著者
辻 一郎
出版者
The Japan Stroke Society
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.344-348, 2002

Based on the currently available evidence, we estimated cost-effectiveness of brain check-up with MRI/ MRA to diagnose and treat asymptomatic unruptured cerebral aneurysm.<BR>In this simulation analysis using a medical decision analysis model, we estimated costs and effectiveness under two different strategies ; one is asymptomatic 100, 000 Japanese population, aged mid-50's, receive brain check-up (Screen group), and another is nobody receive brain check-up (No Screen group). Costs included those for brain check-up (JPY 30, 000), diagnostic work-up (JPY 200, 000), treatment of unruptured aneurysm (JPY 2, 000, 000), treatment of ruptured aneurysm (JPY 4, 000, 000), and for long-term care ranging from JPY 1, 000, 000 to 5, 000, 000 per year according to the severity of disability. Effectiveness of brain check-up, in this analysis, was defined as the gain of life-years of survival, which is calculated as the difference of total life-years between the Screen group and the No Screen group.<BR>Based on the currently available evidence in Japan, we assumed the prevalence of asymptomatic unruptured aneurysm in the Japanese population aged mid-50's as 5%, sensitivity of brain check-up as 87%, its specificity as 92%. Likewise, we estimated the distribution of aneurysm size and the probability of spontaneous rupture according to the size, and the life and functional prognosis of the cases (see Text).<BR>The results indicated that mortality from subarachnoid hemorrhage would be decreased in the Screen group by about 80% than in the No Screen group. The cost for saving the life of one case with asymptomatic unruptured aneurysm was estimated to be JPY 74.4 × 10<SUP>6</SUP>, and the cost for one life-year suvival was estimated to be JPY 2.4×10<SUP>6</SUP>.
著者
小阪 崇幸 米持 康寛 幸崎 弥之助 田北 智裕 俵 哲
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.295-300, 2013-07-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
17

要旨:症例は38歳,女性.既往に過多月経を伴う月経困難症,前兆のない片頭痛あり.LEP(low dose estrogen progestin)製剤内服10日後より頭痛が出現.他院にて片頭痛と診断され,トリプタン製剤にて加療される一方,LEP製剤の内服は継続された.LEP製剤内服22日後,頭部MRIにて出血性脳梗塞を認め,当院に救急搬送された.脳静脈血栓症(CVT)と診断し,抗凝固療法にて加療.後遺症として軽度の純粋失読が残存したが,頭痛は消失し独歩退院.CVTの一因として経口避妊薬が知られている.本症例では月経困難症に対する治療目的のLEP製剤内服に加え,過多月経に伴う重度貧血を合併していた.近年LEP製剤は月経困難症に対し保険適用となったことで急速に普及しており,頭痛が認められた場合にはCVT発症の可能性を念頭に適切な対応が必要と考えられた.
著者
柳原 武彦 田村 晃
出版者
日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.690-690, 1998-12-25 (Released:2009-06-05)
著者
中川 実 坂本 千穂子 藤原 賢次郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.39-46, 2012-01-25 (Released:2012-01-27)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

近年,肺腫瘍の術前CTガイド下マーキングを行う機会が増加している.今回,我々はCTガイド下マーキング終了直後に脳空気塞栓症を来した1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性で,右下葉S8の腫瘤に対してビデオ補助胸腔鏡手術直前にCTガイド下マーキングを施行した.マーキング終了直後,突然意識障害,けいれん,左片麻痺を発症し,直後の頭部CTにて主に右大脳の脳溝に沿って空気像を認め,脳空気塞栓症と診断した.直ちに高圧酸素療法を施行し,治療直後の頭部CTではごく一部空気像を認めるのみとなった.その後意識も清明となり,運動麻痺も改善し,歩行可能となった.近年,肺腫瘍の術前CTガイド下マーキングを行う機会が増加しているが,それによる合併症としての空気塞栓症に関しても2001年以降報告が散見されており,穿刺針が極めて細いとはいえ,起こりうる合併症であり,文献的考察を加え,自験例を報告する.
著者
日野 英忠 古橋 紀久 神田 直 田崎 義昭
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.106-110, 1989-04-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
23
被引用文献数
1

頭部X線CTにより診断した前脈絡叢動脈領域梗塞7症例について臨床的検討を行った.神経症状として片麻痺, 半身感覚鈍麻, 半盲の三主要徴候のほか, 全例に著明な自発性低下, 記銘力障害を急性期に認めた.これらの発現機序として, 視床障害の関与を推察した.また見当識障害, 失計算も多くみられ, さらに大脳皮質症状である半側視空間失認, 病態失認も認められた.CT所見は特徴的な内包後脚全域の低吸収域のみならず, 外側膝状体に及ぶ病変も多くみられたが, 視床, 側頭葉, 中脳などのその他の灌流域での異常は認められなかった.脳血管写上, 多くの症例では本血管の主幹部または分岐部内頚動脈での狭窄所見を認めた.脳梗塞発症の原因として脳動脈瘤クリッピング, 高血圧症があげられる.その他蛋白同化ステロイド薬使用後, 再生不良性貧血, 妊娠中の発症があり, さらに性交を契機とした例もみられた.
著者
有本 裕彦 高里 良男 正岡 博幸 早川 隆宣 秋元 秀昭 八ツ繁 寛 東森 俊樹 森川 健太郎 菅原 貴志 小町 裕志 本間 正人
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.38-44, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

「目的」来院時の臨床症状や検査結果から脳幹出血患者の予後因子の検討を行った.「方法」過去5年間に当院に入院した脳幹出血70例(男51名,女19名,29∼93歳,平均59歳)の年齢,来院時臨床症状,来院後6時間以内の血糖値,白血球数,来院時CTでの血腫量,血腫の範囲,水頭症の合併,脳室内穿破の有無と予後を統計学的に解析し検討した.「結果及び結論」年齢では70歳以上の83%が死亡,70歳以下の55%が死亡し70歳以上で死亡率が増加する傾向を認めたが有意な相関はなかった(P=0.07).臨床症状では来院時に四肢麻痺か除脳硬直肢位(P<0.01),対光反射消失例(P<0.05)が有意に予後不良であった.来院時血糖値は200 mg/dl以上の症例(P<0.05),白血球数は10,000 /mm2以上(P<0.01)で予後と相関が認められた.またCT所見では血腫量が6 ml以上の血腫で最も強く予後に相関が見られた(P<0.001).血腫範囲では中心型血腫や中脳・視床,延髄に進展のみられる例(P<0.05),水頭症合併例,脳室内穿破合併例に予後と相関が認められた(P<0.01).
著者
中嶋 匡 西村 裕之 西原 賢太郎 浮田 透 辻 雅夫 三宅 裕治 大村 武久 立花 久大
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.577-582, 2008 (Released:2008-10-08)
参考文献数
13

症例は68歳女性.2006年11月21日右手の動かしにくさを自覚し,以後徐々に症状増悪した.11月23日には構音障害と運動性失語が出現した.11月24日右上肢のけいれん後右片麻痺が出現し当院へ入院した.入院時,意識障害,全失語,軽度右片麻痺を認めた.入院当日の頭部MRIは,拡散強調画像およびFLAIR画像で左前頭葉皮質にリボン状に高信号を認めた.緩徐進行性の経過から,seizureを伴った血栓性脳梗塞と診断し,抗てんかん薬投与と抗血小板療法を行った.入院後物品呼称や名前を言うことが可能となり,右下肢麻痺は消失した.右上肢麻痺も徐々に改善し,失語症と共に26日には消失した.以上より本例をfocal inhibitory seizureと診断した.本症は従来考えられていたよりも稀な病態でなく,抗てんかん薬で治療可能であることから,脳梗塞との鑑別上留意すべき病態であると考えられた.
著者
大浦 大輔 角屋 智香 横浜 拓実 新谷 好正 岩崎 素之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10624, (Released:2019-01-12)
参考文献数
19
被引用文献数
2

要旨:急性期虚血性脳卒中に対する血栓除去術では再灌流までの時間が重要であり,術前検査は短時間であることが望まれる.一方で大動脈解離に起因した脳神経症状を呈する症例が報告されており,これを鑑別することは安全な治療を行う上で重要である.我々は3Tesla MRI による胸部スクルーニングMRA を含めた短時間脳卒中プロトコールを169 例に試行した中で2 例の急性A 型大動脈解離を検出した.2 症例とも意識障害により大動脈解離に典型的な胸痛および背部の疼痛の訴えはなく,検査前に急性A 型大動脈解離を示唆する症状は認めなかった.従来,3Tesla MRI での胸部大血管高速MRA は局所磁場不均一から撮像が難しかったが,我々が開発した飽和効果を利用した胸部MRA sequence により迅速に大動脈解離が鑑別され,その後の適切な処置につながった2 症例について報告する.
著者
大櫛 陽一 小林 祥泰 JSSRS
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.777-781, 2007-11-25 (Released:2009-02-06)
参考文献数
10

Object: We analyzed relations between stroke and hyper tension or the therapy with resent elder Japanese data.Methods: 1) We performed a case control study by comparing rates of hypertension or the therapy with the data of patients in JSSRS and a general population. 2) We performed a open cohort study to analyze a relation between blood pressure revel and total mortality with a general population. The analysis repeated in each gender and each generation (40-59 years, 60-69 years, 70-79 years, 80-89 years). 3) We performed a open cohort study to calculate the risks of hypertension therapy in the same blood pressure revels with another general population.Results: Hyper tension showed significant risk to cerebral infarction in people less than 60 years old, but did not in people more than 60 years old. Hyper tension therapy showed significant risk to cerebral infarction in all generation. Blood pressure showed did not show significant risk to total mortality until 160/100 (systolic/diastolic) in both gender and all generations of the general population. Hyper tension therapy showed significant risk to total mortality at the revel of blood pressure over 180/110. The reason is assumed as the patients with higher blood pressure were treated with hard therapy.Discussion: Hypertension therapy is aiming to decrease blood pressure less than 140/90 now. This study shows the goal is not adequate for elder people. Cerebral infarction may result from the hard treatment.
著者
長尾 毅彦 井田 正博 元良 健一 新井 健史 吉澤 寿 小林 美紀 有馬 留志 石川 みずき 片山 泰朗 横地 正之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.514-518, 2006-12-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

目的:脳梗塞急性期において, Susceptibility-Weighted Image (SWI)を用いた高分解能3D MR Venographyにより,造影剤を使用しない脳循環評価を試みた.方法:発症24時間以内の皮質を含む急性期脳梗塞21例を対象とし,3D FLASH法TE=40msecで撮像した,撮像時間は約5分30秒.この方法は,脳組織中のoxy-Hbと静脈のdeoxy-Hbの磁化率差を強調させた撮影法である.臨床情報を伏せた状態で,塞栓子による血管閉塞部位,静脈灌流障害の有無をSWI上で読影し,他の撮像方法と比較した.結果:17/21例で静脈灌流異常によるIncreased BOLD sign(IBS)を認め,misery perfusionを反映する所見と考えた.IBS所見は,T2強調画像で血管性浮腫を認める時期には消失した.13/21例で,動脈主幹部に低信号を呈する塞栓子を検出しえた.結論:脳梗塞急性期において,SWIは非侵襲的に頭蓋内の灌流状態を評価可能であり,その所見はmisery perfusionを反映するものであると考えられるため,SWIで異常を認めた症例には,perfusion imageの適応を検討すべきである.同時に,この撮像法は塞栓子検出やmicrobleeds評価に関しても有用と思われた.
著者
小暮 哲夫 小川 彰 関 博文 吉本 高志 鈴木 二郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.394-401, 1985-10-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
20
被引用文献数
1

内頚動脈閉塞症急性期の臨床像とその予後を明らかにする目的で発症後24時間以内に収容された本症104例に対してCT・脳血管撮影を施行し, 2ヵ月間にわたり意識障害や運動障害の推移を中心に臨床経過の観察を行った.死亡例が5割, 社会復帰不能例が4割を占め, 社会復帰可能例が1割のみと, 本症の予後は不良であり, 過半数を占める塞栓症においてより顕著であった.入院時の意識状態や運動機能は予後とよく相関し, 多少とも意識障害を認めたり, 重力に抗する運動の不可能な例で社会復帰したものはまれであった.CT上のLDAの大きさも予後とよく相関し, 予後良好例は非出現例にほぼ限られ, 複数の脳主幹動脈に及ぶ出現例のほとんどが死亡していた.約半数を占める死亡例は高齢者に多く, その8割が第4病日をピークとする発症後早期の脳梗塞直接死亡例であり, 他の2割は合併症による間接死亡例に相当し, その死亡時期に一定の傾向は認められなかった.
著者
佐藤 知樹 藤本 司 大滝 博和 佐藤 隆一 岸本 浩次
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.287-294, 2002-09-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
22

両側頸動脈永久結紮ラットを用い,黄連解毒湯,当帰芍薬散の脳虚血性障害出現への影響を検討した.虚血手術の14日前から薬物を連日直接胃に注入し,術後も30日間同様に投与した.途中で死亡した場合はその時点で脳を摘出し,生存例は30日後に動脈採血後脳を摘出した.脳はHE染色,トルイジンブルー染色,組織化学染色(VEGF, bFGF, ER, PgR)を行ない,エストローゲン(E1,E2,E3)の血中濃度を測定した.黄連解毒湯,当帰芍薬散,蒸留水投与群の急性期の死亡率は3/13(23%),5/12(42%),5/12(42%)であり,生存例中脳梗塞巣を認めたのは0/7(0%),1/7(14%),5/7(71%)であった,VEGF,bFGF陽性細胞はともに梗塞巣周辺部(penumbra)で増加していたが,程度や分布は群間で差を認めなかった.血中エストローゲン濃度,ER,PgR陽性細胞出現頻度,分布にも群間に有意な変化を認めなかった.黄連解毒湯,当帰芍薬散の脳虚血障害への防御効果が示唆された.
著者
高砂 浩史 小野 元 伊藤 英道 大塩 恒太郎 田中 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.313-318, 2016 (Released:2016-09-23)
参考文献数
20
被引用文献数
6

【目的】水頭症を伴う脳室内血腫に対する治療として脳室ドレナージ(EVD)が一般的であるが,神経内視鏡を用いた脳室内血腫除去術の有用性と安全性をEVD 単独治療との比較により検討する.【方法】2010 年から2014 年までの水頭症を伴う脳室内出血28 例中,EVD 単独治療の9 例と神経内視鏡下血腫除去とEVD を行った9 例を対象とした.年齢,GCS,脳室内血腫量,EVD 留置期間,離床でのリハビリテーションまでの期間,在院日数,シャント術の必要性,合併症,退院時予後について検討した.【結果】EVD 留置期間と離床でのリハビリテーション導入までの期間は神経内視鏡治療群で有意に短かった.内視鏡治療はより重症例に適用されていたが,退院時の転帰に有意差がなかった.【結論】内視鏡下脳室内血腫除去術はEVD 留置期間を短縮もしくは不要にし,本格的なリハビリの導入期間も早まる.そこで神経学的予後の改善が期待される.
著者
森 俊子 岡崎 哲也 蜂須賀 研二
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.281-286, 2013-07-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
8

要旨:前脳基底部健忘は,重度の前向性および逆向性健忘・人格変化を伴う作話・見当識障害・病識の欠如を特徴とする.今回経験した3症例では,前脳基底部に損傷が比較的限局した症例では,作話や記憶障害を認めたが遂行機能障害はなく,人格変化は比較的軽度で薬物により症状は改善した.一方前脳基底部を含めて前頭葉にまで病変が広がっている場合,遂行機能障害の合併,多動や多幸感などの人格変化,作話の持続が長い傾向があった.健忘の重症度やリハビリの効果においては両者で大きな違いはなく,エピソード記憶の改善は少なかったが,スケジュールノートを利用した反復訓練により日課的な日常生活は支障なく可能となった.
著者
上田 凌大 今井 啓輔 山田 丈弘 猪奥 徹也 長 正訓 崔 聡 徳田 直輝 山本 敦史 加藤 拓真
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.303-309, 2023 (Released:2023-07-25)
参考文献数
21

【背景および目的】中大脳動脈水平部開存型の内頸動脈閉塞症(ICOPM)に対する急性期血行再建術(EVT)の成績と転帰関連因子を明らかにする.【方法】2014年5月から2021年7月にEVTを実施した511例中,ICOPM例を対象とし,背景因子と時間指標,治療内容,手術成績を検討した.対象を転帰良好群(3カ月後mRS 0–2:G群)と転帰不良群(同3–6:P群)に分類し,比較した.【結果】対象は36例で年齢85歳,NIHSS 17.5点,発症–来院時間200分,穿刺–再開通時間(P2R)84.5分(中央値),術中血栓移動9例,有効再開通32例であった.G群は13例でP群と比較しP2Rが短かった.【結論】EVTを受けたICOPM例は36例で,有効再開通32例,転帰良好13例と成績不良ではなかった.転帰良好例ではP2Rが短かったが,ICOPMは複雑な病態であり,P2R短縮が転帰改善に直結するとはいえない.
著者
立花 久嗣 高橋 哲 影山 智子 前野 和重 松下 達生
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.152-156, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
18

症例は38歳女性.来院前日に誘因なく意識障害を伴う数分間の痙攣発作を繰り返し入院した.入院時神経学的に感覚性失語を認め,頭部MRIにて左側頭葉に病変を認めた.また,著明な鉄欠乏性貧血と血小板増多を認め,後に子宮筋腫による慢性貧血と判明した.脳血管撮影では血管奇形や静脈洞血栓症を疑う所見を認めなかった.後日撮像した頭部MRIの3D-FLAIRにて,左側頭葉病変の表層に索状の高信号域を認め,後方視的に来院時CTでも同部位の点状の高吸収域を確認できたため,閉塞血管と判断し,子宮筋腫に伴う鉄欠乏性貧血に合併した脳皮質静脈血栓症と診断した.3D-FLAIRを用いた多面的な評価が脳皮質静脈血栓症の診断に有用であった.
著者
福原 正代 田川 皓一 飯野 耕三
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.55-60, 1994-02-25 (Released:2009-09-16)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

プロソディーの障害は失語症との関連で左半球損傷, 感情言語の障害との関連で右半球損傷として論じられている.右中大脳動脈領域の梗塞に伴うアプロソディアの症例を報告した.右利きの50歳の女性で, 左片麻痺で発症した.話し方に抑揚がなく, 中国人のようであると指摘された.自発話は流暢であるが, 抑揚に障害を認め, 助詞に省略が多い。語尾や文末に助詞「ね」が多用され, その音が上がる傾向にあった.自発的なプロソディーに障害はみるが, 言語やプロソディーの聴覚的理解は良好で, プロソディーを除くと復唱や呼称に問題はなかった.運動性アプロソディアと診断した.なお, 読字では文節の区切りは正常, 助詞の省略もなかった.書字は正常であった.画像診断により, 右中大脳動脈領域で穿通枝を含み前頭葉から頭頂葉, 側頭葉に及ぶ梗塞を認めた.本例の責任病巣は, Rossによる前方病変, すなわち左半球のBroca領域に相当する右半球領域と考えた.
著者
松田 雅純 鎌田 幸子 大川 聡 菅原 正伯 大西 洋英
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.195-199, 2013-05-20 (Released:2013-05-24)
参考文献数
17

要旨:Body lateropulsionは,一側に体が不随意に倒れてしまう症候のことをいう.今回我々は,body lateropulsionを主訴とした脳梗塞の5症例について後ろ向きに検討した.5例とも当科には原因不明の失調症として紹介された.症状としては,Horner症候群,顔面,手,足の感覚障害を伴う例もみられた.急性期では画像診断に難渋する例が多くみられた.5例とも初回のMRI検査では病巣を検出できなかった.病巣をMRI検査で検出できたのは平均6.4日目(中央値8日)であった.責任病巣としては前脊髄小脳路またはascending graviceptive pathwayが責任病巣と考えられた.急性発症の体が傾くという訴えの際には,詳細な診察を行い発症初期のMRI拡散強調像で病変を指摘することができなくても脳血管障害の可能性を常に念頭に置き診療に当たることが重要であると思われた.
著者
守屋 正道 角 光一郎 宮崎 彰吾 青木 主税
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.161-167, 2016 (Released:2016-05-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】くも膜下出血患者の離床時期が歩行獲得に及ぼす影響について後向きに調査し,アウトカムに影響する要因についても合わせて検討した.【方法】対象は2011 年2 月から2013 年7 月までにSAH(subarachnoid hemorrhage)と診断され外科的治療を行い,理学療法を実施した63 例とした.発症後14 日以内に離床を開始したEarly 群(40 例)と,発症後15 日以降に離床したLate 群(23例)に分類し比較した.また,抽出項目の中からアウトカムに影響する要因を検討した.【結果】Early群の歩行獲得率は有意に高い結果であった(p<0.002).アウトカムに影響する要因は,重症度(p<0.001),年齢(p<0.04),発症から離床開始までの日数(p<0.05)があげられた.【結論】早期離床は,歩行獲得までの日数を短縮させ,早期にADL を再獲得させることを示唆した.アウトカムに影響する要因は,重症度,年齢,離床までの日数であった.
著者
麻生 大吾 久光 慶紀 松田 浩幸 森重 真毅 武田 裕 久保 毅 藤木 稔
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.443-448, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

症例は26歳男性,繰り返す右上肢脱力発作の精査にて左内頚動脈高度狭窄と多発性脳梗塞を認めた.急性期加療を行いながら,若年性脳梗塞の原因精査で右冠動脈末梢の狭窄と,腹部大動脈に血栓を疑う陰影欠損を認めた.さらに血球増多があり,JAK2遺伝子変異を検出し,真性多血症と診断した.ルキソリチニブの内服開始後,頚動脈プラークの速やかな退縮が得られた.今回の症例経験からJAK2遺伝子変異陽性例では,脳梗塞予防には抗血小板薬だけでなく,抗腫瘍薬使用も有用と考えられる.真性多血症での多発性の血栓塞栓症の報告は多いが,塞栓源に対する経時的画像変化を捉えた報告は貴重であると考え,報告する.