味わうのに充分である。
著者
下飯 仁
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.474-480, 2002-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16

協会701号等の泡なし酵母は, 1970年代に泡あり酵母の変異株として育種され, 現在, 広く清酒醸造に利用されているが, その泡なしとなるメカニズムについては, 長い間不明のままであった。今回, 協会7号の高泡形成に関わるAWA7遺伝子がクローニングされ, 協会7m号のAWA7遺伝子の構造が解析された結果, 高泡形成および泡なし性のメカニズムが分子レベルで解明された。これは近年の分子生物学と酵母遺伝学の発達の腸物であり, その成果は鮮やかで見事である
著者
田口 隆信
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.8, pp.550-556, 2014 (Released:2018-03-15)
参考文献数
5

上槽工程は省力化装置がなかなか普及せず依然として労力を必要とするとともに,最終の酒造工程として製品の品質に悪影響を及ぼさないように注意が必要な工程でもある。ここで紹介される上槽方法は,従来の方法と発想が異なり品質面を重視し完全に搾りきることを目指さない高級酒に特化した方法である。この方法によれば,同じように搾りきらない上槽方法である「袋吊り法」と同等の品質の上槽酒をより少ない労力で得ることができる。さらに,洗浄が容易なステンレス製の機器を使用するため,気を付けて洗浄などの管理を行えば特別なノウハウがなくても汚染により酒質を劣化させることはない。現状では「袋吊り法」より機器の導入費用は嵩むとはいえ既に10台以上の装置が稼働中とのことであり注目に値する上槽方法といえる。