著者
高野 邦彦 佐野 甲癸
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-42, 2002 (Released:2003-10-09)
参考文献数
9

動画ホログラフィは液晶パネルや音響光学素子を用いて,ホログラム像を動画として表示する手法である.これをカラー再生に応用する手法としては,RGB三色のレーザを用いることが一般的であったため,光学系が複雑となっていた.白色レーザは,同一光軸上でRGBの三色光を同時発振するため,装置の単純化に対して有効である.そこで,本論文では白色レーザを用いた動画ホログラフィカラー再生法について考察する.提案手法ではカラー再生法に見られる特有の結像位置のずれ,およびゴーストの影響について検討を行っている.白色レーザを用いることで,白色光再生に比べてボケの影響の少ないカラー再生像が得られることを明らかにする.
著者
市川 清人 三田 雄志 堀 修 小林 隆夫
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.419-427, 2008-07-25 (Released:2011-08-25)
参考文献数
15

顔全体および顔パーツを個別に識別することで, 隠れを含んだ顔でも識別できる頑健な顔検出手法を提案する. 従来法の多くは顔全体の情報による手法であるため 隠れを含む顔の検出が難しかった. 提案手法は, AdaBoostに基づいて学習した 各識別器の出力を線形判別分析および決定木を利用して 統合し顔か非顔かを判定する. 決定木を利用することで識別器の利用を制御し, 隠れのある顔でも検出できる手法である. 隠れを含む顔および隠れを含まない顔の識別実験において, 過剰検出率が0.1%のときの正検出率は, 顔全体だけの識別器を用いた場合の31%, 決定木を用いないですべての識別器を統合した場合の48%に対して, 提案手法は88%という結果となり, 隠れを含む顔を検出するために, 効果的な手法であることを実証した.
著者
河村 尚登 杉浦 博明
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.935-943, 2006 (Released:2012-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
3
著者
吉田 俊之 出蔵 正樹
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.497-508, 2006 (Released:2011-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

動画像中の動きは非定常であるので,限られた帯域の中で対象動画像を圧縮符号化し伝 送する際には,動きの統計量に応じてフレームレートを適応的に制御することで,時空 間の総合的画質を改善できる.著者らは,過去に動画像フレームの適応的な挿入処理手 法を提案してきたが,動きがほぼ一定の区間でフレームレートを変化させると不連続感 を生じるなど,更に改善する余地が残されていた.そこで本稿では,これらの問題を 再検討し,高い主観画質を与える新しいフレームレートの適応的制御手法を提案する. また,得られる非一様フレームレート動画像に対して,平均フレームレートと主観画質 の関係を検討し,そのMOSが平均フレームレートから高い精度で予測可能であることを示 す.最後に,提案手法の適用例を与え,その有効性の検証を行う.
著者
守田 了 本郷 香織
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.546-553, 2013 (Released:2015-11-06)
参考文献数
15

近年多数の動く錯視が紹介されている.実際には静止しているにもかかわらず動いていると勘違いしてしまう錯視である.これらの錯視の要因については議論されているものの未解明な部分が多い.本論文では仮想的な明度同化に基づく知覚映像を考慮することで,静止しているはずの動く錯視に対して本来計算できないオプティカルフローを計算する方法を提案する.このように計算された錯視フローを用いて,短期記憶映像中に張られた動く網を動かすことで,脳内で起きているなめらかな動き映像が生成できることを示す.実際に提案する視覚モデルを用いて蛇の回転や蛇クローバーなどの最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視を見る時に,脳内で起きている動きをアニメーションとして生成できることを示すことで本モデルの有効性を示す.
著者
寺田 賢治 宮原 宏幸 久保 靖
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.220-227, 2005 (Released:2011-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
7

本稿では阿波踊りの動作の定量評価の一手法を提案する.我々の大学がある徳島県には伝統的な踊りとして「阿波踊り」がある.阿波踊りの基本動作は,手と足の調和,2拍子のリズムに合わせるといったコツがあるが,踊り手の微妙な手足の動き,重心位置の変化,リズム等の違いにより見た人の受ける印象は異なる.本稿では阿波踊りの基本動作をモーションキャプチャにより,計算機に取り込み,踊りのうまさを定量化する手法を提案する.これは,取得したデータ波形とお手本となるデータ波形を比較することで,動作特徴を抽出し,踊りのうまい,へたの評価を行うものである.本稿では更に踊りの名手との比較により,阿波踊りを得点化する実験を示し,本手法の有効性を検証する.
著者
金井 崇 大竹 豊 川田 弘明 加瀬 究
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.335-343, 2007 (Released:2011-08-25)
参考文献数
22

陰関数曲面は,将来的に有望な形状表現の一つであり,より少ない数のプリミティブでオブジェクトの詳細かつ滑らかな幾何学的形状を表現することができる.本稿では,点群ベース陰関数曲面の一つであるSLIM(Sparse Low-degree IMplicit)曲面を対象とした,プログラマブル GPUによる高速な表示手法を提案している.本手法はレイキャスティング法にもとづく直接的な描画手法を採用しており,光線と陰関数曲面の交点算出やブレンディングのための点の選択にかかわる処理を,プログラマブルシェーダの一つであるフラグメントプログラムの中で行っている.大容量のオブジェクトに対しては,SLIM曲面の階層的なデータ構造を利用することで,LODや視錐カリングを効率的に行うことができる.GPUの特徴である処理の並列性を最大限に利用することで,CPUによる処理よりはるかに高速に表示できることを実証する.
著者
神戸 陽介 斉藤 文彦
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.748-755, 2010-09-25 (Released:2011-08-25)
参考文献数
11

教育の現場でよく用いられるドリルテキストは,繰り返しの学習により知識や技能を修得することを目的としている.しかし,ドリルテキストは,直接鉛筆で書き込んで使用する構成になっている場合が多く,繰り返し学習が困難である.本稿では,書き込み済みのドリル画像から,手書き鉛筆線のみを除去する手法を提案する.この処理をコピー機やスキャナに搭載することで,書き込み済みドリルテキストを再び使用することができるようになり,上記問題が解決すると考えられる.提案手法では,書き込み筆記具の画像特徴に着目する.鉛筆線の画像特徴を判別することで,書き込みの種類や形状によらない消去処理を行うことが可能となる.実験より,鉛筆線は99%程度の精度で除去することができた.また,印刷を誤って消去する誤消去も非常に少なかった.
著者
韓 惠軫 内川 惠二
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.329-339, 2016 (Released:2018-01-25)
参考文献数
24

2000年に入ってからアニメーション制作現場にデジタル彩色システムが導入され,アニメーションの色再現が重要になってきた.写真の色再現では記憶色を基に再現される肌色が好まれることが知られ,テレビ画像では肌色の許容範囲が狭いことが明らかになるなど、肌色の研究が進んできている.しかし,アニメーション制作においては肌色の表現が難しいにも係わらず,それに関する研究は極めて少ないのが現状である.そこで本研究では,セル画調の人物顔の肌色を対象に,好ましい肌色および肌色判断と顔形状との関係を明らかにすることを目的とした.その結果,セル画調の人物顔における好ましい肌色として,明るい肌色を選ぶ傾向が示された.顔形状に対する好ましい肌色の被験者間の分布範囲が円形刺激の場合よりも狭かった.従って,顔形状間にも違いあることが明らかになった.また,色マッチングの実験で、肌色の判断には顔形状はほとんど関係していないことが示された.ただし,好ましい肌色付近の色における肌色判断が安定であること,また,スクランブル顔,上下逆転顔,パーツ不足顔では肌色の判断が不正確である傾向にあり,顔知覚と肌色判断が関係していることが示唆された.
著者
浦野 貴裕 金子 俊一 高氏 秀則 田中 孝之
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.417-425, 2007 (Released:2011-08-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

方向符号差分ヒストグラム(OCDH)に基づき回転不変かつ計算コストの低いロバストな画像照合法を提案する.画素近傍の明度変化の勾配から得られる方向符号は,ハイライトや陰影などの明度変動対して強いロバスト性を有する.画像上の2点から得られる方向符号の差分は,回転不変特徴を持ち,本手法では,そのヒストグラム(OCDH)を照合に利用する.高速な回転不変照合実現のため,照合の候補位置をOCDHにより推定し,推定された候補位置に対して画像間の回転角度推定,ならびに方向符号を用いた確認処理を行う.
著者
大町 方子 大町 真一郎
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.673-679, 2009-09-25 (Released:2011-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

高度道路情報システムへの関心が高まり,安全走行のための様々な運転支援システムが開発されている.その中でも,最近画像を用いたシステムが注目され,道路環境の認識と理解に関する様々な研究が行われている.信号機の認識は安全運転支援には重要な技術である.車載カメラで撮影した画像から信号機を検出し,点灯している色を認識することが可能となれば,運転者に対して道路環境を理解するための有益な情報を与えることが可能となる.本稿では,車両用信号機を対象とし,デジタルカメラで撮影した情景画像から点灯している信号表示面を高速に検出し,その色を認識する手法を提案する.提案手法では,まず信号機の種類や照明条件による色の違いを吸収するために色空間をRGBから正規化RGBに変換する.次に,色情報に基づいて信号表示面の候補領域を抽出する.そして,エッジを用いたハフ変換を基本とし,色情報を相補的に利用することにより信号表示面の正確な領域を抽出する.実際にデジタルカメラで自動車のフロントガラスを通して撮影された情景画像を用いた実験を行い,提案手法の有効性を検証する.
著者
プリマ オキ ディッキ A. 亀田 昌志 伊藤 皓平 伊藤 久祥
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.993-1000, 2011-11-25 (Released:2012-03-28)
参考文献数
11

1986年に登場して以来,JPEGがWebコンテンツやデジタルカメラの記録方式として多く利用されてきている.しかしながら,JPEGには注目領域(ROI)を考慮して,ROIに応じて圧縮率を可変にする機能がない.本稿は,JPEGのアルゴリズムを改良し,ROIを考慮する新しいJPEG画像を生成する手法(ROI-JPEG)を提案する.提案手法では,事前に定義したROIをもとにDCT係数を適応的に量子化することで,画像中のブロックごとの符号量をROIによって柔軟に設定することができるようになる.更に,量子化したDCT係数を逆量子化して劣化したDCT係数を生成し,これらのDCT係数に対して既存のJPEGアルゴリズムで量子化・エントロピー符号化を施すことによって,既存のJPEG復号器を変更することなく,符号化した画像を復号できる.実験では,顕著性マップ生成アルゴリズム(Ittiら,1998)1)を用いてROIを自動生成し,ファイルサイズが小さく,かつ従来のJPEGと同等な主観的品質をもつJPEG画像を作成できることを示した.
著者
勝村 大 谷村 知洋 青木 香織 阿部 祥子 田口 博之 森谷 友昭 高橋 時市郎
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.382-389, 2007 (Released:2011-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

江戸時代の古地図や江戸時代に関する文献などの資料を基にして三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)で江戸の町並みの復元を目指している.町並み復元における家屋のモデリング作業を効率化するために,家屋構造記述言語を開発した.家屋の主要な部品の規格が幅3尺,高さ6尺と定まっていたことに着目し,3尺を基本単位とした部品を書き連ねて家屋構造を言語で記述する.家屋構造記述言語に記述された個々の部品を乱数などで置き換えることにより,外観の異なる家屋を大量かつ効率的に自動生成できる.しかしながら,家屋構造記述言語を用いて屋根を葺く場合,家屋の周囲情報の構造を考慮して屋根の位置を詳細に設定しなければならない.そこで,家屋構造記述言語の周囲情報のみから屋根を自動的に葺く,kD-roofing法を提案した.これらの手法を用いて家屋を効率良く生成することができたので報告する.
著者
金森 由博 高橋 成雄 西田 友是
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.354-361, 2007 (Released:2011-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

点集合による形状表現は,従来の多角形メッシュと異なり,点同士の接続情報を用いずに大規模な三次元形状データを扱うことができるため,CGの分野において非常に有望とされている表現方法の一つである.点集合で表現された形状を描画するためには,通常サーフェルと呼ばれる円盤が広く用いられているが,サンプリング密度が不十分な領域では穴が生じてしまう.これを解決するため,本稿ではサーフェルを用いて曲面を表現する際に穴が生じないよう,アップサンプリングを行う手法を提案する.穴を埋めるために,提案法は各サーフェルの周囲の隙間を検出し,サーフェルを追加して隙間を埋める.提案法はサーフェルの重なりとユーザが指定したサーフェルの半径を考慮することによって,追加するサーフェルの数を少なく抑える.実験により,提案法が多重解像度(level-of-detail)の制御や対話的なモデリングなどに広く応用できることを示す.