著者
石見 佳子 竹林 純 横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.79-95, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
49

【目的】人びとが健康な食生活を営むためには,適切な食品の選択が求められる。諸外国では消費者が食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品をランク付けする「栄養プロファイルモデル」が活用されているが,我が国においては策定されていない。そこで本研究では,加工食品について,日本版栄養プロファイルモデル試案を作成することを目的とした。【方法】WHO Technical meeting 2010報告書,WHO健康な食生活のための食品の包装前面表示ガイドライン及び諸外国のモデルを参考とし,国民健康・栄養調査,日本人の食事摂取基準(2020年版),日本食品標準成分表2015年版(七訂),日経POSデータ等を根拠資料として用いて,加工食品の日本版栄養プロファイルモデル試案を作成し,妥当性を検討した。【結果】①日本の公衆栄養の観点から,対象を18歳以上,対象項目を脂質,飽和脂肪酸,ナトリウム(食塩相当量)及び熱量とした。②日本版栄養プロファイルモデルとしてカテゴリー特異的モデルを選択した。対象食品を調理済み加工食品を含む加工食品とし,一般加工食品は国民健康・栄養調査食品群別表の中分類を基に15カテゴリーに分類した。③対象項目の閾値基準を設定し,各食品カテゴリーについて閾値を設定した。【結論】日本の公衆栄養の状況に応じた日本版栄養プロファイルモデル試案を作成した。
著者
佐々木 香苗 今田 拓磨 伊藤 和枝 古賀 里利子 坂田 利家 曲田 清彦 浦田 宏二
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.227-234, 2004-08-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
24

The intake of dietary fat, especially saturated fatty acid, has noticably increased in Japan as a result of the Westernization of eating habits. Itoh et al. have shown that the postprandial insulin release in healthy young women was stimulated by meals rich in saturated fatty acids (SFA). Vanadium is known to be a trace element that mimics the biological effect of insulin. The objective of this present study was to evaluate the effect of mineral water containing vanadium on the insulin insensitivity induced by a diet rich in SFA.Twenty healthy young women participated in this crossover study. We used two kinds of mineral water containing approximately 60μg/l of vanadium (water A and B). The subjects were assigned to two groups of 10 subjects each forrespectively ingesting water A and water B. Vanadium-free mineral water was used as a control. Each subject ingested each type of water and a diet rich in SFA for 8 days. Fat constituted 30% of the total energy in the ratio of saturated fatty acid (S): monounsaturated fatty acid (M): polyunsaturated fatty acid (P)=5:4:1. On the last day, the plasma glucose level and serum insulin, triglyceride, and free fatty acid levels were measured at 0, 30, 60 and 120min after the evening meal.Water A reduced the serum insulin level in comparison with the control value 120min after the meal. A similar effect was observed with water B. The postprandial plasma glucose level showed no significant difference between the control and mineral water containing vanadium.Our results suggested that mineral water containing vanadium had a beneficial effect on the insulin insensitivity induced by a diet rich in SFA.

1 0 0 0 OA 食事と大腸癌

著者
山口 百子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.71-78, 1996-04-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1
著者
小林 仁美 金子 健彦 多賀 昌樹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.77-84, 2019-08-01 (Released:2019-10-15)
参考文献数
31

【目的】月経前症候群(PMS)の発現には様々な因子が関連しており,これまでに睡眠時間や栄養素摂取,欠食の有無,やせや肥満,運動習慣などとの関連が報告されている。食物には様々な栄養素が含まれていること,時代と共に食事内容は変化することを考えると,食事を選択する際の意識・傾向を含め,継続的,多角的な視点でPMS症状との関連を解析する必要がある。そこで本研究では,女子大学生を対象にPMS症状と食生活習慣の関連について検討することを目的とした。【方法】52名の女子大学生を対象とし,PMS症状に関する調査,食事調査および食生活習慣調査を実施した。PMS症状はMDQ(Menstrual distress questionnaire)を用いて評価し,MDQスコアと栄養素および食品摂取量の相関を求めた。平均値の比較には対応のないt検定を行った。【結果】MDQスコアと栄養素等摂取量との相関を検討したところ,動物性たんぱく質,動物性脂質,飽和脂肪酸,飽和脂肪酸エネルギー比率,コレステロールと正の相関,炭水化物と負の相関が認められた。食品摂取量では肉類,卵類,乳類と正の相関,穀類および砂糖・甘味料類の摂取量と負の相関が認められた。また,食生活習慣調査では食品の組み合わせや調理方法を考慮しない者はMDQスコアが高く,PMS症状が強かった。【結論】栄養素や食品の摂取量とPMS症状の程度には相関が認められることが明らかになった。食生活習慣の改善はPMS症状を緩和するために有効な手段の一つである可能性が示唆された。
著者
山内 有信
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.51-59, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
21

【目的】核酸(RNA)高含有玄米発酵抽出物(FBR)の摂取が血糖値の上昇を抑制することについて,ラットを用いた一連の実験によってすでに報告している。しかし,この一連の実験は動物実験であり,摂取させたFBRも多量であった。そこで,本研究では,推定通常摂取量付近の摂取でヒトにおいても同様の効果が期待されるかについて経口糖負荷試験によって確認することを目的とした。【方法】健康な若年日本人25名(男性6名,女性19名)を被験者として,約10%濃度のマルトデキストリン水溶液と 5 gの粉末化した通常玄米(NBR)またはFBRの同時摂取による糖負荷試験を,シングルブラインド・クロスオーバー試験にて実施した。なお,血糖値の測定は,30分間隔で糖負荷後120分間実施した。【結果】糖負荷後の経過時間が影響する血糖値の変化の仕方にFBRとNBRで違いはなかった。しかし,FBRの摂取による血糖値の変化は,NBRに比べて緩やかであった。また,糖負荷後120分間の時間曲線下全面積および血糖上昇曲線下面積を計算して比較した結果,実測値計算と変化率計算のいずれにおいても,FBRの同時摂取時はNBR摂取時に比べて有意な低値を示した。【結論】FBRの摂取は,健康な若年日本人においても食後血糖値の上昇抑制が期待できることが示唆された。
著者
木林 悦子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.21-31, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
37

【目的】高校生におけるセルフエスティームと食・生活習慣セルフエフィカシー,食行動変容ステージ及び食事摂取状況との関連を因果構造的に明らかにする。【方法】兵庫県N市の公立高等学校(1校)に在籍する2015年度2年生357名のうち,回答が得られた301名を対象とした。セルフエスティームはRosenbergの尺度を用い,これが影響する観測変数として,食・生活習慣セルフエフィカシー(信頼性と妥当性が確認された12項目の尺度),食行動変容ステージ(Transtheoretical Modelに基づいた5段階),食事摂取状況(Food Frequency Questionnaireから日本人の食事摂取基準をもとにスコア化)を用いた仮説モデルを立て,共分散構造分析をした。【結果】本仮説モデルの配置不変性を検討した結果,許容範囲の適合度が得られ(χ2=226.458,df=176,GFI=0.919,AGFI=0.874,CFI=0.948,RMSEA=0.031),男子ではセルフエスティームから12項目の食・生活習慣セルフエフィカシーを始めとする各パスに有意な正のパスが示されなかった。一方,女子ではセルフエスティームが,12項目の食・生活習慣セルフエフィカシーに有意な正のパス(0.16,p=0.041),そこから食行動変容ステージへのパス(0.29,p=0.002)を介して食事摂取状況(0.19,p=0.013)に影響を及ぼす間接効果が示された。【結論】高校2年生の女子では,セルフエスティームを高めることで食・生活習慣セルフエフィカシーを高め,さらに食行動変容ステージの向上を介して,食生活に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
渡邉 紗矢 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.69-77, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
16

【目的】高度経済成長期で子どもの体格は向上したが,その要因の一つと考えられる当時の学校給食の変化は知られていない。そこで,高度経済成長期に学校給食で使用された食材の特徴を年代区分別に把握することを目的とした。【方法】2019年3月,高度経済成長期(1955(昭和30)~1973(昭和48)年)のうち,得られた広島市の1957,1959~1966(昭和32,34~41)年度の小学校給食の献立表の昼食献立を解析対象とした。献立の料理数,使用食材数,使用された食材を調べた。提供された年度で献立を「導入期(1957,1959,1960年度)」「成熟期(1961~1963年度)」「変革期(1964~1966年度)」に分けて,各年代区分の献立の特徴をχ2 検定,Kruskal-Wallis検定を用いて比較した。【結果】1,445日の献立を得た。料理数と使用食材数は変革期で最も多かった。年代区分別で食材の使用の有無に違いがみられ,増加したものは豚肉,鶏肉,牛乳,マヨネーズなどであった。減少したものは鯨肉,じゃがいも,にんじん,たまねぎ,みそなどであった。また,年代区分別の一日の調味品類の使用種類数で差がみられ,導入期より成熟期,変革期で多かった。【結論】高度経済成長期の期間で,学校給食の料理数,使用食材数は変化していた。鯨肉の使用が減り,豚肉,鶏肉の使用が増え,使用される調味品類の数も増えていた。
著者
清水 亮 丹藤 雄介
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.40-50, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
7

【目的】先行研究において,栄養管理プロセスにおける栄養診断コード(Nutrition Diagnosis Code: NDC)の明確な違いを示すことが,栄養診断実施の促進に必要と考えられた。そこで,妥当性かつ一致性の高いNDC選択のためのフロー図(NDCフロー図)の開発に取り組むこととした。【方法】NDCフロー図は,エネルギーや栄養素摂取量に関係する第1NDC(P1)が導かれる部分と,第1NDCで示される栄養問題の根本的な原因を示す第2NDC(P2)が導かれる部分の二部構成とした。青森県内95病院の管理栄養士・栄養士の長に,提示した模擬患者症例についてNDCフロー図を用いて,栄養診断を実施してもらい,NDCフロー図の妥当性等を評価した。【結果】回答率は43.2%であった。模擬患者Aでは,P1, P2ともに正答率が80%以上,妥当と考える割合は90%を超えていた。他方,模擬患者Bでは,P1で正答率が約40%,妥当と考える割合が約90%,P2ではそれぞれ10%,50%であった。NDCフロー図の難易度は,有用性に比べて低い評価であった。【結論】NDCフロー図は,その有用性は期待されたものの,妥当で一致性の高いNDC選択のためのツールとしては改善が必要であり,特に体重や検査値に関するNDCや行動と生活環境領域の選択に課題があることが示された。
著者
武藤 志真子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.31-37, 2003
被引用文献数
3

食事の摂り方や内容の実態と問題点, 行政側からの食関連の提供情報や消費者自身の取り組みに関するニーズにつき, インターネット上で2001年9月にアンケートを実施した。回答者は男性164名 (22.5%), 女性565名 (77.5%), 計729名であった。男性の74%, 女性の80%が食生活の改善実行希望期群であった。食行動変容段階は, 食事の摂り方と食事内容の問題点, 食情報および食活動に関するニーズについて有意な関連があった。アルコールと野菜摂取については, 改善のための動機づけ情報が必要である。実行希望期群で「脂肪が多すぎる」が40%以上と有意に多く, 外食産業や食品産業も含めた具体的取り組みが必要である。消費者自身の食活動については, 関心低期群から実行期群まで食行動変容段階があがるほど, 個人から家族へ, さらに地域の人との交流から食文化へと関心領域と視野が広がっていた。
著者
坂口 名菜 山下 義昭 森 政博 逸見 幾代
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-13, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
16

It is well known that milk and dairy products have an effect of controlling the rise of blood sugar level after eating, but the effective ingredients have not previously been analyzed. We compared and analyzed the blood sugar reaction after eating a diet with milk containing different amounts of milk fat. The results show that, by combining rice with milk, the reduction of blood sugar level tended to be more rapid. The insulin response was significantly high with all types of milk. The glycemic index (GI) was significantly decreased in combination with low-fat milk, mixed milk, and high-fat milk, but there was no significant effect in combination with no-fat milk. Although there was a small effect on the fall of GI with no-fat milk, suggesting the participation of an ingredient other than milk fat, it seems that the presence of fat in milk increased the relaxation action of the milk on the blood sugar rise.
著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.331-337, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
20

【目的】近年,食生活の課題に対してマインドフルイーティング(以下,ME)というアプローチが注目されている。本研究では,拡張されたME(以下,EME)から食生活改善の可能性を探るため,EMEを実践する女子大学生の特徴,主食・主菜・副菜を組み合わせた食事(以下,栄養バランスの良い食事)の摂取頻度を検討した。【方法】2018年11月,女子大学生1,388人を対象に自記式質問紙調査を実施し,属性,EME尺度,栄養バランスの良い食事の摂取頻度の項目を使用した。EME尺度の下位尺度の平均得点に基づき階層的クラスター分析を行い,クラスターごとにχ2 検定,Kruskal-Wallis検定,ロジスティック回帰分析を用いて,属性,栄養バランスの良い食事の摂取頻度を検討した。【結果】482人(34.7%)を解析対象者とした。EME非実践型(14.1%),ME非実践型(36.9%),ME実践型(25.3%),EME実践型(23.7%)の4つに分類され,属性に有意差はみられなかった。属性を調整したロジスティック回帰分析の結果,EME非実践型に比べてEME実践型の栄養バランスの良い食事の摂取頻度が高かった(オッズ比[95%信頼区間]=3.05[1.50~6.22])。【結論】本研究の結果から,環境への配慮や食への感謝の気持ちを持つ者は栄養バランスの良い食事の頻度が高いことが示された。
著者
満崎 雅咲 坂本 達昭
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.373-379, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
16

【目的】給食喫食前の食事量調節の有無と給食の食べ残しの関連を明らかにすることを目的とした。【方法】熊本市内の公立中学校(5校)に通う中学2年生673名を対象として,2020年9月に調査を実施した(横断研究)。調査項目は,自己申告による身長と体重,給食の食べ残し,給食喫食前の食事量調節(主食およびおかず),主観的な喫食時間の長さ,体型願望等である。無効回答を除いた559名(男子299名,女子260名)を解析対象とした。給食喫食前の食事量調節と給食の食べ残しとの関連を検討するために,従属変数は給食の食べ残し(いつも全部食べる/残すことがある),独立変数を給食喫食前の食事量調節(ほとんど減らさない/減らすことがある)として,属性,身長別標準体重,主観的な喫食時間の長さ,体型願望等を調整したロジスティック回帰分析を行った。【結果】給食喫食前に主食の量を減らすことがある者は(調整オッズ比[95%信頼区間]:男子4.64[1.69~12.72],女子4.18[2.09~8.35]),給食を残すことがある者が多かった。同じく,喫食前におかずの量を減らすことがある者は(男子9.06[3.32~24.76],女子4.12[2.13~8.35]),給食を残すことがある者が多かった。【結論】男女共に喫食前に食事量を減らすことがある者は,給食を残す可能性が高いことが示唆された。
著者
吉井 瑛美 深澤 向日葵 會退 友美 赤松 利恵 長谷川 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.345-354, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】幼児の野菜摂取を促進するための手がかりを得るため,夕食の野菜摂取量で幼児を3群に分け,食事内容を比較すること。【方法】2019年3~5月,4~6歳の幼児121人を対象に,写真を用いた連続5日間の食事記録調査を実施した。幼児の夕食の野菜や栄養素等摂取量,1食あたりの野菜の種類数,5日間の主食,主菜,副菜等の出現回数,副菜および副菜を含む料理の内容等を調べた。1日あたりの野菜摂取量の25,75パーセンタイル値を用いて,対象者を3群に分け,食事内容を比較した。【結果】解析対象者は118人(97.5%)だった。夕食の野菜摂取量の中央値(25,75パーセンタイル値)は,54(39,74)g/食であった。野菜摂取量高群は他の群に比べ,エネルギー摂取量,1,000 kcalあたりの野菜摂取量,食塩相当量が多かった。高群の1食あたりの野菜の種類数は5.0(4.2,5.8)種類で最も多かった。副菜の5日間の延べ出現回数が3群間で異なり,高群が最も多く6.0(5.0,7.0)回であった。高群は副菜および副菜を含む料理として,野菜生もの,野菜汁物,野菜煮物の順に高頻度で摂取していた。【結論】幼児の夕食の野菜摂取量別の食事内容は異なっていた。野菜摂取量高群は,夕食1食あたりの野菜の種類が5種類であり,1食あたりに少なくとも1つの副菜を摂取し,野菜の生もの,汁物,煮物等の料理を高頻度で摂取していた。
著者
池田 奈由 由田 克士 西 信雄
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.365-372, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
23

【目的】国内における対人の栄養指導の効果を評価した文献をレビューし,栄養指導の効果を把握した。【方法】成人の生活習慣改善を目的とする栄養指導の効果を縦断研究の測定データで定量的に評価した査読付き論文で,2010年1月~2020年12月に発表されたものを研究対象とした。CiNii ArticlesとPubMedによるスコーピングレビューを行い,各文献の研究方法と主な結果を要約した。【結果】15件の文献を採用した(和文5件,英文10件)。研究設定は地域4件,職域1件,医療機関10件であった。研究参加者数の中央値は108人,研究参加者の主な特徴は糖尿病患者と地域在住高齢者であった。臨床試験が4件(うち無作為化比較試験3件),非無作為の群間比較研究が7件,全員に同一の栄養指導を行った研究が4件であった。評価期間では3か月と6か月が最も多く,主な評価指標は体重,食事摂取状況,血液検査値,生活の質であった。14件で栄養指導の効果が認められた。栄養指導を複数回行うことの重要性を示す研究もあった。【結論】様々な対人の栄養指導についてその効果が示されたが,出版バイアスの可能性に留意する必要がある。今後,研究機関が地域と職域の関係者と連携できる仕組みの構築や人材の確保を図り,健康な成人への栄養指導の効果について,無作為割付による定量的評価研究をより一層積極的に推進しデータを蓄積する必要がある。
著者
荒井 基 鈴木 ひろこ 真田 成子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.89-95, 1974 (Released:2010-10-29)
参考文献数
5

(1) 全国124カ所の保健所の母親学級に参加した5,318名の妊婦・授乳婦について1970年と1971年において妊婦・授乳婦に関する食品禁忌のアンケート調査を実施した。回答した者は4,021名で回収率は75.6%であった。(2) 回答者の54%が1つ以上の禁忌食品を知っており, 1人当り平均2.0件となる。(3) 年令の多い者が若い者より多くの禁忌食品を知っていたが, 事務従事者, 商業, 農業に従事している者の間に差はなかった。(4) 地方別の禁忌食品の知悉度をみると, 北海道においては他の地方より禁忌食品を知っている者が多かった。(5) 禁忌を実行する者は教育程度が高くなるにつれて減少している。(6) 禁忌食品として挙げられたものは動物性食品71種, 植物性食品94種, 香辛・嗜好性食品22種, その他25種, 合計212種であった。(7) いか, たこ, 柿, なす, 香辛刺激性食品, コーヒー, アルコール性飲料などが出現頻度が高く, また頻度はあまり高くはないが, 栄養価の高い食品, かぼちゃ, 獣肉, そば, みかんなどが禁忌されていた。(8) 食品禁忌はその食品が多く生産される地方において高い頻度で禁忌されている傾向がみられた。
著者
秋元 誠 鈴木 和春 遠藤 幸江 五島 孜郎
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.79-86, 1986 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

過剰P食投与による変化を, 初体重約110gの Wistar 系雄ラットを用いて40日間観察したところ, 体重増加量および飼料摂取量は, 過剰P食の影響により, 過剰P食群 (EP) が正常P食群 (NP) に比し低値を示した。EP食によりPの吸収率は増加し, Mgのそれは逆に低下した。尿中のCa, PはEP食で明らかに高い排泄率を示した。飼料を交換することによる変化は, P, Mgについては交換直後にみられ, Caは10日から15日間ぐらいの日数を要した。腎臓Ca濃度は, EP群がNP群の約160倍, P濃度は約3倍という高値を示した。EP群の血清P濃度は, NP群に比し上昇傾向を示し, CaおよびMg濃度は低下した。
著者
水谷 令子 岡野 節子 西村 亜希子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.129-135, 1997

調理操作が麺中の水溶性相の食塩含量に与える影響と, 種々の麺料理からの食塩摂取量について実験を行った。結果は次のようである。<BR>1) 麺中の食塩量は, ゆで時間が長いものほど短いものより減少した。ひやむぎ, きしめんにおいてはゆで時間による有意差が認められたが, うどんにおいては有意差は認められなかった。<BR>2) ゆで上げ後の水洗いは, 食塩濃度を低下させるのに有効であった。洗う回数が増加するに従って, 食塩濃度は低くなったが, 手延べひやむぎを除いて, 1回目の洗いで顕著に低下した。ゆでた麺を5回洗うと, 食塩量は洗う前の, 手延べひやむぎでは20.9%, ひやむぎでは5.6%, うどんでは22.2%, きしめんでは23.5%, 生うどんでは41.0%に減少した。<BR>3) ひやむぎ, うどん, きしめんをそれぞれ, つけ麺, かけ麺, 温かけ麺の3つの方法で供した時の正味食塩摂取量は, ひやむぎでは1.81~2.67g, うどんでは1.31~2.28g, きしめんでは1.42~2.52gで, それぞれ調理材料に含まれる食塩の32~47%, 22~39%, 24~42%であった。細い麺 (ひやむぎ) は他の麺より食塩摂取量が多かった。いずれの麺も, つけ麺で食べるほうがかけ麺, 温かけ麺で食べるより正味食塩摂取量は有意に少なかった。温かけ麺はかけ麺より正味食塩摂取量は多かった。<BR>4) なべ焼きうどん, みそ煮込みうどん, 伊勢うどんの正味食塩摂取量は, それぞれ2.67g, 2.41g, 1.96gであった。伊勢うどんの食塩摂取量は他のうどんに比べて少なかった。<BR>以上の結果は, 栄養指導や栄養調査において, 正確な食塩摂取量を知る上で役立つと考えられる。