著者
本岡 里英子 山本 真士
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.690-693, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
11
被引用文献数
2 6

症例は39歳女性.1年前より下肢痙性,上下肢異常感覚が出現し,痙性による歩行障害が進行した.神経学的に両下肢痙性,両下肢深部感覚障害,四肢異常感覚を認めた.各種自己抗体,HTLV-1を含むウイルス抗体,腫瘍マーカー,ビタミンに異常を認めず,髄液細胞数,蛋白は正常で,OCB,MBPは陰性であった.頭部MRIは異常なく,頸胸髄MRIで,後索にT2WI高信号を認めた.血清銅,セルロプラスミンが低値であり,銅欠乏性ミエロパチーと診断した.生活歴を再聴取した結果,5年以上前から牡蠣を毎日15~20個摂取するという極端な食生活が判明し,亜鉛過剰摂取が原因と考えた.亜鉛過剰摂取による銅欠乏症の原因として本例のような食餌性は稀である.
著者
小仲 邦 望月 秀樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.263-265, 2015 (Released:2015-04-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

音楽家におけるジストニアは動作特異性ジストニアの一つとして知られる.長年同じ演奏動作をくりかえすことで生じるとされるが,その実態の詳細は明らかではない.また疾病が社会的に周知されていないことから患者自身が医療機関を受診していない可能性も考えられる.われわれは音楽大学の学生を対象として音楽家におけるジストニアについてはじめてアンケート調査を施行した.480名の対象者のうち本疾病を認識している学生は29%であった.1.25%の学生において演奏時にジストニアが出現するとの回答がえられた.
著者
小仲 邦 望月 秀樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.263-265, 2015
被引用文献数
1

音楽家におけるジストニアは動作特異性ジストニアの一つとして知られる.長年同じ演奏動作をくりかえすことで生じるとされるが,その実態の詳細は明らかではない.また疾病が社会的に周知されていないことから患者自身が医療機関を受診していない可能性も考えられる.われわれは音楽大学の学生を対象として音楽家におけるジストニアについてはじめてアンケート調査を施行した.480名の対象者のうち本疾病を認識している学生は29%であった.1.25%の学生において演奏時にジストニアが出現するとの回答がえられた.
著者
伊藤 和憲 齊藤 真吾 佐原 俊作 内藤 由規
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1294-1296, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
6
被引用文献数
1

There is some evidence for the efficacy of acupuncture and moxibustion treatment in symptoms of neurology (pain, anxietas, depression and motor ability), but the mechanisms of acupuncture and moxibustion remain unclear. We examined the remediation mechanisms of acupuncture and moxibustion on symptoms (pain, anxietas, depression and motor ability). Some of papers reported that the serotonin and dopamine was increased in brain by the acupuncture and moxibustion. In addition, the treatments of acupuncture and drug reported less depression intensity than the drug only. These results suggest that the serotonin and dopamine in brain was improved by the acupuncture and moxibustion, and acupuncture and drug therapy may be more effective on symptoms (pain, anxietas, depression, motor ability) than drug therapy.
著者
Kiyomi Nagumo Yumiko Kunimi Susumu Nomura Masatosi Beppu Keizo Hirayama
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.311-319, 2015 (Released:2015-05-30)
参考文献数
26
被引用文献数
2

Objective: Ataxic gait can be remarkably improved by a simple method called the “handkerchief guide” involving the patient and caregiver holding opposite ends of a handkerchief and walking together. Our objective was to assess the effect of the handkerchief guide on gait in patients with cerebellar ataxia. Methods: Gait analysis was carried out on seven patients with degenerative cerebellar disease (DCD), seven patients with unilateral cerebellar vascular disease (CVD), and seven healthy control (HC) subjects. All subjects performed two walking tasks: free walking (FW) and handkerchief-guided walking (HGW) on a 10 m pathway. In the HGW condition, each subject walked with the caregiver while maintaining slight tension on the handkerchief. The HCs and patients with DCD held the handkerchief with their right hand, while the patients with unilateral limb ataxia due to CVD grasped it with their affected and unaffected hands in different trials. We measured 10 gait parameters. Results: The HGW attenuated body-sway, lengthened step, and increased gait velocity in patients with cerebellar ataxia. In DCD, the HGW significantly improved seven parameters. In CVD, HGW with the affected hand improved five parameters, and HGW with the unaffected hand improved seven parameters. Conclusions: The HGW stabilized upright posture in patients with cerebellar ataxia during level-ground walking, probably by enabling subconscious postural adjustments to minimize changes in the arm and hand position relative to trunk, and in arm configuration. This led to improvement of gait performance. The handkerchief guide may be useful for walk training in patients with cerebellar ataxia. Abbreviations: COM, center of mass; COG, center of gravity (projection of the COM onto the ground plane); COP, center of pressure; CVD, cerebellar vascular disease; DCD, degenerative cerebellar disease; FW, free walking; HAT, head, arms, and trunk segment; HC, healthy control; HGW, handkerchief-guided walking.
著者
杉浦 嘉泰 宇川 義一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-8, 2017 (Released:2017-01-31)
参考文献数
54
被引用文献数
1 3

てんかんは大脳神経細胞の過剰な電気的興奮によって起こり,近年神経細胞の電気的活動に深く関わるイオンチャネルの遺伝子変異が,てんかんの原因として報告されてきた.またこの変異イオンチャネルの電気生理学的機能解析により,てんかんを発症する病態が明らかとなってきた.本稿ではイオンチャネルの機能異常から見たてんかんの病態と,抗てんかん薬の作用機序について概説する.
著者
高下 純平 林田 翔太郎 今木 裕幸 光尾 邦彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.248-253, 2015 (Released:2015-04-22)
参考文献数
17

症例は53歳女性.2013年8月下旬にマダニ咬傷を受傷.同年10月中旬から40°C台の発熱が出現し,下旬より,左眼中心視野障害,左末梢性顔面神経麻痺をみとめ,当科入院.入院時神経学的所見で,左末梢性顔面神経麻痺,左眼中心暗点,左上下肢失調,体幹失調をみとめた.血液検査で炎症反応と髄液検査で軽度の細胞数増多をみとめた.頭部MRIは異常なく,眼底所見にて左視神経乳頭炎が示唆された.抗菌薬,ステロイドパルス療法で加療し,後日血清抗ボレリアIgG抗体陽性が判明し,神経ボレリア症と診断した.原因不明の視神経乳頭炎において,顔面神経麻痺などの神経合併症を有するばあいには,神経ボレリア症を考慮する必要がある.
著者
高守 正治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.789-793, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
10

Autoantibodies impair acetylcholine receptor (AChR) in myasthenia gravis (MG) and P/Q-type voltage-gated calcium channel (VGCC) in Lambert-Eaton myasthenic syndrome (LEMS). (1) Some of MG and LEMS patients are "seronegative" for respective antibodies or modified by antibodies that recognize other proteins than AChR and VGCC such as MuSK, AChR allosteric site, membrane Na+ channel and ryanodine receptor-1 (RyR1) in MG, and synaptotagmin-1 in LEMS. (2) Autoimmune responses affect the proteins participating in the mechanisms to compensate for synaptic disorders on the basis of presynaptic Ca2+ homeostasis provided by VGCC and non-VGCC (receptor-operated TRPCs); they act as enhancers of Ca2+-mediated ACh release via phospholipase C signaling pathways including M1-type presynaptic muscarinic AChR, neurotrophin receptor (TrkB), and fast-mode of synaptic vesicle recycling. (3) The pathophysiology contributive to contractile fatigue in MG includes RyR1 and also TRPC3. The TRPC3 also forms a complex with STIM1 and Orai1 to make up for Ca2+ after sarcoplasmic Ca2+ release. The prevalent detection of anti-TRPC3 antibodies in MG with thymoma could affect muscle contractile machineries in addition to anti-RyR1-induced affection. (4) When one faces "seronegative" MG, one should be cautious to conformation-specific antibodies and also congenital myasthenic syndromes.
著者
吉村 賢二 神吉 理枝 中野 智
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.229-234, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

症例は妊娠37週5日の25歳女性,発熱後に異常言動,記憶障害が出現し,辺縁系脳炎と診断した.後に奇形腫ではないことが判明したが,帝王切開の術中に両側卵巣腫瘍を認めた.不穏,口部ジスキネジア,薬剤抵抗性の全身性ミオクローヌス,中枢性無呼吸,自律神経障害を呈したが,免疫治療に良好に反応した.経過から抗N-methyl D-aspartate(NMDA)受容体脳炎が疑われたが抗NMDA受容体抗体は陰性,一方,抗SS-A抗体が陽性であり,唾液腺生検でシェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome; SjS)と診断した.SjSに合併した辺縁系脳炎は過去に数例報告があるが,抗NMDA受容体脳炎様の経過を呈した報告はなく,辺縁系脳炎の鑑別を考える上で重要な1例と考え報告する.
著者
内山 真一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.994-996, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
10

ワルファリンは血液凝固モニター,ビタミンK摂取制限,他剤との相互作用などの使いにくさがあるが,新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant; NOAC)は血液凝固モニターやビタミンK摂取制限の必要がなく,他剤との相互作用も少ないので,多忙な患者や遠方の患者,納豆や緑黄色野菜を制限したくない患者,併用薬が多い患者にはNOACが推奨される.ワルファリン投与例でTTR(time in therapeutic range)が低い患者にはNOACへの切りかえが推奨されるが,INR(international normalized ratio)が安定している患者ではNOACに変更する必要はない.NOACはワルファリンよりはるかに高価なので,経済負担が困難な患者にはワルファリンが推奨される.低リスクの患者や抗凝固薬の服薬歴がない患者では脳出血のリスクが少ないNOACが推奨される.
著者
三條 伸夫 水澤 英洋
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.287-300, 2010 (Released:2010-06-03)
参考文献数
40
被引用文献数
1 4

プリオン病は正常プリオン蛋白が伝播性を有する異常プリオン蛋白に変化し蓄積することにより発症する.孤発性,遺伝性,獲得性の3種類があり,本邦では1999年からの約10年間のサーベイランス調査で1,320名の患者が確認され,硬膜移植CJD例が多いことや遺伝性CJDで本邦に特異的な変異例が多いなどの特徴がある.孤発性古典型では急速進行性の認知症,四肢のミオクローヌス,MRI拡散強調画像で大脳皮質と基底核の高信号,脳波でPSDなどの特徴的な所見をみとめるが,非典型例も少なくない.臨床症状,髄液検査,遺伝子検索により的確な診断をくだすことが,病態の解明,二次感染予防,心理サポートにおいて重要である.
著者
石倉 照之 奥野 龍禎 荒木 克哉 高橋 正紀 渡部 健二 望月 秀樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.909-913, 2015 (Released:2015-12-23)
参考文献数
15
被引用文献数
3

症例は23歳男性である.先行感染後に強直間代性痙攣を発症し,抗てんかん薬による治療にもかかわらず,痙攣発作を繰り返した.ウイルス学的検査や抗神経抗体は検索した範囲では陰性で,原因不明であったことから,new-onset refractory status epilepticus(NORSE)と呼ばれる症候群に合致する臨床像であった.ステロイドパルス療法,免疫吸着療法及び経静脈的免疫グロブリン療法を行い痙攣の頻度が減少したが,意識障害は遷延した.本患者血清を用いてラット脳の免疫染色を行ったところ,海馬神経細胞の核及び細胞質が染色され,自己免疫介在性であることが示唆された.
著者
小川 朋子 田川 朝子 橋本 律夫 加藤 宏之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.700-703, 2010 (Released:2010-11-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

反復性過眠症の38歳女性例を経験した.発症は26歳で,食欲不振と失禁をともなう高度の過眠のエピソードをくりかえした.過眠期に脳波の徐波化をみとめたが,間欠期脳波は正常で,過眠期の髄液オレキシン濃度も正常であった.炭酸リチウムを中止すると過眠期が頻発し,再開にて過眠発作は軽減した.反復性過眠症の治療は確立していないが,本例では炭酸リチウム療法が有効であったため報告する.
著者
武田 篤
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.91-97, 2013-02-01 (Released:2013-03-06)
参考文献数
37
被引用文献数
2 5

われわれは最近,嗅覚障害がパーキンソン病(PD)認知症の併発を予測する徴候であることを報告した.重度嗅覚障害を示すPD群は認知機能低下と関連して報告されて来た脳代謝低下分布を示した.またvolumetric MRIによる検討から,嗅覚障害は扁桃体や他の辺縁系をふくむ局所脳萎縮と関連していることが明らかとなった.ドパミン補充療法の発達,そして高齢発症例の増加により,現在PDの予後をもっとも大きく悪化させるのは随伴する認知症の存在であることが知られている.しかしながらその発症を早期に的確に予測できる方法論は未だ確立していない.嗅覚テストは今後,進行期PD の治療において重要な役割を果たして行くと考えられる.
著者
鴨川 賢二 戸井 孝行 岡本 憲省 奥田 文悟
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.354-357, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
10
被引用文献数
3

症例は50歳男性で,多発性硬化症(MS)の進行により,外斜視をともなう両側内側縦束(MLF)症候群が持続した.単眼で固視すると他眼の外斜視が誘発される交代性外斜視を呈しており,wall-eyed bilateral internuclear ophthalmoplegia(WEBINO)に合致していた.MRIではT2強調画像にて橋被蓋傍正中部に高信号をみとめた.本邦でのWEBINOの報告はほとんどが脳血管障害の急性期にみられたものであり,MSの報告はきわめてまれである.本例のWEBINOの機序として,橋下部被蓋傍正中部の脱髄病変による両側MLF障害と持続的な傍正中橋網様体のimbalanceの可能性が示唆された.
著者
黒岩 義之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1052-1054, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
4

The Social Insurance Union of Societies Related to Internal Medicine and the Social Insurance Union of Societies Related to Surgical Medicine have pushed for revisions of the medical service fee against the Medical Economics Division of Insurance Department, Ministry of Health, Labor and Welfare. About neurological diseases, Japanese Society of Neurology, Japanese Society of Neurological Therapeutics, Japanese Society of Clinical Neurolphysiology, and Japanese Society of Child Neurology are involved in this movement. The examination fee of the electrical encephalography and the nerve conduction study was accepted. I review the process of the comprehensive medicine, and the revision of DPC (Diagnosis Procedure Combination) and medical service fee.
著者
馬木 良文 野崎 園子 杉下 周平 椎本 久美子 橋口 修二 乾 俊夫 足立 克仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2+3, pp.90-95, 2009 (Released:2009-03-21)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

[目的]口腔内崩壊錠(以下OD錠)は水が無くても服用できる.嚥下障害患者の内服剤としても有用か.ビデオ内視鏡(以下VE)をもちいて検討した.[対象と方法]嚥下障害と診断されたか自覚した6例に,錠剤とOD錠の模擬製剤(dOD)を内服させ,VEで観察した.[結果]錠剤,dODとも正常に内服できたものは2名,錠剤は正常に内服できたが,dODが咽頭に残留したものが2名,錠剤,dODとも咽頭に残留したものが2名であった.dODが咽頭に残留した4例では残留感がなく,服用には反復嚥下やトロミ水の交互嚥下が必要であった.[考察]嚥下障害のある神経疾患患者にとって,OD錠は必ずしも有用とはいえなかった.
著者
宮城 愛 寺澤 由佳 山本 伸昭 和泉 唯信 梶 龍兒
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.109-113, 2013-02-01 (Released:2013-03-06)
参考文献数
10
被引用文献数
5

症例は78歳男性である.慢性膿胸に対する胸腔洗浄中に左片麻痺を発症し,頭部CTで点状の空気像をみとめたために,脳空気塞栓症と診断された.頭部CTとほぼ同時期に実施した頭部MRI-T2* 強調画像で頭部CTの空気像と同部位に多発低信号をみとめた.発症から7時間後のT2* 強調画像では多発する低信号は発症2時間後よりも小さく,より広範にみられるようになり,第54病日では点状の低信号はほぼ消失していた.近年,急性期脳梗塞の診断にMRIをおこなうことが多くなっており,脳空気塞栓症の急性期MRI所見を知っておくことは重要と考える.
著者
松井 真
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.849-852, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
10

Multiple sclerosis (MS) is a chronic inflammatory demyelinating disease of the central nervous system (CNS). Fortunately, progress has been made for patients with this devastating disorder thanks to the induction of novel treatment strategies. In the 1990s, autoimmunity against myelin-related proteins was verified in humans, while the molecular mechanisms of the pathological process resulting in CNS demyelination were also studied in depth using experimental autoimmune encephalomyelitis (EAE). In the present decade, those achievements led to clinical trials of a variety of monoclonal antibody reagents for preventing disease relapse. Although such treatment seems to be ideal, as it targets a specific harmful immune reaction on the basis of findings from EAE studies, it has yet to become a first-line strategy, because of, in part, unexpected serious adverse reactions. As a result, interferon-beta therapy, the efficacy of which was first reported in 1993, has maintained a good position among treatment options for suppressing disease activity. Interferon-beta is considered to exert its anti-inflammatory effect via a Th2 shift in immune responses. In addition to aberrant cellular immunity, recent progress in MS research has shed light on the involvement of disturbances in humoral immunity, including the presence of NMO-IgG and anti-aquaporin-4 antibodies. Thus, it is important to elucidate the pathological significance of those autoantibodies, as well as establish treatment strategies for patients who are positive for them. However, since the above-mentioned treatments have been developed only for patients with relapsing-remitting MS, it is also important to consider the pathogenesis of primary progressive MS, which constitutes 10-15% of the patient population. Neurologists cannot be indifferent to current studies on MS, as even viral etiologies long ago abandoned have been recently revisited. In this field of neurology, every step of progress may readily lead to the establishment of a new treatment options.
著者
永田 龍世 稲森 由恵 髙田 良治 池田 賢一 渡邊 修 髙嶋 博
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.146-150, 2014-02-01 (Released:2014-02-28)
参考文献数
16

症例は80歳男性である.両側性末梢性顔面神経麻痺,四肢筋力低下,四肢末梢・会陰部の感覚障害,尿閉,便秘,四肢腱反射消失をみとめた.バゾプレシン分泌過剰症(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion; SIADH),脳脊髄液細胞増多・蛋白上昇をみとめ,セフトリアキソンおよびステロイドパルス治療にて神経症状はすみやかに改善した.脳脊髄液CXCL-13上昇,血清抗ボレリアIgM抗体陽性より神経ボレリア症と診断した.経過中,SIADHの再燃と全身状態の悪化をみとめ,骨髄検査でT細胞型悪性リンパ腫が判明した.近年,ボレリア感染とリンパ腫の関連が報告されており,本例においてもボレリア感染がリンパ腫の発症機序に関連した可能性が考えられた.