著者
松下 武矢 葉山 恵利 中島 龍星
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.275-280, 2022-08-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
21

【目的】回復期脳卒中患者の膝伸展筋力と病棟歩行自立の関連を調査し,そのカットオフ値を決定すること。【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟に入院している脳卒中片麻痺患者。麻痺側,非麻痺側,および両側を組み合わせた膝伸展筋力が,歩行自立と関連するかを二項ロジスティック回帰分析で検討した。また,Receiver operating characteristic curve, Youdenインデックスにより,歩行自立のカットオフ値を算出した。【結果】解析対象者は658名(年齢中央値74歳,女性45%)で,歩行自立群は393名(60%)であった。歩行自立に対して膝伸展筋力は独立して関連しており(P<0.001),カットオフ値は麻痺側,非麻痺側,両側合計でそれぞれ,0.631 Nm/kg, 1.010 Nm/kg, 1.621 Nm/kgであった。【結論】回復期脳卒中患者において膝伸展筋力は歩行自立の判断基準となり得る。
著者
高橋 精一郎 鳥井田 峰子 田山 久美
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.261-266, 1989-07-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
6

現在,歩行速度の評価基準には定まったものがない。例えば10m15秒,10m10秒あるいは健常人よりも若干遅めといったもので,その理論的根拠にも乏しい。はたして社会生活をしていく上でこの速さで十分であろうか? という疑問から,少なくとも横断歩道を安全に渡れる速さがなければいけないのではないかと考えた。そこで130ヵ所の横断歩道の青信号の点灯点滅時間を調べ,横断に必要な速さを算出した。その結果,9割以上の横断歩道を渡るには1m/secの速さが必要であることがわかった。これを歩行評価基準の一つとすべきであるし,訓練においてもこの速さを獲得すべきである。
著者
内藤 考洋 松田 直樹 鈴木 創 丸谷 孝史 酒井 安弘 佐田 真吾 塚田 鉄平 木村 俊哉 高山 拓也 片野 真奈未 稲田 亨
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.323-331, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
23
被引用文献数
5

【目的】在宅脳卒中者の生活空間における各活動範囲(住居内,住居周辺,住居近隣,町内,町外)に関連する因子を調査した。【方法】在宅脳卒中者143 名を対象に,基本属性,Life-space assessment(以下,LSA),Modified Fall Efficacy Scale(以下,MFES),Barthel Index(以下,BI)等,計15 項目を調査した。統計学的検討では各活動範囲別のLSA 得点と各評価指標との相関分析を実施した。また,対象者を通所系サービスおよび外来リハ利用の有無であり群・なし群に割付けし,2 群の各活動範囲別得点に対し,対応のないt 検定を実施した。【結果】住居内・住居周辺のLSA 得点はMFES とBI との間に中等度の相関を認めた。また,住居周辺,町内・町外の得点は,通所系サービスおよび外来リハ利用あり群で有意に高かった。【結論】生活空間は,各活動範囲によって関連する因子が異なることが示唆された。
著者
江崎 重昭 川村 次郎 本多 知行 小野 仁之
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.49-52, 1995-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
6

電気刺激による筋力強化を目的に,健常人10名の大腿四頭筋に対し,高周波電気刺激を6週間行った。高周波電気刺激は周波数50KHz,パルス幅10μsecのパルスを周波数50Hzで変調した。刺激後6週での大腿周径と筋断面積の増加は認められなかったが,最大随意筋収縮力は2.2 ± 1.7kg・mの増加を認めた(p < 0.01)。以上の結果より高周波電気刺激は健常人に対する筋力強化に有効であることが示唆された。
著者
太田 経介 萬井 大規 坂野 康介 中城 雄一 森若 文雄 宮田 一弘
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.215-223, 2020 (Released:2020-06-19)
参考文献数
45
被引用文献数
1

【目的】脊髄小脳変性症の歩行重症度の評価に,Mini-Balance Evaluation SystemTest(以下,Mini-BESTest)とBerg Balance Scale(以下,BBS)が適応可能か検討すること,歩行自立度の判別精度を検討することとした。【方法】脊髄小脳変性症患者30 名を対象に,重症度分類を用いて3 群に分類した。Mini-BESTest とBBS の得点分布,および群間比較を行った。FIM 点数よりROC 曲線を用い歩行自立度の判別精度の検討とカットオフ値を算出した。【結果】Mini-BESTest とBBS は歩行重症化にしたがい低値を示した。Mini-BESTest とBBS はArea under the curve(以下,AUC),感度,特異度が高値であった。BBS は天井効果を認めた。【結論】Mini-BESTest は高いAUC,感度,特異度を有し,歩行自立度の判別精度に有用性の高い指標であることが示唆される。
著者
高草木 薫
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.575-582, 2010-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
2
著者
儀間 裕貴 儀間 実保子 浅野 大喜
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.247-254, 2020 (Released:2020-06-19)
参考文献数
34

【目的】N 式幼児運動イメージテスト(以下,N 式テスト)と乳幼児発達スケールの各発達領域の関連性を検討する。【方法】対象は3~6 歳の幼児42 名および養育者とした。N 式テストからカード選択レベル(以下,絵カード課題)と姿勢変換レベル(以下,姿勢変換課題)の得点を算出した。養育者には乳幼児発達スケールの回答を依頼し,児の発達全般(運動,言語,社会性など)を得点化した。N 式テストの得点と月齢の相関,各発達領域の関連性を検討した。【結果】N 式テストを完遂できた児は32 名であった。N 式テスト得点と月齢は有意に相関した。絵カード課題得点には,運動,言語(理解・表出),姿勢変換課題得点には,月齢,運動,理解言語,社会性(対子ども・対成人)が有意に関連した。【結論】N 式テストの課題は,それぞれ異なる発達の側面と関連した。姿勢変換課題には対人的な社会性発達が関連し,対人的なやりとりの経験がN 式テストにおける運動イメージに関与する可能性を示唆した。
著者
秋吉 史博 高橋 仁美 菅原 慶勇 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.47-52, 2001-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
16

呼気筋強化に関する臨床研究は非常に少ない。本研究の目的は呼気筋強化の呼吸筋力に及ぼす影響を健常人において検討することである。健康な短大生36名(男性11名,女性25名 ; 平均年齢 ± SD ; 21.3 ± 2.8)を対象にした。11名はSouffleTMを用い,最大呼気口腔内圧が60cmH2O以下の4名は呼気筋強化用Threshold-EMTTMを用い1日15分間2回で2週間呼気筋強化を行った。11名は吸気筋強化用Threshold-IMTTMを用い1日15分間2回で2週間吸気筋強化を行った。10名は呼吸筋強化を行わないコントロール群とした。呼気筋強化群および吸気筋強化群では最大圧の30%をそれぞれ負荷圧とした。結果は,(1)Souffleを用いた呼気筋強化群では呼気最大口腔内圧は33%,吸気最大口腔内圧は32%それぞれ有意に増加した。Thresholdを用いた呼気筋強化群では呼気最大口腔内圧は44%,吸気最大口腔内圧は35%それぞれ有意に増加した。(2)Thresholdを用いた吸気筋強化群では吸気最大口腔内圧は46%有意に増加したが呼気最大口腔内圧には有意な変化はみられなかった。(3)コントロール群では呼気・吸気最大口腔内圧のいずれにも有意な変化はみられなかった。以上の結果は,呼気筋強化が呼気筋力のみならず吸気筋力を増加させ,呼気筋強化が呼吸リハビリテーションにおいて呼吸筋強化の種目として有用である可能性を示唆している。
著者
大橋 麻美 増岡 泰三 星野 守利
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.34-37, 2000-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
11

脳卒中片麻痺患者の杖歩行パターンには,二動作杖歩行と三動作杖歩行がある。今回,各杖歩行パターン間における機能差違を脳卒中片麻痺患者24名(二動作杖歩行12名・三動作杖歩行12名)を対象にし,麻痺側運動機能(上下肢,体幹),非麻痺側下肢筋力,立位バランス(静的,動的),片足立位保持,歩行能力の検査項目から比較検討をおこなった。その結果,麻痺側運動機能(下肢,体幹),立位バランス(静的,動的),麻痺側片足立位保持,歩行能力に有意差が認められた。今回の比較において二動作杖歩行群が三動作杖歩行群を上回っていた機能は,①麻痺側下肢,体幹機能が高い,②静的立位の重心動揺が少なく,常に一定の範囲に保たれている,③動的立位の左右方向への重心移動距離が大きくなる,④麻痺側下肢の支持性が高い,の4点であった。
著者
島田 裕之 古名 丈人 大渕 修一 杉浦 美穂 吉田 英世 金 憲経 吉田 祐子 西澤 哲 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-111, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
50

本研究では,地域在住の高齢者を対象としてTimed Up & Go Testを実施し,性差と加齢変化を調べた。また,転倒,活動性,健康感との関係を調べ,高齢者の地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性を検討した。対象は地域在住高齢者959名であり,平均年齢74.8歳(65-95歳),男性396名,女性563名であった。検査および調査項目は,身体機能検査としてTimed Up & Go Test,歩行速度,握力,膝伸展筋力,Functional Reach Testを実施した。質問紙調査は過去1年間の転倒状況,外出頻度,運動習慣,趣味,社会活動,主観的な健康感を聴取した。Timed Up & Go Testを5歳の年齢階級別に男女差を調べた結果,すべての年代において男性が有意に速い値を示した。加齢変化をみると男女とも70歳末満と以上の各年代に有意差を認めた。男性においては他の年齢階級間に有意差は認められなかった。一方,女性では70-74歳と80-84歳,85歳以上,および75-79歳と80-84歳の間,80-84歳と85歳以上の年代間において有意差を認めた。転倒,活動性,健康感との関係では,転倒状況,外出頻度,運動習慣とTimed Up & Go Testの有意な関係が認められた。以上の結果から,高齢者におけるTimed up & Go Testは性差と加齢による低下が明らかとなった。また,転倒,外出頻度,運動習慣と密接な関係が示され,地域保健活動の評価指標としての有用性が確認された。
著者
村尾 昌信 佐藤 嘉展 中嶋 正明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.114-118, 2015-04-20 (Released:2017-06-09)

【目的】腰部多裂筋(以下,LM)の選択的活動を狙って考案したexercise(以下,N-ex)におけるLMの選択的活動性の程度を明らかにすること。【方法】健常大学生21名を対象に,表面筋電図によりLMと腰腸肋筋胸部線維(以下,ICLT)のexercise時における筋活動(以下,%MVIC)を評価した。さらに%MVICよりLocal筋/Global筋比(以下,L/G ratio)を求め,N-exにおけるLMの%MVICとL/G ratioを既存のexerciseと比較した。【結果】N-exは,LMにおいて腹部ドローインに対してのみ有意に高い筋活動を,ICLTにおいてバードドックに対してのみ有意に高い筋活動を示した。また,N-exはL/G ratioにおいて既存のexerciseに対して有意に高値を示した。【結論】筋電図学的解析により,N-exではバードドックと同等のLMの活動を保持しつつ,より選択的なLMの活動が得られることを明らかにした。
著者
小林 紘二 辻井 洋一郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.365-369, 1995-11-30 (Released:2018-09-25)
参考文献数
40
被引用文献数
1
著者
石垣 智也 尾川 達也 宮下 敏紀 平田 康介 岸田 和也 知花 朝恒 篠宮 健 市川 雄基 竹村 真樹 松本 大輔
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.261-270, 2021 (Released:2021-06-18)
参考文献数
24

【目的】在宅環境での2 ステップテストの信頼性と妥当性の検討を行い,歩行自立の基準値を見出すこと。【方法】訪問リハビリテーション利用者を対象とした横断調査のデータベース(10 施設226 名)から,目的別にデータを抽出した(信頼性98 名,妥当性117 名,基準値209 名)。調査項目は基本情報と膝伸展筋力,歩行能力として2 ステップテストによる2 ステップ値や歩行自立度などとした。歩行手段と距離により屋内杖歩行から屋外独歩800 m 以上と12 種の歩行自立条件を設定し,各自立を判別するカットオフ値を検討した。【結果】2 ステップテストの検者内信頼性は良好であり,固定誤差は認めないが比例誤差が示された。2 ステップ値は膝伸展筋力より歩行能力との相関係数が高く,歩行自立条件に応じた段階的なカットオフ値が設定できた。【結論】2 ステップテストは在宅環境でも信頼性と妥当性があり,歩行自立に対する基準値を有する歩行能力評価である。
著者
十文字 雄一 対馬 栄輝 小林 秀男 津田 謙矢
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11702, (Released:2020-05-28)
参考文献数
24
被引用文献数
3

【目的】投球によって肩の疼痛(以下,肩痛)を有する野球選手は肩関節可動域や肩関節外旋筋力が低下しているが,これらは野球選手における一般的な特徴としても知られており,肩痛の発生に対しての因果関係は明らかになっていない。本研究の目的は,これらの因子が肩痛の発生に影響するかを前向き研究により検討することである。【方法】高校野球部員を対象とし,オフシーズンに肩関節機能評価とポジション等の聴取を行い,シーズンインから2 ヵ月間を観察期間とした。その後,肩痛発生の有無に対して各評価項目が影響するかを解析した。【結果】肩痛を発症した者は84 名中24 名で,多重ロジスティック回帰分析の結果,肩回旋筋力比,ポジションが有意な変数として抽出された。【結論】肩痛発生に肩回旋筋力比の低下が有意に影響した。投球障害の予防には,ストレッチの他,回旋筋力のバランスにも考慮する必要があると考える。