著者
脇 遼太朗 楠本 泰士 高橋 克弥 加藤 愛理
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12292, (Released:2023-02-13)
参考文献数
27

【目的】股関節筋解離術前後の歩行パターンの変化をEdinburgh Visual Gait Score(以下,EVGS)を用いて明らかにすることとした。【方法】対象は股関節筋解離術を施行したGross Motor Function Classification System(以下,GMFCS)レベルI・IIの脳性麻痺患者16名とし,手術前と退院時にEVGSの評価を行い,合計・各関節・各項目のスコアを対応のあるt検定,χ2検定にて検討した。【結果】手術前の総EVGSスコアは28.9±7.4点だったのに対し,退院時は18.5±8.0点と有意に改善が見られた。各関節の変化では全ての関節で有意な変化が見られた。【結論】GMFCSレベルI・IIの脳性麻痺患者では,股関節筋解離術と術後早期の理学療法介入によって,歩行パターンが術後9週において有意に改善した。また,股関節筋解離術後に理学療法介入を行う際は,股関節のみに注目するのではなく,全体的な歩行パターンの変化を考慮する必要があると考えられる。
著者
佐野 裕基 遠藤 健司 土田 奨 六本木 さくら 荒井 芙美 高橋 亮吾 石山 昌弘 長田 卓也 上野 竜一 山本 謙吾
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12170, (Released:2022-01-26)
参考文献数
36

【目的】首下がり症状を呈した変形性頸椎症2 症例の前方注視障害に対して,腰椎・骨盤矢状面アライメントの改善をめざした理学療法の有効性について検討することを目的とした。【症例】変形性頸椎症を既往とし,首下がり症状が出現した2 症例であった。両症例の立位姿勢は全脊柱アライメントより,頸部屈曲位,胸椎後弯,後方重心,また症例1 は腰椎前弯代償,症例2 は骨盤後傾代償が認められた。【経過】両症例ともに頸部および,腰椎・骨盤帯に対する理学療法を実施した。いずれも介入3 ヵ月で頸胸椎アライメントが改善し,一時的に前方注視可能となり,6 ヵ月で腰椎・骨盤帯アライメントが改善し,長時間前方注視可能となった。【結論】首下がり症状による前方注視障害の改善には頸部自動伸展機能の改善に加えて,矢状面上における脊柱全体と骨盤帯のバランスが取れた立位姿勢をめざした介入が有効であると考えられた。
著者
佐藤 満 山下 和彦 仲保 徹 加茂野 有徳
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.465-473, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
49

【目的】体性感覚の低下は高齢者の転倒にも深く関与する。本研究は高齢者の足底触覚閾値を測定し,転倒事象との関連を明らかにする。【方法】通所介護施設の利用者110 名を対象に,高い刺激強度再現性を有する足底感覚計で足底触覚閾値を測定した。併せて下肢筋力など9 項目の心身機能を測定し,転倒群と非転倒群の間で比較した。さらに転倒を目的変数としたロジスティック回帰分析にて各変数のオッズ比を算出し,過去1 年間の転倒歴に対する足底触覚閾値の関連を検討した。【結果】転倒群と非転倒群との比較で足底触覚閾値,足関節背屈角度に有意差が認められた。性別比と疾患の有無で調整したオッズ比は足底触覚閾値と足関節背屈角度が有意であった。【結論】足底触覚閾値は高齢者の転倒を説明する変数として強い関連が認められた。要介護認定者の集団では転倒リスクの評価に従来の指標に加えて足底触覚閾値の測定が有効である可能性が示唆された。
著者
浅野 大喜 森岡 周
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11159, (Released:2016-06-05)
参考文献数
30

【目的】脳室周囲白質軟化症(以下,PVL)児,知的障害(以下,MR)児の行動について調査し,健常児と比較した。【方法】PVL児15名(平均月齢55.2 ヵ月;PVL 群),MR児15名(平均月齢53.3 ヵ月;MR 群),定型発達児14 名(平均月齢52.3 ヵ月;Normal 群)を対象とした。行動評価はChild Behavior Checklist(以下,CBCL)を使用し,子どもの行動を母親に評価してもらい,3 群間で比較した。また母親の養育態度についても調査し,CBCL の結果との関連を調べた。【結果】PVL 群は依存分離尺度,MR 群は引きこもり,攻撃,注意集中尺度と内向,外向尺度,総得点でNormal 群よりも有意に高い得点であった。[内向/外向]の値はPVL 群が他の2 群より有意に高い値であった。PVL 群の依存傾向は養育態度や歩行能力とは関係がなかった。【結語】PVL 児は外在化行動よりも内在化行動が高いという特徴を示した。
著者
井上 順一朗 牧浦 大祐 斎藤 貴 秋末 敏宏 酒井 良忠
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.155-161, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
27

【目的】筋筋膜性疼痛症候群を生じた進行性卵巣癌患者に対して,運動療法と経皮的電気刺激治療の併用により疼痛の緩和,オピオイド鎮痛薬使用量の減量,身体活動・身体機能・QOL の改善を認めた症例を経験したので報告する。【症例紹介】卵巣癌術後再発,肝転移,遠隔リンパ節転移,腹膜播種を有する40代の女性であった。再発・転移に対する化学療法中より頸部から殿部にかけて筋筋膜性疼痛症候群を認めた。【治療プログラムと経過】頸部から殿部にかけての筋筋膜性疼痛症候群に対して,運動療法に加え,疼痛部位に対する経皮的電気刺激治療を施行した。【結果】疼痛は理学療法開始後より経時的に緩和した。疼痛緩和に伴いオピオイド鎮痛薬使用量も経時的に減量した。また,身体活動,身体機能,QOL にも改善が認められた。【結論】運動療法と経皮的電気刺激治療の併用は,がん患者の筋筋膜性疼痛症候群に対する治療・サポーティブケアのひとつとなる可能性が示唆された。
著者
内田 成男
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.36-42, 2012-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
林 祐介 吉原 聡 吉田 久雄 見川 彩子 林 明人 藤原 俊之
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11613, (Released:2019-11-22)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)術後患者における術後早期膝関節可動域が自立歩行獲得期間および在院日数に及ぼす影響を検討した。【方法】TKA 術後患者78 例を対象とした。年齢とBody Mass Index,術後4 日時点の膝関節可動域(自動・他動屈曲,自動・他動伸展),運動時痛と歩行時痛(Visual analogue scale),炎症所見(血清C 反応性蛋白)と術後7 日時点の膝関節伸展筋力(ハンドヘルドダイナモメーター)を評価し,在院日数および自立歩行獲得期間に与える影響を重回帰分析(ステップワイズ法)にて検討した。【結果】重回帰分析の結果,在院日数および自立歩行獲得期間に有意に影響する因子は,それぞれ自動膝屈曲可動域と年齢,および自動膝屈曲可動域と自動膝伸展可動域が抽出された。【結論】TKA 術後患者において,術後早期の自動膝関節可動域の拡大は,自立歩行獲得期間および在院日数の短縮に影響を与える可能性がある。
著者
永井 宏達 山田 実 上村 一貴 森 周平 青山 朋樹 市橋 則明 坪山 直生
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.84-89, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19

【目的】姿勢制御エクササイズの反復が足関節周囲筋の同時活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常若年者22名とし,介入群(11名)と対照群(11名)に無作為に分類した。不安定板上で10秒間姿勢を保持する課題を行い,その際の筋活動を前脛骨筋,ヒラメ筋より導出した。介入群には不安定板上での反復エクササイズを行い,その後不安定板上での評価を再度実施した。得られた筋電図波形より,同時活動の指標であるco-contraction index(CI)を求めた。【結果】介入群のCIは,エクササイズ後に有意に減少し,介入前50.7 ± 23.9%,介入後38.5 ± 22.0%であった。一方,対照群のCIには変化が認められず,介入前58.7 ± 23.9%,介入後60.9 ± 23.1%であった(p < 0.05)。【結論】不安定場面での同時活動は,姿勢制御エクササイズを行うことで減少する。このことは,姿勢制御エクササイズにより筋の過剰な同時活動が減少することを示唆している。
著者
遠藤 佳章 久保 晃 木村 和樹 三浦 寛貴
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.42-46, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】超音波画像診断装置を用いて健常若年男性の腰椎各レベルの多裂筋横断面積の腰椎レベル高低での差異と左右差の2 要因を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は過去に腰部の疾病や外傷,腰痛の既往がない上下肢ともに右利きの健常若年男性55 名とした。超音波画像診断装置を用いて,腹臥位で左右の第5・4・3・2・1 腰椎レベルの多裂筋横断面積を計測した。【結果】多裂筋横断面積の左右比較では,第5・4 腰椎レベルで右側が有意に大きく,第3・2・1 腰椎レベルでは有意差は認められなかった。また,左右ともに下位腰椎にいくにつれて多裂筋横断面積は有意に増大した。【結語】腰部多裂筋横断面積は下方にいくにつれて大きくなり,利き側がより発達することが示唆された。

2 0 0 0 OA 下肢のROMとADL

著者
吉元 洋一
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.247-250, 1988-05-10 (Released:2018-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
10

三次元電気角度計を使用し, 股・膝関節可動域が和式ADLにどのように関連しているかについて検討し, 以下の結論を得た。和式ADLにおける股関節使用可動域は, 屈曲120度, 回旋20度及び内外反26度を有すればほぼ可能であるが動作によっては, 最終肢位よりも運動中に最大可動域となる動作があるので注意することが必要である。膝関節については屈曲130-150度, 内旋10~39度及び内外反20-30度が必要である。特に膝最大屈曲が要求される動作においては, 内旋及び内反方向の動きが重要となり, 和式ADLにおける特徴を示唆している。
著者
前田 拓也 上出 直人 戸﨑 精 柴 喜崇 坂本 美喜
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.29-36, 2021 (Released:2021-02-19)
参考文献数
46

【目的】本研究は地域在住高齢者の呼吸機能に対する運動機能,認知機能,体組成との関連性について検討した。【方法】対象は要介護認定のない65 歳以上の地域在住高齢者347 名とした。呼吸機能として努力性肺活量および1 秒量,運動機能として握力,下肢筋力,Chair Stand Test,Timed Up and Go Test(以下,TUGT),5 m 快適・最速歩行時間,認知機能としてTrail Making Test part A(以下,TMT-A),体組成として骨格筋指数および体脂肪率を評価した。呼吸機能と運動機能,認知機能,体組成との関連を重回帰分析にて分析した。【結果】年齢,性別,体格,喫煙などの交絡因子で調整しても,努力性肺活量は握力,TUGT,TMT-A と有意な関連を示した。同様に,1 秒量は握力,TMT-A と有意な関連を示した。【結論】地域在住高齢者の呼吸機能は運動機能,認知機能が関連することが示唆された。
著者
高取 克彦 岡田 洋平 梛野 浩司 徳久 謙太郎 生野 公貴 鶴田 佳世
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.382-389, 2011-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】日本語版STRATIFYおよびMorse Fall Scale(MFS)の作成とリハビリテーション専門病院における有用性を検討すること。【方法】2008年8月からA病院回復期リハビリテーション病棟に新規入院した患者120名を対象とした。日本語版STRATIFYおよびMFSの作成は開発者の許可を得て完成させた。STRATIFYおよびMFSは入院時に評価し,3ヵ月間の転倒発生を前向きに調査した。データ解析には転倒発生日をエンドポイントとした生存分析(Kaplan-Meier法)を用い,また比例ハザード解析にて転倒発生の危険因子を抽出した。【結果】累積生存率ではSTRATIFYを用いた場合,ハイリスク群で生存率の有意な低下が認められたが,MFSではその差は有意ではなかった。また比例ハザード解析においては,2点以上のSTRATIFYスコアが有意な転倒危険因子として抽出された。【結論】STRATIFYは,本邦リハビリテーション病棟においても転倒ハイリスク者を良好に判別できる簡便なアセスメントツールである。
著者
森 明子 上村 洋充 髻谷 満 曽田 幸一朗 眞渕 敏 川上 寿一 道免 和久
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【はじめに】デグロービング損傷は機械を扱う労働者が機械に巻き込まれ上肢を受傷するケースが多いが、下肢の受傷ケースは少ない。歩行獲得に向けて理学療法士の役割は大きいにも関わらず症例報告はほとんどない。そこで今回、早期より下腿デグロービング損傷と足関節伸筋腱断裂を伴った症例を経験したため報告する。<BR>【症例】19歳女性。平成17年4月25日列車脱線事故により、右下腿デグロービング・足関節脱臼、左足関節内果骨折、左前腕骨折受傷。その他重篤な外傷なし。右足関節伸筋腱すべて断裂していたため同日、縫合術施行。血液検査データはCK1855U/l、白血球15500/μl、第3病日ではCK3448U/l、CRP12.1mg/dlと高値であった。表皮の欠損が広範囲のため第31病日より右下腿創部にハイドロサイト、第36病日よりフィブラストスプレーを使用開始した。第75病日、全荷重許可後より右下腿皮膚形成の急速な進行がみられた。<BR>【理学療法経過】第15病日より理学療法(以下PT)開始。右長下肢、左短下肢ギプスシーネ固定中。右膝屈曲は禁忌。左下肢は踵部での全荷重可能。寝返り、起き上がりは痛みの範囲内で自立。立ち上がりは左踵骨のみの荷重で介助下にて可能。左下肢筋力は4レベル。第24病日、右下肢は短下肢ギプスシーネに、左下肢は軟性装具へ変更。右膝ROM、右大腿四頭筋、ハムストリングスの筋力強化を等尺性運動にて開始。また左足関節装具装着にて左下肢全荷重開始。第30病日、右下腿ギプスシーネ除去し右足関節・足指自動運動開始。第36病日、PT室にて右下肢1/3荷重開始。第39病日、右足関節・足指他動運動開始。第65病日、右下肢1/2荷重で歩行練習開始。第75病日、右下肢全荷重、両松葉杖歩行、自転車エルゴメーター開始。第88病日、軟性装具装着下にて歩行自立。第99病日、装具なしにて病棟内歩行自立し、第120病日には病院内歩行許可となり、第151病日、自宅退院となる。退院時の右足関節可動域は背屈10°、底屈30°。左右片脚立位は30秒以上可能。階段昇降は自立。ジャンプ、ランニングは困難であった。<BR>【考察】デグロービング損傷の場合、皮膚の再生や創部への負荷を考え、早期からの荷重や歩行は困難とされることを臨床上経験することが多い。しかし、本症例では感染に注意しハイドロサイトやフィブラストスプレーを併用し、創部の浮腫や腱への負担を注意しながら早期から荷重・歩行練習行うことで順調な経過を得ることができた。荷重・歩行は筋ポンプ作用による筋血流量増加や、皮膚への血流量の増加につながり、皮膚組織の再生にも寄与したのではないかと考えられる。損傷部位の組織修復過程を考慮した治療が肝要である。<BR><BR>
著者
松本 浩実 大坂 裕 井上 和興 朴 大昊 萩野 浩
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.429-436, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】地域高齢者におけるフレイルの進行度と運動および運動自己効力感の関連性を調査すること。【方法】地域の集団健診に参加した239 名中,1)65 歳以上,2)日常生活が自立しているもので,要介護認定者を除外した男性85 名,女性127 名,平均年齢76 歳を対象とした。自己記入式アンケートにて運動および運動自己効力感を評価し,日本版Cardiovascular Health Study Index 基準を用いたフレイル判別にてロバスト,プレフレイル,フレイルに群分けした。【結果】多項ロジスティック回帰分析を実施した結果,プレフレイルと散歩やウォーキングなし(Odds:11.521),筋力トレーニングなし(Odds:6.526),集団体操なし(Odds:10.089)が,フレイルと運動自己効力感(Odds:0.826)が関連した。【結論】フレイル予防には運動習慣とともに運動自己効力感を高める心理的,教育的なサポートが重要である。
著者
市ノ瀬 有佐 横山 茂樹 山本 乃利男 小野 恭裕 本田 透
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12017, (Released:2021-08-24)
参考文献数
23

【目的】高齢者大腿骨近位部骨折患者において術後3 日間のCumulated Ambulation Score(以下,3-day CAS)と術後2 週時の歩行能力との関連性を明らかにすることを目的とした。【方法】大腿骨近位部骨折患者187 名を術後2 週時の歩行能力で,平行棒以下群99 名と歩行器以上群88 名に群分けした。3-day CAS と患者情報をもとに多重ロジスティック回帰分析を行い,カットオフ値を算出した。【結果】術後2 週時歩行能力の関連因子として,受傷前Barthel Index(以下,BI),骨折型,3-day CAS が抽出された。術後2 週時の歩行器歩行の可否判別におけるカットオフ値は,受傷前BI : 92.5 点,3-day CAS : 3.5 点であった。【結論】術後2 週時の歩行器歩行の可否判別には,受傷前BI,骨折型に加え,3-day CAS が有用である可能性が示唆された。