著者
若林 邦彦
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ペンスリット爆薬の衝撃起爆機構を明らかにするために、レーザー誘起衝撃波によって衝撃圧縮されたペンスリット単結晶の時間分解ラマン分光実験を実施した。その結果、衝撃圧縮誘起の振動数シフトは振動モードに依存することが示された。ペンスリットのニトロ基が関わる振動が衝撃起爆に影響する可能性があることが分かった。
著者
高山 哲朗
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

腸管NK細胞にはNKp44とNKp46の細胞表面分子により大きく二つの集団に分類され、正常腸管においてはこれらの細胞集団が均衡により腸管免疫の恒常性が保たれていることを示した。一方、クローン病においてはこれらの著しい不均衡が生じており、病態に関与している可能性を示した。また、腸管NK細胞の活性化には腸管マクロファージとの相互作用が重要であることを見出し、ここにかかわる因子としてIL-23とTL1Aの存在を見出した。これらの結果はNKp46+NK細胞がクローン病の病態に関与する可能性を示唆するものと考えられた。
著者
三上 洋平
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

申請者らは、炎症性腸疾患の炎症部位で腸炎惹起性CD4+メモリーT細胞のクローン間競合(clonal competition)により病態形成がなされていると仮説し、以下の項目を示した。(1)炎症惹起性メモリーT細胞間のTh1/Th17干渉現象の存在と病態形成への寄与(2)腸炎状態で、腸管内でTh17→Th17/Th1→Th1(Alternative)という分化経路の存在(3)制御性T細胞はこのAlternative pathwayを抑制する事以上よりAlternative pathwayの阻害が新規治療標的の候補であると考えられた。
著者
朴 秀賢
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

bFGF依存性に増殖する成体海馬歯状回由来神経前駆細胞(ADP)の培養系を用いて、我々は既にGSK3βが糖質コルチコイドアナログであるdexamethasone(DEX)によるADPの増殖抑制に関与していることを見出していた。また、更にその詳細なメカニズムについて検討したところ、ROCK2がGSK3βの活性調節に関与していること、bFGFとDEXがROCK2の発現を相反的に調節することも見出していた。そこで、実際にin vivoにてROCK2が成体海馬歯状回神経細胞新生に関与しているか否かについて検討すべく、(1) in situ hybridizationを用いてROCK2が実際に成体ラット海馬歯状回神経前駆細胞で発現しているかどうか、(2) in vivoでROCK2が実際に成体ラット海馬歯状回神経前駆細胞の増殖に関わっているかを調べることを目的に、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターを用いたROCK2の強制発現系の構築、をそれぞれ行い、後述の通りの一定の成果を得た。
著者
村田 文絵
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

モンスーン低気圧はインドモンスーンの雨季(6-9月)にベンガル湾〜インド北西部に現れる1000km(総観規模)スケールの擾乱であり、擾乱の通過はしばしば多量の降水をもたらして洪水の原因となる。しかしモンスーン低気圧をターゲットとした観測は1970年代後半に実施されたMONEX国際観測プロジェクト以降あまり活発でなく、現在のより高い高度分解能(100m 以下)をもつ測器を用いて、またこの気象擾乱の構造を得るのに必要な時間間隔(12時間間隔或いはそれ以上)で観測を行う集中観測がほとんど行われていなかった。そこで本研究は2007年雨季に洪水災害で知られるバングラデシュの首都ダッカにおいて、高層気象観測の集中観測をバングラデシュ気象局の協力の下で実施し、(1)モンスーン低気圧がバングラデシュに及ぼす効果及び(2)モンスーン低気圧の内部構造について解析を実施した。集中観測によって4つのモンスーン低気圧を観測することができた。このうち2つはダッカの南のベンガル湾上で発生しダッカの西を通過した。他の2つはダッカ近傍で発生し西に進んだ。観測されたモンスーン低気圧に伴う活発な雲分布は顕著な非対称の構造を示し、低気圧中心の南〜南西象限に降水活発域が集中していた。(1)観測地点ダッカはモンスーン低気圧の中心より北及び中心付近を観測したため強い降水が観測されなかった。その一方でバングラデシュでは7月中旬〜下旬にかけて大洪水が生じたが、これはモンスーン低気圧によるものではなくモンスーントラフの北上という現象によって生じていた。(2)熱力学的な大気鉛直構造はモンスーン低気圧が南に発生している間バングラデシュではむしろ対流が抑制されたことを示した。また過去の研究においてモンスーン低気圧の中心付近の気温の観測結果に不一致があるが、今回観測された中心付近の気温は台風に似て周囲より暖かいという結果が得られた。
著者
小野 玲
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、食道癌の診断による食道切除再建術施行患者について、術前より行動変容技法を用いた術前運動指導プログラムを実施することが術後呼吸器合併症予防につながるかを検討することである。対象は、当院食道胃腸外科にて食道癌と診断され、食道切除再建術を施行した患者100 名(男性87 名、女性13 名、平均年齢66.5±8.6 歳)であった。これらを、7 日以上運動プログラムを実施できた群(実施群)63 名(男性44 名、女性9 名、平均年齢67.0±9.3 歳)と実施できなかったまたは7 日未満しか実施できなかった群(非実施群)31 名(男性28 名、女性3 名、平均年齢64.6±7.9 歳)の2 群に分け、術後呼吸器合併症の発症率を比較検討した。主要アウトカムは術後呼吸器合併症の発症率とした。2 群間の比較にはχ2 検定とロジスティック回帰分析を使用し、交絡要因で調整を行った。術後呼吸器合併症は実施群で4 名(6.4%)、非実施群で9 名(24.3%)と実施群において有意に術後呼吸器合併症が低下(p = 0.01)しており、その関係は交絡要因で調整を行っても同じであった(オッズ比; 0.14)。食道切除再建術施行患者において、術前からの積極的な呼吸リハ介入により術後呼吸器合併症が予防できることが示唆された。
著者
白瀬 由美香
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、イギリスの医療保障制度NHSの変遷について、医療圏と地域医療連携の展開という観点からその特徴について歴史資料等をもとに検証を行った。具体的には、(1)病院と診療所の関係、(2)医療従事者の業務内容の変化、(3)医療と生活支援との連携、(4)医療システムと患者との関係などにまつわる検討をした。患者の医療アクセスや医療機関の機能分化、医療従事者が果たした役割の変容を浮き彫りにすることにより、時代ごとのNHSの特性を多面的に示すことができた。
著者
番原 睦則
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

組合せテストは,ソフトウェアの信頼性・安全性を高めるためのソフトウェア検証手法の 1つである.本研究では,組合せテストのテストケース生成の性能向上を目指し,SAT ソルバー,制約ソルバー,解集合ソルバーを用いたテストケース自動生成ツールに関する研究開発を行った.提案手法を実装した 3つのツールは,組合せデザイン・ハンドブック等に記載されているベンチマークに対して,様々な既存手法で得られた既知の最良値を更新することに成功した.
著者
岡田 千あき
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ポストコンフリクト(紛争後)期という社会の混乱期に実施された「地域住民による自発的なスポーツ活動」に期待された役割を明らかにすることを目的に、カンボジア王国シェムリアップ州で実施されている事例の検証をした。現地調査の結果から、「開発手段としてのスポーツ活動に期待された役割は、内発性を引き出すことである」という結論を得た。内発性とは、開発途上国の社会開発、人間開発の議論の中心になりつつある概念であり、人々の内発性が引き出され、適切なエンパワメントがなされることが、開発分野に求められている課題でもある。
著者
黒澤 睦
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、告訴権・親告罪制度の観点から、犯罪被害者と刑事司法過程の関係の在り方を考察するものである。告訴および親告罪は、犯罪被害者の意思を尊重しようとする制度であり、近年の犯罪被害者を重視した法政策の中では、大きく注目されるべきものである。本研究では、とりわけ、親告罪をめぐる捜査機関・訴追機関の対応、いわゆる告訴権の濫用(不当告訴・不当不告訴)とその法的対応、告訴任意代理制度と被害者支援思想などについて、歴史的・比較法的検討を行った。
著者
河本 浩明
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,下肢の歩行障害をもつ方を対象に,人間と機械を一体化させ人間の身体機能を強化・拡張・補助するロボットスーツHALの受動的動作(ロボット的自律制御)と能動的動作(随意制御)を活用し,脳の運動学習過程に立脚した歩行機能再建支援システムの開発を行った.実証試験の結果,歩行能力,及びバランス能力の改善が認められ,本システムによる歩行機能再建の可能性が示唆された.
著者
小林 孝一
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では,ハイブリッドシステムの制御における計算の効率化に取り組んだ.成果として,有限オートマトンの安定化に基づくモデル予測制御手法,およびオフライン計算とオンライン計算の両方を用いた精度保証付き近似解法を提案した.また,数値実験により計算の効率化が実現されたことを確認した.さらに応用として,ブーリアンネットワークモデルで表現される遺伝子ネットワークの解析と制御にも取り組んだ.
著者
松島 良
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

半数体細胞である花粉におけるオルガネラ可視化形質転換体を作出した。この植物体を用いて、従来の方法では遺伝学的に単離不可能であったホモ接合体だと致死になる突然変異体の単離方法を構築した。また、花粉の精細胞のミトコンドリアを可視化できる植物体を作出し、受精時におけるライブイメージング解析を行った。その結果、精細胞と卵細胞ならびに中央細胞とが融合する瞬間におけるミトコンドリアのダイナミックな挙動を世界で初めて捕らえることに成功した。
著者
瀋 俊毅
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、中国におけるエコラベルの影響に関して、一般市民と企業を対象とするアンケート調査を行い、経済的実証分析を行った。まず、一般市民向けのアンケート調査で得られた結果は主に三つある。一つ目は、市民の所得水準・教育水準・年齢・性別などの社会経済的特性が彼らの環境への関心度に重要な役割を果たしていることである。二つ目は、中国のエネルギー効率ラベルが消費者の購買行動に大きく左右することである。三つ目は、消費者の年齢・性別・教育水準・所得水準などの社会経済的特性の相違が彼らの中国環境ラベルへの支払意志額の高低に影響を及ぼすことである。そして、企業向けのアンケート調査で得られた結果により、外国資本の企業、海外市場向けの企業、大規模の企業、市場競争が厳しい企業であるほど、中国環境ラベルまたは国際環境標準規格14001(ISO14001)を認証するインセンティブが高くなることが分かった。
著者
厨 源平
出版者
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

IL-17を産生するTh17細胞は新しいヘルパーT細胞サブセットであり、関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患モデルでは、これまで、その病態の主役はTh1細胞と考えられてきたが、現在、Th17の重要性が報告されている。1型糖尿病においても、病態の中心はTh1細胞であると考えられてきたが、発症前(10週齢)のNODマウスに対し、抗IL-17抗体の投与により糖尿病発症抑制効果が報告され、自己免疫性糖尿病の病態へのTh17/IL-17の関与が示唆されている。そこで我々は、1型糖尿病の病態へのTh17細胞/Th1細胞の関与を検討した。IL-17欠損NODマウス(IL-17-/-NOD)、IL-17/IFNγRダブル欠損NODマウス(IL-17-/-/IFNγR-/-NOD)を作成し、野生型(wt-NOD)との、膵島炎レベル、累積糖尿病発症率を検討した。IL-17-/-NODとwt-NODのCD4+エフェクター細胞のNOD-SCIDマウスへ養子移入実験を行った。50週齢までの累積糖尿病発症率は、IL-17-/-/IFNγR-/-NODで50%であり、IL-17-/-NOD;80%、wt-NODマウス;86%との3群間で有意差を認めた(p<0.05)。若年のIL-17-/-NODマウス由来のエフェクター細胞の養子移入において明らかな発症抑制を認めた。Th17/Th1細胞は協調して糖尿病進展に関与しており、Th17の若年期の重要性が示唆された。
著者
矢野 公士
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年,E型肝炎が先進国で土着していること,および人獣共通感染症であることが明らかとなり,その対策が社会問題となっている。本研究では主として野生イノシシを対象として,長崎地方におけるHEVの浸淫状況を明らかにすることを目標とした。平成16年度 24頭,17年度 43頭,18年度 53頭,19年度 68頭,合計188頭の野生イノシシの筋肉のサンプリングを行い,RT-PCR法でスクリーニングおよび遺伝子解析を行った。HEV RNA陽性は21頭(11.2%)であった。うち,7例において,HEV ORF-1領域281塩基の配列が決定できた。この配列を既報の株と比較,近隣結合法による系統樹解析を行ったところ,いずれもgenotype3型であった。系統樹上,長崎,佐賀地方で発生したE型急性肝炎から得られた株(E108-HSGO5,E110-NGSO5A,ETM-NGSO4,ENK-NGSO3等)と非常に近縁に位置し,この系統のE型肝炎株が長崎地方のヒトとイノシシの間で蔓延していることが示唆された。Genotype3型の中でも2系統が長崎地方特有の株として浮かび上がった。さらに興味深いことには,参考試料として得られた長崎地域のとある豚舎で得られたブタのサンプルから,付近のイノシシと非常に近縁な株(sw087-NGS07)が見出された。このことから,HEVがイノシシsブタのサイクルで伝播をきたしている可能性が示唆された。今回の研究結果は,感染対策上きわめて有用な情報となることが期待される。
著者
前田 健
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1) CDVのレセプターSLAMを恒常的に発現する細胞を用いて、野外株とワクチン株の増殖性を比較した結果、ワクチン株はSLAM発現細胞で極端に増殖能力が落ちた。これはワクチン株がSLAM発現細胞すなわちリンパ系の細胞での増殖が抑制していることから、イヌでの病原性が低下していると推測された。2)世界で初めて100代以上継代が可能なウマ由来の培養細胞株を樹立した。この細胞でウマヘルペスウイルス2型は細胞変性効果を示して増殖するため、EHV-2を含むウマヘルペスウイルスに対する治療薬の効果の判定が可能となった。3)Fcwf-4細胞を用いたウイルス中和試験によりI型ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FTPV)はFIP発症ネコ血清により感染が増強されることが示されたが、I型ネココロナウイルス(FCoV)感染健常ネコ血清には感染増強作用が存在していなかった。これはFCoV感染による抗体ではなく、FIPV発症ネコ血清中に含まれる何らかの因子がfcwf-4細胞に対する感染増強に関与していることを示唆している。このin vitroにおける感染増強機構を指標にFIPに対する治療薬の開発が可能になると期待される。4)コウモリより新規細胞株の樹立と新規ヘルペスウイルスとアデノウイルスの分離に成功した。コウモリ由来の新興感染症は多く、これらの細胞はその診断に役立つものと期待される。
著者
立野 淳子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

CNS-FACEによって算出した家族のニーズとインタビューによって見出した家族のニーズの一致度を検討したところ、「保証」のニーズは8割以上とらえられていることがわかった。一方、「安寧・安楽」のニードは約3割と低い割合であった。
著者
藤田 貢崇
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、かつての足尾銅山における世界屈指の採掘・精錬技術や、住民の生活、周辺環境に関する未整理の写真資料をデータベース化した。このデータベースを用いて、当時の足尾銅山に働く人々や住民の科学技術や公害事件に対する認識を考察し、小中高校の環境教育における、人間活動と自然環境との関わりを学ぶための教材を作成した。また、広く社会人を対象として「社会と共存する科学技術」の考えを深めるための写真展を開催した。
著者
鈴木 祐介
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,地図や罫線文書などの平面上に描画可能な構造を持つ平面データを対象としたマイニング手法の開発,及びそのための理論的基盤についての確立である.TTSPグラフ,外平面的グラフ,順序グラフでモデル化される平面データを対象に,それらの特徴を表現するグラフパターンの提案を行った.さらに,それらのグラフパターンに対する多項式時間機械学習アルゴリズムを提案した.またその結果を応用したグラフマイニング手法について考察した.