出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.S-106-S-110, 2015
著者
北本 友佳 森田 聖 山藤 知宏 鯉江 基哉 石田 雄大 福島 光夫 安田 浩一朗
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.317-322, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

SGLT2阻害薬による薬疹が臨床経過より疑われた2型糖尿病の1例について報告する.症例は63歳女性.食物アレルギーあり.シタグリプチン50 mg/日及びグリメピリド0.5 mg/日にてHbA1c 8 %台と血糖コントロール不良でありルセオグリフロジン2.5 mg/日追加.内服8日目,頚部に紅斑が出現し,四肢・体幹に拡大.ルセオグリフロジンの内服を中止するも改善せず.近医受診しステロイド内服するも改善せず,当院受診し入院.皮膚科診察にてルセオグリフロジンによる薬疹疑いと診断.プレドニゾロン40 mg/日点滴にて,皮疹改善.ステロイドを漸減し,プレドニゾロン10 mg/日内服にて退院.臨床経過及び生検結果より,ルセオグリフロジンが原因の薬疹が疑われた.SGLT2阻害薬内服後に皮疹を認めた場合,速やかに皮膚科を受診するよう患者への説明が重要と思われる.
著者
根本 昌実 杉沢 勇人 西村 理明 田嶼 尚子 宇都宮 一典
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.98-102, 2011-02-28
被引用文献数
1

日本人成人1型糖尿病患者におけるハネムーン期発現に関与する臨床的因子を明らかにする目的で検討を行った.新規発症後のインスリン量が0.5単位/kg体重/日未満をハネムーン期と定義し,30症例(18~76歳,男:女=13:17)を,ハネムーン期を示す1型糖尿病(H群)と示さない1型糖尿病(NH群)に分類し,身体的及び検査所見を検討した.H群は19症例(63.3%)を占め,NH群と比較して尿中CPR高値(p=0.0022),LDL-コレステロール高値(p=0.01),自己免疫性甲状腺疾患の合併が多い(p=0.0002),退院時のインスリン必要量が少ない(p=0.004)特徴を認めた.発現までの期間は1.9±2.0ヶ月,持続期間は16.0±4.9ヶ月であった.ハネムーン期発現には残存膵インスリン分泌能,脂質代謝,自己免疫疾患合併の関与が示唆された.<br>
著者
佐々木 英継 佐野 隆志 小山 勝一 阿部 正和
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.402-409, 1975

肥満の病因論の観点から, 肥満における代謝異常と脂肪細胞の形態的変化との関連性を検討することが本論文の目的である.<BR>ヒトの脂肪細胞の形態的変化を観察する目的で, 手術時に得た腹壁皮下脂肪組織片を2%四酸化オスミウム液を用いて脂肪細胞を分離固定し, 脂肪細胞の数と大きさを決定した.対象者の脂肪細胞の数は, 体脂肪量を脂肪細胞の脂質含量で割ることによって求めた.体脂肪量はMartinssonの用いた式を利用して計算によって得た.その結果, 軽度および中等度の肥満は, 脂肪細胞の大きさとの関連があるという成績を得た.<BR>なお, 脂肪細胞の大きさから肥満を分類すると, 2つのタイプに大別された.その一つは<BR>脂肪細胞の肥大型であり, 他は正常型であった.後者は肥満の発症が幼若年代であり, 脂肪細胞の数の増加していることが明らかになった.脂肪細胞肥大型肥満では, 脂肪細胞正常型肥満とは対照的に, ブドウ糖負荷後の高インスリン反応, 耐糖力低下および空腹時血中遊離脂肪酸の増加を伴っていた.<BR>脂肪細胞の肥大と高インスリン反応および代謝異常との因果関係については不明であり, 今後の検討を要するが, 目下のところでは脂肪細胞の肥大は, 過剰に分泌されたインスリンの作用によってひき起こされた2次的なもののように思われる.
著者
三原 俊彦 大橋 博 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.1195-1206, 1984-11-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
13

76年1月から12月までの1年間に東京女子医大糖尿病センターを受診し, 一定の調査項目の完備した糖尿病患者1,629名について5年間にわたりprospectiveに追跡調査を行ったところ, 登録5年後の生存者1,442名, 死亡者184名, 生死不明者3名であり, 生死に関する追跡率は99.8%であった. 登録5年後の生命予後を不良とした登録時状態として, 糖尿病30歳未満発症, 肥満度90%未満, 収縮期血圧200mmHg以上, 拡張期血圧110mmHg以上, インスリン治療, 朝食前血糖200mg/dl以上, 血清コレステロール150mg/dl未満および300mg/dl以上, 血清中性脂肪300mg/dl以上, 血清尿素窒素30mg/dl以上, 血清尿酸10mg/dl以上, 神経障害, Scott IIIa以上の網膜症,(+++) 以上の蛋白尿などであった. とくに, 登録時に神経障害, 網膜症, 蛋白尿のすべてを有したものの予後は不良であった. 5年間に死亡した184名の死因の第1位は悪性新生物であり, ついで脳血管障害, 虚血性心疾患, 糖尿病性腎症の順であったが, 糖尿病若年発症者, 登録時肥満者, 高血圧, 高コレステロール血症, 高中性脂肪血症, 高尿素窒素血症, 高尿酸血症, 神経障害, 網膜症, 蛋白尿を有したものでは, 他の群に比し死因として悪性新生物の割合は少なく, 糖尿病性腎症, 虚血性心疾患, 脳血管障害など血管障害の割合が増大した.
著者
佐々木 陽 堀内 成人 長谷川 恭一 上原 ます子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.833-839, 1985-07-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

糖尿病患者の予後と発症年齢との関係, とくに最近における若年発症糖尿病患者の予後を明らかにする目的で次の検討を行った. 対象は当センターの登録糖尿病患者1,900名で平均追跡期間7.9年, 35歳未満発症の1型糖尿病12名を除き, 全例が2型糖尿病であった.1) 平均年間死亡率 (1,000対) は対象者全員では男30.79, 女20.10で発症年齢が進むほど高くなるが, 35歳未満発症群では35-44歳群よりむしろ高い値を示した. これに対して, O/E比は全体では1.71で糖尿病患者では有意の過剰死亡を示すが, 発症年齢が若くなるほどO/E比は高くなり, 35歳未満発症群では男4.17, 女9.32に達した.2) 初診時における各種因の分布を発症年齢別にみると, 35歳未満発症群では空腹時血糖値が高く, インスリン治療のものが多い. また, 尿蛋白陽性率も35-44歳発症群よりも高率となっている.3) 発症年齢45歳未満を一括すると腎疾患による死亡が最も多く, 心疾患, 悪性新生物, 肝硬変がこれに次ぎ, 65歳以上発症群とは著しく異なる分布がみられた。また, 腎疾患のO/E比は45歳未満発症群では41.67に達し, 他の年齢群を大きく上回った.以上, 若年発症糖尿病患者は同年代の府民一般に比して死亡リスクが筈しく高く, また腎疾患による死亡がとくに多いなどの特徴がみられた.
著者
和泉 賢一 上村 太朗 松居 由夏 近藤 しおり 岡田 貴典
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.843-848, 2009-10-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は50歳,男性.腎機能低下を伴った2型糖尿病で,ナテグリニドにて治療中であった.感冒様症状のため入院前数日間食事摂取が困難となり,気分不良・意識障害で近医を受診した.意識障害の原因として低血糖を認め当院に紹介となる.ナテグリニドは吸収と消失が速く,通常,低血糖は起こりにくい薬剤である.しかし,本症例では,脱水による急性腎不全にて血清Cr 8.78 mg/dlと腎機能が悪化していた.また,ナテグリニドの血中濃度は上昇していたが,代謝産物M1とM7の血中濃度はナテグリニドより低い状態であった.すなわち,本症例は,腎機能低下に起因するナテグリニドとインスリンのクリアランス低下により低血糖を起こしたと考えられた.さらに,甲状腺機能低下状態が認められ,これが低血糖を悪化させた可能性が考えられた.ナテグリニド単独にて重篤な遷延する低血糖を起こした症例は珍しく,報告する.
著者
和田 直 川手 亮三 山木戸 道郎 西亀 雄二 伊藤 千賀子 野間 興二 内藤 泰雄 野島 直樹 寄田 享
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.14-22, 1968-01-31 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

58, 235 subjects in 1963, 49, 174 subjects in 1964, 55, 393 subjects in 1965 and 82, 001 subjects in 1966 received a screening test for glycosuria using tes-tape. Since this study wes done on individuals who were exposed to the Atomic Bomb, no one was under 17 years of age when examined. Urine sample was obtained between 9 AM for 4 PM. Incidence of positive glycosuria was 3.0%, 3.9%, 4.4% and 4.3% respectively in each year. The incidence was 3.6 times higher in the male than in the female. Maxium incidence was noted in men over 60 years old being 10.1%, and minimum was in women under 39 years old being 1.1%. Of the glycosuric patients, 25.1% of males and 56.1% of females were obese, and 11.9% of males and 18.2% of females gave a family history of diabetes mellitus.2, 352 subjects from the cases who showed positive glycosuria had an oral glucose tolerance test. It was positive for diabetes mellitus in 42.6% of the subjects, 28.6% showed possible diabetes mellitus, 5.4% showed oxyhyperglycemia, 0.9% showed renal glycosuria and 22.3% were normal. Detection ratio of diabetes mellitus from the glycosuric patients was higher in the female (55.2%) than in the male (37.7%), though incidence of glycosuria was higher in the male than in the female. Of the 21 subjects who were diagnosed as renal glycosuria, 20 were male.The incidence of family history of diabetes mellitus was 14.6% in the diabetics and 12.8% in the glycousuric nondiabetics. This incidence in the nondiabetics was much higher than that of nonglycosuric nondiabetics (1.72%) which was reported by Dr. Rudnick in Hiroshima ABCC.Of total diabetic patients, the cases detected by this study was 72.7%. This would indicate that the screening test measuring urine sugar is valuable for the detection of diabetes mellitus in this kind of mass survay.The incidence of hypercholesteremia and of hypertension was statistically higher in the detected diabetics than in the nondiabetics.
著者
櫻井 健一 片山 恵里 茂手木 宏美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.323-328, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
20

症例は72歳女性.2型糖尿病経過中にシタグリプチン50 mgを開始し,血糖コントロール良好(HbA1c5 %台)となるも,その後低血糖と思われる症状が出現した.数日間の体調不良・食思不振の後,低血糖性昏睡(血糖値31 mg/dl)にて入院となった.この時の血清インスリンが9.24 uIU/mlと高値であり,インスリンの不適切分泌が疑われた.各種検査により,シタグリプチンとシベンゾリンの併用による薬剤性低血糖が疑われ,両薬を中止したところ低血糖は改善した.シベンゾリンは膵β細胞に対しSU薬と同様にKATPチャネルに作用し,インスリン分泌を促すことが知られている.本症例は高齢であり,腎機能障害を有しており,シタグリプチンとの併用によりインスリン分泌作用が増強したと考えられた.DPP4阻害薬をIa群抗不整脈薬と併用する際には相互作用による重症低血糖に十分留意する必要があると考えられた.
著者
山下 哲二 岡田 震一 河本 順子 河本 紀一 肥田 和之 國富 三絵 土山 芳穂 杉本 光 和田 淳 四方 賢一 槇野 博史
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.319-323, 2002-05-30
被引用文献数
13 10

症例は71歳, 男性. 45歳時に糖尿病と診断された. 64歳時よりsulfonylurea剤を, 70歳時よりインスリンによる治療を開始した, 1998年1月, 糖尿病性ケトアシドーシスを発症し近医に入院となった. 経静脈的にインスリンが投与されケトーシスは改善した. 皮下インスリン注射による強化療法に変更し, 投与量を漸増したところ早朝低血糖および日中高血糖傾向が強まった. 抗インスリン抗体陽性であり, 精査目的にて当科入院となった. euglycemic hyper insulinemic clamp study にて血糖を100 mg/d<I>l</I>にクランプし0.5 mU/kg/minから10 mU/kg/minへとインスリン注入率を増量したところ, ブドウ糖注入率は2.O mg/kg/minから3.5 mg/kg/minに上昇するのみであった. Total IRiは著明に上昇したが, free lRl はわずかな上昇にとどまった. インスリン減量により, 早朝低血糖は消失し, さらにステロイドホルモン内服投与により, 日中高血糖も改善した. 抗インスリン抗体が早朝低血糖および日中高血糖に関与した症例と考えられた.
著者
中村 晋 内田 大学 高橋 良枝 龍野 一郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.805-808, 2006 (Released:2009-01-19)
参考文献数
11

塩酸バラシクロビルは,アシクロビルのプロドラッグでその副作用として過量投与による腎不全がある.今回,糖尿病腎症2期にて微量アルブミン尿を認める糖尿病で,塩酸バラシクロビルが原因と考えられる急性腎不全を発症した症例を経験した.症例は75歳の男性で,高血圧症と糖尿病で治療中であった.2004年8月に背部の帯状ヘルペスを発症し,塩酸バラシクロビルの内服を開始したところ急性腎不全を発症した.急性腎不全は塩酸バラシクロビルの内服中止と補液にて改善した.本症例では,もともと糖尿病腎症は2期と軽度であったが,塩酸バラシクロビルの常用量で急性腎不全を発症しており,使用する際には腎機能に注意して慎重に行う必要があったと考えられた.
著者
木田 真美 吉越 仁美 小西 秀知 内海 さやか 佐藤 修一 小泉 勝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.540-547, 2017-08-30 (Released:2017-08-30)
参考文献数
19

2型糖尿病患者は年々増加傾向で,加齢に伴い種々の臓器障害を合併する.腎機能障害が高率にみられる高齢者では,薬剤の選択・用量調整が重症低血糖回避のために必要となる.汎用されているDPP-4阻害薬の中で,胆汁排泄型リナグリプチンを75歳以上の39例に,新規・上乗せあるいはシタグリプチン,ビルダグリプチン常用量からの切り替え投与を行い,血糖及び肝腎機能,脂質の変動を観察した.75歳未満75例と比較すると,6か月後の血糖,HbA1cが新規および切り替え両群で有意に改善し,全体の改善度も高かった.Crea>1.0 mg/dLの腎機能障害例でもHbA1cは有意に改善し,肝腎機能悪化や脂質代謝異常,低血糖,体重増加その他の副作用もなかった.高齢2型糖尿病患者において,腎機能障害に関わらず,リナグリプチンは単一用量で安全に使用でき,有用な薬剤と考えられた.
著者
山下 裕代 前田 修作 坂谷 敏子 坂下 有
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.12-16, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
8

高血糖は免疫能低下・易感染性を招き,糖尿病は肺結核と同様に肺非結核性抗酸菌症(以下NTMLDと略す)の発症の危険因子と考えられるが,実際に関連があるか否かについては明らかでない.そこで,2005年1月から2007年12月の間にNTMLDの治療・精査目的で入院した患者103名を対象とし,糖尿病治療中あるいはHbA1c(JDS値)が6.1 %以上の糖尿病が強く疑われる患者の有病率とその特徴を調査した.患者全体の糖尿病有病率は26.2 %であったが,男性のみでは38.9 %,女性では14.8 %と男性で有意に高かった.男性の有病率は一般人口のHbA1c 6.1 %以上の糖尿病が疑われる人口よりも高く,男性では糖尿病がNTMLDと関連している可能性が示唆された.
著者
上田 真莉子 樫谷 悠也 稲山 由布子 伊藤 潤 清家 雅子 中村 幸子 日野 泰久 大原 毅 飯田 啓二
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.63-67, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
12

59歳男性.慢性膵炎,膵性糖尿病を指摘されインスリン頻回注射療法で加療されていた.意識障害で救急搬送となり,血糖値29 mg/dLの著明な低血糖が判明した.ブドウ糖の静脈投与により低血糖は改善したが意識障害は遷延し,第39日目に誤嚥性肺炎で永眠された.低血糖脳症は治療が遅れると不可逆的な意識障害や高次機能障害,麻痺などの神経学的後遺症を残し,死に至ることもある緊急症であり,注意する必要がある.
著者
永嶌 智子 比嘉 眞理子 上田 絢美 山下 馨 一城 貴政 弘世 貴久
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.827-832, 2018-12-30 (Released:2018-12-30)
参考文献数
21

41歳,女性.X年5月に腰痛,発熱が出現し解熱鎮痛剤を内服したが改善せず当院受診.来院時,CRP 22.99 mg/dL,WBC 17630/μL,血糖249 mg/dL,HbA1c 10.6 %,尿検査で細菌尿を検出,妊娠反応陽性だった.腹部超音波検査にて右腎盂に結石と腎盂腎杯の拡張を認め腎後性腎盂腎炎,2型糖尿病と診断し抗菌薬点滴と補液,持続静脈インスリン注入を開始し尿路閉塞に対し経尿道的尿管ステントを留置した.入院時の血液培養と腎盂尿培養からLactobacillus属が検出された.第5病日に炎症反応の改善を認め,第22病日に退院した.非病原菌であるLactobacillusは膣内の常在菌であり感染症の起因菌となることは稀である.本症例では高血糖による免疫能低下や妊娠による細菌叢の変化がLactobacillus属による腎盂腎炎を惹起した可能性が示唆された.
著者
西森 栄太 尾形 哲 高杉 一恵 依田 とし江 大井 さおり 関口 憲一 工藤 絹子 依田 淳 南 茂 仲 元司
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.297-306, 2018-05-30 (Released:2018-05-30)
参考文献数
37

わが国の糖尿病および非アルコール性脂肪性肝疾患(以下NAFLDと略す)の食事療法はカロリー制限食が中心であるが,近年,糖質制限食の有効性も報告されている.本研究では,2型糖尿病に伴うNAFLD患者に対する糖質制限食の効果を検討した.糖質制限食群は糖質を1日70~130 g,カロリー制限食群は1日総エネルギー摂取量を標準体重×25 kcal/kgとして,全患者28名を無作為に割り付けて3ヶ月間の比較試験をした.結果,介入後3ヶ月では,各群とも,腹部単純CT検査による肝脾CT値比の有意な上昇,内臓脂肪面積,AST,ALT,体重およびHbA1cの有意な低下が認められた(P<0.05).また,2群間では,内臓脂肪面積が糖質制限食群で有意に低下していたが,その他の項目には有意差は認められなかった.2型糖尿病に伴うNAFLDの糖質制限食はカロリー制限食と同等の改善効果があることが示された.