著者
園生 雅弘 迫井 正深 渡辺 憲 冨本 秀和 安藤 哲朗 西山 和利 髙橋 良輔 戸田 達史 日本神経学会神経内科専門医基本領域化推進対策本部
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.515-519, 2020 (Released:2020-08-07)
被引用文献数
1 1

日本神経学会は2018年1月臨時社員総会において,神経内科専門医の基本領域化を目指すことを機関決定した.新専門医制度が大きく揺れる中,神経内科専門医基本領域化推進対策本部では,第60回学術大会において,専門医制度に関する緊急シンポジウムを開催した.本論文はその各演者の抄録を委員会報告としてまとめたものである.厚生労働省,日本医師会に所属する演者,及び,学会内の演者によって,基本領域化が必要な理由,特に地域医療との関係,実現するための手続き,克服すべき課題などが論じられた.これらを踏まえつつ,社員総会決定に従って,神経学会は今後も基本領域化を目指して関係各所との折衝を続ける.
著者
忽那 史也 上野 未貴 徳田 昌紘 岩永 洋 堤 圭介
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.224-230, 2021 (Released:2022-03-29)
参考文献数
20

一過性脳虚血発作様症状で発症し,家族歴から遺伝的要因が考えられる1例を経験した.症例は26歳男性.8歳時にも類似の病歴がある.突然の構音障害,嚥下障害を発症したが数時間で軽快した.翌日,同様の症状が再発し当科へ入院した.症状は2時間で軽快したが,MRIで両側深部白質にDWI高信号域を認めた.後日画像所見の消失を確認し可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎/脳症(mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion,以下MERSと略記)と診断した.同胞に同様の臨床経過を示すMERSの既往があり,MERS発症機序の一因として遺伝的要因の関与が示唆された.
著者
織茂 智之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-24, 2008 (Released:2008-01-25)
参考文献数
76
被引用文献数
15 15

レビー小体病では,病早期より始まる心臓交感神経の変性により心臓のmeta-iodobenzylguanidine(MIBG)集積が低下し,これは他のパーキンソニズム,parkin関連パーキンソン病,アルツハイマー病との鑑別の一助になる.心臓交感神経の変性をとらえうるMIBG集積低下とレビー小体の存在は非常に密接に関連していることより,MIBG集積の明らかな低下は,レビー小体存在のバイオマーカーであると考えられる.さらにαシヌクレイン凝集物は心臓交感神経変性に先立って沈着しており,αシヌクレイン凝集物と心臓交感神経の変性が密接に関連しているものと思われる.
著者
中根 俊成
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.783-790, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
64

自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy; AAG)は自律神経系が免疫異常の標的となる比較的新しい疾患概念である.本症では抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体は病原性自己抗体として病態の鍵となる役割を果たす.本症は広範な自律神経症状以外に自律神経系外の症候(中枢神経系障害,感覚障害,内分泌障害)や併存症(膠原病,腫瘍)を呈することが判ってきた.また,中には消化管運動障害など極部分的な自律神経症状しか呈さないために診断困難である症例が存在する.多くの症例では複合的免疫治療によってコントロール可能となるが,難治例もある.本稿ではAAGとその関連疾患における自己抗体の役割から実臨床に関連する話題までを総説する.
著者
志賀 裕二 金谷 雄平 河野 龍平 竹島 慎一 下江 豊 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.418-423, 2016 (Released:2016-06-22)
参考文献数
26
被引用文献数
3 5

症例は53歳の女性である.不眠とうつ病で発症し,進行性認知機能低下,具体的な幻視,パーキンソン症状,イオフルパンSPECTで線条体への著明な集積低下,IMP-SPECTで後頭葉の脳血流低下などを認め,レヴィ小体型認知症(dementia with Lewy bodies; DLB)と診断した.亜急性に舌突出と咬舌が出現し救急入院した.レボドパ,ロチゴチン,ロピニロールの高容量投与で,ドパミンD1受容体が長期に刺激状態で,急激な増量で生じた舌ジストニアと診断した.また声門閉鎖を伴う喉頭ジスキネジアによる呼吸困難も出現した.抗精神病薬による薬剤過敏性およびレボドパ過剰投与などが関連した病態と推定され,致死的にもいたる症例であった.
著者
池田 学
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1002-1004, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
10
被引用文献数
4 1

Behavioral changes in patients with FTD can be interpreted by considering damage to the frontal lobes themselves and considering the interaction between the frontal lobes and other neural systems such as the posterior association cortices, the limbic system, and basal ganglia. Loss of insight and apathy primarily result from frontal lobes involvement. The latter is probably correlated with the severity of medial frontal-anterior cingulate involvement. Stimulus-bound behavior such as imitation behavior, utilization behavior and environmental dependency syndrome is caused by an imbalance between the activities of the frontal and parietal lobes. Frontal lobe damage, particularly damage to the medial frontal area, result in liberation of the parietal lobe activity, leaving the patient subject to any stimuli from the external environment. Disinhibition such as antisocial behavior is produced by an imbalance between the activities of the frontal and limbic lobes. Namely, loss of control of the frontal lobe, especially the orbitofrontal area, over the limbic system results in acts led by instinctive desires and uncontrolled by reason. Stereotypic behavior is due to an imbalance between the activities of the frontal cortex and basal ganglia. These behaviors range from simple stereotypies to complex repeated actions such as roaming, clock-watching or adherence to a strict daily timetable.
著者
石原 智彦 石原 彩子 小澤 鉄太郎 三瓶 一弘 下畑 享良 西澤 正豊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.238-242, 2015 (Released:2015-04-22)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

症例は60歳男性で,進行性の認知機能低下と痙攣発作を呈した.頭部MRIにて右前頭側頭葉を中心に広範なT2強調画像の高信号域をみとめた.脳血管造影検査で主要血管は正常であった.Mass effectを呈する画像所見から神経膠腫を鑑別に挙げたが血清,髄液梅毒検査が陽性であり,神経梅毒と診断した.ペニシリン静注にて治療を開始したが,肝障害のため,エリスロマイシンに変更した.2ヵ月間の治療後も認知機能は改善しなかった.経過中に施行した4回の頭部MRIにて,右側優位の進行性高度大脳萎縮を呈した.これらの所見よりLissauer型進行麻痺と診断した.経時的な脳萎縮の進行を確認しえた貴重な症例と考え報告する.
著者
遠藤 芳徳 林 浩嗣 井川 正道 山村 修 大倉 清孝 濱野 忠則
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.142-145, 2020 (Released:2020-02-27)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

症例は22歳の女性である.持続する嘔気を繰り返したため入院した.入院後,失神発作を繰り返し,発作性洞停止を認めた.体外ペーシング挿入後,失神発作は消失したが,回転性めまい,眼振,複視,四肢異常感覚が新たに出現した.MRIでは延髄背側に異常信号をみとめた.血清中抗アクアポリン4抗体が陽性であり,視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorder; NMOSD)と診断確定した.ステロイドパルス療法を2クール施行したところ,症状は改善した.以上より今回の洞停止はNMOSDの最後野症候群の一つの症状と考えられた.発作性洞停止の原因としてNMOSDの可能性も考慮すべきである.
著者
石田 和之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.938-941, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

今日では何科の医師にとっても最小限の漢方の知識は不可欠である.しかし,神経内科領域では漢方はまだ十分認知されていない.神経変性疾患などの難病に対する漢方の利点は今後の課題であるが,日常診療上よくみられる頭痛・しびれ・疼痛・めまいなどの症候には漢方が有用である.これら症候の原因が重篤な疾患ではなくても,愁訴に苦しむ患者数は多く,社会への影響は小さくない.そこで,呉茱萸湯・五苓散・牛車腎気丸・疎経活血湯・苓桂朮甘湯など,わずか10数種類の漢方薬を使いこなすことができれば,治療の選択肢が広がり有益である.また,漢方の使用経験を集積し共有できれば,漢方のエビデンスの確立に役立つと考えられる.
著者
山本 康正 永金 義成 冨井 康宏
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.397-406, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
51
被引用文献数
1 4

皮質下穿通枝4血管について支配領域を検討した.①レンズ核線条体動脈(lenticulostriate artery; LSA)の分枝は,medial,intermediate,lateralの3群に分類される.Medialは尾状核頭部内側,内包前脚,被殻の内側,intermediateは被殻・淡蒼球の前半,尾状核頭部,内包前脚,放線冠前方,lateralは被殻・淡蒼球の後半,内包後脚の上部,放線冠後方を灌流する.②Heubner動脈は,尾状核頭部の下方,被殻・淡蒼球の前下方等,基底核の前腹側を,③前脈絡叢動脈は,内包下部,淡蒼球内節,視床外側,側頭葉内側,中脳を灌流する.④髄質枝梗塞は半卵円中心に小梗塞をきたすが塞栓機序が多い.半卵円中心は皮質枝間の境界領域,放線冠は髄質枝とLSA間の深部型境界領域に相当する.
著者
外山 祐一郎 川又 純 下濱 俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.626-630, 2018 (Released:2018-10-24)
参考文献数
9

症例1は25歳の女性看護師.日勤看護業務中,バーコードリーダーを使用直後に転倒し強直間代発作が出現した.強直間代発作は5分程度で自然頓挫したが,意識減損が30分程度持続した.症例2は30歳の女性看護師.夜勤にて看護業務中,バーコードリーダーを使用し赤色点滅光を凝視した直後に起立困難となった.同僚看護師の名前が分からない等の見当識障害が出現した.5分程度見当識障害を認めたが徐々に改善し意識清明となった.両症例はバーコードリーダーの赤色点滅光により誘発された光感受性発作と考えられる.医療機器として病棟で使用されている赤色点滅光を発光するバーコードリーダーは発作誘発の可能性があり注意を要する.
著者
濱谷 美緒 陣上 直人 植村 健吾 仲宗根 眞恵 木下 久徳 山門 穂高 二宮 治明 髙橋 良輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.424-429, 2016 (Released:2016-06-22)
参考文献数
19

症例は40歳男性.新生児期に遷延性黄疸を認めた.幼少時に自閉症が判明し,カレンダー計算能力をもちsavant症候群を合併した.15歳に幻視と幻聴を認め,30代後半から垂直方向の核上性注視麻痺,四肢脱力発作,小脳失調を認めた.臨床像からニーマン・ピック病C型(Niemann-Pick disease type C; NPC)を疑い,培養皮膚線維芽細胞のfilipin染色からNPCのvariant biochemical phenotypeと考えた.成人期発症のNPCは精神神経症状が主体となり,相対的に症状が軽いvariant biochemical phenotypeを呈することが多いとされ,診断は困難である.NPCは皮膚生検と遺伝子検査により診断可能であり,近年本邦でも治療薬が承認されているため,特徴的な臨床症状を呈する場合は検索を行うことが重要である.
著者
島田 知世 常深 泰司 飯村 康司 菅野 秀宣 服部 信孝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.697-706, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
105
被引用文献数
2

長期間無症状のまま宿主細胞内にとどまるウイルスが,免疫状態の変化により再活性化することがある.活性化したウイルス自体の障害に加え,再活性化によって引き起こされる自己免疫的な炎症も細胞障害を生じる機序となる.なかでもヒトヘルペスウイルスは頭蓋内手術を契機として潜伏感染していたウイルスが再活性化し脳炎を発症することがある.てんかん外科の普及に伴い注目を集めている疾患概念であるが,欧米に比べ本邦での報告は極めてまれである.本総説では,神経領域で再活性化するウイルスについて概説し,術後の単純ヘルペスウイルス再活性化脳炎について詳細に考察する.
著者
阿部 隆志 丸山 秀徳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.449-455, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
21

ドパミンアゴニスト(dopamine agonist,以下DAと略記)が原因で幻覚・妄想を発現したと考えられるレボドパ服用中のパーキンソン病(Parkinson’s disease,以下PDと略記)患者11例に対し,DA減量・中止と同時にゾニサミドを新規投与し,精神・運動症状への影響を評価した.その結果,MDS-UPDRS Part 1.2(幻覚と精神症状)及びPart 3(運動症状)のベースラインから12週後のスコア変化量(LS Mean ± SE)はそれぞれ−2.4 ± 0.2,−5.1 ± 0.9であり,共に有意なスコア低下が認められた.以上の結果から,幻覚・妄想の発現・増悪への対処としてDAの減量・中止した時のゾニサミド追加療法は,PD患者の精神・運動症状のコントロールに有用な戦略になる可能性が考えられた.
著者
南部 篤
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1198-1200, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Malfunctions of the basal ganglia cause movement disorders, such as Parkinson's disease and dystonia. Several models have been proposed to explain the pathophysiology of these disorders: (1) Firing rate model: activity imbalance between the direct and indirect pathways changes the mean firing rate of output nuclei of the basal ganglia and induces hypokinetic or hyperkinetic movement disorders; (2) Firing pattern model: oscillatory and/or synchronized activity observed in the basal ganglia disturbs information processing in the basal ganglia, resulting in motor symptoms; (3) Dynamic activity model: movement-related activity changes through the direct and indirect pathways disrupt balance between movement-related inhibition and surrounding excitation in the output nuclei, and induce motor symptoms. Each model will be critically discussed in this review.
著者
井上 周子 矢澤 省吾 村原 貴史 山内 理香 下濱 俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.151-154, 2015 (Released:2015-03-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

症例は30歳,男性.乳児期に小児科でDravet症候群と診断され,バルプロ酸を主体に加療されたが月に1回以上の全身けいれん発作があり難治に経過した.28歳まで小児科で投薬を受けていたが,てんかん重積状態になったのを契機に神経内科へ紹介されて投薬を引き継いだ.29歳までの1年間にさらに3度の重積となった.患者の母親は処方の変更に消極的であったが,難治であることからくりかえし説明しレベチラセタムを追加投与したところ,全身けいれん発作は1年以上抑止され,本症の成人例にもレベチラセタムの効果を確認できた.また小児科のてんかん患者を引き継ぐ際の問題点も考察した.
著者
須貝 章弘 小宅 睦郎 梅田 麻衣子 梅田 能生 藤田 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.746-749, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
10
被引用文献数
10 11

症例は75歳女性である.発熱と頭痛の後,左外眼筋麻痺と失明をきたした.蝶形骨洞炎と肥厚性硬膜炎をともない,β-Dグルカンが陰性で生検は未施行であったが,深在性アスペルギルス症を想定しボリコナゾール投与を開始した.治療開始後5日目から症状の改善がみられ,血清アスペルギルス抗原陽性が判明した.深在性アスペルギルス症による眼窩尖端症候群の既報告例では,ステロイド投与を先行させたばあい,きわめて予後が悪く致命的になっている症例が多い.ステロイドが奏効する疾患との鑑別も難しいが,確定診断が困難な症例に対してはステロイド投与に先行して抗真菌剤投与による診断的治療を検討すべきと考えられた.
著者
髙橋 昭
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.926-929, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1

日本の神経学はオランダの軍医Pompeから19世紀中期に長崎に導入された.その門下の司馬凌海は日本最初の神経治療薬を紹介した.その後,ドイツからBaelzが来日,その門弟らが1902年に「日本神經學會」を創設した.当時の日本は国民病の脚気が神経学研究の中心であった.しかし,神経学者は脚気の病因として感染説あるいは中毒説を掲げ,正鵠を射ることができなかった.Vitamin B1欠乏が確立されると神経学の研究は下火となった.神経学の講座の独立が遅れたこと,講座制のため神経学が正しく継承されなかったこと,神経症候学,神経診断学などの教育が不十分であったことなどから,戦前日本の神経学は一時低迷した.診断学が充実され,神経内科講座が独立し,神経内科学が隆盛したのは戦後になってからである.
著者
望月 秀樹 青木 正志 池中 建介 井上 治久 岩坪 威 宇川 義一 岡澤 均 小野 賢二郎 小野寺 理 北川 一夫 齊藤 祐子 下畑 享良 髙橋 良輔 戸田 達史 中原 仁 松本 理器 水澤 英洋 三井 純 村山 繁雄 勝野 雅央 日本神経学会将来構想委員会 青木 吉嗣 石浦 浩之 和泉 唯信 小池 春樹 島田 斉 髙橋 祐二 徳田 隆彦 中嶋 秀人 波田野 琢 三澤 園子 渡辺 宏久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001696, (Released:2022-05-28)

日本神経学会では,脳神経内科領域の研究・教育・診療,特に研究の方向性や学会としてのあるべき姿について審議し,水澤代表理事が中心となり国などに対して提言を行うために作成委員*が選ばれ,2013年に「脳神経疾患克服に向けた研究推進の提言」が作成された.2014年に将来構想委員会が設立され,これらの事業が継続.今回将来構想委員会で,2020年から2021年の最新の提言が作成された.この各論IIでは,疾患ごとに脳神経内科領域を分類し,各分野の専門家がわかりやすく解説するとともに,最近のトピックスについて冒頭に取り上げた.*提言作成メンバー水澤 英洋,阿部 康二,宇川 義一,梶 龍兒,亀井 聡,神田 隆,吉良 潤一,楠 進,鈴木 則宏,祖父江 元,髙橋 良輔,辻 省次,中島 健二,西澤 正豊,服部 信孝,福山 秀直,峰松 一夫,村山 繁雄,望月 秀樹,山田 正仁(当時所属:国立精神・神経医療研究センター 理事長,岡山大学大学院脳神経内科学講座 教授,福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座 教授,徳島大学大学院臨床神経科学分野 教授,日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授,山口大学大学院神経内科学講座 教授,九州大学大学院脳神経病研究施設神経内科 教授,近畿大学医学部神経内科 教授,湘南慶育病院 病院長,名古屋大学大学院 特任教授,京都大学大学院臨床神経学 教授,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 教授,東京大学医学部附属病院分子神経学特任教授,国立病院機構松江医療センター 病院長,新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野,新潟大学脳研究所フェロー,同統合脳機能研究センター産学連携コーディネーター(特任教員),順天堂大学医学部神経学講座 教授,京都大学大学院高次脳機能総合研究センター 教授,国立循環器病研究センター病院長,東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者ブレインバンク,大阪大学大学院神経内科学 教授,金沢大学大学院脳老化・神経病態学 教授)
著者
井汲 一尋 横井 克典 安藤 哲朗
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-31, 2016 (Released:2016-01-29)
参考文献数
30

症例は72歳女性である.2型糖尿病で通院治療中であった.7年前に左肺多発結節影があり精査するも診断に至らず経過観察で縮小した.その後呼吸器症状もなく安定していたが,5ヶ月の経過で認知機能障害と歩行障害が進行し入院し,クリプトコッカス髄膜脳炎と診断された.両足趾右優位にアテトーシス様の不随意運動を認めた.不随意運動はpainful legs and moving toesに極めて類似していたが,疼痛は全くなかった.クリプトコッカス髄膜脳炎で認知機能障害,不随意運動の改善過程を観察した報告は稀であり,貴重な症例であると考えられたため報告する.