著者
矢嶋 端夫 乙黒 親男 松土 俊秀 奥田 徹 高柳 勉 横塚 弘毅
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.671-676, 1998-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ワインから分離した産膜酵母(S. cerevisiae 6菌株およびCandida sp. 1菌株)および産膜酵母標準3菌株に対するパプリカ種子抽出物, 亜硫酸, ソルビン酸およびいくつかのフェノール化合物の抗菌性を検討した。分離7菌株およびCandida krusei(RIFY YTd3)を除いた標準2菌株(S. Serevisiae(RIFY3012)とCandida vini(RIFY2024))のいずれに対してもパプリカ種子抽出物は高い抗菌性を示し, そのMICは50~100μg/mlであった。また, 標準株C. kmsei(RIFY YTd3)はパプリカ種子抽出物に対して耐性を示したが, 亜硫酸には感受性を示し, そのMICは25μg/mlであった。パプリカ種子抽出物に対して耐性が弱い標準株Candida vini(RIFY2024)は, ソルビン酸および亜硫酸に対するMICが300μg/mlと高く, 菌株により特徴ある生育抑制傾向が認められた。分離したS. cerevisiae 2菌株とCandida sp., 標準株C. krusei(RIFY YTd3)およびC. vini(RIFY 2024), 計5菌株に対するパプリカ種子抽出物とソルビン酸, 亜硫酸あるいは種々のフェノール化合物とを併用したが, 顕著な相加あるいは相乗効果は認められなかった。ソルビン酸および亜硫酸は, pHが低いほど, またエタノール濃度が高いほど, 供試5菌株に対するMICは低下したが, パプリカ種子抽出物の抗菌性に対するpHの影響は小さかった。以上の結果, パプリカ種子抽出物はワインの産膜酵母に対して強い抗菌効果が認められ, さらに亜硫酸あるいはソルビン酸との併用により抗菌スペクトルが広がり, ワインの産膜酵母による汚染を防止できる可能性が示された。
著者
中森 俊宏 北川 さゆり
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.25-36, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

大豆は,日本人にとってなくてはならない食材であり,タンパク質,レシチン,オリゴ糖,イソフラボンなどに富む優れた機能性は,今や世界の人々の健康や食生活に大きく寄与しようとしている。調整大豆ペプチドは大豆タンパク質の優れたアミノ酸バランスを有し吸収性に優れた素材である。この特徴を生かした栄養ドリンクなどが開発されており,少し前には健康情報テレビ番組によりブームとなった。一方,最近市場が拡大している新ジャンルと呼ばれる酒類の原材料表示をみると大豆ペプチドと表示されたものがあり,アルコール発酵を円滑に行うための素材としても注目されている。本稿では,大豆ペプチドの製法から,その物理学的特性,栄養学的特性,発酵食品への利用について解説していただいた。
著者
篠田 次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.127-140, 2016 (Released:2018-05-30)
参考文献数
4

この論文は著者が言うように,日本酒造組合中央会の技術幹部養成上級研修通信講座テキスト「清酒工場設計の考え方」の続編として製造設備とその付帯設備に求められるスペックを熱エネルギーの視点から,著者の豊富な経験をまじえながら,わかりやすく論じたものである。さらに,酒造の各工程に関わる熱エネルギーの問題が具体的な例示によって述べられているので,酒造工場のエネルギー管理や省エネの観点からも参考になることが多々あり,一読をお奨めする次第である。
著者
土谷 紀美 西村 賢了 岩原 正宜
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.12, pp.878-882, 2002-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

本報告では, 液体培養で得られる麹菌体を利用したリアクターにより, 菌体結合型グルタミン酸脱炭酸酵素 (GAD) の作用でGABAを生産させることを試みた。さらに, 通電透析により基質であるグルタミン酸との分離も試みた。また, 生産効率を高めるため, 高いGAD活性を有する菌体を得る条件を検討した。その結果, 液体培地のpHが5.0であること, 培地中への50μMのPLPの添加が効果的であることが明らかとなった。液体培養によって得られたペレット状の麹菌体 (乾燥重量6g) のGAD活性を低温処理によって高め, 反応液pHを5.3-5.5にコント'ロールした撹拝槽型リアクターに麹菌体を担体として用い, 菌体上のGADに500mMグルタミン酸と0.5mMピリドキサール5-リン酸を反応させた。今回, 菌体の破砕処理や固定化は行わず, ペレット状の菌体をそのまま用いた。その結果, 100分反応後のGABA濃度は340mM, 200分後には400mMに達し, 基質からの変換率は約80%と高かった。生産効率は8.5mmol-GABA/g麹菌体/hr (0.9g/g/hr) と, 極めて高く, 短時間で高濃度のGABA溶液を得ることができた。その際, リアクターの反応温度は, GADの熱安定性から37℃ が望ましかった。また, グルタミン酸とGABAの分離には, イオン交換膜を利用した通電透析が効率的であることがわかった。
著者
奥田 将生 橋爪 克己 上用 みどり 沼田 美子代 後藤 奈美 三上 重明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.97-105, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
19
被引用文献数
3 11

登熟期の気温と原料米の溶解性に密接に関係するデンプン特性の年次·産地間変動との関係について解析し,以下の結果が得られた。1 同一品種でも産地間でデンプン特性や蒸米消化性が異なるのは,産地の登熟期気温が影響したことが主な原因であると示唆された。2 25品種27産地の生産年度の異なる試料について,出穂後気温とデンプン糊化温度の関係について解析したところ,登熟期気温と糊化温度は高い相関性を示し,登熟期気温が低い年は糊化温度が低く,一方気温が高いと糊化温度も高くなることを確認した。以上,デンプン糊化温度は蒸米消化性と高い相関性を示すので,これまでと今回の研究結果から,原料米ごとの出穂後の気温に注目すれば,かなりの精度で原料米の溶解性に関する酒造適性を予測できると考えられた。
著者
小林 信也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.818-822, 1989-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
3

製造技術の向上により, 全国的に高品質の清酒が醸出される現在において, 減点法による品質評価法は, 酒質の均一化, 平凡化を助長するという欠陥がみられるようになった。また, 専門家間の酒質の表現法から, 一般消費者も理解できる表現法への脱皮も要請されるようになった。このような背景から, 加点法という新しい清酒の評価法の作成に携わられた筆者にその内容について解説していただいた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.286-301, 2016 (Released:2018-07-12)
参考文献数
9

シャンパーニュ製造について研修をされた筆者には,これまでに本誌でブドウ栽培やアサンブラージュについて解説をしていただいたが,今回はシャンパーニュ製造のための果汁の調製について貴重な情報を紹介していただいた。日本でも瓶内二次発酵のスパークリングワインの生産が増えているが,通常の白ワインの果汁調整とは考え方が異なることが分かり,大変興味深い。

2 0 0 0 OA 納豆の機能性

著者
須見 洋行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.518-524, 1990-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
42
被引用文献数
3

納豆という食品は, 世界中の発酵食品の中でも最もユニークなものといってよいであろう。それは, 利用される菌が枯草菌 (腐敗菌) に類縁の菌を利用しているところにある。しかも, 特有の香味と粘質物を産生することの他, 最近は人類にとって有効な生体機能調節機能を有することが, 科学的に解明されつつある。その研究分野での第一人者に最新の情報を解説していただいた。
著者
橋本 壽夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.15-19, 1996-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
35

塩が高血圧の原因となるという学説は40年程前に行ったダールの疫学調査が余りにも単純明解に図示されて以来すっかり信じこまれてしまっていたが, この説はもはや神話化してしまっていることを最新の多数の論文を引用して検証していただいた。
著者
宇賀神 文子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.318-320, 1996

BCOJ海外発表技術論文の再演会は, ビール酒造組合内の国際技術委員会が中心となり, 国内において海外発表論文の早期伝達等を目的に開催されている。<BR>本稿では, メンバーである筆者に, 再演会開催の経緯と第5回の模様を紹介していただいた。
著者
井上 喬
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.182-187, 1996

我が国のビール醸造技術は, 欧米の技術大会での研究成果の発表も多い。国内ではビール酒造組合内のビール技術委員会が中心となり・海外発表技術論文の再演会等最新情報の伝達が行われているが, アジアの中での最新の情報交換は少ない情況にある。<BR>本稿では, ビール技術委員会のメンバーである筆者に, 7ジア地域でのビール技術者の交流を目的とした醸造技術者会議を結成しようという動きについて, 紹介していただいた。
著者
内村 泰 小島 陽一 小崎 道雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.881-887, 1990
被引用文献数
1 10

1. 構成微生物により次の3グループに分けられた。<BR>A: <I>Saccharomycopsis</I>属酵母優勢型<BR>B: <I>Rhizopms</I>属中心の糸状菌優勢型<BR>C: 菌糸状酵母と糸状菌共存均衡型<BR>これら3グループに分類されたチャン・ボーも希釈平板を行うことにより, 全試料中からSaccharomycopsis属酵母とRhizopus属中心の糸状菌が共存することが確認された。<BR>2. 糸状菌優勢型の餅麹を用いて蒸煮米の糖化を行ってみたが, 他の餅麹試料を用いて糖化を行ったものに比べて非常に弱いものであった。<BR>3.糸状菌およびチャン・ボーのアミラーゼ活性を試験した結果, 分離した15株の菌株のうち, アミラーゼを生産していたものはRhixopus sp.の5株とAspergillussp.1株の計6菌株のみであった。<BR>他の菌株のアミラーゼ活性はきわめて弱かったことから, チャン・ボーより分離される糸状菌はそのすべてが必ずしもアミラーゼ生産に関与しているとは考えられず, チャン・ボーの主糖化菌はSacCharomycopsis fibuligeraであり, Rhizopus sp.や, 若干のASpergillus sp.などの糸状菌が, 補足的に糖化に関与しているものと考えられた。<BR>以上のことから, これまで報告してきたSaccharomycopsis属酵母がアミラーゼ生産を行うの主糖化菌であることを支持する結果となった。<BR>同行を許可された田部井淳子氏を隊長とするブータン遠征女子登山隊に感謝します。
著者
数岡 孝幸
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.298-305, 2015-05

日本で古くから造られている清酒は,現在では冠婚葬祭などに欠かせないほど生活に密着している。しかし,その消費量は1975年頃のピークを境に現在にいたるまで減少し続けている。その要因として,消費者が選択することができる酒類の増加,若者の酒離れ,主な清酒消費者の高齢化,さらには景気の低迷,娯楽の多様化にともなう酒類購入に企てられる費用の減少など様々な要因が考えられるが,消費者の嗜好の多様化もその一因であると考えられる。米,米麹,水を原料とし,総米に対する汲水歩合135%前後で仕込む清酒は,並行複発酵,高濃度仕込み,低温発酵,低カリウム濃度,乳酸酸性およびもろみ中での固形物の溶解といった他の酒類とは異なる清酒製造特有の発酵環境を形成している。清酒酵母は,そのような清酒製造条件下の酒母およびもろみで発酵力が強く良質の清酒を造る適性を持つ一群の酵母である。かつて日本には現存する数を大きく上回る清酒製造蔵が存在し,それぞれの立地条件(環境要因)や製造法,蔵付き酵母の性質で特色ある清酒が製造されてきたが,それは同時に造られる清酒の品質の不安定さを招いていた。近代的な清酒醸造では野生酵母に汚染されず良質な製品を安定して生産することを目的に,酒母製造工程において純粋培養した優良清酒酵母が多量に添加される。清酒の酒質は原料や製造工程における様々な要因によって変化するが,その中で清酒製造に使用する清酒酵母の種類は,清酒の酒質形成における重要な要素の一つである。

2 0 0 0 OA みりんの発生

著者
山下 勝
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.768-772, 1991-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1

みりんは発酵を伴わないエキス分の多い特徴を持ち, 主として料理, 食品加工等に利用される基盤のため, 一般の酒類とはやや趣をことにする。このためかそのルーツに対しては, あまり関心が払われているとは言い難い。本報は, みりんのルーツを種々の文献あるいは状況から考察した興味ある解説である。
著者
秋山 稔 三上 慶浩
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.178-185, 2006

貯蔵に伴う蒸留酒のクラスターサイズの変化を定量的に決定するために<BR>(1) マクロなクラスターサイズを (1) 式と (2) 式で定義した。<BR>(2) エタノール水溶液での水分子とエタノール分子の水和クラスターへの分率であるP<SUB>w</SUB>とP<SUB>E</SUB>とを贋-NMRにおける化学シフト値の濃度変化から (5) 式により求めた。<BR>(3) 蒸留酒として, ウィスキーを選び, ウィスキーでの分率P<SUB>w</SUB>*とP<SUB>E</SUB>*とをP<SUB>w</SUB>とP<SUB>E</SUB>を基礎にし, ウィスキーとエタノール水溶液から蒸発する水分子数の比とエタノール分子数の比を測定することによって, (12) 式から算出した。<BR>(4) 算出されたP<SUB>w</SUB>*とP<SUB>E</SUB>*から (4) 式により, ウィスキーでの3種のマクロなクラスターサイズを求めた。<BR>(5) 本研究で定義されたマクロなクラスターサイズの25年の貯蔵に伴う変化はエタノールクラスターで大きく減少しているが, 水和クラスターと水クラスターではそれに較べて小さい。
著者
金田 弘挙
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.9-18, 2011 (Released:2016-06-13)
参考文献数
13
被引用文献数
1

品質が向上し,いわゆる欠陥のある商品というのは少なくなった。そこで注目されているのは,人の感覚によって呼び起こされ,それによって支配される感情,欲望などといった感性の世界である,感性は,こころ(感情・記憶)でもあり,からだ(反射・運動)でもある。感性刺激に対し言葉によってかたられる官能評価はもちろん大切ではあるが,ヒトの脳や体の部位にどのような応答が現れるのか近年様々な研究が行われている。筆者は,ビールの「のど越し」という,それまで官能的に表現されていたものの混沌としていた感覚に果敢に取り組み,客観的にこれを計測する技術を開発された。ビールにとどまらずその研究の価値は広がっており,新たな分野を開拓している。
著者
門間 敬子 橋本 渉 村田 幸作
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.116-121, 1999

とかく近頃, 遺伝子組換え食品の安全性が話題になっている。特に消費者は組換え食品に対しアレルギーを抱いているようである。<BR>ここでは, 遺伝子組換え作物の安全性について, ジャガイモとコメに大豆の貯蔵タンパク質であるグリシニンの遺伝子を挿入した組換え作物をつくり, 非組換え体と比較し, その成分組成や動物飼育実験結果からの安全性評価を解説していただいた。また, 組換え体の容易な判別法 (モニタリング) を使用して遺伝子組換え大豆の検出法をも紹介していただいた。