著者
白川 千尋
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

一昨年度と昨年度に続き、本年度も戦後日本のマスメディアにおけるオセアニア表象、とりわけメラネシア地域に関する異文化表象を主たる対象としながら、主に以下の研究活動を行った。1.1960年代から本研究に着手する前年(2002年)までに放映されたメラネシアを取り上げたテレビ番組における異文化表象のあり方の検討。2.同じ時期に出版されたメラネシアを取り上げた図書における異文化表象のあり方の検討。3.1.で検討の対象としたテレビ番組の制作過程に対する文化人類学者の関与のあり方の検討。その結果、主に以下の知見を得た。1.テレビ番組においては、各年代を通じて集落部を対象とした番組がきわめて多く、対照的に都市部のみを取り上げたものは皆無に等しい。また、番組のなかで取り上げられる人々はペニスケースや腰蓑といった出で立ちであることが多い。そして、これらの地域や人々に対して「秘境」、「未開」、「裸族」などの語が使われ、「近代的な世界から隔絶した世界に生きる人々」や「外部者を容易に寄せつけない未開人」といった提示の仕方がなされている。こうした傾向は1960年代から2002年まで大きく変化することなく続いている。2.図書においては、テレビ番組にみられたものと同じような傾向が、1960年代から70年代に出版されたものに関して認められる。しかしながら、そうした傾向は1980年代以降に出版されたものに関しては希薄になり、都市部を取り上げたもの、あるいはTシャツやズボン、ワンピースといった出で立ちの人々の写真を多く掲載したものも目立つようになっている。3.テレビ番組の制作過程に対する文化人類学者の関与は1960年代においては顕著であったが、海外での調査研究に関する基盤整備(科研費の充実化など)が進むとともに希薄化し、近年では番組制作者が番組の制作過程で文化人類学者の研究成果を一方的に「流用」する形になっている。上の1.で指摘したように、テレビ番組のなかでメラネシアとそこで暮らす人々は、1960年代からこの方、一貫して「未開」や「秘境」といったキーワードに収斂する形で表象されてきた。こうした表象が維持されてきた背景には、それがテレビ界の視聴率競争との関連で、視聴率を獲得するための重要な「資源」と目され、利用され続けてきたことがあると考えられる。なお、以上に述べた知見などについては、別に作成した報告書(『日本のマスメディアにおけるオセアニア表象の文化人類学的研究-平成15〜17年度科学研究費補助金研究成果報告書』)で詳述した。
著者
嵐 洋子 田川 恭識
出版者
杏林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

九州北西部及び中部方言における韻律単位の実態と変化のメカニズムを明らかにするために,長崎県佐世保市を中心に,生成調査を行った。その結果,高齢層には,音調句末に特殊拍があると下降位置が変わりやすい傾向が見られたが,中年層にはその傾向は見られなかった。佐世保市方言においては,韻律単位が音節から拍へ変化している可能性が示唆された。
著者
舘野 隆之輔
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、土壌中の有機物含量が非常に小さい火山灰性未熟土壌に成立する森林の皆伐後の短期的・長期的な養分循環の変化を明らかにすることを目的として行った。樹木の一次生産量、土壌窒素無機化速度、樹木の窒素吸収量など窒素循環に関わるパラメーターは、人工林と常緑広葉樹林ともに未熟土以外の同一気候帯の森林と大差ないことが明らかとなった。一方で伐採に伴う硝酸流出量は、他の同一気候帯での結果に比べて小さく、このことは本調査地の特徴的な土壌特性や水文特性などを反映しているものと考えられた。
著者
楯岡 求美
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

19世紀末から第二次大戦までの時期のヨーロッパ文化はモダイズムとよばれ、20世紀パラダイムの確立期として近年文化研究での再評価が進んでいる。ロシア・アヴァンギャルドもそのような社会変革の機運を背景に「新しい社会の創造」と「新しい芸術表現の構築」を一体化させる運動であったことはすでに多くの研究によって明らかにされている。しかし、あまりにもその革新性・前衛性ばかりが強調されてきた。また、アヴァンギャルド運動を担った当時の芸術家のおかれた状況を美化しすぎたり、芸術家の発言を検証することなく、そのまま肯定してきてしまった面がある。近年、このような短所に注意を払い、ロシア帝政およびソ連時代の政治社会システムを包括的に分析し、その社会状況の中にアヴァンギャルド(もしくはロシア文化の変容といてもよい)を位置づけようとする動きが定着しつつある。それでもなおかつ、ロシア/ソ連を特異領域として強調してしまうエリアスタディーの領域にとどまっているのは演劇・文学研究の今後の課題を逆に明確にしていると思う。ソ連の政治・社会システムがロシア独特の歴史的要素を持っているとはいえ、あくまで19世紀に顕在化したヨーロッパ近代社会のグローヴァル化が、周縁であるがゆえに先鋭化したものであることは考慮されるべきである。本研究の過程でロシア・アヴァンギャルドを他のドイツ、イタリア、フランスなどの芸術活動とは別個に語ってきた従来の方法は、やはりロシアに対するヨーロッパ的なエキゾチズム=オリエンタリズムの視点だったことが明らかになってきた。1917年のロシア革命を、絶対的な断絶点とする考え方は見なくなってきたものの、あくまで国境によって区切られた空間を芸術表現の文化圏と一体化させる考え方が主流である。しかし、本研究の関心の中心的存在であるメイエルホリドも、ドイツ語を自由に解し当時の先端の演劇情報や戯曲をフランス・ドイツから取得し、ダイレクトに実践していたことは、レパートリーにメーテルリンクやクロムランク、ハウプトマンらが名を連ね、演劇論はニーチェ等に依拠していることからもわかる。また、人的交流としては、1910年にすでにディアギレフがロシア・バレエの斬新さでパリに衝撃を与え、シャガールはパリへと絵の修行に出かける。そのパリにはピカソなどがスペインから来ていたことを考えれば、ヨーロッパ大陸はひとつの大きな芸術領域であったことがわかる。アヴァンギャルド運動を考察する際、この時期が現在の演劇概念の基礎となる近代劇が確立した重要な時期であることも考慮すべきである。ヨーロッパ社会が近代化されるに連れ、思想も表現も大きな変化を遂げた。演劇でも、劇作家ではイプセン(ノルウェー)やチェーホフ(ロシア)等が、演出家ではスタニスラフスキー(ロシア)が日常生活を演劇のテーマとして取り上げ、市民社会への移行期にあって新しい観客を獲得した。このような規範の確立が、同時に近代への反発として新しい芸術手法の探求という欲求を生み、実験的なアヴァンギャルド演劇が展開される。これらも、従来はアンチ・リアリズムという固定的なカテゴリーの中にとどめられていたが、今後はリアリズムもまた「新しい社会の表現」であることに留意し、逆にアヴァンギャルドもまた近代批判でありながら、結局は進歩主義的、科学主義的パラダイムという近代の枠組みの中にとどまらざるを得なかったことを両方の手法の展開を統合するような総合的な分析によって明らかにすべきだと思う。
著者
諸麥 俊司 二宮 誠 石松 隆和
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

麻痺した5指の自由な運動が可能となるパワーグローブの開発を行った。本グローブは腱に相当する駆動糸を内蔵した皮製の手袋と駆動糸を操る駆動装置とから成る。利用者の意図に基づいて駆動装置が駆動糸に張力を与えることで、利用者の指は操り人形のように自由に動く仕組みとなっている。試作したグローブを用いてテニスボールの投球・捕球動作、缶飲料の把持、シャンケンなどの動作の実現が確認できた。
著者
丹羽 淑博
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

海洋深層の乱流混合パラメタリゼーションの基礎研究として、現実的な海底地形を組み入れた高解像度の数値モデルに潮汐と風応力フォーシングを与え続けることによって、より現実に近い状況下でのGMスペクトルの再現を試みた。その結果、潮汐フォーシングと風応力フォーシングとを同時に与えた場合に限り、両フォーシングの強度の比によらずGMスペクトルが形成されることが明らかになった。特に緯度30度付近において、内部波間の三波共鳴相互作用の一つであるPSIを通じて効率的に内部波エネルギーがカスケードされる様子が再現された。また、鉛直低次モードの内部波が外洋中を10000km以上も伝播することにより、GM スペクトルの普遍的エネルギーレベルが維持されていることが示された。
著者
村松 弘一
出版者
学習院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では近代中国の古都・長安における文物保護の動きを『長安史蹟の研究』を著した足立喜六をめぐる様々な資料を通じて見ることが目的である。(1)足立の撮影した古写真と現代の遺跡の比較、(2)碑林の博物館化を通じて見た近代中国の政治権力と文化政策、(3)外国人による西安の文物の海外流出と現在の所蔵状況(米国・ペンシルバニア大学博物館、仏国・ギメ美術館)など様々な観点からの調査をおこなった。外国人が西安を訪れることによって発生した大秦景教流行中国碑流出未遂事件や唐太宗六駿流出事件などを通じて、一地方都市となっていた西安の文物に光があてられたが、複数の政治勢力が存在していた民国期においては、別々に文物保護を行っていたため、1944年なりようやく文物保護の拠点たる博物館が完成したことが判明した。なお、本研究を通じて、足立喜六氏遺品資料の調査が可能となったため、さらなる研究の深化が期待できる。
著者
中田 和秀
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

対称錐計画法を利用して現実問題を解くため、典型的な現実問題を効率良く解くためのモデル化とアルゴリズムの開発を行なった。また、金融数値計算と数式処理を統合したモデリングツールを開発した。開発したQuantOnlineは、インターネットを利用した簡単なモデリングによりオンラインで計算できる。さらに、条件数に関する制約を含んだ行列近似問題などを効率良く解くアルゴリズムの開発に成功した。
著者
片方 江 中西 敏浩 鬼塚 政一
出版者
一関工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2009年度:特別な超越整函数に対して,『回転数が有界型のジーゲル円板の境界は擬円周である』を得た.またその系として,考察した特別な超越整函数の対数持ち上げは,境界が擬円周である遊走領域を持つことが分かった.2010年度:『回転数が有界型のジーゲル円板の境界は擬円周である』を満たす超越整函数の具体例を構成した.また,整函数全体の集合に力学系を考慮した位相を導入し,その位相における函数の摂動に対するジーゲル円板の変化を考察した.2011年度:微分方程式の定性的理論と複素力学系との間に密接な関連があることが分かり,複素力学系における(超)吸引的周期点・放物的周期点・ジーゲル点・クレーマー点と微分方程式における平衡点について研究を行った.
著者
森田 裕介
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,プログレスチャートシステムの構築,オンライン学習コースの作成とLMSへの実装,学習者特性の測定,ブレンディッド学習の実施と分析を行った.そして,WebベースPSIコースのようなブレンディッド学習において,効果的な学習支援の方法を検討した.MBTIを用いた学習者特性の調査から,Eタイプ,もしくはIタイプの場合,具体的にどのような支援をしたらよいか,その方法論に関する知見を示した.
著者
糸 健太郎
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

現在まで有限生成クライン群,特に擬フックス群の変形空間を,曲面上の射影構造との関係を通して研究している.射影構造空間において擬フックス群ホロノミーを持つ射影構造の集合は無限個の連結成分を持つが,この各成分は自己接触し任意の2つの成分は互いに接触することを明らかにした.この結果を論文「Exotic projectives structures and quasi-fuchsian spaces II」にまとめ投稿した.上記の結果は各成分間の接ぎ木写像が不連続となる現象に注目することで得られるのだが,逆にある意味においては連続であることを示すことにより,擬フックス群に関するGoldman's grafting theoremを擬フックス群空間の境界群にまで拡張できることを示した.これは論文「On continuous extension of grafting maps」として準備中である.一方で,3次元球面S^3の等角写像全体の成す群Conf(S^3)の離散部分群の研究をした.特にクライン群(Conf(S^2)の離散部分群)のConf(S^3)の中での変形空間を考察することで,今まで研究してきたConf(S^2)での変形空間に対して一段高い見地を得ることを目指している.具体的にはConf(S^2)におけるonce punctured torus groupに関する理論をConf(S^3)において構築する研究を荒木氏(東大)と共同で行った.すなわち特異3次元トーラス上の等角構造を一意化するConf(S^3)のクライン群を考え,その群の極限集合や変形空間(Maskit slice)の3次元コンピュータグラフィックスを描かせる試みを行った.
著者
笹谷 めぐみ
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

放射線発がんにおける点突然変異誘発機構を明らかにするために、損傷乗り越えDNA合成機構で中心的役割をもつRev1に着目をした。Rev1 の機能を欠失させた遺伝子改変マウスを用いることで、損傷乗り越え DNA 合成機構による突然変異誘発が発がんに及ぼす寄与について検討を行った。
著者
石田 美紀
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、CGIと実写映像の融合を推進するがゆえに、21世紀初頭のスペクタクル映画をもっとも象徴するモーション・キャプチャーについて、以下を明らかにした。1・その歴史的起源が1880年代の前映画史的時代にあること。2・視覚性の優位として批判されるCGI表現が演出技法としても成立していること。3・従来映画の主流であると考えられてきた実写物語映画は動画の領域の一部でしかないこと。以上の結果から、物語叙述の中心である俳優身体がCGIを纏うことによって物語映画にもたらす変容について、さらなる考察が必要であることが判明した。
著者
長廣 利崇
出版者
和歌山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、日中戦争期の高等商業学校と社会移動の関係について、1922年に設立された和歌山高等商業学校の事例に基づき考察した。具体的には、1932年に設立された就職相談部が生徒の社会移動にどのような効果を与えたのかを検討した。
著者
伊藤 啓史
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の主な目的は、家禽で増殖できない野生水禽由来のインフルエンザウイルスがどのような仕組みで家禽体内での増殖能を獲得するかを分子レベルで明らかにすることである。H16年度に実施した研究では以下の成績を得た。(1)野生の水禽から分離された弱毒トリインフルエンザウイルスA/whistling swan/Shimane/499/83株(以下499株)の鶏増殖能獲得変異株24a株のリバースジェネティクス系を確立し、人工24a株(以下RG24a株)を作出した。(2)鶏での増殖が不可能な499株と可能な24a株のリアソータントウイルス(合の子ウイルス)をリバースジェネティクスにより作出した。(3)(1)、(2)で作出したウイルスを用いて鶏雛での感染実験を行い、各ウイルスの増殖能を調べたところ、HA遺伝子は24a株に由来し、その他の遺伝子は499株に由来するRG24aHA株は鶏雛で増殖可能で、その逆のHA遺伝子は499株に由来し、その他の遺伝子は24a株に由来するRG499HA株は鶏雛で増殖不可能であった。したがって、HA遺伝子が水禽インフルエンザウイルスの家禽での増殖能に関わっていることが明らかとなった。さらに、RG24aHA株のNA遺伝子を499株から24a株に交換したRG24aHANA株の鶏増殖能はRG24aHA株に比べ増強されたことから、水禽インフルエンザウイルスの家禽での効率良い増殖には適切なHA遺伝子とNA遺伝子の組み合わせが必要なことが明らかとなった。(4)499株と24a株のHA遺伝子およびNA遺伝子翻訳産物であるHA蛋白とNA蛋白の機能を比較したところ、24a株の赤血球吸着活性(HA蛋白)およびノイラミニダーゼ活性(NA蛋白)は各々499株の約45%に低下していた。以上の結果から、野生水禽由来のインフルエンザウイルスが家禽で増殖できるようになるにはHAおよびNA遺伝子に変異が生じ、その翻訳産物であるHA蛋白およびNA蛋白の機能が変化することが重要であると考えられた。
著者
森 雅生
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は次の3点であり、それぞれ以下のような研究結果となった。●プロトコルの数理モデル化攻撃可能なプロトコルを経験的に補完する例は知られているが、それをプロトコルすべてのセキュリティホールに適用すると冗長性を生じる。このことに注意して、まず暗号化関数と補助的な情報をメッセージに挿入するだけの数理モデルを考察した。これは数理的なモデルでありモノイドとなる。●正規の通信と攻撃的通信の分類一般にプロトコルは公開されており、これを悪用した攻撃は正規の通信との分別が困難である。上述したモノイドモデルでの攻撃的通信を分別することは可能である。●効率に関する考察冗長性はプロトコルの効率性と反比例する。このことについては上述のモデルだけでは議論が不十分であることが分かった。さらに一般的なモデルを構築することが必要となるが、メッセージ集合を文字列とし、プロトコルの実行はメッセージ間の通信と時系列関係によるグラフ(通信グラフ)と考え、文字列としたメッセージが通信グラフの頂点に割り当てられるような構造を考えた。しかしながら、予想していたよりも複雑な構造を持つことがわかり、この一般的なグラフモデルでのプロトコルの安全性と冗長性に関する理論的な結果を得るにはいたらなかった。さらなる研究が必要である。
著者
滝口 哲也
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

従来の音声認識システムでは,背景雑音や残響の影響を抑圧するために,ユーザはマイクロフォンの前で(マイクスイッチを押してから),音声入力を行なう必要がある.そのような音声認識装置では,音声を使うメリットの一つである"ハンズフリー"なインターフェースを提供しているとは言えない.本研究課題では,マイクスイッチレスな音声認識の実現を目指し,雑音に頑健な音声特徴量抽出法,雑音除去手法,音源方向推定の研究を行い,その有効性を示した.
著者
篠原 渉
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マレーシア・キナバル山のマレーホウビシダに含まれる、形態形質と細胞学的形質で区別できる4個のサイトタイプ(「2倍体・有性生殖・大型」、「3倍体・無配生殖・標準型」、「3倍体・無配生殖・大型」、「4倍体・無配生殖・大型」)間の生育環境の差異を明らかにした。さらに遺伝的解析により、「3倍体・無配生殖・大型」が「2倍体・有性生殖・大型」と「3倍体・無配生殖・小型」の交雑起源であることを明らかにした。
著者
松本 嘉孝
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

河川環境とその場に生息する生物の相互作用を仲介する堆積性有機物BOMの堆積・流出メカニズムの解明は進んでいない。そこで本研究では,BOM量の基礎的データを蓄積し,出水前後におけるBOM量変動の把握とその影響要因の解析を行った。その結果,1)BOMはサイズによりその堆積量が異なり,変動傾向にも違いが現れた。2)出水前後のBOM量の変化は,出水始めの水位上昇時にはBOM量が減少し,出水後の水位低下時にはBOM量が増加する傾向が見られた。
著者
西村 明
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、戦後から現在まで日本人によって行われているアジア・太平洋戦争の旧戦地における遺骨収集・慰霊巡拝という行為に焦点を当て、インタビューや資料収集を通して、その概要を明らかにした。具体的には、戦死者の亡くなった瞬間と彼が置かれた戦没地からの時間的・空間的隔たりが、霊をはじめとする死者へのイメージや想いを喚起し、遺骨収集・慰霊巡拝という実践を促していることを明らかにした。